Blue Archive -Document SKIP feat.OMEGA and...- 作:LN58
大木田 ソラト「――――――?」クンクン!
星見 コウセイ「あ、母さんからだ」
星見 コウセイ「こっち、ソラト宛の手紙だ」
大木田 ソラト「俺に?」
大木田 ソラト「どれどれ?」
星見 コウセイ「何だろう、手紙なんて、母さん?」
百合園 セイア「お邪魔するよ」 ――――――サングラスを掛けている。
大木田 ソラト「あれ、誰だ、コウセイ?」
星見 コウセイ「え?」
百合園 セイア「おやおや、忘れるだなんてひどいじゃないか」
百合園 セイア「私とは つい最近 会ったばかりだろう?」チラッ ――――――サングラスの下を覗かせる。
星見 コウセイ「ああ! きみは調査チームの――――――!」
百合園 セイア「思い出してくれたかい、ゾンビボーイ?」
星見 コウセイ「『ゾンビ』でも『ボーイ』でもないっす」
大木田 ソラト「コウセイ、知り合いか?」
星見 コウセイ「ああ」
百合園 セイア「ってことは、きみが大木田 ソラトだね?」
大木田 ソラト「うん」
百合園 セイア「はじめましてだな。私は
大木田 ソラト「
百合園 セイア「それで、きみが
星見 コウセイ「え、なんで俺たちの名前を――――――?」
黒服「それについては私から説明いたしましょう」
星見 コウセイ「うわっ!? な、何だ、こいつ!?」
大木田 ソラト「………………」
百合園 セイア「“黒服”、どうしたんだい? 先生はどうした?」
黒服「先生なら、少し遅れて来るそうです」
星見 コウセイ「あ、あの……、あなたもキヴォトスにお住まいの方ですか? 失礼ですが、見たことがないようなお姿をしていますね?」
黒服「おっと、突然のことで失礼しました」
黒服「私のことは“黒服”とお呼びください」
星見 コウセイ「え?」
大木田 ソラト「………………」
黒服「今日 お二人の許に足を運んだのは他でもない;【SKIP】キヴォトス分所 所長を兼ねることになった“シャーレの先生”アユム先生の今後の活動方針と、お二人の協力体制について ご相談があるのです」
星見 コウセイ「は、はあ……」
大木田 ソラト「コウセイ、こいつは
星見 コウセイ「わ、わかっているよ」ヒソヒソ
百合園 セイア「まあ、安心してくれ、二人共。“黒服”は少なくとも今はアユム先生の味方で、【NDF】をはじめとするアユム先生の活動を支援している出資者だから、キヴォトスの危機となる怪獣災害には利害の一致で協力してくれている」
百合園 セイア「そんなわけだから、まずは話を聴いてもらおうか」
星見 コウセイ「ああ、わかったよ、セイア……」
黒服「おっと、忘れておりました。これは粗品となりますが、お菓子をご用意したので食べながら話を聞いてください」
百合園 セイア「私の方からも手土産だ。これで機嫌を直してくれないか」
大木田 ソラト「コウセイ、何をしている! 早くお茶ぁ!」
星見 コウセイ「ホント、食べ物のことになると すぐに目の色を変えるよな、おい!」
【ティーパーティー】元ホスト:百合園 セイアは ウルトラマンオメガを一度は倒した強敵:エルドギメラの正体を探るべく その細胞片を集めるために激戦の跡地に赴いた際、
エルドギメラにオメガやメテオカイジュウが敗走し、現地で展開していた【NDF】に少なかぬ被害が出たことに衝撃に受け、更には敗北の痛みを堪えながらも何よりも自分を気遣って【太陽倉庫】を出ていくと言い出したソラトへの感情が綯い交ぜになり、
思わず自分の方が【太陽倉庫】を飛び出して 立入禁止となっている【NDF】の野営地跡で立ち尽くしていた星見 コウセイに出会って 事情も訊かずに調査を手伝わせていたのだった。
それが功を奏してコウセイが発見することができたエルドギメラの細胞片を分析することで、その性質や弱点を解明することに繋がり、最終的にウルトラマンとメテオカイジュウ、人類側【NDF】の連携によってエルドギメラを倒すことに成功していたのである。
その【NDF:National Defence Force】が配備した グライムに使った麻酔薬を搭載した自走式ミサイルやエルドギメラに電撃を浴びせた自走式対怪獣アンカーの開発を一手に担ったのが“黒服”と呼ばれるキヴォトスの外からやってきた謎の存在であった。
詳しい話は伏せられているが、元々は【ゲマトリア】という『色彩』に対抗するために学園都市:キヴォトスで“神秘”を探求していた集団であり、前々からアユム先生には【ゲマトリア】に入るように誘いの声を掛けていたのだが、
逆に『色彩』をキヴォトスに呼び寄せて滅亡の危機を招いてしまったという大失態を犯したことで大打撃を受けた【ゲマトリア】は一時解散となるはずが、アユム先生が【ゲマトリア】の研究を引き継ぐことを宣言して、キヴォトスに残って空が赤く染まった滅亡の危機に敢然と立ち向かって滅亡の運命に打ち克ってみせたのだ。
そのため、『色彩』を退けたという実績を以って【ゲマトリア】は正式にアユム先生が継承することになり、アユム先生が起こした奇跡に感服した“黒服”は出資者としてキヴォトスに残ってアユム先生の活動を全面的に支援し、【ゲマトリア】が持つロストテクノロジーやオーバーテクノロジーを提供して怪獣対策班の設立に尽力したのである。
