Blue Archive -Document SKIP feat.OMEGA and...- 作:LN58
星の抱く 命を見つめるとき
願いは 眩しいほどの明日に変わる
「光になれ!」 瞳に宿した
夢を掲げ、その先へ伸ばせ
走れ! 走れ! その果てを目指せ オメガ!
――――――さあ、ゾメラ撃破作戦の答え合わせといこう。
現生人類が怪獣の脅威に対抗するために『他の怪獣の能力を獲得できる』エルドギメラと『怪獣を操る能力』を持つゾヴァラスの細胞をかけ合わせた結果、ギメラ細胞がゾヴァラス細胞を飲み込んで爆発的に増殖し、元の怪獣の姿を取り戻して誕生したのが エルドギメラの転生体とも言える 殲滅細胞怪獣:ゾメラが誕生した。
【ロストパラダイスリゾート】に設立された【NDF】研究施設から出現し、手始めに洗脳波動で呼び寄せた溶鉄怪獣:デマーガを捕食・吸収した後、【ロストパラダイスリゾート】から泳いでキヴォトス本土に上陸してきたところに第一次防衛線:レーザービートル作戦を実施したものの、肝腎のレーザー攻撃の威力がウルトラマンオメガの必殺光線に遠く及ばないせいで後一歩というところで反撃を受けて作戦は失敗となってしまう。
しかし、この時点でレーザービートルの攻撃によって偶然にもゾメラの胸部の直撃箇所からガイリュウガのものと思われる貯蔵器官が露出することになり、極めつけは反撃で口から放った光波ビームは光波怪獣:ガイリュウガのものと同一であったのだ。
そのため、【ロストパラダイスリゾート】を出てキヴォトス本土に上陸するまでの間にゾメラはガイリュウガの捕食・吸収を済ませてきており、このためにゾメラの体内ではガイリュウガの最大の特徴と言えるカエン102の貯蔵器官が完全再現されていることになるのだ。
裏返せば、隕石由来の高エネルギー物質:カエン102が持つ不安定性を抱えた爆弾状態となっており、ゲネス人の生体兵器:ゾヴァラスの細胞を含んだことで知能が向上したのか、自身が受けた攻撃を学習して耐性を向上させて弱点を克服するように進化するようになっても、構造上の欠陥を克服することはできないのだ。
そのため、エルドギメラのように捕食・吸収した怪獣の弱点がそのまま反映されていくわけではないものの、ガイリュウガを捕食・吸収したことで同じ欠陥を抱えることになったゾメラは ガイリュウガ撃破作戦でその破壊力が折り紙付きとなった ガイリュウガの光波ビームと同じ原理の高出力レーザー砲:ガイリュウガ砲によって倒すことができる算段がついていたのである。
ただし、キヴォトス本土に上陸を果たした暴食の化身:ゾメラの食欲旺盛さを存分に利用して 怪獣の人工肉で誘導する『食い倒れ作戦』でかなりの時間稼ぎをすることに成功したものの、古代怪獣:ゴモラの超振動波を獲得したことで洗脳波動が強化され、世界中の怪獣が洗脳されて一斉に活動を開始するという一刻を争う事態に突入していた。
このため、本来は万全を期すためにきっちりと切り札となるガイリュウガ砲の数と地の利を確保した
すぐにでも攻撃して洗脳波動を止めなければ手遅れになるということでゴモラと交戦した直後の市街地での作戦実施は避けられず、結局は第一次防衛線:レーザービートル作戦と同じ手法でガイリュウガ砲を無人ビートルに搭載してゾメラの胸部にあるカエン102貯蔵器官に直撃させる他なかったのだ。
しかも、ウラン怪獣:ガボラがウラン235の代わりの食料にするほどの高エネルギー物質:カエン102が爆発することにもなれば、カエン102から抽出されたエネルギーによる光波ビームが山一つを消し飛ばすぐらいなのだから、爆発によって戦場となった市街地は一瞬にして灰燼に帰すことだろう。
そのため、あくまでも初撃は洗脳波動を止めることに重きを置いて、次は
それでも、やるしかなかったのである。今ここで洗脳波動を止めなければ“目覚めの刻”によって人類文明が滅ぶかどうかの瀬戸際にまで来ているのだ。
正直に言って、人類が生み出してしまった暴食の化身:ゾメラを【ロストパラダイスリゾート】に出現した直後に現れた“宇宙観測隊員のオメガ”がその場で倒してくれていたのなら、ここまで形振りかまっていられない防衛作戦にはならなかったと悪態をつきたくもなるが、
宇宙観測隊員にとっては 現生人類が生み出した愚かな産物として 宇宙怪獣じゃない扱いとなっている 殲滅細胞怪獣:ゾメラの強さはオメガの最強形態:ヴァルジェネスアーマーには及ばないと思われ、
厄介なのは洗脳波動でメテオカイジュウをも操ってしまう点なのを考えると、あのままオメガが【ロストパラダイスリゾート】で戦い続けていてもゾメラを倒しきれていたかどうか怪しいところであった。
むしろ、【怪特隊】の分析や【NDF】の援護があってゾメラの元となったエルドギメラとゾヴァラスをオメガが倒すことができていたわけなので、おそらく現生人類と宇宙観測隊員と怪獣たちの戦力差はそこまで大きな開きがあるわけではないように思える。
