Blue Archive -Document SKIP feat.OMEGA and...- 作:LN58
星見 コウセイ「え、え? 何? えっと、アユ姉? この子たちは?」
大木田 ソラト「おお、なんだなんだ、アユ姉? これって遠足か?」
大木田 ソラト「こんなにたくさんの人が来ると、ここも結構狭く感じるな、コウセイ」
星見 コウセイ「ああ、アユ姉の他にこんなにも人が来るだなんて、今日はいったいどうしたんだ?」
アユム先生「ごめんね、コウセイくん。この子たちが『どうしても行きたい』って言うから……」
アユム先生「それじゃあ、まずは自己紹介しようか、みんな」
花岡 ユズ「あ、あの、えっと……」
才羽 モモイ「はーい。私はね、【ゲーム開発部】シナリオ担当の才羽 モモイだよ。いや~、先生が通っているって噂の倉庫ってこんな感じなんだね」
星見 コウセイ「げ、【ゲーム開発部】ぅ? なんで うちの倉庫に?」
大木田 ソラト「なあ、コウセイ? あの校章って【ミレニアムサイエンススクール】ってところだよな?」
才羽 ミドリ「お、お姉ちゃん! ここは自治区内じゃないんだから、ちゃんと所属校を言わないと!」
才羽 ミドリ「【ミレニアムサイエンススクール】高等部1年:才羽 ミドリです。お姉ちゃん:才羽 モモイの、双子の妹です」
大木田 ソラト「へえ。2人は双子の姉妹なんだ。本当にそっくりだなぁ」
天童 アリス「ぱんぱかぱーん! 天童 アリスは光の勇者です! 時々 メイド勇者にジョブチェンジもします!」
星見 コウセイ「お、おお。そうなんだ……」
大木田 ソラト「えっと、モモイにミドリ、それからアリスだな」
大木田 ソラト「じゃあ、最後にそっちの子は?」
アユム先生「ほら、ユズ」
花岡 ユズ「は、はい……」
花岡 ユズ「わ、わたしは【ゲーム開発部】部長:花岡 ユズです。本日はよろしくおねがいします……」
大木田 ソラト「こちらこそ、よろしくおねがいします。大木田 ソラトだ」
星見 コウセイ「俺は星見 コウセイだ、よろしく。きみが部長だったんだね」
星見 コウセイ「で、うちの倉庫にどういったご用件で?」
花岡 ユズ「は、はい。すみません。実は、取材をさせていただきたくて」
アユム先生「え、『取材』って?」
才羽 モモイ「つまり、『密着取材させて!』ってこと!」
大木田 ソラト「何、『密着』って?」
才羽 ミドリ「だから、お姉ちゃん。それだけじゃ要領を得ないでしょう? ちゃんと説明する気あるの?」
花岡 ユズ「あの、こちらの資料をどうぞ……」スッ
アユム先生「あ、説明資料をちゃんと用意していたんだ」
大木田 ソラト「へえ、どれどれ?」
星見 コウセイ「ああ、なるほど。【ゲーム開発部】だから、ゲーム作りの参考になるものをねぇ」
花岡 ユズ「は、はい。【ゲーム開発部】で制作する次回作を“怪獣災害”を取り扱ったものにしようと決めまして……」
才羽 モモイ「だから、アユム先生がこうやって通い詰めていると噂の怪獣研究家の監修があれば、ゲームの完成度が上がると思って!」
大木田 ソラト「そうなんだ」
星見 コウセイ「う~ん、これはどうなんだ?」
星見 コウセイ「アユ姉はどう思う?」
アユム先生「そうねぇ。ソラトさん、記憶喪失で 何割かの確率で怪獣を見たら その怪獣が何なのかがわかる感じだから、取材形式で聞き出すのは難しいと思うよ」
アユム先生「TRPGで言うなら、私は【怪獣知識(地球):75】ぐらいで、ソラトさんだと【怪獣知識(キヴォトス):25】ぐらいかな? 4回ダイスロールしたら怪獣の正体がわかる、みたいな?」
才羽 モモイ「ええ!? そんなの、ほとんど当てにならないじゃん!」
才羽 ミドリ「だから、お姉ちゃん!」
天童 アリス「そんな!? ソラトの職業は物知り博士じゃなかったんですか?」
大木田 ソラト「悪いな。俺もその辺り曖昧でさ、何となく『感じる』ぐらいしかわからないんだ」
星見 コウセイ「そういうことだから、悪いけど取材は無理ってことで――――――」
アユム先生「よし、わかった。私から提案があるの」
星見 コウセイ「え、アユ姉?」
花岡 ユズ「……せ、先生?」
天童 アリス「逆転の一手となる作戦が閃いたんですね、先生!」
アユム先生「うん。実は前々から考えていたことなんだけど、いい機会だし、【ゲーム開発部】に取材してもらいましょうか」
才羽 モモイ「え、何? 何するの?」
アユム先生「ちょっと待ってて」スッ ――――――スケッチブックを取り出す!