黒服「そういった事情で、今はアユム先生に全面協力して キヴォトスに訪れてしまったK-DAYから始まる怪獣災害による滅亡の危機を乗り越えるべく 準備を進めてきました」
黒服「そして、対策チームの準備もようやく終えて お二人にお会いすることにしたのです」
大木田 ソラト「『対策チーム』って、前にアユ姉が言ってた――――――?」
黒服「では、御覧ください」
星見 コウセイ「え、何それ?」
黒服「これは怪獣探知機 通称:
百合園 セイア「4Kモニターでも、5Kモニターでもないから、勘違いしないように」
黒服「気象観測衛星や各地の観測機器、地震計とリンクして怪獣の体温、呼吸する時に排出される二酸化炭素、微弱な振動を捉え、その他諸々を総合的に分析して怪獣の位置を特定する――――――」
黒服「カメラには地中レーダーやサーモグラフィー、バイタルセンサーも付いたスグレモノとなっています」
黒服「このように変形すると、ビーコンなどを発射することもできる」
星見 コウセイ「えと、く、“黒服”さんが創ったんですか?」
黒服「はい。正確には基本設計はアユム先生で、開発は私が行いました」
黒服「それとコウセイ氏。私のことは遠慮なく“黒服”とお呼びください。これはキヴォトスにおける私の
星見 コウセイ「わ、わかりました、“黒服”、さん」
黒服「では、どうぞ 触れてみてください。ガンカメラになっているのはキヴォトスでは銃を持つことが当たり前で、そのための偽装も兼ねてです」
大木田 ソラト「へえ」
星見 コウセイ「どれどれ」
大木田 ソラト「そうだ、アユ姉も対策チームに入るんだよな?」
百合園 セイア「当然の話だね。地球に現れた怪獣の知識や怪獣災害のノウハウを持っているのは先生だけだからね」
星見 コウセイ「じゃあ、セイアも参加するんだよな?」
百合園 セイア「ああ。基本的には“黒服”が開発した対怪獣兵器を駆使して防衛チーム【NDF】が怪獣への攻撃を担当して、【SKIP】キヴォトス分所 所長であるアユム先生を顧問に据えた調査チームが怪獣の弱点を探ることになる」
百合園 セイア「そこで本題となるのが、【SKIP】特別調査員待遇となるきみたち二人のことなんだ」
星見 コウセイ「それはいったいどういう……?」
百合園 セイア「知っての通り、キヴォトスでは生徒たちが愛銃を手にして銃声を響かせることが日常茶飯事で、防衛隊に志願したとしても 生徒の大半にまともな研究ができるわけがない」
百合園 セイア「そして、怪獣対策のために用意した潤沢な研究予算や研究設備を掠め取って高跳びする輩が現れないとは言い切れないのがキヴォトスという場所で、それだけに調査チームへの参加には書類審査が課せられて信頼と実績のある本物の研究者を求めている」
大木田 ソラト「そうなんだ」
百合園 セイア「つまり、本来ならば信頼と実績のある人物に調査チームに入ってもらいたいわけなんだが、ここに対策チームが正式に発足する以前から怪獣災害の現場に駆けつけていた実績を持つ 巷で有名な怪獣研究家がいるだろう?」
黒服「すでに信頼と実績は十分ということで、アユム先生の推薦で調査チームへの参加を 今回 打診しに来たというわけなのですよ、ソラト氏にコウセイ氏」
星見 コウセイ「おお、マジか」
黒服「ただし、アユム先生のことを信頼して これまで出資させていただきましたが、この推薦に関しては 私 直々にその為人を確認させてもらいます」
百合園 セイア「わかるだろう。アユム先生はきみたちのことをよく知っているわけだが、私たちはきみたちのことをよくは知らない」
百合園 セイア「だから、調査チームのみんなとうまくやっていくためにも誤解がないようにしておきたいわけさ」
大木田 ソラト「そういうことなら――――――」
星見 コウセイ「あ、ああ……! あの、“黒服”さん、実はソラト、記憶喪失で――――――」
黒服「ああ、そうでしたね。それで記憶が曖昧で情報の出所に確証がないという話でしたね」
黒服「しかし、記憶を失う前の独学で作り上げた研究資料やデータがあるはずです。それを見せてはもらえないでしょうか?」
大木田 ソラト「ない。ここにあるだけ」ビビッ ――――――頭を指差す。
黒服「む? では、巨人についてはどうでしょうか? なぜ“オメガ”と呼ぶのか、説明していただけますか?」
大木田 ソラト「ええ? 『なんで?』って言われてもなぁ?」
星見 コウセイ「あ、ああっと! せ、セイアさ? 調査チームなんだよな? オメガのこと、何かわかった?」
百合園 セイア「オメガのことかい。全然さ。見たままの情報しかない」
百合園 セイア「エルドギメラの細胞片は見つかったのに、オメガの細胞片は 一切 見つからないのは、一度 エルドギメラに倒された時に光の粒となって消えたことを踏まえて、その正体は実体を持たない幽霊だとか、有機生命体とは組成が異なる宇宙人って説が有力だけど、」
百合園 セイア「どうして怪獣と戦って 私たちを守ってくれているのかについては、さっぱりだよ」
百合園 セイア「アユム先生はオメガのことを地球を守ってくれた巨人と同じウルトラマンだとみなして人類の味方だと断言しているけど、こればかりはアユム先生の主観と世間を安心させるための喧伝だからねぇ」
星見 コウセイ「ええ? でも、間違いなくオメガは俺たちのことを――――――!」