実際、山一つ消し飛ばす威力の光波ビームと同じ原理のガイリュウガ砲があれば、今回のゾメラに限らず、ほとんどの怪獣を消し去ることができる威力なのは証明済みのため、作戦の方針としては間違いなく現状での最適解となっていた。
そんなわけで一度は失敗した作戦の焼き直しにも見えるレーザービートル作戦はガイリュウガ砲による一撃必殺;ゴモラの超振動波で強化された洗脳波動で世界中の怪獣たちを操ろうと動きを止めている隙を狙って、すぐさま決行されることになったのである。
そう、市街地での決戦はここでは誰も考えていない。そのことは『食い倒れ作戦』でここまで徹底的に時間稼ぎをすることができたことから、誰もがアユム先生の二段構えの作戦方針に納得していた。次で確実にゾメラを倒すと心を1つにして――――――。
一方、宇宙観測隊員にメテオカイジュウを回収されて何の取り柄もなくなってしまった元怪獣使い:星見 コウセイは注意深く作戦内容の確認を行っていた。
否、怪獣使いじゃなくなった程度で【怪特隊】の完全なお荷物になどなっていなかったのだ。
キヴォトスでは希少なヒトの成人男性ということで、キヴォトスの支配階級である生徒たちの中に居るだけでも自然と目立つ上に、コウセイの若さと情熱に満ちた声が浮き沈みの激しい怪獣退治の現場を力強く励ましてきたのだ。
そのため、同じ地球人のアユム先生と比較して大人の男性というものを間近に体験することになった生徒たちの中には 今や“キヴォトスを救った英雄”として 国家元首に相当する各学園の生徒会長たちと対等に言葉を交わすアユム先生の偉大さを理解してお近づきになるのに尻込みする一方、
逆にアユム先生に近い特別な位置に居ながらチャラそうな雰囲気もあって話しかけやすい感じの“無名に近い一般人”星見 コウセイの存在がK-DAY以降に“キヴォトスを救った英雄”アユム先生と知り合いになった生徒たちの緩衝材になっていたのだ。
なので、第一次防衛線:レーザービートル作戦を応用した本命となるガイリュウガ砲の二段構えの作戦も素人目線ながらもしっかりと確認して理解に努める姿勢に、【ニコメディアトゥループ】梯 スバルに代表される新参者の生徒たちが追随することになった。
すぐにでも作戦実施が待たれる緊迫した状況の中でしっかりと説明が返ってくるのは、防衛チーム【NDF】と調査チーム【怪特隊】の創設に携わった“怪特隊の母”アユム先生の教えがしっかりと行き渡っている証拠であり、モットーである『試行錯誤』『臥薪嘗胆』の裏には『アユム先生以外の誰もが怪獣災害の素人なのだから、しっかりと他者の意見や疑問に耳を傾けて問題点の発見や共有に努めること』が根底にあるのだ。
そして、ライトビートルを改造して怪獣退治の切り札として登場したレーザービートルの基本原理や構造を説明された上で、これまでキヴォトスには存在してこなかった対怪獣兵器の開発を一手に担う【NDF】の出資者である“黒服”がレーザービートルに搭載したガイリュウガ砲の解説を行うのであった。
その上で 星見 コウセイが理解したことは、光波怪獣:ガイリュウガを倒すために光波ビームの原理を再現したガイリュウガ砲であったが、ゾメラの体内にあるカエン102貯蔵器官を爆発させるのに必要な容量はレーザービートルに搭載可能な範囲で十分なことであった。
ガイリュウガ撃破作戦の時は初めてということもあってデータ不足であったものの、その有用性が知れ渡ったことで展開力を増やすためにガイリュウガ砲の小型化の研究がすぐに行われ、結果としてレーザービートルに搭載可能な範囲での小型化にすぐに漕ぎ着けることに成功していたのである。
つまり、将来的にはガイリュウガ砲を搭載したレーザービートルを量産して、必要に応じて銃架になる砲台を設営して集中攻撃できる
今回の二段構えの作戦はその叩き台となっており、市街地に回されたレーザービートルは1機だけなのだが、裏では更にレーザービートルが用意されてゾメラ抹殺の決戦の舞台で待ち構えているのである。
一方、作戦に使用されるレーザービートル自体の重量は無人機になっていることで徹底的な無駄を省いて軽量化された上でモジュール化されており、このために町工場並みの設備があれば現地で砲身の交換が可能になっており、地球人を凌駕した身体能力を持つキヴォトス人なら人力で砲身を持ち上げることさえできていた。
だからこそ、土壇場でのガイリュウガ砲の換装が可能となっており、何ならガイリュウガ砲そのものは
レーザービートルの展開が難しい気候や地形においては、トラックに架装した
そのため、“カエン102の軍事利用”がこれからのキヴォトス防衛の要となるため、その取り扱いには厳重な法規制が行われており、
良くも悪くも、光波怪獣:ガイリュウガの出現は“目覚めの刻”を迎えて滅亡の淵に立たされた学園都市:キヴォトスの命運を変えた出来事となったのである。
――――――だからこそ、星見 コウセイは宇宙観測隊員に向けて証明するのである!
