Blue Archive -Document SKIP feat.OMEGA and...-   作:LN58

30 / 38
第21話 マコトがふたり、荒ぶる ~宇宙人(オメガ)のための新春狂想曲第68番~

 

 

ウラン怪獣:ガボラ 撃破!

 

 

空が赤く染まる滅亡の危機を乗り越えた学園都市:キヴォトスに待ち受けていたのは、K-DAYから始まる新たなる脅威である怪獣災害であり、突如として「ソラ」から落ちてきた正体不明の人類の味方:ウルトラマンオメガの活躍によって その命脈は永らえていた。

 

しかし、怪獣災害による被害や悪影響は留まるところを知らず、年末年始を迎えたキヴォトスは例年に比べて圧倒的に平穏だったというニュースが流れていた。

 

それは吉報などではない。地球人を凌駕する身体能力と銃社会のために 普段から元気が有り余っている ヘイローを宿した生徒たちが愛銃を片手に暴れ回るのが日常茶飯事のキヴォトスで、何かしらお祭り騒ぎがあれば銃犯罪が起きないことなどありえないからだ。

 

つまり、度重なる怪獣災害からの復旧が追いつかず、将来に対する危機感から人口の流出や企業の撤退が相次ぎ、キヴォトス全体の活力が衰えているのだ。中には経営破綻した学園や自治区も出ていたぐらいなのだ。不良共が派手に暴れ回る元気や弾薬を買う金もないと言ったところか。

 

幸運にも怪獣災害が発生しなかったために()()()()()()()()()()年末年始を送れたことに各方面で驚きの声が上がり、新年早々にめでたいとする声が集まるのだが、全体の状況が見えている上の立場の人間からすれば、本当は素直に喜べない下り坂の状況にあることに戦慄した。

 

そのため、年末年始の以前からキヴォトス内外のあらゆる勢力が一丸となって生き残りを図るための会合や調整が行われていたのだった。もちろん、年末年始を休暇にするために絶対に年内にやるべきことを終わらせるという気概で。

 

そう、その年の最後の【怪特隊 特務班】の出動となったウラン怪獣:ガボラとの戦いは、年末年始前のまさしく師走のごとく多忙を極めた時期でのことであり、アユム先生が会合に出席していた時のことであった――――――。

 

 

その日、“怪特隊の母”アユム先生が不在の隙を突いて【怪特隊】本部から派遣されてきた監督官:雷音寺 マコトと【万魔殿】議長:羽沼 マコトの“二人のマコト”が【怪特隊 特務班】の拠点である【太陽倉庫】に押しかけてくることになったのである。

 

そして、来るなり【怪特隊 特務班】にダメ出しを“二人のマコト”が意気投合して行うのだが、その批判の対象がアユム先生になった瞬間、雷音寺 マコトのこめかみに羽沼 マコトが抜いた万魔殿制式拳銃が突きつけられていたのだった。

 

どうやら、【ティーパーティー】元ホストである以上に【怪特隊】代表:百合園 セイアに対しても身の程知らずとも言えるデカい態度を雷音寺 マコトが取ることを許しても、“シャーレの先生”に対する侮辱は絶対に許さないのが【万魔殿】議長:羽沼 マコトであった。

 

このため、勝手に押しかけてきた“二人のマコト”のせいで【太陽倉庫】は険悪な雰囲気となっており、早く他所(どっか)に行って欲しいというのが【太陽倉庫】で住み込みバイトをしている怪獣使い:星見 コウセイの偽らざる本音だった。

 

その空気を一掃するかのように、何の因果か、今年最後の怪獣がゲヘナ自治区に出現したことにより、“二人のマコト”が意気揚々と現場に駆けつけることになり、

 

方や、【怪特隊】本部から派遣された監督官:雷音寺 マコトが現地の【怪特隊】を顎で使い――――――、

 

方や、【NDF】の作戦行動の許可を出す立場にある ゲヘナ自治区の代表である【万魔殿】議長:羽沼 マコトが自前の部隊も引き連れて来たのである。

 

それもあって、調査チーム【怪特隊】と防衛チーム【NDF】の間で一悶着が起こることになり、【怪特隊】監督官:雷音寺 マコトが発電所に出現したタケノコのような殻から「氷山の一角」に着想を得て“氷山怪獣:イッカクキング”と名付けたことに 早速 イチャモンをつけたのが【万魔殿】議長:羽沼 マコトであった――――――。

 

 

どうやら、この機に現場で誰が一番偉いかを決めるために、ついでに自分と同じ名前なのも気に入らないことも相まって、これ幸いと【怪特隊】監督官:雷音寺 マコトの粗探しをしているらしく、

 

曰く、調査チーム【怪特隊】と防衛チーム【NDF】のどちらに優先権があるのかと言えば、すぐに銃爪を引かずにいられる慎重さと自制心を求められるということで多くのキヴォトス人にとっては狭き門になっている調査チーム【怪特隊】であるのだが、

 

実際に怪獣退治のための強力な兵器や戦力を保有しているのが防衛チーム【NDF】であり、【怪特隊】への配慮がなければ【NDF】に軍配が上がるのは必然とのこと。

 

そして、その【怪特隊】の分析データを元に【NDF】の怪獣退治の作戦プランが練られるわけだが、最終的に作戦の許可を出すのは作戦区域となって戦場となる自治体のため、

 

今回の場合、ゲヘナ自治区での怪獣退治ということで、必然と最終許可を出す自治体である生徒会組織【万魔殿】に【怪特隊】や【NDF】が完全に従うべきだと言う持論を展開したのである。

 

また、【NDF】はキヴォトス中から学園の垣根を越えて集まった生徒たちによる連合軍なのだが、各自地区にはそれぞれ学園独自に組織された防衛戦力が存在しているため、『その領分を侵さないように自治体からの許可を得ないと役目を果たせない』ことから基本的に弱い立場にあるのだ。

 

その弱い立場の補強のために作戦許可の説得材料を提供するのが【怪特隊】の役割なのだが、結局は『【怪特隊】の協力なしには【NDF】は役目を果たせない』という認識が生まれてきたため、空理空論を喚き散らす学者が現場で好き勝手をする状況に我慢がならなくなったようなのだ。

