Blue Archive -Document SKIP feat.OMEGA and...- 作:LN58
ウルトラマンオメガが爆進細胞怪獣:エルドギメラに敗北を喫した後、【太陽倉庫】で住み込みバイトをしている星見 コウセイの許で居候をしていた宇宙人:大木田 ソラトはそう告げた。
それは唐突なことなんかじゃなかった。最初は迷い込んだ先の【太陽倉庫】で作り立ての焼きそばを盗み食いして、倉庫に置いてあるものが何なのかを訊いて回ったかと思えば、突如として外に走り出した 記憶喪失の宇宙人だったのに、
それが今では アユ姉ことアユム先生が言ってた通り 求人情報や物件情報を読み漁って本気で独り立ちしようとしていたのだ。
おそらく、オメガを倒した怪獣:エルドギメラが再び現れる予兆を感じ取っていたのだろう。
実際、大木田 ソラトは記憶喪失のために物を知らないせいで一見するとボケーっとした能天気な性格に見えるのだが、その実、周りのものをよく観察していて、自分の中でいろいろと反芻して 物事の本質を見抜く特徴があった。
だとするなら、口下手だから はっきりとは言葉にすることができなくとも、大木田 ソラト/ウルトラマンオメガの中ではエルドギメラに勝つための戦術が出来上がっているわけなのだろう。
けれども、誰よりも勇敢に怪獣に立ち向かってくれている大木田 ソラト/ウルトラマンオメガをひょんなことから居候として、更には従兄弟という関係性を持たせて、その正体が知られないように立ち回って その活躍を誰よりも間近にずっと見続けていた星見 コウセイとしては居た堪れない気持ちでいっぱいだった。
ウルトラマンオメガの仲間であるメテオカイジュウの力は強大であり、場に出すだけでも怪獣に対して2対1の数的有利がとれる上に、ウルトラマンオメガにはない数々の優れた能力があるのだ。
だから、ずっとやりたいことを探してバイト先を転々として学園都市:キヴォトスにまでやってきていた地球人:星見 コウセイとしては、大木田 ソラトだけの能力としてウルトラマンの力があるように、なぜか主人であるはずの大木田 ソラトにも使役することができないメテオカイジュウを扱える特殊性から いよいよ自分のやりたいことが見つかったような気がして怪獣退治に熱中していた。
しかし、当然と言えば当然だが、大木田 ソラトがオメガに変身して直行した方が逸早く怪獣が暴れ回っている現場に急行できるため、それで置いていかれることで活躍の場を奪われると思い、段々と腹を立てるようになっていたのだ。
そう、いつからか大木田 ソラト/ウルトラマンオメガの戦いを見守るだけじゃなく、メテオカイジュウを使役して共に戦える喜びと興奮を忘れて、活躍の場と称賛を求めるようになっていった――――――。
そして、先日のエルドギメラ戦で犯してしまった過ち――――――。
不吉な予感を覚えていた大木田ソラトがいつまでも消極的な姿勢であったことから痺れを切らして、防衛チーム【NDF:National Defence Force】の初陣となるグライム捕獲作戦に介入してミサイル攻撃が麻酔ガスを散布していたものとは知らずに妨害していたことを聞かされ、
更にはグライムを追って地上に現れたエルドギメラの圧倒的パワーによってメテオカイジュウがいとも容易く退けられ、攻撃の余波からコウセイを守るために負傷したソラトは現地に展開していた【NDF】を守るために変身して自らを盾にしたのだ。
しかし、それでも【NDF】が受けた被害は大きく、コウセイは悲鳴と怒号が飛び交う光景を前に呆然とするしかなく、グライムを吸収し その能力を得たエルドギメラの猛攻にオメガが敗れるという まさかの事態にも発展してしまったのだ。
全てが全てコウセイの勇み足が招いたわけではないが、今まで1対1でも怪獣と戦えていたオメガにメテオカイジュウの援護があれば楽勝だと浮かれていたコウセイにとって、
悪いことがいくつも重なった結果、今まで無敵と思われていたウルトラマンオメガの敗北という最悪の事態を招いてしまったのだから、ここしばらくは完全に魂が抜けた状態となっていたのだ。
