Blue Archive -Document SKIP feat.OMEGA and...-   作:LN58

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追憶3 夢見る少女(石堂 アユム)の冀望 ~生徒に這い寄るゲマトリアの先生~

 

――――――プライベートファンドの総会の前日

 

黒見 セリカ「おはよ~」

 

奥空 アヤネ「おはようございます」

 

十六夜 ノノミ「うんうん☆ セリカちゃんもアヤネちゃんも元気そうで何よりです」

 

奥空 アヤネ「……ノノミ先輩、眠れなかったんですか?」

 

十六夜 ノノミ「……すみません、少しは寝たのですが」フフッ

 

砂狼 シロコ「おはよう」ガラッ

 

黒見 セリカ「シロコ先輩は問題なさそうね」

 

砂狼 シロコ「ん?」

 

黒見 セリカ「元気そうで良かったってだけ」

 

黒見 セリカ「それで、ホシノ先輩は?」

 

砂狼 シロコ「まだ連絡は来てない。でも、『来る』って言ってたから」

 

十六夜 ノノミ「ところで、先生は……?」

 

奥空 アヤネ「先生のことですから、きっと何か調べているんだと思います」

 

黒見 セリカ「……まさか、夕方頃にふらふら来るつもりじゃないわよね?」

 

奥空 アヤネ「明日は総会当日、あまり遅くなると準備が……」

 

 

 

アロナ「むにゃ……んん、ふひひ……」

 

プラナ「……先輩、アロナ先輩」

 

アロナ「ふあぁ……プラナちゃん? どうかしました……?」

 

アロナ「のあっ、もう朝ですか!? 先生を起こしてあげないと……!」

 

プラナ「問題ありません。先生は朝までずっと起きていました」

 

アロナ「なら、良かっ――――――、」

 

アロナ「いえ、また【アビドス】の問題で徹夜だなんて、良いことではないんですけど……」

 

プラナ「それは確かに……」

 

プラナ「ところで、アロナ先輩」

 

プラナ「本日、工事の予定なんてあったでしょうか?」

 

アロナ「工事? いえ、無いはずですが……?」

 

アロナ「ほら、ちゃんとスケジュール表に【シャーレ・オフィス】の工事や点検の予定は入ってません。ましてや、こんな朝早くからだなんて」

 

プラナ「そうですか」

 

プラナ「……ガスの配管システムに異常が検知されました」

 

アロナ「……え?」

 

プラナ「混乱。初めて見る現象です……」

 

プラナ「ガスの配管が変わっています。まるで何者かが強制的に介入しているような……、捻れて、歪んでいて、不快な……」

 

アロナ「……ま、待ってください!」

 

プラナ「――――――ッ!」

 

 

――――――先生ッ!

 

 

 

 

 

チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 

 

 

あ、ああ……、ああ…………。

 

アロナ……、データのバックアップを…………。

 

ホ……シノ………………。

 

 

――――――突然の爆発にアユム先生の薄れゆく意識は小さな身体にあまりにも重たすぎる十字架を背負わされた一人の女の子の背姿を最後に映した。

 

 

それでも手放さなかったもの。

 

 

 

 

――――――ただいま、みんな。

 

 

もう! バカバカ! 先生のバカ! どうして私なんかのためにこんな無茶をしたのさ!?

 

先生、自分の身さえ守れないぐらいひ弱で、何かの拍子ですぐに記憶を失くすし、よく吐くし、お手伝いさんがいないと生活もまともにできないくせに、コーヒーの味にはうるさいのに…………!

 

本当にどうして……? どうして私なんかのためにそこまで命を張ってくれたの……?

 

 

――――――『そこにカッコよくて強い 小さくてカワイイ 好きな女の子がいるから』?

 

 

う、うへー。相変わらずだね、先生って……。おじさんのこと、好きすぎだよぉ……。

 

でも、良い年をした大人が やることを終えたら 初対面の女の子と本当に一緒にお昼寝してたわけだし、先生が私の想像の斜め上をいく()()()()なのはよくわかってた……。

 

そうだよねぇ。先生って【連邦生徒会】に顧問として迎えられた“シャーレの先生”だけど、その実態は自由業に近いから、支援要請を受けて支援物資を届けたら さっさと帰っても良かったのに、そのまま【アビドス】に残って“怪獣の調査”なんてやりだす人だった……。

 

もう見てられなかったよ、ホント。【アビドス】に屯している不良たちにかまわず声をかけて、それで身包みを剥がされそうになることが何度あったと思うの。不用心にも程があるよ。

 

しかも、所構わず吐いて辺りを汚しているのに 当の本人は記憶が飛ぶせいで 何度も同じ不良たちに声をかけようとして、結果的に不良たちをしつこく追い掛け回して 気持ち悪がった不良たちが次々と【アビドス】から離れていくことになって結果オーライ?

 

 

――――――そう。先生は本当にユメ先輩にそっくりで、だから放っておけなかったんだ。

 

 

先生はユメ先輩みたいに“怪獣(KAIJU)”だなんて夢みたいなことに一生懸命で、そうやってしっかりとメモを取る人だった。まあ、ユメ先輩はうっかり屋なだけだったから、何かあると記憶が飛んじゃう先生と比べたらくだらない動機かもしれないけど。

 

でも、先生もユメ先輩も 何度も騙されて、何度も無視されて、何度も痛い目に遭ったのに、どうして そんなに明るいままでいられるのですか?

 

私、先生と一緒にいたらユメ先輩のことをもっとわかるような気がして――――――。

 

 

へえ~、すごい。こんなところ 初めて。

 

あれ見て! お魚だ! あははは、カワイイ!

 

……私一人こんなに楽しんでていいのかな?

 

――――――『余計な心配』だって?

 

……そうかな、先生?

 

 

うへ~! 先生、今から一緒にお昼寝しようね~! 

 

え!? 本当に今からお昼寝するの? だって、これから午後の業務で、私は当番で――――――?