 

そこには自分(マコト様)が認めた“キヴォトスを救った英雄”であるアユム先生への敬意(リスペクト)があり、“怪特隊の母”として設立に大きく貢献した【怪特隊】をかような俗物の好きなようにはさせたくないという決然とした意思があった。

 

実際、“SKIPのおねえさん”以外に怪獣災害のプロを名乗っていい人間なんてキヴォトスには誰もいないぐらい、怪獣の研究はまだ始まったばかりのものなのだから、全員が素人でしかない状況で学界での権威を現場で振りかざしてくる身の程知らずの存在が癇に障ったのである。それを同族嫌悪とも言う――――――。

 

 

さて、これがどういう事態を招くことになるのかと言えば、発電所から流れる音波が調査の邪魔になるとして【怪特隊】監督官:雷音寺 マコトが発電所を脅して停止させようとすれば、当然 ゲヘナ自治区を預かる【万魔殿】議長:羽沼 マコトが自分の自治区の発電所の一方的な停止命令に猛反発するわけであり、

 

現場に戦力を展開していた【NDF】に怪獣退治に有用な分析データを上げようとする【怪特隊】と、【NDF】に作戦許可を出す自治組織【万魔殿】が対立するということで、両者の間に立たされた【NDF】としては弱い立場ということでオロオロするしかないのである。

 

しかし、この命令系統の混乱によって発電所が即座に停止しなかったおかげで、実は“氷山怪獣:イッカクキング”と名付けられた怪獣は発電所から流れる音波を嫌ってヒレを閉じていることに気づいた【怪特隊 特務班】怪獣博士:大木田 ソラトの提言もあり、

 

【怪特隊】本部から派遣されてきた監督官だか何だか知らないが、六法全書を思わせる分厚い怪獣対策マニュアルの自著『ライオネル・メソッド(税込8,800円)』を【怪特隊】の必読書として買わせようとするぐらい横暴かつ自己顕示欲の強い俗物なんかよりも、

 

【怪特隊】結成以前から数々の怪獣災害の現場に自分の足で駆けつけていた実績ありで、しかも【NDF】発足時の重要な作戦に参加してきたアユム先生率いる【怪特隊 特務班】の人間の言うことの方が遥かに信頼できるというわけで、

 

【NDF】は『特定の音波を苦手としている』ことからヤタノ作戦を応用した音波作戦の準備に取り掛かることになり、『問題はどうやって発電所から怪獣を引き離して安全に対処できるか?』など、【怪特隊】監督官:雷音寺 マコトと【万魔殿】議長:羽沼 マコトが言い争っている間に着々と作戦立案が進むのであった。

 

そして、重要なのは『なぜ苦手な音波が出ている場所に現れて身動きが取れなくなっているのか?』という不可解な状況の解明と元々の怪獣の目的であり、

 

そこには“連邦生徒会長”が地球から喚んだ怪獣調査の専門家“SKIPのおねえさん”石堂 アユムの教えである『基本的に怪獣は人前に姿を現す時は絶対に無駄なことをしない』という基本概念がしっかりと行き渡っていた。

 

そう、基本的に怪獣というものは現代文明が発達する以前の太古の存在であり、何千年も前に地上で活動していた頃とは大きく様変わりした現代の光景を前に“何があるのかなんてわからないのだから”慎重になるのは想像に難くなく、

 

それでも、現代に蘇って人前で“怪獣(KAIJU)”として活動をするということは人類文明の発達で様変わりした地上世界を探検するだけの強い目的意識があるわけであり、多くの場合は その怪獣の餌となるものがあるものの近くまで遥々やって来て 地上世界に姿を現すことがほとんどである。

 

これまでの怪獣の出現傾向から見ても、出現地点と目的地点の間には相当なズレがあることが確認されており、一直線に向かった延長上に怪獣が姿を現した要因となるものが見つかっている。

 

そのため、【NDF】はすぐさま“氷山怪獣:イッカクキング”と名付けられた怪獣の地中での体型や体の向きを調べ上げ、その方角を行った先に何があるのかに注目する。

 

そんなふうに【NDF】が【特務班】からの情報を元に怪獣の目的について探るべく動き出して現場が慌ただしくなると、現地の【怪特隊】もその線での調査に協力することになり、本部から派遣されてきた監督官:雷音寺 マコトのことなど完全に蚊帳の外に置いたのである。

 

そして、その方角には自然エネルギー発電所があり、出現地点である現在地との関連性を結びつけると『“氷山怪獣:イッカクキング”は電気エネルギーを主食とする怪獣』だと推定されることになったのである。何もしていないのに自分の手柄のように叫ぶ監督官の声がやけに響く。

 

しかし、【怪特隊 特務班】の巷で有名な怪獣博士:大木田 ソラトはそれは別の怪獣であるような気がしていた。記憶の中にある怪獣の姿と主食が一致しない様子。

 

すると、ここで怪獣博士の助手:星見 コウセイが発電所と聞いて思い出したのが、現代に蘇って再び地上で猛威を振るおうとしていた古代粘菌:エドマフィラであり、それに寄生されることになった地底怪獣:パゴスのことであった。

 

そう言えば、あの時のパゴスはゲヘナ自治区のラドン温泉を一直線に目指していたわけであり、パゴスの主食である代表的な放射性物質:ウラン鉱石は原子力発電に利用されているというわけで――――――。

 

だから、以前にゲヘナ自治区に出現したパゴスのようにウラン鉱石のようなものを狙っている可能性を星見 コウセイが思いついた時、いよいよ大木田 ソラトにピンと来るものがあったのである。

 

しかし、こんな山間に大量の冷却水を必要とする原子力発電所が建てられるわけもなく、発想がまさしく素人だと雷音寺 マコトが平然とバカにしてくるのだが、それに対して意外にも羽沼 マコトがコウセイの発想を後押しする情報をもたらした。

 