エルドギメラに敗れて命からがら【太陽倉庫】に戻ることができた大木田 ソラトもまた、ぐっすり眠った後に【太陽倉庫】で最初に食べた思い出の味であるコウセイの作った焼きそばを美味しそうに食べた後は、こちらもいつもよりも口数が少なくなっていた。
そんな状況を見兼ねてアユ姉ことアユム先生が食が細くなっていた二人に活力を取り戻させるべく、【美食研究会】鰐渕 アカリも誘ってバイキングに連れて行ったのが前回の話である。
そこでコウセイがアユ姉に言われたこと、ソラトがアカリから言われたことをそれぞれ考えながら しばらくが経過し、いよいよ居候の大木田 ソラトが意を決して口を開いたのだった。それが冒頭の発言である。
それに対して、ソラトと出会ったことで怪獣使いとしてのアイデンティティを確立させようとしていた星見 コウセイはアユ姉から忠告されていたことであっても受け止めることができず、何も言わずに【太陽倉庫】からひとり飛び出してしまっていた。それを黙って見送る大木田 ソラトだった。
そして、飛び出していった先というのが、コウセイにとっては悪夢でしかなかった忌まわしきエルドギメラが初出現した場所;ウルトラマンオメガが敗北を喫することになった【NDF】の野営地跡であり、
そこはすでに【NDF】が引き払った後でも怪獣の攻撃を受けた痕がはっきりと残されており、立ち入り禁止区域となっていた場所で何をするでもなく、星見 コウセイはただ立ち尽くしていた。
すると、人気のない立ち入り禁止区域でコウセイに声を掛ける者がサングラスも掛けて現れたのだった――――――。
百合園 セイア「おい、そこのきみ。ここは立ち入り禁止区域なんだがね」
星見 コウセイ「え、あ、はい。すみません……」
百合園 セイア「なるほど、きみが……」
星見 コウセイ「あ、あの……、あなたは――――――?」
美甘 ネル「おい、セイア! 一人で運ばせるなよな! 護衛のあたしの両手が塞がっていたら、お前のことを守れねえだろうが!」
星見 コウセイ「もしかして調査チームの人ですか?」
百合園 セイア「ああ、そうだ」
百合園 セイア「ちょうどいい。暇しているんだったら、手伝ってくれないか」
百合園 セイア「さあ、彼女から荷物を受け取って、私の後をついてきてくれ」
星見 コウセイ「あ、はい……」
星見 コウセイ「それじゃあ、持ちますよ、それ」
美甘 ネル「じゃあ、頼んだ」
星見 コウセイ「お、重ッ!?」
美甘 ネル「悪いな。あたしはこいつの護衛でな。あたしが使うのは二丁のサブマシンガンだから、助かったぜ、にいちゃん」
美甘 ネル「ついでだから、にいちゃんのことも守ってやるよ。何か出てきたら、あたしが何とかしてやるからよ。安心しな」
星見 コウセイ「そ、それはどうも……」
百合園 セイア「よし、この辺りでいいだろう」
百合園 セイア「シートを敷いて荷物の中身を取り出してくれ」
百合園 セイア「それじゃあ、気になるものがあったら採取してくれたまえ。手袋もある」
星見 コウセイ「これってつまり――――――」
美甘 ネル「ああ。あの怪獣:エルドギメラとかいうやつの細胞片を探しに来たってわけだ」
百合園 セイア「ついでに、あの巨人:ウルトラマンオメガの細胞片も見つかったらおもしろいが、これまでまったく見つからなかったのは光の粒子で身体が構成されていたからだと考えると、こっちは望み薄だろうけどね」
美甘 ネル「けど、【NDF】が撤収する前にグライムが捕食された辺りとか、エルドギメラが出てきた辺りとか、いろいろ調べ回って十分に試料は集めただろう?」
百合園 セイア「いや、まだエルドギメラを倒す決定的なものが見つけられていないんでね」
百合園 セイア「だから、私だけで探しに来たわけさ」
美甘 ネル「いや、そのためにあたしまで駆り出されているんだけど……」
美甘 ネル「山狩するなら【
百合園 セイア「いや、曲がりなりにも私が【
星見 コウセイ「………………」
美甘 ネル「まあ、聞いた通り、そういうことだから」