才羽 ミドリ「あ、始まる!」
星見 コウセイ「え?」
才羽 モモイ「見て驚け! 聞いて笑え! これが“シャーレの先生”の圧倒的ペン捌き!」
アユム先生「――――――」カキカキカキ・・・ ――――――眼にも止まらぬ速さで怪獣の絵を描き起こす!
アユム先生「はい。できたよ」
星見 コウセイ「す、すっげえ! 怪獣の絵をあっという間に完成させたよ! アユ姉、すげえ!」
天童 アリス「はい! 先生はミドリとは比べ物にならないレベルの絵描きです!」
アユム先生「はい、ユズ。ソラトさんに質問して」
花岡 ユズ「え」
アユム先生「噂の怪獣研究家に取材に来たんでしょう?」
花岡 ユズ「あ、はい!」
花岡 ユズ「あの、ソラトさん、この怪獣に見覚えはありませんか?」
大木田 ソラト「ううん? えっと、こいつは……?」
星見 コウセイ「ああ、なるほど。そういうことか、アユ姉」
アユム先生「――――――」カキカキカキ・・・ ――――――質問している間にも別の怪獣の絵を描く!
アユム先生の特技はその驚異の記憶力とデッサン力であり、印象派のごとく その場で素早く描きつつも、要点を捉えて必要最小限の模写だけで精密に理解させる能力にも長けていた。
そのため、怪獣災害が起こるようになったキヴォトスにおいて地球で確認された怪獣のデータがどれだけ役に立つかは不明ではあったものの、アユム先生もまた怪獣生物学を履修していることから、その知識はキヴォトスにおいても大いに役立てられることになった。
一方で、日頃から多忙を極めている身であるため、情報提供できた怪獣のデータは全てではなく、本来ならば機密情報となる怪獣のデータを閲覧した記憶から呼び起こして書き出していることから、どれだけアユム先生が速筆であろうと時間はいくらでもかかってしまう。
そもそも、怪獣災害が収束して何年も経った後の過去の記録データに載せられている以上のことはどうあっても知りようがなく、断片的なものしかデータがないものでも情報提供すべきかを考え、結果として小出しにデータを出しながらキヴォトスで怪獣図鑑となるものを地道に仕上げているのが現状であった。
しかし、この時【ゲーム開発部】がキヴォトスで唯一自分以外で怪獣のことを知っている怪獣研究家:大木田 ソラトについて誰にも相談もせずに無許可で密着取材をやりだそうとしていたのを見て、その場に居合わせた大人としての責任から子供たちの動きを制するためにかねてよりやってみたかったことを始めたのである。
それは今この場でやってみせている“怪獣を知る者同士での怪獣のデータの照合作業”であり、あらかじめ情報共有しておくことで互いに良い影響を与えるものと信じて行われていた。
ただし、知っている怪獣がそのままの状態や能力でキヴォトスに現れるとは限らないため、それを外部の人間に言い触らされてフェイク動画のネタにされるのは限りなく真実に近いウソとなって結果としてキヴォトスに災厄を招くことになるので、絶対に他言無用にすることを関係者全員に厳重に警告した。