どうやら、この辺りには多くの隕石が降っていたらしく、それによって隕石に大量に含まれている宇宙由来の高エネルギー物質:カエン102が産出されており、『同じエネルギーで刺激すると連鎖的に内部暴走を引き起こす』という特性の利用法を研究するために最新の研究所や貯蔵庫が新しく建てられたのが近年のことらしい。

 

そう、ゲヘナ自治区においてカエン102の本格的な利用を推進した存在というのが、2年前にキヴォトス中を恐怖に陥れ、失踪した“連邦生徒会長”が【ゲヘナ学園】と【トリニティ総合学園】との間にエデン条約を結ばせる大元の原因となった“雷帝”であったのだ。

 

そのため、新物質:カエン102の研究もまた【“雷帝”の遺産】とも言えなくはないものであり、そうした歴史的背景を知らずに 宇宙からの核燃料とも言える カエン102の存在に辿り着くのは慧眼だとコウセイのことを素直に褒め称えたのである、あのマコト様が。それだけアユム先生が率いる【怪特隊 特務班】の人間には一目置いているわけである。

 

第一、本当に“氷山怪獣:イッカクキング”なる怪獣の主食が電気だと言うのなら、 もっと発電力に優れた大型の発電所を目指すべきであり、この程度の規模の発電所から出される音波を苦手としていることの説明がつかないと、マコト(羽沼)議長がマコト(雷音寺)監督官に物申す。

 

実際、調査で判明した怪獣の体の向きとはだいぶズレがあるわけなのだが、“氷山怪獣:イッカクキング”の目的地点と推定された自然エネルギー発電所とはそう遠くない場所にカエン102の貯蔵庫があり、ついでに出現地点の土壌からもカエン102が確認され、信憑性がますます高まる。

 

奇しくも、【怪特隊】に必読書として 無理矢理 買わせようとしていた自著『ライオネル・メソッド』にも記載があるため、雷音寺 マコトとしてもカエン102を含む隕石や土壌に怪獣が引き寄せられた可能性に頷かざるを得なかった。

 

一方、怪獣の目的については調査が進んだものの、現状の戦力でどうやって発電所に被害を出さずに“氷山怪獣:イッカクキング”を倒すかで揉めることになった。そこは完成度の高い作戦内容を提案しなければ、その地の支配者である【万魔殿】議長:羽沼 マコトは 当然 承知なんてしない。まさに難題である。

 

もちろん、被害を気にせずに戦える場所に怪獣を誘導して対処すべきであり、特定の音波を嫌って こうして今も動きを止めていることを利用すれば、ここは音波を一旦は遮断して動き出したところに攻撃を加えてポイントに追い立てる作戦が有効かと思われた。

 

パゴスと同じ四足歩行怪獣であることは地中の様子を分析して判明しているため、今のうちに地上に出ているタケノコとしか言いようがない部分に大量の爆薬を巻き付けて、周囲に被害が及ばないポイントに追い立てたら起爆して 確実に爆殺する作戦が提案され、これに賛同した羽沼 マコトがGOサインを出そうとすると、

 

ポイントに追い立てるための攻撃で取り付けた爆薬が引火して 最悪 動き出した直後に攻撃部隊や発電所が爆発に巻き込まれる可能性があることを百合園 セイアが冷静に指摘すると、忌々しそうに羽沼 マコトがこちらを見る。

 

すると、自分の名前が書かれたボラードを模した形の赤い足置きを常備して事ある毎にそれに足を置いてポーズを決めながら考えを巡らせる変癖を持つ 同じ名前の羽沼 マコトに負けず劣らずのナルシスト:雷音寺 マコトが自身が【怪特隊】本部から派遣された監督官であり、ここがプロの現場であることを急に主張して、羽沼 マコトをはじめとする生徒たちを小馬鹿にするのである。

 

どうやら、雷雲が迫ってきているらしく、タケノコのような形状で中途半端に怪獣が地上に食み出して苦手な音波のために身動きが取れないところに『誘雷針を立てて雷エネルギーで怪獣を倒してしまおう』と突飛な発想を口にし出したのである。先程まで電気エネルギーが主食だと主張していた人間とは思えない発想の柔軟さである。

 

しかし、こうして怪獣が出現した現場に雷雲が迫っているともなれば、キヴォトス人にとっては嗜みと言える愛銃をはじめとして多くの金属製品に囲まれている【NDF】や【怪特隊】の装備も危ないし、発電所の運転にも影響が出てくるわけで、雷雨時の作戦行動の危険性を考えるなら、誘雷針を積極的に利用するのは一石二鳥の策のように思えた。

 

そんなわけで、どうやって怪獣を発電所から離すかの完成度の高い提案がなかったということで、消極案として『雷雲を利用して雷エネルギーで地中の怪獣を倒す』という前例のない作戦が許可されることになったものの、

 

さて、ここで問題になったのは誰もゴロゴロと遠くで雷鳴が響いた後にバリバリと近くに落雷した時の音の原理を知らなかったことであり、

 

そして、落雷対策で避雷針を設けているのは安全性が重視されている施設なら当然なので発電所にも避雷針があり、一方で落雷で怪獣を倒すために誘雷針を設置したことにあった。

 

なぜなら、雷音とは落雷の際に発生する巨大な熱と電気で空気が瞬間的に膨張して発生する衝撃波でもあり爆発音でもあるのだ。

 

ということは、それが現場に鳴り響いたということは、高エネルギー物質:カエン102を求めて地上に姿を現そうとして身動きを封じられていた“氷山怪獣:イッカクキング”の鎖となった特定の音波が、バリバリ ゴロゴロと響いた雷音によって掻き消されたわけであり――――――、

 

発電所から発生している音波が届かなくなったことにより、“氷山怪獣:イッカクキング”が活動を再開してしまい、そのまま目の前の発電所に迫り出したのである。

 

それこそがタケノコに思われていた“氷山怪獣:イッカクキング”の正体であるウラン怪獣:ガボラであったのだが――――――、

 

すぐにウルトラマンオメガとメテオカイジュウが現れ、雷鳴が響く中でも【NDF】も事前に準備していた音波発生装置でガボラの動きを封じようと待ち構えていたのである。その対応では極めて迅速であった。