黒服「コウセイ氏もアユム先生と同じ地球の出身とお聞きしていますが、辿った歴史がちがう並行世界の地球というわけで、ウルトラマンも怪獣も存在しなかったはずです」
黒服「私たちもK-DAY以前から怪獣に匹敵する
黒服「そこはご理解していただきたいです」
星見 コウセイ「は、はい……」
大木田 ソラト「………………」
百合園 セイア「まあ、そこまで気にすることではないさ。あくまでも客観的証拠がないというだけで、アユム先生がそうしてきたように、もしくはコウセイが言ったように、物的証拠がなくても状況証拠である活動の足跡が積み重なって客観的に評価されるまでの辛抱さ」
百合園 セイア「実際、エルドギメラ戦で【NDF】はオメガに大いに助けられてきたことだし、そもそも【NDF】が結成される以前から怪獣を倒し続けてくれたオメガの勇姿を人々はちゃんと憶えているから」
黒服「ええ。アユム先生も今でこそ“キヴォトスを救った英雄”と称えられてキヴォトス中の人々から絶大な支持を得ていますが、元々は失踪した“連邦生徒会長”が遺していった超法規的機関【連邦捜査部
黒服「ですので、そこまで深刻に考える必要はないですよ、ソラト氏。フェイク動画に負けない真実の記録をこれから【NDF】が保証人となって積み重ねていくことになるのですから」
大木田 ソラト「そっか。ありがとう、“黒服”」
大木田 ソラト「俺、“黒服”のことは嫌いかもしれないけど、アユ姉が一緒に頑張ろうって声を掛けた人なら、きっと“優しい”だから、俺もそのことを信じてみる」スッ
黒服「……そうですか。ありがとうございます、コウセイ氏」ガシッ ――――――握手を交わす。
百合園 セイア「まあ、そういうわけだから、今日は顔合わせということで、対策チームに参加するにしてもしないにしても、今まで通り現場には駆けつけるのだろう? 今後ともよろしく頼むよ」
星見 コウセイ「ああ! やってやろうぜ、みんなで! キヴォトスの平和を!」
黒服「では、最後にお聞かせください」
黒服「記憶を失ってなお 怪獣と向き合い続ける――――――、」
黒服「何があなたをそうさせているのですか、大木田 ソラト氏?」
黒服「私はそれにとても興味があるのです。アユム先生もまた大人として子供たちを守り抜こうとする使命感を持っていて、ついには“キヴォトスを救った英雄”にまでなりましたからね」
百合園 セイア「ああ。ぜひとも聞かせて欲しい」
星見 コウセイ「ソラト……」
大木田 ソラト「やらずにはいられないし……、」
大木田 ソラト「やり続けると、わかる気がするんだ」
大木田 ソラト「――――――自分のことが」
百合園 セイア「きみにとって大きな何かが過去にあったのかもね」
星見 コウセイ「あ、セイアはどうして怪獣の研究をしているんだ? “黒服”さんは出資者ってことで納得ですけど」
百合園 セイア「きみやソラトと同じさ」
百合園 セイア「自分がやりたいから。やりたいことをやって、誰かの役に立てるなら、それは幸いなことだよ」
百合園 セイア「まあ、罪滅ぼしでもあるんだけどね。私はかつて自分の役目を果たさずに それを周りに押し付けて 結果として数え切れない人たちを苦しめることになった――――――」
百合園 セイア「つまり、“黒服”と同じで、アユム先生の下で更生の道を歩んでいるわけさ」
星見 コウセイ「それなら、それは俺も同じ……」
百合園 セイア「まあ、気負うことはないさ!」
――――――私たちはアユム先生のことを信じているし、オメガのことも信じているのだから!
アユム先生「というわけで、じゃーん! 【ボーダーランド遊園地】に招待です、ソラトさん、コウセイくん!」
星見 コウセイ「ど、どういうことだよ、アユ姉? 藪から棒に?」
大木田 ソラト「…………『遊園地』?」
アユム先生「そう、あの【ボーダーランド遊園地】だよ、二人共。はい、パンフレット」
星見 コウセイ「あ、懐かしいなぁ、こんな感じのパンフレット。ディズニーランドを思い出すよ」
星見 コウセイ「う、ううん? ちょっと待ってくれよ、アユ姉? これ、敷地の半分が――――――?」
大木田 ソラト「へえ、正門側が【トリニティ】の自治区で、裏門側が【ゲヘナ】の自治区になっているんだ」
大木田 ソラト「つまり、【トリニティ】と【ゲヘナ】の境界線上にある場所なんだな」
星見 コウセイ「え、それって 結構 マズイんじゃないの? ほら、エデン条約ってやつも、キヴォトス三大学園の【トリニティ】と【ゲヘナ】の長年に渡る因縁があったから、失踪した“連邦生徒会長”が仲介して仲良くやろうって結ばせようとしていたぐらいだしさ?」
星見 コウセイ「というか、こういうのは生徒たちと遊びに行くものであって、アユ姉が俺たちをただ遊びに連れて行くわけないじゃん!」
アユム先生「そういうこと。わかっているね、コウセイくん」
アユム先生「実は、週末に【ボーダーランド遊園地】でキヴォトスで有名な不良集団【ヘルメット団】が何らかの悪事を働くという通報があって、」
アユム先生「本来ならば【正義実現委員会】が対応するべき案件なんだけど、別件で【遊園地】全体に厳重な警戒態勢を敷くほどの人員が確保できないのと、自治区の境界線上にあるという 場所が場所だけに 行動が大きく制限されてしまう。普通に遊びに来ている来場客も不安にさせるしね」
