人格ストーリー風。すなわち視点は「彼女」
血を吸う花が根差した空間で戦う人達がいるね。
空間に響くのは剣戟の音と血が飛ぶ湿った音。それから戦う子供の浅く鋭い呼吸音だけだね。
依頼対象なのかな? 大きな盾を持った子が、薔薇の花が今にも咲きそうな蕾に巻かれながら怯える人を守りながら立ち回って、カメラを持った子は優雅に踊るみたいにまわりの血鬼達を片付けていくんだ。
けど、それも長くは続かなかったみたいだね。
血を吸う花の囁きに耳を貸して確かな手応えを感じて血鬼を屠り続けていた二人は、徐々に自分の体に花が根を張っているのが分かってしまったんだ。
樹木にまとわりつきながら太陽を目指す葛のように。赤い花が自分の血管に根を張り、すする音を聞いたんだ。
「見てごらんポーラ! 視聴者の皆さん! この俺に赤い花なんてすごくセンスがあるよね!」
「ふざけてないで集中してくださいよ」
身体から明らかに敵と同じ特徴の花が生え始めたことに視聴者がざわついているけれど、それよりも先に耐えきれなくなった人がいたんだ。同じように蕾が体を蝕んでいる、依頼された保護対象だね。
彼らもいつかは死んで敵になると思った彼は、即座にその盾の中からパニックになって飛び出した
「あっ、待ってください!」
けど、次の瞬間保護対象から生えていた蕾が、彼の動揺を栄養にするように活性化して、一気に身体中の花が開いて化け物になっていたんだ。
きちんと生きていたと思っていたけど、本当はとっくに体の中は植物の種と根でいっぱいになっていたのかもしれないね。
盾を持った子は保護対象が死んでしまったことで動揺したのかもしれない。それが幻想体が侵食を一息に進める心の隙になるとは知らずにね。
「あ、ぐあっ、ぅあ……!…………キッ、ィッ」
盾を持っていた手がだらんと垂れ下がり、ガランと大きな音を立てて盾が倒れる。彼女の動揺はどれほど美味だったんだろうね。一気に花を咲かせた赤い花は血のように美しく咲き誇った。
眼球からも花が生えた彼女を見て、また配信機材を持ったままの子も連鎖するように動揺してしまったみたい。
「ポーラ!?」
仲間が死ぬことなんて都市ではありふれた地獄だったけど、それなりに実力を信頼してたんだろうね。
そうでなければ、機材を持ったまま片手で戦い続けられるほどの実力を持っていた彼が膝をつくはずがなかったから。
彼は自分の脳に根が張られてぷちぷち弾ける音を聞きながら、腕をだらんと垂れ下げたんだ。
血鬼の攻撃を避けて機材を守っていた彼の手腕が振るわれなくなると、即座に攻撃をしてきていた怪物によって機材にヒビが入って配信も停止されたみたい。
けれど、彼らが仲間になったのが分かったんだろうね。花を咲かせた怪物は彼らが完全に人の言葉を失うのを見届けると、攻撃するのをやめたんだ。
そうして、哀れな子供達は人知れずに激闘の末命を散らしていったんだね。
幻想体の声には耳を傾けていたけれど、ついぞ私の声には応えてくれることはなかった。だから、守れなかったんだよ。
きっと彼らは精神が成熟しすぎていたんだね。
子供のように泣き喚くことはしたくなかったんだ。
あーあ、とっても残念。
◇
※こうしてカミーユとポーラは視聴者にトラウマと歪な性癖を刻みつけて亡くなっていきましたとさ。
7章が終わった頃にpixivで公開したやつです。