 

やはり、内心では アユム先生が推している みんなヒーロー:ウルトラマンが助けに来てくれることを誰もが期待していたわけであり、

 

頭を包んで地表でタケノコにように見せていたガボラがヒレを回転させることでまさかの空中戦を行い、その奇襲攻撃によってウルトラマンを翻弄したのであったが、

 

そこに落雷の危険性を顧みずに【万魔殿】の戦闘部隊が蛮勇を発揮して『ヒレに包まれて守られていたなら内側は脆いはず』とガボラの顔面に攻撃を集中させたことでガボラの致命的な隙を生み出したのである。

 

結果、その隙を見逃さずにヴァルジェネスアーマーを纏ったオメガによってヒレを丸ごと切り裂かれたことで首元が寂しくなったガボラに追撃のヴァルジェネスハルバードクアドランズを首に叩き付けられる形で爆散したのであった。

 

終わり良ければ全て良し、大きな被害を出すことなく今年最後の怪獣退治を終えたことで雷音が鳴り響く現場では喝采の声が溢れ出すこととなった――――――。

 

 

その後、あれだけ威張り散らしておきながらガボラ退治に何の貢献もできなかった【怪特隊】監督官:雷音寺 マコトは自分の面目が丸潰れとなり、公然と馬鹿にしてきた【怪特隊 特務班】はもちろん、それ以上に【万魔殿】に弱みを握られることとなってしまったために態度を一転。

 

それまでの態度が嘘のように腰を低くしながら身形を整えて【太陽倉庫】に挨拶に訪れ、【怪特隊】全員に買わせようとして持ち込んでいた自著『ライオネル・メソッド』3冊を回収して自分のサングラスを忘れる程に逃げるようにその場を後にしようとしたのであった。

 

また、『アユム先生にはくれぐれも昨日のことは……』とやんわりと口止めを嘆願しようとしていたのだが、それに対して【ティーパーティー】元ホスト:百合園 セイアから『ご心配なく。先生には上手く伝えておく』と実に【ティーパーティー】らしい返答もされていたため、【万魔殿】だけじゃなく【ティーパーティー】からも睨まれていることを自覚して冷や汗が止まらなくなっていたのである。

 

しかし、【太陽倉庫】を出ようとした矢先、【万魔殿】議長:羽沼 マコトを伴った“怪特隊の母”アユム先生と鉢合わせることになり、【怪特隊】本部から派遣されてきた監督官:雷音寺 マコトの表情が絶望の色に染まる。

 

ところが、自分が不在のところに乗り込んできて昨日のガボラ退治で現場の足を引っ張ることしかしなかった無能に対して“怪特隊の母”として【万魔殿】議長:羽沼 マコトと一緒に厳しく追及するのかと思いきや、

 

六法全書を思わせるとてつもなく分厚い自著『ライオネル・メソッド』を抱えた両手に優しく触れ、そのまま脇に置かせると、なんとアユム先生のカバンから『ライオネル・メソッド』が取り出され、著者である雷音寺 マコトにサインを求めてきたのである。

 

その上で、ガボラ退治の失態をやんわりと指摘しながらも 雷音寺先生が本業の学者としてはとても優秀であることを褒め称え、畑違いであっても怪獣退治に積極的に協力してくれた姿勢に感謝を述べ、今回の経験を踏まえて ますますの活躍をすることを人懐っこい笑顔で祈ったのである。実際、自身が創設に携わった【NDF】や【怪特隊】のモットーは『試行錯誤』と『臥薪嘗胆』なのだから、1回ぐらいの失敗でへこたれてはいけないのだ。

 

その対応には雷音寺 マコトどころか、羽沼 マコトも驚くことになり、迷惑な大人の存在に嫌悪感を隠せなかった星見 コウセイや百合園 セイアにも本物の大人の振る舞いというものを見せつけることになったのである。

 

そのため、さっきまで意気消沈していた迷惑な大人:雷音寺 マコトは途端に喜色満面となり、アユム先生が購入していた『ライオネル・メソッド』に張り切ってサインをした後、更にアユム先生の直筆のファンアート:()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()を贈られ、まさに大感激の瞬間であり、この一瞬のやりとりだけでアユム先生の大ファンになったのである。

 

そうして来た時とは打って変わってウキウキルンルンで【太陽倉庫】を後にした雷音寺 マコトを見送ったアユム先生は『人間誰しも優れた点とめんどくさい点を併せ持っているわけで、それはこの場にいる全員にも当てはまることなのだから、いちいち誰かのことを嫌っていたら組織力で怪獣に対抗するだなんてことは到底できない』ということで、『怪獣に向き合うということは それに立ち向かうひとりひとりの人間とも向き合うことである』と締めくくったのである。

 

特に、エデン条約の騒乱をめんどくさい状況に更に追い込んだ複雑な要因を担っていた【万魔殿】議長:羽沼 マコトと【ティーパーティー】元ホスト:百合園 セイアには深く突き刺さる言葉であり、その場で好感度を稼いで出会う人たちを次々と味方にする“シャーレの先生”の器量と人徳の淵源にあるものに触れることになったのである。

 

そう、“シャーレの先生”石堂 アユムがこれまで不可能を可能にして“キヴォトスを救った英雄”にまでなったのは決して偶然だけで片付けられるものではなく、そこには透徹した信念と深遠な人間観察と人間理解に裏付けされた必然が用いられていたのである。

 

それは科学的証明こそなされてはいないものの、これまでの人生経験と磨いてきた感性と感覚から『こうすれば人と必ず仲良くなれる』という人生の法則とも言える秘密の方程式が成立していたのである。

 

そうして人と人とを繋いでいったことで、初めての怪獣:グライムが出現したK-DAYからわずか1年足らずで【NDF】と【怪特隊】の発足に漕ぎ着けられたわけであり、

 

過去に空が赤く染まるキヴォトス滅亡の危機においてキヴォトス中の生徒たちの心を1つにした実績があるのだから、石堂 アユムの中ではそんなことはもうすでに容易いことに分類されていたのである。