美甘 ネル「にいちゃんも 事情は知らないが 居ても立っても居られないから、ここに来たんだろう?」
美甘 ネル「だったら、せっかく足を使ったんだから、ボーッとしないで手も動かそうぜ」
星見 コウセイ「あ、ああ……」
百合園 セイア「そう言えば、きみ、護身用の銃は持っているのか?」
星見 コウセイ「あ、それは――――――」
百合園 セイア「なら、あれを渡してやれ」
美甘 ネル「ほらよ」
星見 コウセイ「こ、こいつは?」
美甘 ネル「“シャーレの先生”は知っているだろう? その“シャーレの先生”が携行している護身用の銃だよ。にいちゃんみたいなド素人でも扱えるようなやつだ」
美甘 ネル「安心しろ、そいつは<ソニッター>っていう音波威嚇装置だから、殺傷能力はない。あたしたちからすれば玩具みたいなもんさ」
美甘 ネル「ついでに何かあった時のための防犯ブザーも渡してやるから。あたしもにいちゃんのことは見ているけど、あんまり遠くまで行くなよ」
星見 コウセイ「わ、わかった」
こうして星見 コウセイは【NDF】が撤収した後の立ち入り禁止区域で百合園 セイアと美甘 ネルと共にエルドギメラの細胞片を探し回ることとなった。
もちろん、【NDF】が撤収する前にエルドギメラが去ったところに調査班が送り込まれて試料が集められてはいたものの、もっと決定的なものがないかと 専門的な研究知識があるわけではないために 手持ち無沙汰で居ても立っても居られなかった百合園 セイアの熱意で個人的に行われているものだった。
それにつきあわされることになったのが制服姿の【C&C】美甘 ネルであったが、こういった試料採取には絶対に向かないだろう萌え袖を外して【ティーパーティー】元ホストである百合園 セイアが自ら汗水流して怪獣退治に貢献しようと言うのだから、それを手伝わないわけにはいかなかった。
一方で、巷では知る人ぞ知る ちょっとした有名人になっている 地球人:星見 コウセイは思い詰めて生気を失った表情だったのだが、試料採取をやり始めていくうちに調子が乗ってきたのか、先程までの死んだような表情に再び生気が宿ってきた。
美甘 ネル「だいぶ集まったなぁ」
星見 コウセイ「でも、これで本当に怪獣を倒す手掛かりが掴めるのかな?」
百合園 セイア「さあね。でも、やれるだけのことをやっておかないと、後悔するだけだからねぇ」
星見 コウセイ「――――――『後悔』」
美甘 ネル「おっと、ちょっと見ない間に よく見たら 死人みたいな顔つきじゃなくなってんな」
星見 コウセイ「へ」
美甘 ネル「最初、完全に目が死んでいたぜ、にいちゃん。言うなれば、ゾンビボーイだったんだぜ、あんた」
星見 コウセイ「ゾンビボーイって……」
星見 コウセイ「でも、俺、ここで大きな失敗をして みんなにも ソラトにも迷惑をかけて……」
星見 コウセイ「俺、何のために必死に駆けずり回って頑張ってきたのか……」
星見 コウセイ「やりたかったことって何だったのか、わからなくなってきたって言うか……」
美甘 ネル「……そうかい」
百合園 セイア「……なるほどね」
百合園 セイア「私もね、きみみたいに大きな失敗をして たくさんの人たちに迷惑をかけて 事態を最悪の方向へと向かわせてしまったから、言わんとしたいことはわかるよ」
百合園 セイア「だとしても、それでずっと立ち止まっていたら、ずっとそのままだろう?」
美甘 ネル「そうだな。
美甘 ネル「でも、今の世の中、表に出なくてもドローンとかロボットを使ってやりたいことをやれるから、最近までは人目を避けながらも自分がやるべきことからは逃げずに一人でずっと頑張っていたぜ」
星見 コウセイ「そうだったんですか……」
百合園 セイア「言っただろう。本当なら失敗の責任をとって退学でもして ひとり孤独に部屋の中で隠れて暮らしていたいと思っていた私だったが、これが私のやりたいことだから、恥を忍んで私にできる範囲で精一杯やってみせているのさ」
星見 コウセイ「やりたいこと……、やるべきこと……」
星見 コウセイ「ソラト……」