実際、ゲーム制作のネタに困って大木田 ソラトの許に押しかけてきたのが【ゲーム開発部】なのだから、あらかじめ『ここで見聞きした情報はゲームの設定やデザインの参考にしていい代わりに元ネタの開示には絶対に応じてはならない』という妥協案とも言える誓約書を用意することになった。
そして、記憶から何十枚もの怪獣の絵をその場で描き下ろして【ゲーム開発部】部長:花岡 ユズがこの怪獣を知っているかどうかを質問させること数時間――――――、
予想通り、全体としてはそこまでの結果ではなかったものの、古代怪獣:ゴモラのようにアユム先生と大木田 ソラトの両方が知っている怪獣が何体か確認されることになり、更にはアユム先生が知っている以上のことを知っている怪獣さえも確認された。
こうして一定の緊張感の中で執り行われた照合作業は一応の成果を出すことになったものの、ますます怪獣の存在を『感じる』ことができる自称:怪獣研究家の大木田 ソラトが記憶喪失になるまでの過去が気になり出す。
それが自身もある意味において記憶喪失だったことで自分の正体に思い悩んでいた“光の勇者”天童 アリスとの思い出に重なるところがあり、【ゲーム開発部】のみんなが記憶喪失でかつ独学で怪獣のことを調べていたという天才設定のおもしろおかしな大木田 ソラトにいろんな感情から興味を抱くようになったのは自然なことだったのかもしれない――――――。
星見 コウセイ「それで、最初はアユ姉が描いた怪獣に見覚えがないかをソラトに訊くだけかと思っていたんだけど――――――、」
星見 コウセイ「アユ姉と一緒に帰ったと思ったら、どうしてここに居るんだ?」
才羽 モモイ「ふふーん! 最初に『密着取材』だって言ったじゃん!」スチャ ――――――撮影用カメラを向ける。
大木田 ソラト「そう言えば そんなこと 言っていたよな、コウセイ」
星見 コウセイ「俺たちを撮影したいんだって、ソラト」
才羽 ミドリ「本当にすみません。アユム先生が描いた絵を質問するのはこれからもやらせてもらうつもりですが、元々こうすることが目的でしたので」
天童 アリス「この場所にいったいどんなレアアイテムが隠されているのか、見つけるのが今から楽しみです!」ワクワク
星見 コウセイ「あ、ああ! ダメだから! 危ないから勝手に入ってきちゃダメだって!」
大木田 ソラト「そうだぞ。仕事の邪魔になるから、おとなしくしているんだぞ」ガシッ
才羽 モモイ「ああ!? ちょっとぉ!?」グイッ
天童 アリス「ええ!? アリス、身体が持ち上げられています!」グイッ
才羽 ミドリ「やっぱり、ちゃんと許可をとってからじゃないとダメだよ、お姉ちゃん……」
星見 コウセイ「……賑やかなのは楽しいけど、変な子たちに目をつけられちゃったな」
星見 コウセイ「そうだな。カメラが回ってることを考えると、先に掃除をしておくか――――――」ガチャ
星見 コウセイ「って、うわっ!?」ビクッ
花岡 ユズ「あ、すみません。お先に ロッカー 使わせてもらってます……」ドキッ ――――――掃除用具入れの中に居る!