 

そういうわけで、年末年始の休暇を是が非でも獲得すべく、師走にギュウギュウと詰め込まれた様々な会合に精力的に参加してはモデレーターとして獅子奮迅の活躍をして【怪特隊 特務班】の拠点となる【太陽倉庫】に帰ってきたわけであり、

 

その裏には“シャーレの先生”にして“SKIPのおねえさん”でもある“怪特隊の母”として各方面で大忙しの地球人:アユム先生の指示を仰がなくてもしっかりと怪獣退治を遂行できるようにまでなっていた【NDF】と【怪特隊】の成長があり、ガボラ退治の成功を大いに喜んだのである。

 

この大局観こそが学園都市:キヴォトスの主権者である生徒たちに欠けている重大な要素であることがわかり、またひとつ生徒たちは自分たちが取り巻く世界に目を向けていく大人の階段を上っていくのであった。

 

その裏で、「ソラ」から落ちてきた宇宙人である大木田 ソラトは幻視する――――――。

 

 

大木田 ソラト’「本当にそれでいいのか?」

 

大木田 ソラト’「それがお前のやるべきことなのか?」

 

 

こうして無事にK-DAYが始まった災厄の年をなんとか乗り越えた学園都市:キヴォトスは歓喜の声と華やかさの裏で確実な衰退の道を歩んでいる一方、年末年始は晴れやかに大いに盛り上がったのだった。

 

当然、キヴォトス一の人気者である“シャーレの先生”アユム先生は年末年始であろうとも各自治区や各団体での催しに引っ張りだこで全く休めていないために自宅のベッド以外で寝泊まりを繰り返すことになり、そこには()()()()のためのお泊まり会が催されていたのである。

 

年末年始のお泊まり会の最初となったのが今年最後の怪獣退治の舞台となったゲヘナ自治区を治めている【万魔殿】であり、キヴォトス随一の危険地帯である【ゲヘナ学園】もまた度重なる怪獣災害の影響で活気が失われたことで犯罪発生件数が減少傾向にあり、前年比で極めて静かで快適な環境になったと【万魔殿】議長:羽沼 マコトは強がる。

 

常日頃から机に向かうことなく 元気が有り余って 外で犯罪行為に走っているのがゲヘナ生なので、少しばかり落ち着きを持ってもらうことで治安が大幅に回復するのは道理ではあるのだが、

 

経済の面から言えば、そういった無軌道で衝動的かつ積極的な消費活動のおかげで【ゲヘナ学園】の財政が賄われていることを踏まえれば、ゲヘナ生の購買意欲と購買力の低下はそのままキヴォトスで一二を争うマンモス校の弱体化に繋がるということで二者択一(トレードオフ)になっており、実に悩ましい事態に直面していた。

 

それでも、その経済規模は依然として巨大なものであり、アユム先生が主賓(ゲスト)として参加した【万魔殿】の忘年会をオンラインで生配信することでゲヘナ自治区の住民たちと双方向のやりとりができて大いに盛り上がったのは良い思い出となり、

 

その一日の最後の〆として【万魔殿】のみんなで()()()()()()()()()で川の字になって一緒にお泊まり会をするのが最高にワクワクしたのだ。

 

 

この地球人の女、恐ろしいことにキヴォトス中の主要学園の生徒会長と寝ているわけであり、【ティーパーティー】ホスト:桐藤 ナギサや【セミナー】会長:調月 リオはもちろん、【万魔殿】議長:羽沼 マコトも例外ではなかった。

 

 

きっかけは【万魔殿】議長:羽沼 マコトから『先生をどうにかして味方につけろ』という無茶な命令を下されたことで、それをサボりの口実にして一時期【シャーレ・オフィス】に【万魔殿】戦車長:棗 イロハが入り浸るようになったことであった。

 

先生が仕事をしている目の前でまるでピクニックのようにシートを拡げてお気に入りの本やゲームを置いて堂々とサボっている棗 イロハが『先生も一緒にサボろう』と先生を誘惑すると、

 

【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】の実態がアユム先生の裁量で運営されている自由業であるために、個人経営のカフェが営業時間を自由に変えられるように、その瞬間から【シャーレ・オフィス】の今日の業務時間は終了ということで、

 

仕事とプライベートはきっちりわけているアユム先生はあまりの決断の早さに狼狽える棗 イロハを 早速 先生の家にお持ち帰りして、イロハと一緒にサボった挙げ句に文字通りに床を共にしたのである。もちろん、未成年と淫行をしたわけではないのだが、うら若き乙女の純情を()()()()が弄んだことには変わりない。

 

そして、その足で【万魔殿】に乗り込んできて、これまでたくさんの生徒たちと寝てきたことを示唆する写真をキヴォトス征服の野心をまったく隠していない【万魔殿】議長:羽沼 マコトに見せつけながら()()()()が恐れ知らずに挑発する。

 

曰く、『各学園の生徒会長とも寝ている先生を手籠めにできればキヴォトス征服の実現に大きく近づく』『それだけのチャンスを目の前にしていながら、先生の許に棗 イロハを送り込んできたのは自分の身体に自信がないから』『このままだと()()()()()()()()()()()()()()()()()と各学園からみなされる』と耳元で囁き、普段は温厚篤実でいて いざという時の決断力に優れる 決して侮ってはいけない女傑だとアユム先生を分析していた羽沼 マコトに衝撃が走った。

 

それだけに、ハニートラップ要員として送り込んだ棗 イロハを逆に味方につけたアユム先生の巧妙な罠だとわかっていても、薄着で寝息を立てている“連邦生徒会長代行”や“ビッグシスター”の写真を目にしてしまった以上、棗 イロハを通じて誰もが溺愛して止まない丹花 イブキを操って【万魔殿】の主導権を握ったアユム先生の挑発に乗らざるを得ない状況に追い込まれていたのである。

 

それは天下のマコト様にとっても未体験(初めて)のことであり、丹花 イブキを巻き込んだ最初のお泊まり会が催されると、みんなから一目置かれている大人である地球人:石堂 アユムがすらりとした体形に長い銀髪や鋭い目など容姿だけなら男装の麗人を思わせる美形である羽沼 マコトに執拗に二人きりになった時に迫るわけであり、