アユム先生「なので、この件について【連邦捜査部
アユム先生「そして、二人には助っ人として来てもらいたいの」
アユム先生「アトラクション待ちで何時間も行列が並ぶような人が密集する場所だと避難行動をとらせるのも難しくて、そこでもしもの時は二人の力を貸してもらおうと思って」
アユム先生「悪くない作戦でしょう? もし人命救助にウルトラマンが駆けつけてくれたら、【遊園地】での最高の思い出になるよね?」
アユム先生「もちろん、手当や交通費も支給するし、護衛もつけるから、無理はせずに控室で【遊園地】の売店のメニューを食べててもいいから。ね」
アユム先生「と言うより、当日 怪獣が現れる可能性も絶対にないわけじゃないから、極力 控室で待機していてもらうのが一番なんだけど」
アユム先生「どう? 協力してもらえるかな?」
大木田 ソラト「コウセイ、俺、【遊園地】に行ってみたい」
星見 コウセイ「そう言うと思ってたよ、ソラト」
星見 コウセイ「アユ姉、問題ない。他ならぬアユ姉の頼みだし、タダで【遊園地】に行かせてくれるんだから、ぜひとも協力させてくれ」
アユム先生「よし。それじゃあ、作戦内容の共有はするけれど、キヴォトス人相手に戦闘をさせるわけにはいかないから、避難指示にはしっかり従ってね」
こうして週末は【トリニティ総合学園】と【ゲヘナ学園】の境界線上に存在する【ボーダーランド遊園地】に向かうことになった。
【遊園地】は動物園や湖が近くにあり、敷地は城壁に囲まれていて出入り口が制限されており、地球人:星見 コウセイにとっても馴染み深い東京ディズニーランドを思い出させる 童話の世界がそこには広がっていた。
ただし、キヴォトスで一二を争うマンモス校【ゲヘナ学園】とそのライバル校【トリニティ総合学園】の両自治区に跨がるのだから、その規模は東京ディズニーランドを遥かに超える超巨大アミューズメントパークであったのだ。
これはたしかに【正義実現委員会】の人員を回すことに副委員長:羽川 ハスミが難色を示すわけであり、連日【遊園地】を訪れる大勢の来場客やこの規模のテーマパークの運営に携わるスタッフの中に紛れ込まれてしまっては極一部に過ぎないテロリストを見つけ出すのは至難の業である。
そのため、【正義実現委員会】としては捜査協力者にテロの確たる証拠を掴んでもらった後に通報を受けて現場に介入する手筈となっており、完全に対応が後手に回る消極的姿勢から“シャーレの先生”は独自に【遊園地】という場所を利用して超力技でテロを阻止しようと考えていた。
それで声を掛けたのが【SKIP】の一員である【太陽倉庫】の二人であり、怪獣退治の要であるウルトラマンオメガはおいそれと出すことはできないものの、レキネスとトライガロンなら片方を出しても大丈夫だと考え、いざという時はメテオカイジュウに場を制圧してもらおうと企んでいたのだ。
実際、【遊園地】ではキャラクターショーが各所で行われる予定になっており、そういう出し物だと思ってもらえれば 最高の思い出になるし、ウルトラマンオメガへの支持率を上げることにも繋がる。
――――――というわけで、やってきました、【ボーダーランド遊園地】。
アユム先生「じゃあ、ここが私たちの拠点になるから、ソラトさんとコウセイくんは基本的にここで待機していてね」
アユム先生「もう少ししたら【遊園地】が開園になるから、そしたら捜査協力者のことを紹介するから」
アユム先生「あと、これが売店のカタログね。欲しいものがあったら言ってね。買ってくるから」
・・・バタン!
星見 コウセイ「いやはや、テーマパークに来るとテンション上がるなぁ!」
大木田 ソラト「楽しそうだな、コウセイ」スッ
星見 コウセイ「あ、手紙、誰からだったんだ?」
大木田 ソラト「ササコから」
星見 コウセイ「……『ササコ』?」
大木田 ソラト「うん」
星見 コウセイ「ああ! ミコトって怪獣の時の! 俺が発送ミスして百鬼夜行自治区の田舎まで配達に行かせた受取先の!」
大木田 ソラト「うん。『あれ以来 ミコとうまくやっている』って」
大木田 ソラト「野菜 収穫したら、送ってくれるみたい」
大木田 ソラト「二人で幸せにしてるってさー」
星見 コウセイ「そっか」
大木田 ソラト「コウセイは? ハガキ、誰からだったんだ?」
星見 コウセイ「母さん」
大木田 ソラト「おお! コウセイの母さん!」
――――――人生、時には遠回りも必要だから、しっかり考えて自分のやりたいことを見つけなさい。
星見 コウセイ「って」
大木田 ソラト「やりたいことは見つかったろう? 言ってないのか?」
星見 コウセイ「『怪獣からみんなを守りたい』ってどう伝えればいいんだか……」
星見 コウセイ「まさか、バイトを転々とした先でキヴォトスに来て、そこから宇宙人と共同生活して怪獣退治の日々だなんてなぁ――――――」
そう言えば、俺、いつも夕日を見上げながら一日の終わりに牛乳を片手に飲んでいる場所で お前を初めて見たんだ。
空から落ちてくるところをな。
へえ、そうなんだ。
ソラトさ、『怪獣と向き合い続けたら、やるべきこと、やりたいことがわかるような気がする』って言ってたけど……。
うん。まだわかんない。
でも、『このままでいいかなー』って気もしてきた。
え? なんで?