こうしてアユム先生が足繁く通っていると噂の怪獣研究家が居候をしている倉庫で【ゲーム開発部】が遊びに来る日々が繰り返されることになった。
そうなってくると、基本的に物怖じしない才羽 モモイの積極性に引っ張られて自然と打ち解けるようになり、
休み時間に一緒にゲームをするようになって、倉庫で住み込みバイトをしている作業服のおにいさん:星見 コウセイともゲームを通じて仲良くなることができ、
その従兄弟である記憶喪失のおにいさん:大木田 ソラトのゲーム初心者に特有の奇想天外なプレイングと驚異的な人間性能を活かしたパワープレイに翻弄される笑いあり涙ありのゲーム三昧の日々となっていた。
どちらも素直な反応が返ってくるので対戦をしていると大変盛り上がることになり、それが【ゲーム開発部】の部室の中とはちがった居心地の良さを作り出していた。ここにはさしもの“冷酷な算術使い”早瀬 ユウカも簡単には来れない。
ただし、テレビは置いてないので携帯ゲーム機を貸し出す形でのプレイとなるが、そんなことに不満を覚えることがないぐらいには【ゲーム開発部】の子供たちは作業服のおにいさんと記憶喪失のおにいさんのことを慕っていた。
しかし、【ゲーム開発部】がここに来た目的は『ゲーム制作の次回作のネタ集め』のためであり、こうして自治区から毎日のように遊びに来て
温泉地に熔鉄怪獣:デマーガが出現した報を聞きつけるや否や、倉庫を勢いよく飛び出して行った記憶喪失のおにいさんと作業服のおにいさんを追いかけていった帰り――――――、
何があったのか、2人のおにいさんが何かで揉めて喧嘩するようになり、何かと張り合うようになって対戦がますます白熱するようになった。
それでも、仕事は仕事と割り切って喧嘩している最中でもきちんと協力して作業しているのは、さすがは社会人と言ったところだが、雰囲気は良くない。
それに当てられてか、こうなった原因の一端に 無理矢理 押しかけてきた自分たちに責任があるとして、いつまでもここで遊んでないでまじめにゲーム作りに取り掛かるべきだと訴える双子の妹:ミドリの主張に同意しかけた双子の姉:モモイだったが、途中から売り言葉に買い言葉で双子の姉妹で喧嘩するまでになってしまったのだ。
その様子をただただカメラに収めることしかできなかったのが【ゲーム開発部】部長:花岡 ユズと【ゲーム開発部】マスコット:天童 アリスであった。
ゴクゴク・・・!
お、俺が早かった!
いいや、俺の方が早かった!
いいや! 俺だ!
俺だぁ!
ユズちゃん、どこかの頑固者に伝えておいてください!
――――――『今夜の夕食はカレー』だって!
アリス、どこかのわからず屋に伝えてくれ!
――――――『それは楽しみ』だって!
しかし、まさに喧嘩するほど仲がいい間柄なのは見ていればはっきりわかるほどで、従兄弟同士の喧嘩には微笑ましさがあり、バカ丁寧に今日も今日とてカメラを回し続けてくれていたユズとアリスに感謝しつつ映像記録を見て、双子の姉妹は一足先にまた仲直りしてもいいのではないかという気になっていた。
そんな折、デカグラマトンの痕跡を追って 自治区も存在しない破棄された 海をも凍らせる極寒の地:氷海地域における【特異現象捜査部】の調査に参加していた【連邦捜査部
つまり、“シャーレの先生”であるアユム先生からの直々の依頼ということになり、これには喧嘩している最中の従兄弟も双子の姉妹もそれどころじゃないと思い直すことになり、怪獣とは関係無しに今現在こうして危険な任務に従事しているアユム先生のことを思い遣ることになったのだった。
そのため、【ゲーム開発部】による密着取材はここで終了となり、それについて行こうと作業服のおにいさんと記憶喪失のおにいさんも協力を申し出るのだったが、
相手は正体不明のロボット軍団で一発の銃弾が命取りになる地球人では足手纏にしかならないことをきっぱりとアユム先生に言われ、そんな激戦区にこれから向かうことになる【ゲーム開発部】の子供たちを見送ることしかできないことに悔しさを抱いた。
しかし、これは“キヴォトスを救った英雄”として 新たな脅威からキヴォトスを再び救うために 一時的にキヴォトス本土から離れなくてはならなくなった アユム先生にとっては、キヴォトスに現れるようになった怪獣のことを託せる相手として怪獣研究家:大木田 ソラトを留め置く必要があったのだ。