 

マコト様がシャワーを浴びていれば すかさず入ってくるし、食事の時には必ずマコト様の隣の席に着いてテーブルの下で足を絡めようとし、最後に川の字になってみんなで眠る際はイブキをマコトとイロハが間に挟んでいる裏で石堂 アユムがマコト様に絡みついてきて耳元でじっくりねっとりと愛を囁いてくるのだ。

 

いや、正確には執拗に『私と“友達”になろう』と呼びかけているわけであり、それを友愛と表現すれば それも愛と言えるものではあるのだろうが、狡猾に逃げ道を封じられた上でしつこく付きまとわれた末にあるのは とことん相手を褒め倒す 究極の褒め殺しであり、

 

いかに羽沼 マコトが魅力的で素敵な女性かを限界化した夢女子のように熱を帯びて淀みなく語り続けるのだから、根が単純かつ豪快なマコト様としてはそこまで自分のことを持ち上げてくれることに悪い気がしないと思ってしまい、どこまでその態度が続くか、化けの皮が剥がれる瞬間が来るのを興味本位で待ち構えていたら、無害さを装ってパーソナルスペースを軽々と踏み越えてくるのだ。

 

極めつけは大の大人が自身が溺愛しているマスコット:丹花 イブキと声を揃えて『大好きッ!』の言葉を浴びせてきたことであり、ついでに一緒に差し出された似顔絵はもちろんイブキと比べたらプロなのでメチャクチャ上手いはずなのだが、イブキの画力に合わせて下手な絵を描くのを演じるのが上手いときた。

 

これほどまでにイブキのことを立てられる大人はいないということで、たった1回のお泊まり会ですでに心の中で先生に負けを認めている自分が出来上がっており、

 

みんなが寝床に就いたところで『私の大好きな“友達”のマコトと同じものを見ていたい』として同じ布団の中に入り込んできて、溺愛するイブキの可愛らしい寝顔をマコト様を胸に抱きかかえて堪能する豪胆さに さしものマコト様も一晩中ドギマギさせられることになったのである。

 

そして、一晩中 悶々とし続け、気付いた時には先生の胸の中に包まれた銀髪の美しい女性の寝顔を【万魔殿】のみんながじーっと見ていたわけであり、先生が写真を撮らずとも【万魔殿】書記:本宮 チアキが激写しており、定期新聞『週刊万魔殿』の次号の特ダネに使うかどうかで一悶着が起きたのは言うまでもない。

 

完全に()()()()の手のひらの上で転がされていた事実に打ちのめされたマコト様ではあったものの、『私はあなたのことを“友達”になりたいぐらい大好きで』『そのためなら、いくらでも褒め称えてあげる』として、『私のことを褒め言葉しか喋らないインコだと思って側に置いて欲しい』だなんて切なげに言われれば、尊大なマコト様の自尊心をくすぐられるどころか、それがイロハを送り込んだ意趣返しだと頭では理解していてもお泊まり会で一晩で身体に刻み込まれた感覚(ドキドキ)が蘇ってきて脳内に快楽物質を分泌させていくのである。

 

なので、マコト様としては言葉にすることは絶対にしない気持ちでいるのだが、言葉にしなくてもアユム先生のことがもう手放せない存在になっており、アユム先生のやりたいことに何だかんだ言って協力してしまうようになってしまっていたのである。

 

 

まさに計画通り。マコト様ですら周到な罠を仕掛けたお泊まり会で一晩で落としてしまった 稀代の人誑しである()()()():石堂 アユムが心の中にスルリと入り込んでくるのを止められる者は存在しない。

 

 

もちろん、キヴォトスで一二を争うマンモス校【ゲヘナ学園】を支持率3%でありながらも曲がりなりにも生徒会長として手綱を握りつつも自身も最大のトラブルメーカーである【万魔殿】議長:羽沼 マコトの暴走を喰い止めることができる立ち位置を確保すべく、計算尽くの行動ではあった。

 

しかし、『羽沼 マコトのような綺麗な人とも仲良くなりたい』と思う下心があったのも事実であり、趣味と実益を兼ねた本音と建前が渾然一体となった自由と混沌はまさに【ゲヘナ学園】の校風と重なるため、より自由と混沌を体現した存在こそが【ゲヘナ学園】では最強の存在であることから、羽沼 マコトが()()()()に身も心も蕩けさせられるのは無理のないことであった。

 

そんなわけで、アユム先生によって外付けの理性が取り付けられた【万魔殿】はK-DAYを迎えてしまった御時世においては自治区を司る生徒会組織としては極めて真っ当な対応をし続けており、不測の事態の連続で先行きが見えない時だからこそ【キヴォトス三大学園(BIG3)】の一角としての安定感が逆に存在感を際立たせることになっているのだ。

 

 

それから年越しをして元旦を迎え、初詣となった。

 

去年は“連邦生徒会長”が事前に赴任させていた怪獣災害の専門家であった“SKIPのおねえさん”が本領発揮したことで防衛体制が可及的速やかに整えられたものの、怪獣災害は増加傾向にあり、その悪影響が徐々に各自地区に現れているため、誰もが期待と不安で胸の内をいっぱいにして新年を迎えていた。

 

そのため、『初詣はアユム先生と一緒がいい』という要望が集まることになり、それらを取りまとめるために9つのエリアを分担する【怪特隊】の区割りごとにアユム先生が代表して9つのエリアの主な神社に代表して正式参拝し、各地のモニターで画面越しに団体参拝をするという試みが行われたのである。

 

新年早々、『初日の出を拝んでから元旦の空をライトビートルで飛び回って9つの神社に正式参拝する』というハードスケジュールではあったものの、そうでもして人心を安定させないことには組織力を発揮して怪獣災害に立ち向かうことができなくなるのだから、怪獣災害のプロとして 人一倍 そのことを意識して みんなの心を繋ぎ止めるのである。

 