 

へ、へえー、積極的仮眠(パワーナップ)で業務効率を上げることができるんだ……。*1

 

そうなんだ。私が普段からやっていたことにそんな効果があっただなんて……。

 

じゃあ、これから仮眠室だよね? それなら早く行こうよ、先生!

 

え、ちがう? うへー、パワーナップ専用椅子(フットレスト付きリクライニングチェア)なんてあるの? それで日当たりがいい場所で? それ、いいね!

 

えと、椅子はひとつだけ? そっか、さすがにそれはね――――――、え、先生の膝の上に私が乗るの? それでそのままお昼寝?!

 

そ、それじゃあ、お、お邪魔します、先生……。

 

お、重くない、先生? そ、そう? 

 

あ、お昼寝用のブランケットなんてのもあるんだ。触り心地がいいね、これ。

 

ふわぁ~、こうしてオフィスビルの窓辺で陽気にウトウトしながら先生に抱きかかえられて眠るのは最高のお昼寝になりそう……。

 

それじゃあ、おやすみなさい、先生……。

 

 

いやぁ、たまんないねぇ……。

 

これぞまさに楽園……。

 

涼しい日陰……。

 

心地良い海風……。

 

穏やかな波の音……。

 

いやぁ、ここに来られてよかった~。

 

最高だねぇ、まるで夢みたいな場所だー。

 

 

そっか。本当に先生の生まれ故郷:地球には山のように大きい怪獣とウルトラマンがいたわけなんだね~。

 

それで、先生は“SKIPのおねえさん”としてキヴォトスに“怪獣”が存在しないかを調査していて、災害の化身からみんなを守る“私のウルトラマン”を探し求めていたわけなんだ。

 

だからって、私がヒーローだなんて、そんな大袈裟だよ~。まるで“ウルトラマン”みたいだなんて。

 

でも、先生が“相棒役”を買って出てくれるのなら、合わせるけどさぁ。

 

それじゃあ、ヒーローと相棒の夜明けのコーヒーを二人で飲もう。

 

ああ、本当に先生の淹れるコーヒーはいつ飲んでも美味しいねぇ。これぞ“こだわりのコーヒー”ってやつだね。

 

 

――――――『コーヒーと恋愛は熱い時が最高』って!? え、ええ!?

 

 

もう、おじさんのことを誂わないでよ。びっくりしたよ、本当に。

 

そうやって、いつも“近所のおねえさん”ぶって女の子の気持ちを弄ぶのは辞めた方がいいよ。

 

知ってるよ。先生が【アビドス】以外の女の子とたくさん夜明かししていることぐらい。

 

別に、怒ってない。私には【アビドス】を守る使命があるから先生の常に一緒に居られないせいなんだよね。

 

でも、私たちはヒーローと相棒なんだよね?

 

なら、【アビドス】に居る間は先生は 絶対 私の側に居て。相棒なんだから。

 

万が一、先生が危険な目に遭ったら、その時は――――――、いや、そんなことはさせない。

 

 

――――――今度こそ、私は守るんだ。大切な人のことを。

 

 

 

 

 

 

 

アユム先生「あ、あれぇ?」

 

アユム先生「私、何しようとしてたんだっけ……?」

 

アユム先生「いや、何をしていたんだっけっか……?」

 

アユム先生「ここ、どこぉ? ねえ、カヨコぉ? おうちじゃない?」

 

アユム先生「えと、ロッピー? ガロンちゃん?」

 

アユム先生「じゃあ、アロナ? えっと、アロナ? アロナぁ?」

 

アユム先生「うんと、【シッテムの箱】、どこに置いたっけ?」

 

 

黒服「お目覚めですか、先生」

 

 

アユム先生「あ、黒服くんだぁ」

 

黒服「よかった。無事で。あなたに万が一のことがあれば……」

 

アユム先生「……何があったの?」

 

黒服「まずは目覚めのコーヒーをどうぞ。それで【シッテムの箱】で状況を確認してください」

 

アユム先生「ありがとう。生き返る」

 

アユム先生「ああ。やっぱり、一日の始めにはコーヒーが必要不可欠」ゴクッ

 

アユム先生「で、私は黒服くんに助けられたんだ?」

 

黒服「はい。早朝、【シャーレ・オフィス】が 突如 ガス爆発したのです」

 

アユム先生「それ、おかしくない? 【カイザー】に【シャーレ・オフィス】が占拠された後、ブービートラップがないか、念入りに調べたんだよ?」

 

黒服「ええ。実におかしなことです。ガス爆発も先生が業務をしているメインオフィスだけを吹き飛ばすようになっていたのです」

 

アユム先生「それって『ビル自体は倒壊してない』ってこと? 朝方、突如として『メインオフィスにだけガスが充満して何かが発火した』ってことになる、それ?」

 

黒服「はい。爆発直後からすでにキヴォトス中でニュースになっていまして、」

 

黒服「先生の安否確認のために生徒たちが押しかけてきて、ふとした弾みで銃撃戦に発展して鎮静化したのが午前中の話です。どうやら、現場検証は【ミレニアム】が担当したようです」

 

アユム先生「じゃあ、いいか。【SKIP キヴォトス分所】が吹っ飛んだわけじゃないのなら、大丈夫」

 

アユム先生「さて、どうしようかな。何から手を付けていけばいいのやら……」

 

 

アユム先生「あ、そうだ。マエストロくんやデカルコマニーくんは? あとは、今はゴルコンダくんじゃなくて フランシスくんなんだっけ? みんな、元気にしてる?」

 

 

黒服「――――――!」

 

黒服「そう言えば、フランシスからの連絡が途絶えていましたね。マエストロはいつも通りですが」

 

黒服「……そう、フランシスは 本来 辿るはずの物語を捻じ曲げて幸福の結末に変えられる先生にあまり好意的ではなかったですね」

 

黒服「なら、フランシスは先生のことを認めてはいない――――――」

 

アユム先生「どうしたの? フランシスくんは?」

 

黒服「ベアトリーチェが犯した失態によって『色彩』がキヴォトスに侵略してきたことで【ゲマトリア】が壊滅し、我々が所持していた『秘儀』と『検証結果』が奪われ、それらが全てキヴォトスを滅ぼすために利用されることになった――――――」

 

黒服「そのため、我々【ゲマトリア】はキヴォトスでの活動が限界に達したことにより解散となりました」

 

アユム先生「いや、私、【ゲマトリア】に加入したよね?」

 

アユム先生「お近づきの印にみんなにネクタイピンをあげたよね? ほら、そのネクタイピン!」

 

黒服「ええ、その通りです。先生こそが我々の探求と研究を受け継ぐ唯一の【ゲマトリア】となったのです」クックック!