だって、お前、“黒服”さんやセイアにも――――――。
うん。まあ、そうなんだけどさ。
開園した【ボーダーランド遊園地】は今日も大勢の来場客で賑わう。その様子を仮設指揮所に据え付けられた監視カメラの映像からソラトとコウセイが優しく見守っていた。何事もないことが一番であることをよく知っているが故に。
そんな中、捜査協力者としてヒーローショーのキャストに変装して潜入していたのが【トリニティ自警団】リーダー:守月 スズミとスーパースター:宇沢 レイサであった。
本日のヒーローショーは『魔法少女ヘヴィキャリバー』であり、その熱烈な大ファンである宇沢 レイサの発案で、その魔法少女に変装して【ヘルメット団】の調査を行っていたのだ。
それこそが主役となる世界の平和を守り 正義を貫く魔法少女:テルミットホワイトとその相棒であるテルミットピンクである。
一方、事の発端となる【ヘルメット団】の密談を通報した【図書委員会】円堂 シミコもまた悪の女幹部:エラを
更には後方支援と連絡役として【正義実現委員会】静山 マシロも派遣され、トリニティエリアの展望塔より状況の監視を行っていた。
アユム先生もまた二人の魔法少女に付き添うマネージャーとして付いて回り、様々な目を光らせて【ヘルメット団】の気配を探っていた。今回は潜入任務なので“シャーレの先生”が常に引き連れているロッピー・ザ・ロボットやアークガロンは側になく、別行動を取らせて監視網を広げていた。
そんな中、アユム先生は初めて【トリニティ自警団】守月 スズミという生徒の内面に深く触れていくことになる――――――、
その裏で大木田 ソラトは控室から飛び出していくことになり、世界の平和を守り 正義を貫くヒーローの戦いが幕を開けた。
これはイマーシブシアターなどではない。本当の戦いが――――――。
大木田 ソラト「――――――」クンクン!
星見 コウセイ「どうしたんだよ? 怪獣か?」
星見 コウセイ「!」
大木田 ソラト「お前は――――――」
星見 コウセイ「……俺たちと同じ人間? 珍しいな?」
星見 コウセイ「!」ゾクッ
星見 コウセイ「おい、お前! 誰なんだ!?」
突如として【遊園地】に現れた白い作業服の男性;キヴォトスでは地球人と同じ人間の姿をしている男性の存在が稀だからこそ、その存在が放つ異様さが浮き彫りとなる。
そして、大木田 ソラトの姿を見るや否や、目にも止まらぬ速さで間合いを詰めて拳を叩きつけてくるのだ。
それを受け止めたソラトだったが、キヴォトスでは聞いたことのない言語を発し、それが『オメガ抹殺』を意味するものだと理解したソラトはコウセイを遠ざけるため、振り下ろした拳が地面を割る威力の謎の刺客から背を向けて走り出すのだった。
それを白い作業服の刺客が脇目も振らずに追いかけ、二人の超人は【遊園地】中を風のように走り回ったのである。
そして、駆け抜けた先はトリニティエリアの境界線を超えたゲヘナエリアであり、トリニティエリアと比べてスタッフの質が悪く 治安も良くないことで 閑散とした場所が生まれており、人目を気にせずに敵を迎え撃つには最適な場所だと監視映像を見ていて思っていた場所だった。
白熱した格闘戦を得意の浴びせ蹴りで制したソラトだったが、すぐに起き上がって迫ってくる刺客に押されて、ついには【遊園地】で生身の空中戦へと発展し、トリニティエリアの展望塔から監視を続けていた【正義実現委員会】静山 マシロは生身の人間が空中でぶつかりあう光景に突然のことで何が起きたのか理解できずにいた。
空中戦から再び地上戦へと移行し、周りを巻き込まないように人目のない場所で追跡者を迎え討とうとするソラトに容赦なく刺客の攻撃が浴びせられる。
そして、その目的のためにキヴォトス支配の企みを聞かされる中、大木田 ソラトのオメガとしての記憶が少しずつ蘇っていく。
そう、それこそが「ソラ」から落ちる直前の記憶であり、自身が刺客の正体である殲滅創世体:ゾヴァラスによって撃ち落とされた時のこと――――――。
これにより、封印された記憶が解き放つ際に大きく軋ませる痛みが溢れ出し、その痛みに悶え苦しみ、まともに戦える状態ではなくなったため、当初の優勢が掻き消されて完全に追い込まれてしまう。
しかし、必死に追いかけてきたコウセイが隙を作り、オメガの仲間であるメテオカイジュウの気配を感じ取ったことで状況不利とみなした謎の刺客:ゾヴァラスがついにその正体を現し、
この日、【ボーダーランド遊園地】のゲヘナエリアでは迫力満点のヒーローショー:ウルトラマンオメガ 対 ゾヴァラスの緊急イベントが開催され、多くの観客の目に留まることになったのである。
あいつも大きくなった……。
――――――ゾヴァラス。
コウセイは下がっていろ。
なんで!?
あいつの狙いは、俺だ!
あ、おい!