この年、どこの神社も初詣客は最多記録を更新することになり、怪獣災害によって犯罪が抑制された上で怪獣災害が起きていない正月の賑わいはキヴォトスにとっては呆れ返るほどに平和そのものであった――――――。

 

 

大木田 ソラト「あ、セリカだ。やっほー」

 

黒見 セリカ「あ、誰かと思えばソラトさんじゃないですか。それにコウセイさんも」

 

星見 コウセイ「へえ、ここの神社で巫女さんのバイトをしているんだね」

 

黒見 セリカ「うん。どこの神社でも巫女さんのバイトを募集しているんだけど、ここが一番割りが良くてね」

 

黒見 セリカ「と言うより、去年、この神社でSNSを使った【黒亀組】のお賽銭箱の詐欺事件と【カイテンジャー】によるお賽銭箱の強盗事件が同時に起こってね……」

 

黒見 セリカ「それでSNSで評判だった御利益は真っ赤な嘘だったってことで誰も寄り付かなくなったわけなんだけど、」

 

黒見 セリカ「度重なる怪獣災害でみんなが不安になっていたところに『初詣に向けて神社を再建しよう』ってことで、去年【便利屋68】と一緒にお賽銭箱を取り戻そうと頑張ったから、それで『バイトリーダーにならないか』って早いうちから声をかけてもらったんだ」

 

星見 コウセイ「そうだったんだ」

 

大木田 ソラト「いつも一生懸命でえらいな、セリカは」

 

黒見 セリカ「ありがとうございます、ソラトさん」

 

黒見 セリカ「まあ、私はこうしてバイト三昧の日々で、アユム先生と一緒に怪獣退治に出ているソラトさんやコウセイさんと比べたら、大したことなんてやれてないんだけど……」

 

大木田 ソラト「いや、それはちがうぞ」

 

大木田 ソラト「アユ姉が言うには、怪獣退治を頑張る意味ってのは『普通の人が一生懸命に頑張っている毎日の営みが続けられること』だからさ、セリカたちのいつもの日常が守られていることが十分に恩返しになっているから」

 

星見 コウセイ「そうだぞ、セリカ」

 

星見 コウセイ「去年は砂漠横断鉄道再開の裏で【“雷帝”の遺産】ってのを巡る陰謀に巻き込まれて本当に大変だったわけなんだし、知り合いがこうして頑張りを認めてもらえていることが俺としても嬉しいことだから」

 

黒見 セリカ「……あ、ありがとうございます」

 

黒見 セリカ「じゃあ、気を付けてくださいね。御利益を求めて キヴォトス各地から人が押しかけてきた去年と比べたら、さすがに今年は人は少ないけど」

 

大木田 ソラト「ああ。セリカも」

 

星見 コウセイ「またな、セリカ」

 

 

陸八魔 アル「あら、もしかして そこにいるのはソラトさんとコウセイさんね!」

 

浅黄 ムツキ「本当だ! おーい!」

 

大木田 ソラト「おお、みんな!」

 

星見 コウセイ「あけましておめでとう!」

 

伊草 ハルカ「あ、あけましておめでとうございます、ソラトさん、コウセイさん……」

 

鬼方 カヨコ「奇遇ですね。てっきり、アユム先生と一緒に参拝をしているものだと思っていましたが」

 

星見 コウセイ「いや、俺たちなんかがアユ姉と一緒に出突っ張りになるのはちがうと思って」

 

大木田 ソラト「アユ姉がまた各自地区ごとの正月の催事のパンフレットを渡してくれたわけだから、あちこちの正月を見て回ろうってことになったんだ」

 

鬼方 カヨコ「そうでしたか」

 

大木田 ソラト「みんなはもう初詣してきたのか?」

 

浅黄 ムツキ「ううん。これからだよ」

 

陸八魔 アル「去年は【黒亀組】が流した情報に踊らされて ここに初詣に来たわけだけど、」

 

陸八魔 アル「しっかりと一年、怪獣災害が起こるようになっても会社をやっていくことができたわけだから、去年の報恩感謝をしに正式参拝に来たってわけ」

 

大木田 ソラト「なるほどな」

 

伊草 ハルカ「また来年もこうしてアル様やみんなと一緒に初詣に来たいです……」

 

浅黄 ムツキ「どうだろうね~。怪獣なんてものが当たり前のように現れるようになって、みんなの暮らしも変わっていっているけど」

 

鬼方 カヨコ「それでも、大切なものを守り通すためにソラトさんもコウセイさんも【怪特隊】の一員となってアユム先生のことを支えているわけなんだから、【怪特隊】の活躍のこともしっかりと祈っておかないとね」

 

陸八魔 アル「そうね。私たちもいつまた【NDF】の怪獣退治に呼び出されるかわからないし、必要だと思ったことはしっかりと祈っておかないとね」

 

浅黄 ムツキ「それじゃ、まったね~!」

 

浅黄 ムツキ「たまに遊びに行くから~! その時はアルちゃんがお腹を空かせているかもだけど!」

 

陸八魔 アル「む、ムツキ!?」

 

大木田 ソラト「ああ。いつでもいいぞ」

 

星見 コウセイ「お互い、今年も 精一杯 頑張っていこうぜ!」

 

 

シロコ*テラー「ねえ、あなたたち、アビドス砂漠――――――、生徒会の谷で会ったよね?」

 

星見 コウセイ「え?」

 

大木田 ソラト「そのヘイローの形……」

 

星見 コウセイ「えっと……」

 

星見 コウセイ「あ! もしかしてシロコのお姉さん?」

 

大木田 ソラト「いや、コウセイ、この子は――――――」

 

シロコ*テラー「そう、私はちびシロコのお姉さん」フンス!