 

黒服「ですが、【ゲマトリア】には過去にベアトリーチェと同じように手段と目的を履き違えた輩が他にもおりまして、追放して隔離した者がいるのです」

 

 

――――――その者の名は“地下生活者(Basement dweller)”。

 

 

 

 

……なぜだ?

 

小生の計算が間違っていたのか……?

 

――――――あの一瞬でどこへ消えたのだ、先生は?

 

……なるほど。私の計算以上ですね。

 

あの不可解な奇跡を起こす聖櫃(ARK)は、ジェリコの城壁でさえも崩した兵器だというのに、過小評価していました。

 

ですが、かまいません。攻略法を修正すれば良いだけのこと。

 

 

――――――攻略法その2:肉体には物理的限界がある。

 

 

この前提条件は、崩れていないのですから。

 

最も重要な物語は、先生が関与できない場所で進行されています。

 

目を覚ました頃には、すでに手遅れ。さて、プレイヤーとなったあなたが、どう攻略していくのか見物です。

 

では、ゲームを続けましょう。

 

 

 

 

アユム先生「へえ、そうなんだ」

 

アユム先生「【ゲマトリア】から追放された者“地下生活者”ねぇ。黒服くんがそうであるように『名は体を表す』って言うけれど、何だかねぇ……」

 

アユム先生「ねえ、黒服くん?」

 

黒服「はい、何でしょう、アユム先生?」

 

アユム先生「その人って見た目はどうなの? 黒服くんたちみたいにしっかりとスーツを着こなしてるの? それとも、自分なりのオシャレを磨いている感じ?」

 

黒服「いえ、そんなことは。“地下生活者”が呼び名となっているような者です。外界から隔絶された場所で思索に耽って身形に気を遣わないので、浮浪者然とした格好です」

 

アユム先生「じゃあ、ダメね」

 

アユム先生「学園都市:キヴォトスが成立する以前の旧い時代からずっとそれじゃあねぇ」

 

アユム先生「時代はどんどんどんどん前に進んでいるのに、世間から隔絶された場所で時代に取り残されたことにも気付かないような思索に何の価値があるの?」

 

アユム先生「それだけ時間を掛けておきながら答えを導き出せないようなら、『下手な考え休むに似たり』だから、やり方を変えた方がいいよ、才能ないから。何の進展もないよ」

 

黒服「それはそれは、手厳しい評価ですね」クックック!

 

アユム先生「事実でしょう。黒服くんたちだって『色彩』という厄災をどうにかしたいと思って結果として悪事を行っているけど、贔屓目に見ても人類のためを思ってのことでしょう。それで実際にキヴォトス滅亡の危機を乗り越えるためにアビドス砂漠に埋没していた宇宙戦艦の情報を私たちにもたらしてくれたし」

 

アユム先生「で、その“地下生活者”の思索は『色彩』という厄災に対して何の役に立つの? 完全に蚊帳の外で居ても居なくても同じだったんでしょう?」

 

アユム先生「そんな人が『色彩』という厄災に立ち向かおうという 途方もない目的を掲げて 足掻こうとしている【ゲマトリア】に参加しようとした最初の熱意は誰に向けられていたものなの?」

 

アユム先生「なんか好きになれないね、その“地下生活者”って人」

 

アユム先生「K-DAYが始まってから現れるようになった“災害の化身”とも評される“怪獣(KAIJU)”たちと向き合い続けた私の故郷:地球や、今こうして必死に怪獣災害を乗り越えようと頑張っているキヴォトスのみんなに失礼だよ」

 

アユム先生「はっきり言って邪魔。これから全国規模の本格的な怪獣対策組織の枠組みが始まろうっていうのに、<列車砲>なんてものを引っ張り出してきて何が目的なんだか……」

 

アユム先生「いいよ、受けて立つよ、そのゲーム」

 

アユム先生「賭けるのはどちらが“真のゲマトリア”に相応しいかという新旧対決――――――」

 

アユム先生「進化の現実ってやつを教えてあげますよ、その化石みたいな石頭に」

 

 

 

 

 

伝えなければならないこと。

 

 

 

 

あ、ああっ……何だ、アレは……?

 

――――――“死の神”アヌビス?

 

あ、あんなもの、無理に決まっている。

 

なぜ二つの神聖が同時に? それも、“暁のホルス”に匹敵するほどの存在が……。

 

……なぜ、なぜ、なぜ!

 

なぜだッ――!! こんなチートが許されるのか!?

 

コデックスに反している! ルール違反だろう、こんなの……!

 

 

クソッ、“匿名の行人(フランシス)”は何をしている! あの役立たずが! こんな存在がいるなら先に言えよッ!

 

 

……“セトの憤怒”の顕現が止まってしまった。

 

……これではエンディングにたどりつけない。

 

コデックスに反している!

 

いや、今こそ五つ目の攻略法の出番だ。

 

まさか、ここまで手こずらせてくれるとは……石堂 アユム!

 

 

――――――だが、最後に笑うのは、この小生に決まっているッ!