宇沢 レイサ「わーい! ウルトラマンオメガだー! 頑張れー!」
守月 スズミ「オメガが戦っている……」
守月 スズミ「あれも怪獣なのでしょうか?」
アユム先生「私です、“シャーレの先生”です! 今すぐ避難命令を出してください!」
アユム先生「はあ? 『ゲヘナエリアだから大丈夫』って、対岸の火事どころか目と鼻の先じゃないですか!? 普通に戦いの余波で甚大な被害を喰らいますよ!」
アユム先生「くっ」
アユム先生「アロナ、調査用のドローンを飛ばして! ロッピーも頼んだよ!」
アユム先生「聞こえてる、カヨコ? ゲヘナエリアの避難状況はどんな感じ?」
殲滅創世体:ゾヴァラスはまさしく強敵であった。無作為に街を破壊する怪獣とは別種の存在であり、執拗にオメガ抹殺のために動き、ゴモラをも圧倒する格闘能力を持つメテオカイジュウ:トライガロンの剛力を諸共しないのだから、人型怪獣としての運動能力の高さに加えてエルドギメラに匹敵する怪力を有しているとなれば、オメガでは真正面から太刀打ちできないのだ。
しかし、そこはこれまで培ってきた戦闘技術で対抗するオメガであり、オメガスラッガーの振り下ろしを受け止められたと思いきや、オメガスラッガーを手放して片方の手で掴んでそのままガラ空きになった胴体への連続攻撃に極めたのだ。
今が好機;そこに畳み掛けるようにトライガロンアーマーの瞬足でゾヴァラスを圧倒することに成功。このまま撃破までいくのかと思いきや、
なんとゾヴァラスはレキネスやトライガロンと同じ五角形の胸部を持つメテオカイジュウ:ヴァルジェネスを召喚し、状況は一変してしまったのである。
ゾヴァラスの下僕であるメテオカイジュウ:ヴァルジェネスの戦闘能力は圧倒的であり、レキネスに匹敵する間接攻撃の強烈さに加え、トライガロンに匹敵する直接攻撃の俊敏さで、完全に戦いの流れを奪い取ったのである。
1体で四大属性の攻撃をしてくるヴァルジェネスの存在に魔法少女に扮する宇沢 レイサは悲鳴を上げ、守月 スズミは境界線の向こうのゲヘナエリアでの戦闘行為を禁じられていることから たとえ怪獣にとっては豆鉄砲でしかなくてもウルトラマンオメガを助けに行けない状況に立ち尽くす他なかった。
そして、レキネスやトライガロンと同じくヴァルジェネスは武器の形となり、最強の刺客:ゾヴァラスの手に握られ、メテオカイジュウの力がウルトラマンオメガを完全に抹殺せんと迫ってくるのだ。
魔法少女も驚愕の四大属性の力を発揮するヴァルジェネスハルバードによる更なる猛攻を加え、ダメ押しとばかりにメテオカイジュウをも支配する能力:洗脳波動でアーマーとして装備されているトライガロンを操ってオメガに自傷行為させる卑劣っぷりも発揮し、
ついにアーマーも解除されて その場に蹲るオメガにとどめを刺そうと、角が生えた気味の悪い巨人:ゾヴァラスが迫る――――――。
しかし、その時、1発の銃弾が戦場となったゲヘナエリアに響き渡り、その銃声によってサービスの質が悪いゲヘナエリアの残飯を漁っていたカラスたちが一斉に飛び立った――――――。
それがきっかけで突如として最強の刺客:ゾヴァラスは大きくよろめき、ヴァルジェネスハルバードが解除され、その場に膝をつくことになり、最後の抵抗としてオメガが放った光弾をバリアで防いで その場から姿を消したのである。
そして、オメガもまたエルドギメラの時と同じく力尽きて光の粒となって――――――。
ダッダッダッダッダ!
星見 コウセイ「ソラト! ソラトッ! ソラトぉ!」
アユム先生「コウセイくん!」
星見 コウセイ「ああ、アユ姉! そっちはいいのか!?」
アユム先生「ええ! そんなことより、今はソラトさんを!」
星見 コウセイ「ああ!」
――――――
鬼方 カヨコ「アユ姉……、先生! 見つけたよ!」
――――――
アユム先生「え、本当!?」
――――――
鬼方 カヨコ「すぐ来て!」
鬼方 カヨコ「ソラトさん、私が見つけた時に何やら月を指さした後、意識を失ったから!」
――――――
アユム先生「――――――『月』?」
アユム先生「ともかく、ありがとう、カヨコ! アルちゃんにも感謝しているから!」
アユム先生「コウセイくん! ソラトさんはカヨコが見つけてくれたから、急ぐよ!」
星見 コウセイ「わかった!」
ダッダッダッダッダ!
鬼方 カヨコ「しっかりして、ソラトさん!」
大木田 ソラト「うぁああ……」
星見 コウセイ「ソラトぉおおおおおおおお!」
アユム先生「ソラトさぁああん!」
そんなことがあった午前の【ボーダーランド遊園地】であったが、午後になるとゲヘナエリア側に【風紀委員会】が駆けつけて現場検証が行われる一方、トリニティエリアは平常運転に戻っていた。
ゲヘナエリアの救護室に運ばれた大木田 ソラトは安静のためにベッドに寝かされることになり、アユム先生は現場に駆けつけた【風紀委員会】に【ヘルメット団】が【遊園地】で悪事を働こうとしていることを伝え、ゲヘナエリア側での警備を要請することとなる。
しかし、キヴォトスを守るみんなのヒーロー:ウルトラマンオメガがいつものように怪獣をかっこいい必殺技で倒して空へと飛び去っていくことなく、倒れ込むように光の粒となって消えた光景を【遊園地】に居た多くの人たちが目撃しており、沈鬱な雰囲気に染まっていた。