百合園 セイア「まあ、だから、きみも同じだと思う」
百合園 セイア「なぜきみがそれをやりたいと思ったのか、大事なのはそこじゃないかい?」
美甘 ネル「ああ。道に迷ったら来た道を引き返すのが山登りで遭難防止の鉄則だぜ」
星見 コウセイ「たしかに。俺、山小屋でバイトしていた経験があるから――――――」
星見 コウセイ「ああ、そういうことだったのか」
星見 コウセイ「だから、俺は……」
百合園 セイア「どうやら答えが見つかったようだね」
美甘 ネル「そいつはよかったぜ、にいちゃん。はっきり言って、何の収穫もないと思ってダメ元で来てみたけど、少しは良いことをしてあげられて気分がいいな」
百合園 セイア「そうだね。正直に言って、これで進展が得られるとは思ってはいないけど――――――」
星見 コウセイ「?」
星見 コウセイ「なあ、あれって――――――?」
百合園 セイア「………なんだい?」
星見 コウセイ「あ、あれ!」
美甘 ネル「何か見つかったか――――――」
星見 コウセイ「あれって――――――!」
百合園 セイア「まさか――――――!」
美甘 ネル「おいおい、マジかよ」
――――――あんなにはっきりと木の幹にこびりついた怪獣の肉片を見つけるとか、にいちゃん、やるな!
アユム先生「これは素晴らしい収穫よ、セイア! ネル! 大収穫ね! 大手柄!」
調月 リオ「ええ。細胞片どころじゃない、怪獣の肉片と呼ぶべき巨大な試料だわ。培養実験に失敗して実験に適した試料の確保ができていなかったから、これでエルドギメラの研究が進められる」
アユム先生「これをコウセイくんが見つけてくれたんだ。エルドギメラの討伐が済んだら、報酬を弾んであげないとね」
調月 リオ「早速、分析にかけましょう、先生」
アユム先生「うん。まずは【NDF】で検討されている攻撃方法に基づいたアプローチと、グライムを捕食・吸収したことによる性質の比較実験ね」
アユム先生「すでにリオの方でエルドギメラの体組織を構成しているギメラ細胞の基本的性質は判明しているから、」
アユム先生「そこに怪獣生物学と地球における怪獣退治の知見を組み合わせて、だいたいの作戦プランは事前に提示できているから、」
アユム先生「この肉片を試料にして実現性の高い作戦の準備を【NDF】にしてもらいましょうか」
アユム先生「これで何とかできなかったら 怪獣災害の専門家の名を返上しないとだから、【怪獣防災科学調査所 SKIP】の真価が試されるというわけで 腕が鳴るよ!」
調月 リオ「先生、エルドギメラが現れました!」
アユム先生「こういう時のためにオメガが最初に倒したグライムの遺骸を元に作った合成肉で時間を稼いで! 絶対に市街地に向かわせてはダメ!」
アユム先生「大丈夫。やつは暴食の化身。鼻先に餌をぶら下げられたら、絶対に食いつく」
調月 リオ「いえ、エルドギメラだけではありません!」
調月 リオ「予想される進路上にドグリドが姿を現しました!」
アユム先生「やはり、ここ最近の怪獣の出現はエルドギメラから逃れるため……」
調月 リオ「先生、対応は?」
アユム先生「捕食すれば満足して地中に帰っていくわけだけど、今度はドグリドの毒液を噴出する毒腺器官を再現するわけだから、ますます放置できなくなるか……」
アユム先生「じゃあ、【SKIP】キヴォトス分所 所長としての指示としては、エルドギメラとドグリドを鉢合わせてエルドギメラにドグリドを捕食させて、満足したら地中に帰っていくのを見送ること」
アユム先生「わかった?」
調月 リオ「……ウルトラマンオメガが敗れ、人類側に対抗手段が確立されていない以上、現状は『怪獣同士を戦わせて数を減らす』というわけですね。たしかに、それが合理的な判断です」
調月 リオ「ドグリドの毒液の対策も進めませておきます。中和剤の散布が必要ですね」
アユム先生「うん。とにかく今は耐える時」
――――――そして、キヴォトスで初めての防衛チーム【NDF:National Defence Force】が掲げるのは『試行錯誤』と『臥薪嘗胆』なり! 最後に笑うのは私たちよ!