 

 

黒服「それはどうでしょうね、地下生活者」

 

地下生活者「なっ!? 黒服!?」

 

黒服「あなたもベアトリーチェと同じく先生のことを侮っている」

 

黒服「それよりも、【ゲマトリア】とはキヴォトスにおいては“シャーレの先生”のことを言うのですよ」クックック!

 

地下生活者「ふ、ふざけるな、黒服ぅ!」

 

地下生活者「小生はこのキャンペーンで実現してみせたのだぞ、“セトの憤怒”と“暁のホルス”の激突を! まさに世界創造の戦いを!」

 

地下生活者「代わりに小生が叶えてやったのだぞ、貴様の見たかった光景!」

 

 

――――――世界の滅亡だ!

 

 

黒服「……相変わらず、心得違いをしているようで安心しました。追放したことが間違いではなかったことを再確認しました」

 

地下生活者「な、何をぉ!」

 

黒服「いいでしょう。これから先生があなたが探究している6つ目の古則の答えを見せてくれることでしょう」

 

地下生活者「ふざけたことを言うなぁ! 6つ目の古則『非有の真実は真実であるか』――――――、この不可解な問いに対して、あの神秘と恐怖は答えているのだ!」

 

地下生活者「この世界は滅びる! 他人の苦しみを理解できぬような存在は、元より滅びゆく運命にあったのだ!」

 

黒服「その前によく周りを見てください」

 

 

黒服「――――――そう、<列車砲>は今どうなっていますか?」

 

 

地下生活者「……<列車砲>? あんなのは最初から餌でしかなかったのだから、あれがどうなろうが知ったことか! 世界創造の戦いの前ではただの砂漠の鉄屑に過ぎんッ!」

 

地下生活者「そう、あんなもの――――――」

 

地下生活者「あんなものは――――――」

 

黒服「どうなっていますか?」クックック!

 

地下生活者「れ、<列車砲>がッ!? な、何があったというのだ、あれは!?」

 

黒服「どうやら、“生徒会の谷”の外から大量の投射物で、<列車砲>が雹に打たれた家屋のように見る影もないですね」

 

地下生活者「あ、ありえない! <列車砲>をあんな風にする投石機の類があるのなら、<列車砲>など最初から要らないではないか!」

 

黒服「ええ、そうですね。<列車砲>も砲弾を遠くへ飛ばすためのものであるなら、それと同等かそれ以上の破壊力のあるものを投射することができたら、<列車砲>である必要もないわけですから」

 

地下生活者「え、ええい! どこだ、どこだ!? どこから飛ばしてきた!?」

 

地下生活者「み、見つけたぞ! あそこから<列車砲>を――――――!」

 

 

地下生活者「な、何だ、アレは!? 何だ、あの<列車砲>と比べても見劣りしない巨大生物(レキネス)はッ!? しかも、念動力で浮かせて――――――!?」

 

 

黒服「おや、まだご存じないのですか。あれは“怪獣(KAIJU)”というのですよ。最近 K-DAYを迎えて キヴォトスに出現するようになったものです」

 

地下生活者「――――――か、“怪獣”ぅ!? “怪獣”だとぉおおおお!?」

 

地下生活者「ふ、ふざけるなあああああああああああああああああああ! こんなことが起きてたまるかああああ! こんなファンブルがあってたまるかああああああ! 何だ、このクソみたいなコデックスはあああああ!?」

 

地下生活者「あれ自体が“崇高”の存在として、太古の神秘らが誕生したあの帝国に連なる者たちによって封じられてきたはずではないか!」

 

黒服「そうでしょうね。そのはずでした」

 

黒服「怪獣もしくはそれに類する巨大生物の存在は“テクスチャの更新”によって物語に登場しないようになっていたはずですが、そのルールが大きく書き換えられることになったのですよ」

 

地下生活者「で、では、黒服、このままだと6つ目の古則の答えは――――――?」

 

黒服「ご想像通り、“神秘”も“恐怖”も“怪獣(KAIJU)”が蹂躙して“無”となるでしょうね」

 

黒服「なぜなら、これから人が滅んでも 怪獣たちの世となって 世界が続くことになるのですから」

 

黒服「怪獣たちの世となれば、あなたの追求する"死と苦しみ"の真理が意味をなさなくなる。それは人のためのものでしかないから」

 

地下生活者「あ、あ、あああ……、それでは今までの小生が費やしてきた探究の意味は…………」

 

黒服「ありますよ」

 

地下生活者「黒服ッ!」

 

黒服「――――――それは『あなたにとって』ではなく」

 

地下生活者「ど、どういう意味だ、黒服?」

 

黒服「わからないのなら、元の方を見てみてください」

 

 

――――――このゲーム、先生の勝ちです。

 

 

 

 

 

 

 

あなたの苦しみに気づかなかった……。

 

いろんなことがあって 絆を育んでいって 心は繋がっていると思っていたのに……。

 

その小さな身体の胸の中にある痛みを想像できなかった……。

 

できるなら……! 

 

その痛みを取り去ってあげたい……!

 

苦しみを分かち合いたい!

 

 

――――――私はね、ホシノちゃん、あなたのことを失いたくない! 大好きだから! 相棒としてずっと活躍を見ていたい!

