【完結】風薫る日陰に寄り添う妙花   作:SUN'S

204 / 204
日間ランキング165位、ありがとうございます!


風薫る日陰に寄り添う妙花 急

白面の者との終結後、翌年の3月の春先───。

 

1月中旬に産まれた私と流君の大事な愛娘の(てん)は健やかに育ち、生後三ヶ月でもう不遜な態度を見せることもあるけれど。

 

彼女は彼女なりに幸せそうに過ごしている。蒼月君と出会って、本当に色々な出来事を乗り越えて激動の一年半だったけど。辛いことも沢山あったし、悲しいことも体験した。

 

それでも本当に楽しくて面白かった。

 

「フン。人間の政に我が関わるものか」

 

「巓の口調は治らないわねえ」

 

「外面を取り繕うなど容易い。が、お前のためなら人間らしく振る舞ってやることも出来るぞ」

 

そう言って威風堂々とした雰囲気を醸し出す、かつては白面の者と呼ばれて恐れられていた彼女の口におしゃぶりを着けてあげる。

 

人前で喋るのはまだダメなのである。

 

せめて、お前から『お母さん』もしくは『お母様』と呼ぶように強制しないといけない。白髪のメッシュを加えた髪色もそうですが、やっぱり前世の縁は色濃く残っているものではある。

 

「妙、準備出来たか?」

 

「まだ早いんじゃないの?」

 

「もう三十分もねえだろ。早くしねえとうしおの卒業式に遅れちまうぜ。ほら、巓はオレが預かっとくから準備してこいよ」

 

「じゃあ、お願いするわね」

 

流君のお言葉に甘えて素早くお化粧し、あまり派手じゃないスーツに着替える。タイトスカートって、ちょっと恥ずかしいのよね。

 

いつもジーンズだったから。

 

「巓、母さんは綺麗だよなあ…」

 

「ばぶー」

 

「ハハ、相変わらず気の抜けた返事だな」

 

普通の子より早くに首の座り始めた巓の頬っぺたを捏ねるように触りながら、そんなことを言っている流君に「もう準備は出来たわよ。ほら、行きましょう」と告げ、ヒールに履き替える。

 

「おお、ズボン以外は珍しいな」

 

「蒼月和尚、そっちももう出るのね」

 

「ま、まあ、須磨子がな……」

 

「あら、あなたも心配していたじゃないですか」

 

コロコロと笑う蒼月君のお母さんに気恥ずかしそうに顔を逸らす蒼月君のお父さんの後ろを黒い影が駆け抜け、ズザッ…!と砂ぼこりを立ち上げる。

 

それを追うように2mを越える巨体の人間が現れ、黒い影……蒼月君はお茶碗とお箸を持ったまま体を持ち上げ、ギロリと大男を睨み付けた。

 

「てめぇ、どういうつもりだ。とら!」

 

「けっ。晴れ舞台だが何だか知らねえが儂の朝飯を奪いやがったおめえを代わりに喰ってやるのさ!」

 

2mを越える巨体の男───とらは本条家の管理している和風男溺泉に無理やり落として、人間の身体と妖怪の身体を使い分ける事が出来るようになった。

 

謂わば擬似的な半妖状態だけど。

 

まあ、真由子さんとも仲良くしているから私が文句を言う理由はない。個人的には二千歳の妖怪が二十代ぐらいの若者に変わるのは不思議ではある。

 

「ホントにうしおと居ると飽きねえなあ」

 

「そうねえ」

 

この一年半は幾度も移ろう世界を見続けてきた。

 

けれど。それもまた人の世、妖怪の世、そのどちらにも必要な事だった。巨大な悪になるしかなかった太陰もやがては日に還り、全ての出来事は流転する。

 

だからだろうか、私は誰もが安らげる。

 

────風薫る日陰に寄り添う妙花でありたい。

 

 

 

-完-

 

 

 




今回のお話で「うしおととら」原作本編およびクロス本編「風薫る日陰に寄り添う妙花」はおわりです。


来月、12月1日に「からくりサーカス」編を開始します。時代は新しく移り、物語はからくりと道化師に彩られた時代。まだまだ糸色景と相楽左之助の子孫や家族の冒険は続いていきます。


ご愛読、ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

魔法科高校の熱を愛する者(作者:パクチーダンス)(原作:魔法科高校の劣等生)

呪術廻戦の秤金次っぽいオリ主を登場させました。


総合評価:4289/評価:8.28/連載:17話/更新日時:2026年05月22日(金) 20:30 小説情報

第四の壁を越えて(作者:タカリ)(原作:HUNTER×HUNTER)

死んだと思ったらハンターハンターの世界に転生した。ゴンの兄だった。▼原作にガッツリ関わる立場になっちゃったけど、別に自重しなくていいよね?


総合評価:7399/評価:7.78/連載:66話/更新日時:2026年05月27日(水) 12:25 小説情報

魔法科高校の異端魔術師(作者:もやしになりたい)(原作:魔法科高校の劣等生)

死の間際、佐藤雄馬は他人を庇って命を落とした。▼その死は、本来あるはずのないものだった。▼神の手違いにより、『魔法科高校の劣等生』の世界へ転生した雄馬は、英霊たちとの縁を与えられ、新たな人生を歩み始める。▼そこで彼が触れたのは、魔法が技術として完成された世界と、英霊たちが語る神秘としての魔術だった。▼想子によって情報体へ干渉する“魔法”。▼魔術回路と魔力によ…


総合評価:2453/評価:7.12/連載:37話/更新日時:2026年05月14日(木) 16:46 小説情報

ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ(作者:ポップ)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ドラクエ3で勇者一行の一員だった女賢者さんが、大魔王ゾーマを倒した後に遊び人になって、お酒を飲んでいたらダンまち世界に転移してきた話。


総合評価:5135/評価:8.09/連載:54話/更新日時:2026年07月19日(日) 23:06 小説情報

アホみたいなオーラ量に対して、貧弱すぎる出力でどうしろと?(作者:村ショウ)(原作:HUNTER×HUNTER)

転生先はHUNTER×HUNTER。▼特典は「オーラ量メガ盛り」。▼勝ったな、と思ったら増えてたのは総量だけだった。▼潜在オーラ量は化け物級。▼でも顕在オーラ量はしょぼい。▼要するに、巨大なバッテリーを抱えてるのに出力が足りない。▼なので、真正面から最強を目指すのはやめた。▼蓄える、支援する、情報を集める、必要な時だけ倍率をかける。▼そんな感じで念能力をシス…


総合評価:9923/評価:7.72/連載:15話/更新日時:2026年06月22日(月) 20:42 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>