こうして爆進細胞怪獣:エルドギメラは熱線怪獣:グライムのみならず水棲毒獣:ドグリドをも捕食・吸収して、右肩を突き破るようにグライムの熱線を発射する角とトゲに続けて、左肩から霧状の毒液を噴出する毒腺器官が出現し、より攻撃力が増した凶悪な形態へと変貌を遂げたのである。
特に、畑や森を枯らしてしまう害獣:ドグリドの毒ガスを撒き散らす能力を得た以上、エルドギメラが通った場所はあらゆる生命が死に絶える死屍累々と化すため、何が何でも倒さなくてはならない敵となった。
そして、星見 コウセイが発見してくれた極めて良質なエルドギメラの肉片の試料で様々なアプローチをかけたことにより、それまでに“ビッグシスター”調月 リオがエルドギメラが出現したその日に採取できた細胞片からギメラ細胞の基本的性質を調べ上げていたことで、急ピッチでエルドギメラ対策の準備が整ったのである。
爆進細胞怪獣:エルドギメラは 捕食した怪獣の遺伝情報ごと その特性を会得・再現して増殖する性質を持つ特殊な細胞:ギメラ細胞を体内に保有しており、怪獣を喰らうたびに捕食対象の特性に対応した形態や能力が付加されていくのは知っての通り。
しかし、ここで肝となるのが『特性を会得・再現』する部分であり、実はグライムを捕食したことによって、グライムを捕獲するために使用していた麻酔薬がそのまま有効になっており、即効性には期待できないために油断は禁物ではあるものの、これでエルドギメラの動きを鈍らせることは可能だと判明した。
そして、エルドギメラの強さの根幹となるギメラ細胞だが、ウルトラマンオメガを捕食しようとはしなかったように、どんな生物でも捕食・吸収できるわけではないという仮説から、捕食・吸収して自身を成長させるエネルギーに変換して受け止められる容量には必ず限界があると予測して、調月 リオは細胞片で耐久試験を繰り返していたのだった。
そのため、細胞片でその仮説が正しかったことは証明できたものの、『実物となる50mを超える怪獣の分厚い肉の塊に対してはどうなのか』という確証まで得られなかったので、そこで星見 コウセイが見つけてきた 細胞片とは比べ物にならない 良質で巨大な質量の肉片がもたらされたことでギメラ細胞の限界値を割り出すことに成功したのである。
そう、どんなものにも限界というものがあり、容量を超える程のエネルギーの供給を受け続ければ 空気を入れすぎた風船が破裂するように さしものギメラ細胞も耐えられずに自壊してしまうというわけである。
そのため、外部からの攻撃はグライムを圧倒し ドグリドの毒液すら効かないため、逆に内側から攻めることにし、防衛チーム【NDF】はエルドギメラ本体に大量の電気エネルギーを送り込んで細胞増殖を過度に促進させて自滅させる作戦を立案したのであった。
そうして全ての準備が整った頃、エルドギメラが市街地近くに出現したことを受けて【NDF】は緊急出動することになり、怪獣の合成肉を吊るしたドローンで強烈な食欲に支配されてよだれを垂らしながら突っ込んでくるエルドギメラを作戦区域まで誘導すると、
グライム用に調整された麻酔薬が装填されたミサイル攻撃が始まった;偶然の産物でしかないのだが、グライム捕獲作戦をメテオカイジュウが妨害したことによってミサイルの第二波を発射することができなかったことでミサイルを温存できていたのだ。
そして、何でもかんでも再現しすぎるのも考えものということで、グライムの性質を引き継いだエルドギメラは麻酔ガスの効果で動きが目論見通りに鈍くなった。
そこにすかさず対怪獣アンカーを腹部に打ち込まれ、大量の電気エネルギーを流し込まれ、細胞増殖を過度に促進させてギメラ細胞の自壊が始まった。怪獣生物学に限らず、基本的に腹部というのは生物の弱点であるため、真正面からアンカーを打ち込むのがもっとも成功率が高かったのである。