 

 

空崎 ヒナ「せ、先生ッ!」

 

陸八魔 アル「ほ、本当に大丈夫なんでしょうね、あれ!?」

 

阿慈谷 ヒフミ「大丈夫です! ペロロ様を信じてください!」

 

白洲 アズサ「ああ! 今は仲間の絆を、【アビドス】の絆を信じるんだ!」

 

下江 コハル「そうよ! 先生は私たち生徒と一緒にどんな困難にも打ち克って、キヴォトス滅亡の危機だって乗り越えてみせた! これだって、そう! やってやれないはずがないわ!」

 

浦和 ハナコ「耐えてください、みなさん! 勝利の鍵はすでに先生の手の中に……!」

 

鬼方 カヨコ「みんな! <列車砲>の無力化に成功したよ! 上手くいった!」

 

陸八魔 アル「ほ、本当? やったのね、アレを!」

 

浅黄 ムツキ「うんうん! あれだけの威容がもう見る影もないよ! 悪の組織の秘密兵器が見るも無惨!」

 

伊草 ハルカ「アル様! アル様の指示通りに爆弾も仕掛けてきました!」

 

陸八魔 アル「よくやったわ、みんな! これで<列車砲>の脅威は完全に取り除かれたわ!」

 

阿慈谷 ヒフミ「やりましたね、みなさん!」

 

浦和 ハナコ「はい!」

 

白洲 アズサ「よし! このまま反撃に移るぞ!」

 

下江 コハル「やってやるわ! 空が赤くなった時のキヴォトス滅亡の危機と比べたら、何よ!」

 

 

空崎 ヒナ「……あとは完全に【アビドス】の問題ね」

 

 

空崎 ヒナ「先生」

 

空崎 ヒナ「こんなにも頼もしい生徒たちが何の見返りもなく味方してくれるのね」

 

空崎 ヒナ「ううん、『何の見返りもなく』って言うのはちがうわね」

 

空崎 ヒナ「私だって――――――」

 

空崎 ヒナ「だから、私も誰かのために――――――!」

 

 

ホシノはアビドスのヒーローなんだから!

 

 

ヒーローは何度だって立ち上がる!

 

 

私はそれを支える相棒として何度だって言うよ!

 

 

そう、何度だって! ここから立ち上がっていくために!

 

 

想像力を解き放て!

 

 

 

少女はずっと苦しんでいた。誰にも気付かれることのない あまりにも重たすぎる十字架をその小さな身体に背負って 孤独に生きてきた――――――。

 

今回の事件の真相は【ゲマトリア】の新旧対決であり、変わりゆく今を生きる“シャーレの先生”と己の考えに固執して智者を気取る“地下生活者”の最初から勝敗がわかりきった無謀なゲームであった。智者を気取るなら、同時に仁者であって欲しいものだ。智者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。

 

未だにキヴォトス最高の神秘に固執して、そのために周りを操って<列車砲>をめぐる騒乱を巻き起こし、最終的には世界の滅亡を見世物にしようとした愉快犯にはキツいお灸をすえることになるのは確定であった。ダイスなど振らせるものか。

 

少なくとも、K-DAYを迎えて怪獣が現れるようになった御時世で、世界の滅亡なんて 今更 驚くに値しないことであるし、ホシノの神秘が反転して恐怖の存在:ホシノ*テラーと化してしまった時でも心は驚くほど揺らがなかった。

 

 

――――――なぜなら、私たちにはウルトラマンがいるのだから!

 

 

だから、私たちは神秘が反転して恐怖に染まったホシノの心の中に飛び込んでいった。

 

もちろん、他人に言われたからと言って、過去の過ちが変わるわけではない。【アビドス】の仲間たちが思い思いに必死に呼びかけたとしても、人の心というものはそう簡単なものではないことは百も承知。

 

けれども、ユメ先輩の死という変えようがない事実(fact)から得られる真実(truth)はいくらでも変えることができる。生み出すことができる。前に進むきっかけを作り出すことができる。

 

事実は客観的。真実は主観的。その人にとっては、その時によっても、その場所によっても、その状態によっても、事実からどういった真実を導き出すかは その都度 検証してみないとわからないものだ。

 

そう、ユメ先輩を結果的に死に追いやったことは事実かも知れないけれど、ユメ先輩の死に直面した時の心情はまさしく絶望と後悔に満ちていたろうに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を紐解いていけば、ユメ先輩の死からもたらされる真実は一定ではないことが論理的にわかるはずだ。

 

そもそも、ユメ先輩の手帳が見つかったとして、そこに書かれてある内容が 恨まれて当然だからといって 日頃の恨み辛みで満たされていれば それで納得してどうなるのだろう。もしかしたら、そうしたことが書かれていない可能性すらある――――――。

 

 

――――――そう、()()()()()()()()()()()()()のだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()。あとはそれに気付けるかどうかなのだ。

 

 

そこに何が書いてあったら期待通りなのだろう。その期待が外れていたら、そうしたら どうなるのだろう。

 

でも、確かめずにはいられない。答えを求めずにはいられない。それはおっかなびっくりホラー映画を見るのと似たような恐怖体験である。

 

しかし、本当にそれで満足できるのだろうか。他人がこうだと決めたもので納得がいくのだろうか。

 

そんなの、できるはずがない。他人に自分の苦しみがわかるはずがない。わかった気になるな。何も知らないくせいに。

 

じゃあ、ずっとわからないままにならないか、それは。自分でも理解できていない答えがあると信じる日々に終わりは来ないのではないだろうか。

 

なら、前向きになれる真実を導き出そう。気分が暗くなる条件でしか まだ真実を見出していないのなら。

 

そんなの、無理だよ。こんな気持を抱いたままで前向きになれる真実なんて導き出せるはずがない。

 

いや、憶えているはずだよ。忘れているようでも、身体が憶えていることもある。

 

ほら、こんな風に誰かに抱きしめられて愛おしさが込み上げてこないか。温もりが蘇らないかい。優しさに包まれた日々を思い出さないかい。

 

 

――――――そうすれば、重なる。過去と現在。重なって未来となる。

 

 

そのように2つの人影が重なっていく。大切だった人と大切な人が私の小さな身体を力いっぱい抱きしめてくれている。

 

そして、言葉が重なる。意味が同じになる。探していた真実(答え)が時間を越えて1つとなった。

 

どうして こんな私と一緒にいてくれるのだろう。

 

どうして こんな私のことを必要としてくれるのだろう。

 

どうして こんな私のことを嫌いにならないでいてくれるのだろう。

 

どうして こんな私のことをこんなにも愛してくれるのだろう――――――。

 

 

ずっと、ずっと、ずっと、どうして――――――?