そのため、【怪獣防災科学調査所 SKIP】キヴォトス分所に所属する特別調査員という扱いの大木田 ソラトに対して当面の活動資金としてブラックカードを渡すことになり、万が一のことがあった場合を想定しての動きに作業服のおにいさんと記憶喪失のおにいさんは“シャーレの先生”の覚悟を見た。
そして、最後に“光の勇者”天童 アリスから自分の正体がキヴォトスを滅ぼすために遣わされたアンドロイド:AL-1S“名もなき神々の王女”であり、
そのために【ミレニアムサイエンススクール】の生徒会長である“ビッグシスター”調月 リオから抹殺されかけたこと――――――、
そんなにも恐ろしい自分の正体を知ってもなお受け入れてくれた【ゲーム開発部】やみんなのことを大切にしていること――――――、
その恐るべき秘められた能力によって<光の剣:アトラ・ハシースのスーパーノヴァ>を生み出し、空が赤く染まったキヴォトス滅亡の時に<アトラ・ハシースの箱舟>への突入を成功させ、世界を救うことができたこと――――――。
だからこそ、“光の勇者”天童 アリスは自身と似たような記憶喪失のおにいさん:大木田 ソラトに特に懐くことになり、
自身の経験から明らかに自身と同等かそれ以上の人間離れした能力を持つことから『大きな使命が与えられている存在なんじゃないか』という推測を披露することになったのである。
なお、【ゲーム開発部】部長:花岡 ユズは作業服のおにいさん:星見 コウセイに懐いた模様で、どことなく【セミナー】生徒会長代行:早瀬 ユウカに似たものを感じて安心感を覚えていたようだった。
そんな“光の勇者”天童 アリスが、自分が周りから
その瞬間、小生意気で愛嬌たっぷりの可愛らしい女の子の姿がまさに“光の勇者”と呼ぶに相応しい気高さを放っていたように見え、それには作業服のおにいさんも思わず息を呑む程であった。
そして、それを見た記憶喪失のおにいさん:大木田 ソラトの眼差しもまた真剣そのものであった――――――。
わかった。
え。
全部話す。
ソラト!?
おい、来い!
何言ってんだよ、お前!?
俺もこのままコウセイと喧嘩しているのは嫌だ。
コウセイだって、そうだろう?
でも、まだアユ姉にも本当のこと言ってないんだぞ!
アユ姉にもいつか本当のことを話そう。
その時が来たら。
それに、アリスの目は本気だ。ユズにしてもそうだ。
俺はこの子たちを信用する。
だから、本当のことを言ってもいいと思う。
でも……。
心配ないって。
俺たちは何があっても“友達”だ。
あの子たちが“そう”だったように。
だろう?
……わかったよ。好きにしろ。
しかし、本当のことを伝えるタイミングを逃し、こうして【ゲーム開発部】の子供たちを送り出した2人はその無事を祈りながらも、いつもの日常に戻ることにしたのだった。
けれども、コウセイとソラトのふたりきりだったいつもの日常が帰ってきたはずなのに、あの騒がしさと賑やかさがなくなって、前よりもずっと静かに感じられた。
そして、しばらく経った後、どうやらデマーガが現れた温泉地に近い別の温泉地に温泉合宿しているらしい【ゲーム開発部】から連絡があり、アユム先生も無事で一緒に泊まっていることを知り、ようやく一安心することができたわけなのだが、
そこにデマーガが現れることになり、一刻を争う事態ということで、前回は【太陽倉庫】から直接変身して急行すべきかで揉めて、結局は
今回の溶鉄怪獣:デマーガがまさに強敵であった。デマーガの存在自体はウルトラマンブレーザーの世界やウルトラマンアークの世界でも確認されており、どちらの世界でも無事に対処されたとアユム先生の記憶にはあった。いわば、特長のないのが特徴の怪獣という認識であった。
しかし、キヴォトスに現れたデマーガは一味も二味もちがい、火山性温泉の地下のマグマ溜りで力を蓄えていたためか、ウルトラマンが触れただけで悶絶するほどの高熱に加え、その高熱によって地面をマグマのようにドロドロに溶かす威容は、接近戦を得意とするメテオカイジュウ:トライガロンでさえも接近戦を躊躇う程であった。