しかし、理想としては完全に包囲して四方八方からアンカーを打ち込むべきだったのだが、急ピッチで用意できた対怪獣アンカーは2本だけで、刺さったアンカーが1本だけだったことで決定打にならず、
さすがは怪力自慢のメテオカイジュウ:トライガロンを真正面から弾き飛ばす強靭さでアンカーを体内から排出し、鼻先で餌を吊らされて食欲を刺激された上で生命の危機に晒されたエルドギメラの怒りの反撃で【NDF】目掛けて熱線を乱射して現場は壊滅の危機に陥る――――――。
だが、こんな窮地であっても“シャーレの先生”にして“SKIPのおねえさん”である地球人:石堂 アユムは勝利を確信していた。
そう、我らがヒーロー:ウルトラマンオメガは駆けつけてくれたのだ。
前回の戦いは開幕から不調の様子だったが、今度は変身直後に自身を貫いた強化されたグライムの熱線を払い除けて【NDF】を身を挺して守り通し、そのままエルドギメラに飛び込んでいったのである。
しかし、グライムとドグリドを吸収して強化されたエルドギメラは真正面から戦っては絶対に勝てない相手だった。
ウルトラマンオメガには必殺技:レティクリュート光線があるが、今回のエルドギメラ相手だと完全に分が悪く、せっかくの【NDF】も並みの怪獣では刃が立たない強さのエルドギメラに対しては通常兵器による攻撃は効かないのがわかっているだけに、ただ見ているだけしかできなくて歯痒い思いでいっぱいだった。
だからこそ、石堂 アユムには次の展開が読めていた。勝利の方程式はすでにできあがっていたのである。
ついにメテオカイジュウ:レキネスが駆けつけ、その念動力でエルドギメラ対策の対怪獣アンカー2本を浮かび上がらせると、エルドギメラに勢いよく突き刺したのである。
それを見た石堂 アユムはすぐさま【NDF】隊長:太平 ナダカの方を向いて無言で首を振ると、すぐに意図を理解したナダカ隊長がアンカーに電力を再供給させて当初の作戦であるギメラ細胞自壊作戦を再開させたのである。
更に、ウルトラマンオメガもギメラ細胞を死滅させるほどの電力が供給されているアンカー2本を直接掴んで必死に抵抗するエルドギメラの体内に押し込んだことで、体組織であるギメラ細胞の大半が死滅。
結果、強化形態を維持できずにグライム吸収前の元の姿にまで弱体化し、そこにすかさず【山海経】で大人気の
最後は上空からのレキネスカリバーの猛攻:レキネスカリバーコンティニュアスによって滅多斬りにされたエルドギメラはついに爆散したのである。
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
太平 ナダカ「や、やりました! やりましたよ、先生!」
アユム先生「みんな、よくやってくれたね!」
アユム先生「本当は怖かったよね。逃げ出したかったよね。絶望しかけていたよね」
アユム先生「それでも、使命を全うしてくれた」
アユム先生「貴方たちの熱意に敬意を表する」
太平 ナダカ「はっ!」
アユム先生「じゃあ、あとはお願いね。ギメラ細胞は必ず一片も残さず地上から抹消して」
アユム先生「それが終わったら、祝勝会でパーッと打ち上げをしようね!」
太平 ナダカ「はい! 必ずや!」
アユム先生「よろしい」
スタスタスタ・・・・・・
アユム先生「やあ、コウセイくん」
星見 コウセイ「あ、アユ姉……」
アユム先生「ネル、バッチリ撮れた?」
美甘 ネル「ああ。こいつがあの怪獣を操っていたっていう証拠映像はな」
アユム先生「じゃあ、コウセイくんを解放してあげて」
美甘 ネル「はあ?」
星見 コウセイ「あ、アユ姉……」
アユム先生「行って。待たせている人がいるでしょう」
アユム先生「話は後で聞かせてもらうから」
アユム先生「私、【SKIP】キヴォトス分所 所長。あなた、【SKIP】特別調査委員待遇というわけで、私の部下だからね」
美甘 ネル「わかったよ、先生。ほら、にいちゃん」パッ
星見 コウセイ「すまない、アユ姉! あとで本当のことは必ず話すから!」
タッタッタッタッタ・・・!