 

シロコ*テラー「ここにはセリカの様子を見に来た。去年の正月に起きた賽銭箱が【カイテンジャー】に盗まれた騒動が懐かしい……」

 

シロコ*テラー「こうして無事にみんながまた新年を迎えることができて本当に良かった」

 

シロコ*テラー「だから、今年も誰も犠牲にならないように私にできることをするつもり」

 

シロコ*テラー「あなたたちもそうなんでしょう?」

 

シロコ*テラー「本当は“SKaRDのおねえさん”の指導を受けた私の方が怪獣退治の専門家に相応しいけど、ここでは“SKIPのおねえさん”が上手くやっているわけだから、この世界のことはこの世界に生きる人たちが一番に頑張るべき」

 

シロコ*テラー「先生のことをおねがいします。イシドウ・アユムと同じ存在だと言うのなら、きっと、私たち生徒のために何もかもを投げ捨てて守ろうとするだろうから」

 

星見 コウセイ「ああ。わかっているよ」

 

星見 コウセイ「俺だってキヴォトス人じゃないから一発の銃弾が命取りだけど、アユ姉はそんな中で必死にキヴォトスの平和のために新年早々から駆け回ってくれているんだから、」

 

星見 コウセイ「俺たちも俺たちのできることをしてアユ姉のことを全力で支えていくから」

 

大木田 ソラト「ああ。俺たちは“仲間”であるし“友達”でもあるからな。アユ姉のことを助けるのは当然のことだ」

 

シロコ*テラー「……そっか。この世界のイシドウ・アユムがこんなにも多くの人に慕われていたのは“友達”がいっぱいいたからなんだね」

 

シロコ*テラー「なら、私も教官と生徒という関係じゃなくて、“仲間”や“友達”を目指すべきだったんだ」

 

シロコ*テラー「………………」

 

星見 コウセイ「あ、あの……?」

 

シロコ*テラー「引き止めて悪かったね」

 

シロコ*テラー「それじゃあ、今年も一年が無事であることを祈って」

 

大木田 ソラト「ああ。またな、シロコ」

 

シロコ*テラー「……うん、またね」

 

 

鰐渕 アカリ「あ、ソラトさん! それにコウセイさん!」

 

星見 コウセイ「げっ」

 

大木田 ソラト「おお、アカリ! あけましておめでとう!」

 

星見 コウセイ「あけましておめでとう。今年も、まあ、よろしく……」

 

鰐渕 アカリ「はい。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね、ソラトさん、コウセイさん」

 

大木田 ソラト「アカリも初詣に食べ歩きに来ているのか?」

 

鰐渕 アカリ「はい。ですが、去年も名店が店を畳んでしまう危機にあったのを再建しようと奮闘しましたが、今年は度重なる怪獣災害の悪影響で閉店になってしまう店が多いんです」

 

鰐渕 アカリ「ですから、【美食研究会】の総力を上げて素晴らしいお店がなくなっていくのを防ごうと活動しているんですよ」

 

星見 コウセイ「そうだよな。俺たち【怪特隊】からすれば、年末年始になる前に何とか怪獣を倒して無事に年を越せたって感じだけど、」

 

星見 コウセイ「その裏で、弱い立場の人たちから先に生活が苦しくなっていっているんだもんな……」

 

大木田 ソラト「そうだな。俺たちも【怪特隊】になって蓄えができたけど、そこまで贅沢な暮らしなんてできないもんな」

 

星見 コウセイ「物価も高くなってきているし、早く何とかならないかな……」

 

大木田 ソラト「それでも、お金がなくても分け合うことができれば“楽しい”を共有できるはずだから」

 

星見 コウセイ「それはそうだろうけどさ、さすがにバナナ1本を分け合うような日々は懲り懲りだぞ?」

 

大木田 ソラト「ああ。俺もコウセイの作る焼きそばがいつまでも食べられないのは嫌だし、俺もアカリのようにみんなのために俺にできることをやるよ」

 

星見 コウセイ「俺も、俺にできることを精一杯にやっていくよ」

 

鰐渕 アカリ「さすがはアユム先生が惚れ込んだお二人です」

 

鰐渕 アカリ「これからのご活躍が楽しみですね」

 

 

度重なる怪獣災害による政情不安から初詣客が過去最多を記録し続ける学園都市:キヴォトスの正月はあまりにも静かで人々の活気に満ちた声や足音が響き渡った。

 

しかし、あくまでも犯罪天国であるキヴォトスの感覚で銃声や爆発音がいつもよりも響き渡らないだけであり、何かしらの犯罪は常にどこかで起きてはいたのだ。

 

事実、初詣客が過去最多となったことで神社の賽銭を資金源にして奪い取ろうとする不逞の輩というものはいるものであり、

 

戦隊ヒーローのような格好をしているのに 決して正義の味方などではない 重犯罪者の指名手配犯【無限回転寿司戦隊:カイテンジャー】が巨大ロボ:KAITEN FXを駆って初詣の参拝客が列をなしている神社に迫ったのである。

 

その迫る巨影に人々が逃げ惑うのだが、独善的な正義のために大型兵器の設計データや物資・資金の強奪などを常日頃から繰り返している 自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪にとっては その罰当たりに相応しい大凶の展開が待っていた。

 

たまたま現場に居合わせた怪獣使い:星見 コウセイがメテオカイジュウによる連携攻撃を繰り出すと、【カイテンジャー】は出てきてすぐにコテンパンに叩きのめされることになったのだ。まさに出落ち。1分も保たなかった。

 

こういった輩が暴れ回るために例年通り年末年始でも休みがとれない【風紀委員会】が駆けつけてくる頃には、メテオカイジュウ:レキネスの念動力で身動きが取れなくなった【カイテンジャー】に群衆が雪玉を投げつけて遊んでおり、更にはレキネスを背景に記念写真が次々と撮られていた。

 

新年早々にメテオカイジュウが現れて指名手配犯をコテンパンにして事件を最速で解決するという吉事が起きたことで非常にめでたい雰囲気となっており、【風紀委員会】銀鏡 イオリは【カイテンジャー】が逮捕されると同時に光の粒となって消えたレキネスの姿を見送ったのだった。

 

このように怪獣災害の迅速な解決を期待するような出来事が 新年早々 報じられたことで、キヴォトス各地で新年の展望は明るいものとなっていったのである。

 

 

――――――そうして、キヴォトスの新しい一年が始まった。

 

 

 

 

――――――そして、ついに“目覚めの刻”到来するのであった!

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。