 

 

ホシノ*テラー「ちがう。答えなんてどこにもない」

 

アユム先生「…………ホシノ」

 

ホシノ*テラー「探しているだけじゃ見つからない」

 

アユム先生「……ホシノ」

 

ホシノ*テラー「やっと、気づいたんだ……!」

 

アユム先生「ホシノちゃん」

 

ホシノ*テラー「わかりました、アユム先生(ユメ先輩)

 

ホシノ*テラー「二人で過ごした幸せな時間も、一人になってからの時間も、繋いでくれたもの全てを大切にします」

 

ホシノ*テラー「……ちょっぴり意地悪な生徒(後輩)を、アユム先生(ユメ先輩)が大切に思ってくれていたことも」

 

ホシノ*テラー「だから、私はもう立ち止まりません」

 

ホシノ*テラー「進んでいきます」

 

ホシノ*テラー「前に向かって、歩いていきますね」

 

梔子 ユメ(アユム先生)「私ね、梔子 ユメって名前で『夢を語る資格()がない』みたいに言われちゃうけど、いつも大きな夢を見ているんだよ」

アユム先生(梔子 ユメ)「そうだよ、ホシノちゃん。私の名前はアユム()だけれど、想像力があれば夢に向かって走ることができるんだよ」

 

 

――――――走れ、ホシノちゃん! 走るんだ! 夢に向かって! 未来に向かって! 自分が進みたい明日に向かって!

 

 

 

 

 

 

小鳥遊 ホシノ「みんな、大丈夫!?」

 

アユム先生「ホシノちゃん!」

 

シロコ*テラー「……本当に戻れた」

 

小鳥遊 ホシノ「先生! 私、気づいたんだ! 先生と出会ってからの日々の意味を!」

 

小鳥遊 ホシノ「先生は私のことをヒーローと呼んでくれた! 先生はそれを支える相棒なんだ!」

 

小鳥遊 ホシノ「だから!」

 

小鳥遊 ホシノ「もう怖くない!」

 

小鳥遊 ホシノ「私はあなたで、あなたは私なんだ!」

 

小鳥遊 ホシノ「今、初めて先生が言い続けていた『想像力』の大切さを理解できたよ」

 

 

――――――私がいること、それが先輩が生きた証ですから。

 

 

アユム先生「ホシノ!」

 

アユム先生「…………!?」

 

アユム先生「――――――!」ドクン!

 

 

――――――これが想像力か。

 

 

アユム先生「……いいでしょう。これが石堂 アユムが導いた未来。後始末は私がつけます」

 

アユム先生「なら、見せてみなさい、小鳥遊 ホシノ!」

 

アユム先生「キヴォトス最強の神秘と【ゲマトリア】が呼んだ“暁のホルス”の新しい力を!」

 

アユム先生「そのために私が突破口を開く!」

 

アユム先生「解放せよ、天地創造を司る宇宙最強の力!」

 

シロコ*テラー「え、先生? 何、そのキューブは? いつの間に?」

 

アユム先生「これは【ゲマトリア】の持っていた『秘儀』と『検証結果』から創ったんです、シロコ!」

 

 

アユム先生「太陽の力を宿すソリスキューブ!」

 

小鳥遊 ホシノ『……おじさんの力が必要になったら、いつでも言うんだよ? 先生のことは、いつだって最優先だからさ?』

 

 

アユム先生「月の力を宿すルーナキューブ!」

 

砂狼 シロコ『ん、準備は出来てる。作戦は完璧。始めよう』

 

 

アユム先生「そして、宇宙の力を宿すギャラクシーキューブ!」

 

シロコ*テラー『色々と壁はあるかもしれないけど……、でも、先生が居てくれたら、できる気がするの』

 

 

シロコ*テラー「!?!!」ゾクッ

 

シロコ*テラー「あ、ありえない……!?」

 

シロコ*テラー「ど、どうして先生が『色彩』の力を――――――!?」

 

アユム先生「シロコ」

 

シロコ*テラー「せ、先生?」

 

アユム先生「シロコも背負わなくていい。これは大人がやるべきことだから」

 

アユム先生「今まであなたひとりに背負わせてきてごめんね、シロコ」

 

シロコ*テラー「あ」

 

 

――――――シロコ*テラー(砂狼 シロコ)が決して手放すことなかった形見の武器が彗星のように飛来する。

 

 

シロコ*テラー「ああ!?」

 

黒見 セリカ「え、これって――――――!」

 

奥空 アヤネ「……私たちの武器の予備がどうして?」

 

十六夜 ノノミ「ううん。これは予備なんかじゃない……」

 

小鳥遊 ホシノ「うん。これは世界に一つしかない大切な……」

 

砂狼 シロコ「先生!」

 

アユム先生「これ、もらってもいいですよね、シロコ」

 

アユム先生「シロコがこの世界のホシノに言ったことじゃないですか」

 

 

――――――死に囚われるんじゃなくて、思い出を未来に連れて行こう。

 

 

シロコ*テラー「…………先生」

 

アユム先生「良いですよね?」

 

シロコ*テラー「う、うん」

 

アユム先生「受け取りました。あなたの悲しみの欠片。世界の崩壊はそこから始まった……」

 

 

アユム先生「さあ、ホシノ。ノノミ。セリカ。アヤネ。遅くなりましたね。今度は最後まで一緒ですからね」

 

 

砂狼 シロコ「……先生?」

 

黒見 セリカ「え、何? 何が起きたの!?」

 

奥空 アヤネ「あそこにある私たちの武器が――――――!」

 

十六夜 ノノミ「……羽根に変わった?」

 

小鳥遊 ホシノ「ん?」

 

シロコ*テラー「ホシノ先輩!」

 

シロコ*テラー「ノノミ!」

 

シロコ*テラー「セリカ!」

 

シロコ*テラー「アヤネ!」

 

砂狼 シロコ「先生、いったい何が――――――!?」

 

アユム先生「見ててください。これが私たちの未来への希望です」パシッ

 

 

――――――4枚の羽根:アークフェザーがアユム先生の手の中で1つの武器となる!