美甘 ネル「ちょっと前の
アユム先生「そうだね。リオも変わったよ」
アユム先生「でも、感謝しているんだ、二人には」
アユム先生「でないと、おもしろくないもん。世界に一人や二人、人々の平和な暮らしを守るために立ち上がってくれるヒーローがいないと」
美甘 ネル「まあな。でも、あたしからすれば、先生がいてくれたおかげで 世の中がどんどんおもしろくなっているように感じるぜ」
美甘 ネル「これで怪獣博士と怪獣使いが正式に【
アユム先生「まあ、そのことを話すのはまだ先だけれど、今回の一件でウルトラマンオメガが人類の味方であるという認識は広まっていくだろうから――――――、」
アユム先生「これでどんどんウルトラ沼にはまるウル活女子が増えていくよ~!」グフフフ・・・
アユム先生「今から宣伝動画を編集するのが楽しみ~! 最高にいい画が撮れたことだしね~!」
美甘 ネル「やっぱ、大物だよ、先生は。【NDF】の連中からすれば、二度もエルドギメラの攻撃を受けて死にそうになったってのに、同じ現場にいた先生はまったく動じることなく的確な指示を出し続けて、【NDF】の初白星へと導いたわけだからな」
美甘 ネル「ともかく、一度はオメガを倒した最強の怪獣を力を合わせて倒すことができたんだ」
美甘 ネル「これで【NDF】の存在価値もアピールできたわけだから、これからますます忙しくなるってわけだな」
美甘 ネル「なあ、リオ?」
俺、理由を履き違えてた。
お前と一緒に上手くやれて、
嬉しかったり、
感謝されるのが 気分 良かったり、
いつの間にか、そっちばっかりに気がいっちゃってさ。
でも、思い出した。
俺、本当はみんなを守りたかったんだ。
フフッ。
なんだよ?
いや。
フフフッ。
やっぱり、コウセイは“優しい”だなぁって。
え?
そういうお前だから、俺には必要なんだ。
フフッ。
…………うぅ。
…………泣いてる?
泣いてねぇよ!
いや、泣いてるよねぇ?
泣いてねぇって!
ハハハ……。
アユム先生「ねえ、リオ?」
調月 リオ「何ですか、先生?」
アユム先生「リオと初めて会った時、私があなたのことを大人のおねえさんだと思っていたことは知っているよね?」
調月 リオ「ええ、まあ。自分でも周りより大人びた外見をしていることは自覚していましたけど、私が生徒であったことに先生がひどく驚いていましたから、よく憶えています」
アユム先生「そうだよ。『学校そのものが社会そのもの』ということで生徒たちが頑張って政治をやっている学園都市:キヴォトスでしっかりと生徒たちを管理している大人の人なんだって最初はそう思っていたからね」
アユム先生「私、リオのことを初めて見た時からずっとデートに誘うためにいろいろ考えていたわけなんだから、その時間と労力を返してもらいたいなぁ」
調月 リオ「え、アユム先生?」ピタッ
アユム先生「あーあ、リオが生徒じゃなかったら、学園都市:キヴォトスの今後のことをいろいろと話し合うためにも、
アユム先生「リンちゃんと言い、カンナと言い、なんでその歳と見た目で苦労人ポジションが板についているんだろうね、この学園都市」
アユム先生「おかげで、今だと一番の候補がアカリになっちゃうし、そしたらK-DAYも来ちゃうし、色恋を楽しむのはまたしてもお預けみたい……」
調月 リオ「せ、先生は、私のことが、その…………」
アユム先生「うん。いい感じの大人の女性だと思ってプライベートでも仕事でもパートナーになってくれる相手を求めてお近づきになったら、リンちゃんもカンナもあの見た目や役職で大人じゃなくて生徒だったせいで、私、何度も失恋しちゃって」