――――――だからこそ、そんな時にこそ、ヒーローの存在は人々にとって必要なものだった。
ヒーローショーに託つけて捕まえることができた河駒風 ラブ率いる【ジャブジャブヘルメット団】であったものの、実は真っ当な働きをして報酬を得るために『園内でパチモノを売っているらしい詐欺師の摘発』に動いており、すでにいくつかのパチモノを押さえたものの、犯人を捕まえるまでには至っていなかったというのだ。
そのため、【ジャブジャブヘルメット団】としては悪事を働こうとしていたのではなかったものの、悪徳商人の摘発で【遊園地】で交戦状態になる可能性が非常に高かったため、物騒な会話やブツの準備をしていたところを【図書委員会】円堂 シミコに通報されることになったのが真相であった。
そのことから【ジャブジャブヘルメット団】の善良な行為を妨害をしてしまったことを詫びると同時に悪徳商人の逮捕に全面協力することになり、
昼前にゲヘナエリアで行われていた本物を超えた究極のヒーローショー:ウルトラマンオメガとゾヴァラスの戦いを何度も思い返して、今日この場では魔法少女:テルミットホワイトである守月 スズミは必ずや正義が勝つことを証明することを胸に誓うのであった。
やがて、陽も落ちて夜の部へと入り、パレードが盛大に執り行われている中、【トリニティ】と【ゲヘナ】の境界線にもっとも近いステージで粗悪品を売りつける怪しげな商人をついに摘発することになった。
なんと、粗悪な商品を売りつけて巨利を貪る詐欺集団の正体は吾妻 ミライ率いるミレニアム系非公認部活動【疑似科学部】であり、まさか【トリニティ】と【ゲヘナ】の両自治区に跨る【ボーダーランド遊園地】で悪事を働いていようとは、アユム先生もこればかりは完全に予想外であった。
もっとも、たしかに自治区の境目でのトラブルを避けて公的機関が手出しできない場所にはならず者が屯するようになるのは3つの自治区の境目にある【アウトロービーチ】が良い例であり、悪どい商売をするなら【遊園地】ということで価格を釣り上げても違和感がない【ボーダーランド遊園地】は最適と言えた。
しかし、その悪行もここまでであり、『魔法少女ヘヴィキャリバー』に扮したスズミたちがヒーローショーを利用して的確に主犯である【疑似科学部】部長:吾妻 ミライを追い詰めていくことになり、ついにその時が来たのである。
――――――【正義実現委員会】の一員になれなかった不良も同然の私ですが、今回の件でわかったことがあります。
守月 スズミ「誰かを守る力がこの手にあって、たとえそれが正義ではなくとも――――――、」
守月 スズミ「その力を私が私の手で正しく使うことができるのであれば――――――、」
守月 スズミ「私はそれだけで十分なんです」
守月 スズミ「ウルトラマンオメガと同じです」
守月 スズミ「結果として、正義は後からついてくるもの、ですから」
宇沢 レイサ「スズミさん、必殺技のセリフ! まだ憶えていますか!?」
守月 スズミ「もちろんです」
宇沢 レイサ「みんなの平和のために!」
宇沢 レイサ「誰ひとりわかってくれなくても!」
宇沢 レイサ「どんな時だって!」
守月 スズミ「私たちは今日も守ってみせる!」
――――――マジカル・テラマキナ!
ヒュウウウウウウウウウウウウウウン、パァアアアアン!
陸八魔 アル「どうやら、私たちの出番は これ以上 必要ないみたいね」
鬼方 カヨコ「そうみたいだね」
陸八魔 アル「帰るわよ」
伊草 ハルカ「はい、アル様!」
浅黄 ムツキ「ええ~! せっかくなんだし、ちょうどよく花火が打ち上がったんだから、最後まで見ていこうよ~!」
陸八魔 アル「ま、まあ、それもそうね」
鬼方 カヨコ「じゃあ、私、ソラトさんのところに行くから。先生も来ると思うから、そこで待ってる」
陸八魔 アル「わかったわ、カヨコ」
浅黄 ムツキ「これで私たちの今日のお仕事もおしまいだね、アルちゃん」
陸八魔 アル「そうね。久々の【ボーダーランド】、楽しかったわね、ムツキ」
浅黄 ムツキ「そうだね。今の貧乏な暮らしだと二度と来ることはないって思っていたけど、これも先生のおかげだね」
陸八魔 アル「ああ、怖かった~」
陸八魔 アル「オメガがピンチだったから、思わず発砲しちゃったけど、結果としては上出来よね!?」
浅黄 ムツキ「大丈夫だよ。『終わり良ければ全て良し』って言うし」
伊草 ハルカ「はい! アル様はウルトラマンオメガを救ったんです!」
陸八魔 アル「そ、そうよね! あの場面で撃たなかったら全然アウトローじゃないものね!」
ヒュウウウウウウウウウウウウウウン、パァアアアアン!
宇沢 レイサ「正義は、勝ちます!」
円堂 シミコ「みなさん、おつかれさまでした!」
守月 スズミ「レイサさん、シミコさん、マシロさん、ヘルメット団のみなさん……」
守月 スズミ「先生」
アユム先生「よくやったね、スズミ」
守月 スズミ「はい」
――――――【自警団】、本日のパトロールを完了しました!
ヒュウウウウウウウウウウウウウウン、パァアアアアン!