 

 

――――――想像力が具現化した究極の力:アークギャラクサー!

 

 

――――――そして、アークギャラクサーにアークキューブを3つセット!

 

 

ギャラクシーキューブソリスキューブルーナキューブ

 

 

【シッテムの箱】制約解除。 プロセス『ペレツ・ウザ』限定稼働開始。

 

 

ギャラクシーファイナライズ!

 

 

 

 

 

――――――攻略法その5:チートにはチートで対抗する。

 

 

地下生活者「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

地下生活者「な、何なのだ、コレはあああああああああああああああ!?」

 

黒服「……これは驚きの結果ですね」

 

黒服「いや、これは流石としか言いようがないです」

 

地下生活者「ば、バカなああああ! こんなのはチートなんかじゃない!」

 

地下生活者「そもそも、ゲームにすらなっていない! ただの理不尽! 攻略させる気がない! バカにしている!」

 

地下生活者「小生が“万神の星座”まで用意してチートに対抗したと言うのに、ここに来てシステムの改変に加えて、()()()()()()()()()だなんて、そんなバカなことがあり得るかああああああああああ!?」

 

 

アユム先生「バカにしているのはあなたの方だ、地下生活者」パシッ

 

 

地下生活者「ヒ、ヒィイイッ?!」

 

黒服「……やはり、この感じ、“色彩の嚮導者”プレナパテスですか」

 

アユム先生「安全な場所から現世の人間の営みに干渉しては使い捨ての駒にしては自分勝手なごっこ遊びのために人々を苦しめてきた罪は許されない」

 

アユム先生「そもそも、あなたの探求なんて実にくだらない」

 

アユム先生「何が6つ目の古則『非有の真実は真実であるか』よ」

 

アユム先生「何が『死と苦しみ』の真理よ」

 

 

――――――愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。

 

 

アユム先生「あなた、現在のキヴォトスが形作られる以前の古代の帝国の頃の“テクスチャの更新”前の時代からずっと探求を続けていたのに、これまで何の成果も出せなかったじゃない」

 

アユム先生「その間にどれだけの『死と苦しみ』が長い歴史の中で繰り返されてきたの? 今更になって理解したって、あなたの人生って日割り計算したら1ミクロンも価値のない薄っぺらい人生だったって認めたわけよね?」

 

アユム先生「はっきり言って、あなたのやってきたこと、あなたの存在そのものが無価値なのよ」

 

地下生活者「あ、ああああああ……………!?」ガタガタガタ・・・

 

アユム先生「だから、あなたの人生のテーマだった 6つ目の古則『非有の真実は真実であるか』であなたの人生を締めくくってあげようじゃない」

 

黒服「…………おお」

 

アユム先生「ねえ、知ってる?」

 

アユム先生「無名の司祭たちは自分たちが崇めている存在との関係性をこう主張しているの」

 

 

――――――司祭は神を崇めるが故、“崇高”を所有できる。

 

 

地下生活者「は」

 

黒服「ふむ」

 

アユム先生「つまり、神が存在するためには、その存在を認知している司祭が必要不可欠――――――」

 

アユム先生「よって、神の存在証明の鍵を握っているのは、神自身ではなく、それを崇める司祭の方である」

 

アユム先生「万年 目の前の歴史に目を向けず みすみす賢者に成り損ねた 死に損ないの愚者に理解できるかな、この真理が? あなたも“崇高”を目指して【ゲマトリア】に入ったんでしょう?」

 

黒服「もしや、つまり、それは――――――!」

 

地下生活者「お、おお! おおおお!?」

 

アユム先生「うん。だからね、誰からも認識されることのない安全な場所で現実世界を生きる人々をゲームの駒にして遊んでいる“子供部屋おじさん(地下生活者)”なんて()()()()()()()()()()()ことになる」

 

 

アユム先生「だから、あなたは最初から存在していなかった。なぜなら、誰もあなたのことなんて気にかけていないのだから」

 

 

地下生活者「う、嘘だあああああああああああああああああああああ!」

 

地下生活者「あ、あああ!? な、何だ、これは!?」

 

黒服「……始まった」

 

地下生活者「こ、これは……!? ああ、【混沌の領域】がき、消える! 消えてしまう……!?」

 

アユム先生「じゃあね。そのまま【混沌の領域】と共に消えて」

 

アユム先生「あなたは誰の思い出の中に生きられないまま孤独死するのよ」

 

地下生活者「ヒッ、ヒィイイイッー!」

 

アユム先生「喜びなさい、あなたの人生のテーマだった『死と苦しみ』をあなた自身で思う存分に味わえるのだから」

 

地下生活者「い、イヤだ、やめてくれッッ!」

 

地下生活者「それだけは……!」

 

黒服「………………」

 

アユム先生「でも、事象は確定してしまったのだから、あなたが“地下生活者”である限りは絶対に助からない、もう」

 

地下生活者「そ、そんな……!」

 

地下生活者「あ、あああああ! く、くるしい! くるしい……!」

 

アユム先生「助かりたい?」

 

地下生活者「た、たすけてぇ……」

 

アユム先生「なら、まずは死になさい。“地下生活者”として」

 

 

――――――そして、“地下生活者(Basement dweller)”から生まれ変わって、これからは“路上生活者(Street dweller)”として生きることね。

 

 

黒服「………………」

 

アユム先生「そういうわけだから、【ゲマトリア】は石堂 アユムに従うことね」

 

黒服「……ええ。元よりそのつもりです。アユム先生が創設しようとしている怪獣災害対策組織に全面協力いたします。主に資金面での協力になると思いますが」

 

アユム先生「それは殊勝な心掛けね。願わくば、アースガロンが建造されるぐらいになって欲しいものだけれど」

 