アユム先生「次に目の前に現れた大人っぽい女性がリオだったから、これは今度こそアタリだって思って 何も知らなかったら あの手この手で あなたのことを全力で口説き落として、今頃 百合漫画みたいな素敵な恋愛をリオとしていたはずだよ」
アユム先生「聞いたところによると、『キヴォトスでは
アユム先生「だから、今度こそ
調月 リオ「あ、あの、えっと、ごめんなさい。こんな私だから、そういったことには疎くて……」
調月 リオ「でも、先生のその気持ちがとても嬉しい。嬉しいと思っている……」
アユム先生「じゃあ、ハグしていい? その大人顔負けの立派な身体を全身で味わってもいい?」
調月 リオ「せ、先生になら――――――」
アユム先生「あ、冗談よ、冗談」
調月 リオ「え」
アユム先生「たぶん、そこから先の抑えが効かなくなるし、リオはそういったことには詳しくなくて一緒に楽しめないだろうし」
アユム先生「だからね、私は“近所のおねえさん”として子供たちを可愛がってあげるから、」
アユム先生「さあ、リオ。私の胸に飛び込んできて。そうしたらナデナデしてあげるからね」
アユム先生「おいで、リオ」
調月 リオ「そ、それじゃあ、先生、し、失礼――――――」
調月 リオ「あ」グイッ
アユム先生「ああ、リオ。あなたはなんて愛らしい子なの。“ビッグシスター”って『おっきな妹』って意味だったのね」
アユム先生「やっぱりね。これ、悪趣味だと人は思うけれど――――――、」
アユム先生「人前では立派に立居振舞っている子のね、内面に触れた時のかわいらしい一面を目の当たりにした時の
アユム先生「今のリオはただの可愛い女の子なのよ。それも、大人と見間違えるほどに完成された色っぽい外見。それがたまらない
調月 リオ「そう……」
アユム先生「だからね、私の可愛いリオ! リオちゃん?」
――――――早速 宛てがわれた研究所のデスクをゴミで埋め尽くすのはやめて! お願いだから!
アユム先生「教えたよね!? クリアデスク! 5S:整理・整頓・清掃・清潔・躾けぇ!」
アユム先生「ここはあなただけが利用する研究所じゃないの! 書類を保管するんだってデータ保存してシュレッダー! ゴミはゴミ箱に分類してちゃんと捨ててよ!」
アユム先生「じゃなかったら、罰として清掃当番に任命して、調月 リオの貴重な時間を社会奉仕に充てちゃうからね!?」
アユム先生「わかる? 個人の充足から合理性を追求しても、それが社会や組織、団体などの集団生活における合理性に当てはまらない場合は、どちらを優先することが合理的判断かぐらい理解できるよね?」
調月 リオ「ごめんなさい、先生。どうしても上手くいかなくて」
アユム先生「うんうん。頑張っているリオは偉いよ。だから、これからもしっかりと5Sができるように継続していこうね」
アユム先生「そうしたらリオの居る空間が油物の臭いで満たされるだなんてことにはもうならないし、今までゴミ袋で満たされている空間も有効活用できるようになるから」
アユム先生「だから、これは経過報告であると同時に頑張っているリオへのご褒美でもあるし、リオの時間を奪う罰でもあるんだから」
アユム先生「でも、本当にリオは良い臭いがするし、髪の艶も出ているし、顔も整っていて肌もスベスベ」
アユム先生「まさに美の極致。何もしなくても、不健康な生活を送っていようと、精神的に追い込まれていた時期があっても、こんなにも綺麗でいられるんだから、リオは本当に美の女神の化身ね。ユウカやノアが嫉妬するわけね」
調月 リオ「先生、もっと、お願い……」
アユム先生「うん。いいよ」
アユム先生「ホント、見た目通りの年齢じゃないから、社会通念上 私の一番にはなれないけれどもね……」
――――――私、リオのことが大好きで大好きでしかたがないから、何度だって こうしてあげるからね、私の可愛いリオ。