そして、背中から発射される火山弾ならぬ溶鉄弾が降り注ぎ、温泉街はあっという間に壊滅状態になり、偶然その場に居た“シャーレの先生”アユム先生の避難指示に従うことで、現場は大混乱の真っ只中であっても避難行動に移ることができていた。
恐ろしいことに、今度は念動力で飛び道具を跳ね返せるメテオカイジュウ:レキネスで反撃を試みるものの、自身に撃ち返された溶鉄弾を吸収することで体内に取り込んで更に自身の体温を上げて全身が真っ赤に赤熱化した状態と化したのである。
これにはさすがのアユム先生も驚愕する他なく、キヴォトスで暗躍する超高性能人工知能:デカグラマトンが他のAIを感化させて同志たる“
わずか3日でキヴォトス全体を変換することができるとされる世界滅亡規模の怪異現象に対し、この鋼鉄大陸の造成を阻止するために“ビッグシスター”調月 リオをリーダーにした決死の突入作戦が決行される寸前、何らかの異常が発生して鋼鉄大陸の造成が停止したことが確認され、それでしばらく監視を続けることになったのだ。
それで何日か経って痺れを切らしたところで 一旦 解散となり、こうして温泉街でデカグラマトンの預言者とそれに仕える3人のエンジニアとの激戦の疲れを癒やすことになったのだが、
よりによって、そこに襲撃してきたのがウルトラマンオメガと交戦して逃げ延びてきた溶鉄怪獣:デマーガというわけであり、『鋼鉄大陸を破壊するためにデマーガの力を利用できたら』と言う邪な考えが浮かんでしまう。
一方で、
だとするなら、空が赤く染まったキヴォトス滅亡の危機さえも怪獣の目覚めに繋がることのない
あるいは、その本当の脅威に備えるために全てが失踪した“連邦生徒会長”に仕組まれていたことだと言うのか――――――。
そんなことを数瞬のうちに思い巡らせると、次の瞬間にアユム先生がハッとなったことは、一緒に温泉宿に泊まっていた【ゲーム開発部】のみんなが自分の側から離れていたことであり、
温泉宿に泊まる前まで超巨大なロボット兵器:デカグラマトンの預言者たちと真正面から戦ってきたという経験と自負から、デマーガ相手に果敢に銃撃戦を仕掛けていくことは容易に想像がついた。
だから、溶鉄弾による熱気でドロドロに溶けて所々で発火した温泉街からレールガン<光の剣:スーパーノヴァ>がデマーガの顔面に着弾し、デマーガが怒りの形相で再び溶鉄弾の雨を降らせた時、アユム先生は今度こそ悲鳴を上げることになった。
いくらアユム先生の側には自身が開発した超高性能ロボットであるロッピー・ザ・ロボットとアークガロンが並んでいるとは言え、50m級にもなる怪獣を相手にするには明らかに力不足で、防衛戦力の展開が絶対に間に合わない今の状況では逃げの一手しかない。
こうなった以上は住み慣れた故郷である自分たちの街を捨ててでも生き延びるしかないのだ、普通は。
しかし、そこにウルトラマンオメガが【ゲーム開発部】の子供たちを溶鉄弾の雨から直接守り、メテオカイジュウ:レキネスが溶鉄弾の雨を念動力で絡め取って更なる被害を抑えてくれたのだ。
そして、真っ赤な巨人が明確に【ゲーム開発部】の子供たちの方を指差して『気をつけろよ』と言わんばかりの仕草を見せつけられたら、子供たちにとって一生もののヒーローの思い出になったことだろう。
そこから先の事は言うまでもないだろう。ヒーローは必ず勝つのだから――――――。
アユム先生「ソラトさん、コウセイくん!」
大木田 ソラト「よう、アユ姉。みんな。また会えたな」
星見 コウセイ「おかえり、アユ姉、みんな。何か本当に大変だったって聞いたからさ、また のんびりしていってよ」
天童 アリス「はい。誰一人として仲間が脱落することなく、無事に帰って来ることができました」
花岡 ユズ「こ、これ。お土産です。どうぞお召し上がりください」
才羽 モモイ「もう本当だよ。せっかく温泉宿で楽しく過ごせていたのに、そこに怪獣が現れちゃってさ……」
才羽 ミドリ「でも、そこをあの真っ赤な巨人に助けられちゃった」
花岡 ユズ「か、かっこよかったです!」
天童 アリス「はい! あの姿はまさしくアリスと同じ“光の勇者”でした! 本物のヒーローです、ウルトラマンオメガ!」
大木田 ソラト「そうかそうか」フフーン!