アユム先生「ともかく、元の世界で【ゲマトリア】は全滅させたから、この世界でもそうならないようにね」

 

 

――――――あなたたち【ゲマトリア】にはもうどこにも逃げ場なんてないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

シロコ*テラー「先生! 先生ッ!」

 

アユム先生「う、ううん……?」

 

黒見 セリカ「良かった! 目が覚めたのね、先生!」

 

アユム先生「あれ? ここはどこ? 私、何やってたんだっけ?」

 

小鳥遊 ホシノ「先生ッ!」 

 

アユム先生「あ、ホシノちゃんだ」

 

小鳥遊 ホシノ「良かった! 本当に良かったぁ! 先生、“セトの憤怒”に向けて攻撃した後、バタッと倒れちゃったから……!」

 

十六夜 ノノミ「先生が倒れた後、先生が手にした武器が4枚の羽根(アークフェザー)になって私たちのことを助けてくれました」

 

アユム先生「え、何それ? あとでビデオで確認しないとね?」

 

小鳥遊 ホシノ「やっぱり憶えてないんだ」

 

奥空 アヤネ「でも、こうしてホシノ先輩は無事でしたし、<列車砲>も何とかなりました。あとは救出部隊の到着を待つばかりです」

 

アユム先生「そう。みんな、よくがんばったね」

 

白洲 アズサ「だが、先生にも見せてあげたかったな、あの光景は」

 

アユム先生「え、何?」

 

下江 コハル「先生があの雷を起こす怪物に強烈な一撃を浴びせたのを皮切りに、そこからみんなで怪物に攻撃して倒した後――――――」

 

空崎 ヒナ「この辺りの地層に埋まっていた鉱物が怪物の放った雷に反応してプラズマを放出して幻想的な光景を生み出していたのが夜明け前のことだったの」

 

鬼方 カヨコ「はい、先生。夜明けのコーヒー」

 

アユム先生「ありがとう、カヨコ」

 

アユム先生「やっぱり、朝はこれだけねぇ」ゴクッ

 

鬼方 カヨコ「うん。これを飲むと落ち着く」

 

アユム先生「みんなには?」

 

鬼方 カヨコ「もう配ったよ。救出部隊が来るまではここで待つしかないから。非常食も持ってくるから待ってて」

 

アユム先生「にしては、あそこで一生懸命に地面を掘り返している子たちは何?」

 

浦和 ハナコ「実は、かつて【アビドス生徒会】が余興で埋めたとされる希少鉱物がまだ埋まっているかもしれないということで、大変高価なそれらを掘り当てて持ち帰ろうとしているんです。100g 1000万円の価値らしいですから」

 

アユム先生「ほう。それは凄い。まあ要らないけど」

 

黒見 セリカ「要らないの?!」

 

アユム先生「うん。幻想的な風景が見たいなら、私にだって絵に描いて演出することができるし」

 

阿慈谷 ヒフミ「さすがは先生ですね」

 

アユム先生「でも、“セトの憤怒”が放つ雷の勢いは激しかったわけだから、みんな反応しちゃったんじゃないかな?」

 

空崎 ヒナ「私もそうだと思うけれど、どのみち、ここには<列車砲>の完全解体のために【万魔殿】の部隊が来ることになっているし、早い者勝ちよ。相場もここ2年で10倍ぐらいに跳ね上がっていて、欠片でも持ち帰ることができれば一攫千金が狙えるわけだから、きっと ここには人が殺到することになるわ」

 

アユム先生「……そう」

 

アユム先生「ねえ、ヒナ」

 

空崎 ヒナ「何、先生?」

 

アユム先生「おいで」ポンポン

 

空崎 ヒナ「え、先生……?」

 

アユム先生「おいでよ」

 

空崎 ヒナ「う、うん……」

 

アユム先生「ああ……、ヒナだ。ヒナの匂いがする……」スゥーー!

 

空崎 ヒナ「せ、先生……」

 

アユム先生「来てくれてありがとう」

 

空崎 ヒナ「こっちこそ、頼ってくれて嬉しかった」

 

小鳥遊 ホシノ「せ、先生……」

 

アユム先生「ホシノもおいでよ」

 

空崎 ヒナ「じゃあ」

 

アユム先生「うん」

 

アユム先生「みんなもおいでよ」

 

白洲 アズサ「先生!」

 

十六夜 ノノミ「先生!」

 

鬼方 カヨコ「先生!」

 

 

――――――先生!

 

 

 

 

 

シロコ*テラー「…………みんな、先生の中に入っていったんだね」

 

シロコ*テラー「よかった。これで私もアユム先生と一緒にいていい理由ができた」

 

シロコ*テラー「今もキヴォトスのどこかで災害の化身たる“怪獣(KAIJU)”が現れては滅亡の銃爪になろうとしている」

 

シロコ*テラー「それを喰い止めるために怪獣災害の専門家が本職の“シャーレの先生”がやってきて、いよいよ本来の役割を果たそうとしている」

 

 

シロコ*テラー「――――――アユム教官」

 

 

シロコ*テラー「私も行く」

 

シロコ*テラー「あなたの志と共に 怪獣退治に使命を懸けて」

 

シロコ*テラー「だから、見ていてください」

 

 

――――――“死の神”がもたらす再生のための破壊。明日を生きるために死を乗り越えていく戦いを。

 

 

命の行方を照らすため

 

光よ 明日を 導け

 

 

*1
パワーナップとは一般的に15から30分程度の短い仮眠のこと。

コーネル大学の社会心理学者:ジェームス・マースによる造語で、時間あたりに対する睡眠の効用を最大化する睡眠法とされている。

パワーナップの効果として、午後の眠気が減り、脳の働きが活発になる科学的根拠が挙げられ、その結果、集中力や計算力、判断力、意欲が高まって仕事がはかどるようになる。

そのため、世界的な大企業でも積極的仮眠(パワーナップ)制度を導入している例が多数ある。

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