大木田 ソラト「」
星見 コウセイ「ソラト……」
鬼方 カヨコ「花火も打ち上がったことだし、どうやら無事に犯人を捕まえることができたみたいし、今日はこれでおしまいだよ、コウセイさん。先生も直に来るはず」
星見 コウセイ「よかったぁ」
鬼方 カヨコ「……ソラトさんもみんなのために人知れず戦ってくれているんだよね?」
星見 コウセイ「へ」
鬼方 カヨコ「なんでもない」
鬼方 カヨコ「でも、そういうの、本当に素敵だと思うよ」
アユム先生「お待たせ」
アユム先生「待った?」
鬼方 カヨコ「アユ姉、来たね」
星見 コウセイ「おお、アユ姉。それじゃあ、ソラトを連れて帰るか。ロッピー、いつものように頼むぞ」
アユム先生「その前に、お時間もらえる?」
星見 コウセイ「え、何、アユ姉?」
アユム先生「じゃじゃ~ん! 本日最高のステージを披露してくれた『魔法少女ヘヴィキャリバー』に扮した捜査協力者のみなさんで~す! そして、ずっと展望塔から監視してくれていた【正義実現委員会】静山 マシロちゃんです!」
星見 コウセイ「お、おお!?」
アユム先生「みんな、今日は本当にありがとう。こういう形でラブちゃんとも仲良くなれたし、最高のステージだったね」
静山 マシロ「いえ、さすがは先生です。先生の見事な采配のおかげで【ボーダーランド遊園地】の平和は守られました」
河駒風 ラブ「ちょっと待って! それはそうだろうけど、私たちとしては肝腎の主犯を取り逃して褒賞金が出ないんだけど!?」
アユム先生「じゃあ、その褒賞金を使って何をする予定だったの、ラブちゃん?」
河駒風 ラブ「そりゃあ、焼肉を腹いっぱい――――――」
アユム先生「あ、焼肉ね。それじゃあ、明日はみんなで【シャーレ】においで。焼肉パーティーにするから」
河駒風 ラブ「え、いいのか、先生!?」
アユム先生「うん。一人一人を労ってあげたいから、おいでよ。ほら、一日張り込むことになったし、関係者を集めて
浅黄 ムツキ「よかったね、アルちゃん! 明日は【シャーレ】で焼肉パーティーだって!」
陸八魔 アル「本当ね!」
アユム先生「だから、コウセイくんもソラトさんが目覚めたら、ちゃんと来てね。無理なら、お中元のハムを送るから」
星見 コウセイ「ああ、わかったよ、アユ姉。本当にありがとう」
アユム先生「どういたしまして」
アユム先生「そしてね――――――」パシッ
守月 スズミ「あ」
アユム先生「この子が 私がキヴォトスに来たあの日に最初に一緒に戦ってくれた 私が大好きな女の子です!」
守月 スズミ「せ、先生ッ!?」
アユム先生「この子もね、オメガと同じ。【正義実現委員会】じゃなくて【トリニティ自警団】で活動していることに対して 各方面からいろんなことを言われ続けても なお自分が信じた正義を貫き通して、今日は潜入任務のために恥ずかしいのを耐えて魔法少女:テルミットホワイトのキャストにも挑戦してくれたんです」
アユム先生「最高の舞台だったよ、スズミ。恥じらう表情もキリッとした表情も、今日はスズミのことももっと知ることができて最高の一日だった」
守月 スズミ「せ、先生、そ、それ以上は……」
アユム先生「レイサもシズコも可愛かった! 見違えたよ!」
アユム先生「そして、マシロも今日一日お勤めご苦労さまでした。本当にありがとう」
アユム先生「私、マシロのために最高に美味しい焼肉を用意してあげるから、ハスミには内緒だよ?」
静山 マシロ「先生もお人が悪いです」
アユム先生「アルちゃんもね。たまにはアウトローらしく最高の贅沢をしておこうね~」
陸八魔 アル「そ、そうね。アウトローなら当然のことよね、最高の贅沢なんてものは」
アユム先生「だから、今日あったことは みんな 忘れないでね」
――――――たくさんの人たちの想いが集まって より良い未来を切り拓いていくはずだから。
アユム先生「私もスズミたちに合わせてマスコットの着ぐるみを着たかったよぉ」
静山 マシロ「やめてください、先生。あの乱戦の中だと確実に死んでしまいます」
アユム先生「それはそうなんだけどさぁ……」
静山 マシロ「先生も魔法少女になりたかったんですか?」
アユム先生「私、童顔ではあるけれど、三十路前の独身女性にはさすがに似合わないよねぇ……」
静山 マシロ「そ、そんなことはないと、思いますよ、先生? 先生は十分に可愛いと思いますよ?」
アユム先生「ありがとう、マシロ。私もマシロのことを可愛らしい女の子だと思っているよ」
アユム先生「そうだ、ご褒美にマシロの可愛いほっぺたにキスしてあげようか?」
静山 マシロ「そ、それはさすがに…………」
アユム先生「可愛いは正義なんだよ?」
静山 マシロ「――――――か、『可愛いは正義』ですか?」
アユム先生「考えたことない? どうしてウサギやネコはあんなにも愛らしい外見になるんだろうって。人間が品種改良するまでもなく、自然とそういう姿になっていった結果ということで、鳥や魚にも色鮮やかで本当に見事なまでの美しい種が存在しているよね」
アユム先生「神の摂理には『可愛いは正義』というのが組み込まれているにちがいないと思わない?」
静山 マシロ「た、たしかに、言われてみれば……」
アユム先生「だから、その神の摂理を目指して『可愛いは正義』を貫ける人はどこへ行っても愛されると思うんだ。なんてったって、神の摂理の体現者なんだから」
静山 マシロ「さすが先生です。勉強になります」
アユム先生「よろしい。ならば、私のため――――――だけじゃなく、みんなのために、何より自分のためにどんどん可愛くなっていってね、マシロ」
静山 マシロ「は、はい! 頑張って可愛くなります!」
アユム先生「うん、可愛い。キスしたくなった」
静山 マシロ「あ、先生! ち、近いです! 先生の顔がこんなにも――――――!」
静山 マシロ「あ」
スリスリ・・・
アユム先生「はい。今のは鼻と鼻を擦り合わせるエスキモーキスとほっぺにチューするチークキスをかけ合わせたやつね」
静山 マシロ「せ、先生……」
アユム先生「さあ、ハスミに今回のことを報告しよう」
アユム先生「それで【シャーレ】についたら、焼肉パーティーだから」
アユム先生「コラーゲンたっぷりの甘いものも用意したから、楽しみにしていてね」
アユム先生「だから、くれぐれもハスミには内緒だよ。食べる分が減っちゃうからね」
アユム先生「この杏仁豆腐はそのためのものだから」
静山 マシロ「はい、先生」
静山 マシロ「ですが、恐るべき脅威でした、昨日の怪獣は……」
アユム先生「そうだね。エルドギメラも強敵だったけど、必ず勝たなくちゃいけないんだ、私たちは」
静山 マシロ「それが私たちが正義を貫く理由ですから」
静山 マシロ「オメガもきっと、また立ち上がって人々の幸せを守ってくれると信じています」
静山 マシロ「では、到着です」
――――――これより