才羽 モモイ「オメガの方も凄かったけど、お供の怪獣もなかなか良い働きをしていたよね!」
才羽 ミドリ「うん。私たちのことは巨人が守ってくれたけど、街の被害を抑えてくれていたのは青い怪獣の方だから、お供の怪獣にもお礼を言わなくちゃだよね」
星見 コウセイ「そ、そうかな~」ニヤニヤ
アユム先生「青い龍みたいなのがレキネスで、黄色い虎みたいなのがトライガロンだよ」
――――――また助けられたね。ありがとう。
大木田 ソラト「?」
星見 コウセイ「おっしゃあ! 実は、無事にみんなが帰ってこれたらお祝いをしようと思って準備していたんだ!」
才羽 モモイ「え、何々?」
大木田 ソラト「ああ。ささやかだけど、今からゲーム大会をして優勝したら賞品を渡すから、俺と勝負だ、みんな」
花岡 ユズ「望むところです。今度こそ、ソラトさんの反応を超えてみせます」
天童 アリス「アリスも ウルトラマンオメガを見習って 勇者として負けられません!」
才羽 ミドリ「本当はゲーム制作をしなくちゃならないところだけど、今だけは……」
アユム先生「じゃあ、先生も本気を出しちゃおっかな~?」
星見 コウセイ「よし、今度は負けないぞ、アユ姉!」
大木田 ソラト「アユ姉、準備はいいか?」
アユム先生「行くよ! ソラトさん! コウセイくん!」
――――――これが青春。きっと、あなたたちにもそれがわかる時が来るのだから。言葉を交わして、想いをぶつけ合った末に。
ミニ・アースガロンことアークガロンの大元となる23式特殊戦術機甲獣:アースガロンはV99;1999年に地球に飛来した地球外生命体の宇宙船を撃墜したことで得られた技術に由来し、
結果、地球外生命体:V99は新天地を求めて宇宙を旅していた同胞が地球側から脅威と誤解されて攻撃されて多くの犠牲を生んだのを受け、『地球は危険な星である』との恐怖からV99が宇宙怪獣を送り込む宇宙戦争が多くの人たちが知らない間に勃発していたのである。
宇宙甲殻怪獣:バザンガ、宇宙電磁怪獣:ゲバルガ、宇宙爆弾怪獣:ヴァラロンと言った恐るべき宇宙怪獣を地球に次々と送り込んでいたのは、先に攻撃を仕掛けてきた地球への防御反応に過ぎなかったのである。
しかし、互いにどちらかが滅びるまで戦うしかないと思われた全面戦争の危機を止めることができたのは、V99の技術で生み出されたアースガロンに内包されていたブラックボックスが解放されたことでAI対話システム:
真実を知ったことでアースガロンは武装を解除し、V99との対話を試みる。それに呼応するようにブレーザーや各国の防衛隊支部も同じく攻撃準備を中止した。
当初、V99は対話に応じる姿勢を見せなかったものの、アースガロンがただ一言『未来』と伝えたことにより、すでに地球の軌道上に展開されたV99の艦隊が同じく『未来』と返し、ワームホールを通って地球から撤退することになり、これによって地球とV99との全面戦争の最悪の事態はギリギリのところで回避されたのである。
だから、対話による奇跡を当事者である【SKaRD】の隊員たちの口からこっそり教わったことで、
ならば、その奇跡を再現すべく、デカグラマトンやその眷属たちにこれからも対話を望み、共に『未来』へ走り出していけることをあきらめない強さを求めていこう。ただ信じ合えることを躊躇わない勇気を胸に抱いて。
それがウルトラマンブレーザーの世界から来た
――――――それが、この