黒服「予想通り、一筋縄ではいかないものですね、怪獣退治というものは」ククク・・・
アユム先生「そんなことはもう常識だから。とにかく、ゾメラの誘導と
羽沼 マコト「ああ。モタモタしていると世界中から怪獣がここに集まってくるぞ」
百合園 セイア「強力な電波障害が起きさえしなければ、あのままゾメラを倒すことができたろうに……」
仲正 イチカ「それも見越しての二段構えの作戦っす。今度は電波障害にも動じない必殺の陣でかかれば必ずゾメラを倒せるはずです」
アユム先生「まあ、ガイリュウガ砲で倒せるぐらいってことだから、やっぱりゾメラはそこまで突き抜けた強さはないって感じかな」
黒服「そうですね。それが厄介なのは 厄介な怪獣の能力同士を掛け合わせてしまった 厄介な人間たちの仕業なわけですからね」
アユム先生「……ゲネス人の二の舞いには絶対にさせない」
奥空 アヤネ「それでは『食い倒れ作戦』に移行します。ゾメラを誘導しますので、みなさん、進行ルート上から退避してください」
早瀬 ユウカ「よし。計算通り。今の攻撃でゾメラが耐性を得たとしても、次の攻撃は威力をこれぐらい上げておけば必ずゾメラを倒せます」
太平 ナダカ「ほんなら、あとはゾメラの誘導に掛かっているわけやな。世界中の怪獣が集結してくる前に決着をつけたるで」
鬼方 カヨコ「ん、ちょっと待って」
鬼方 カヨコ「先生、コウセイさんは? 他にもいない人が結構いるよ?」
アユム先生「え」
黒服「ほう?」
百合園 セイア「なに、コウセイ?」
羽沼 マコト「……ふむ」
アユム先生「コウセイくん!?」ピィピィピィ・・・
――――――
星見 コウセイ「アユ姉、黒服さん、聞こえますか!?」
――――――
黒服「おや、コウセイ氏」
アユム先生「こんな時にどこにいるの?」
――――――
星見 コウセイ「レーザービートルの側だ!」 ――――――墜落したレーザービートルにワゴン車で駆けつける!
――――――
アユム先生「……そんなところで何をするつもり?」
黒服「作戦はすでに次の段階に進んだんですよ、コウセイ氏?」
百合園 セイア「聞こえるか、コウセイ! 変なことをしないで、早く戻ってくるんだ!」
――――――
星見 コウセイ「黒服さん、ガイリュウガ砲は
星見 コウセイ「ここからガイリュウガ砲でゾメラを倒します」
星見 コウセイ「
――――――
百合園 セイア「何を言っているんだい、コウセイ! ここでの作戦は完了したんだ! 早く退避するんだ! 危険だ!」
黒服「先生」
アユム先生「ああ、なるほど。しかたないな、もう」
アユム先生「えっと、そこにいるんだよね、ヒナ、ホシノ? 他にもサオリやスバル、シロコにネルもいるんだよね?」
アユム先生「なら、コウセイくんをお願い。ゾメラを倒せたとしても、その時のカエン102の爆発に巻き込まれたら真っ先に消し炭になるのは地球人のコウセイくんだから」
アユム先生「――――――これは“シャーレの先生”としての指揮よ」
仲正 イチカ「先生!?」
アユム先生「全員、絶対に生きて帰ってくること!」
――――――
星見 コウセイ「大丈夫っす! 俺だって 怪特隊 隊員だし、県大会3位なんっすよ!」フゥ!
――――――
アユム先生「男の子だねぇ」
アユム先生「でも、嫌いじゃない。スゴク良いよ」
鬼方 カヨコ「だね」
黒服「わかります」
黒服「コウセイ氏、Kモニターはありますか?」ククク・・・
黒服「操作は全てKモニターでもできるように設計されています」
――――――
星見 コウセイ「持ってます!」
――――――
アユム先生「ユウカ、ガイリュウガ砲の出力をどれくらいまで上げていい? 段階的に出力を上げていく算段だったでしょう? それなら1段階ぐらいまでなら使ってもいいはずだよね?」
早瀬 ユウカ「え? でも……?」
アユム先生「お願い。ここでの地上発射の運用データがあれば、もっと柔軟な
早瀬 ユウカ「わ、わかりました。これぐらいの出力までなら何とか……」
アユム先生「ありがとう、ユウカ。さっすが」
アユム先生「だから、アヤネも誘導を中止して。代わりにゾメラをここに釘付けにするようにドローンを動かして」
奥空 アヤネ「は、はい」
アユム先生「ナダカ、ガイリュウガ砲の地上発射のデータが取れるから、これを活かしてもっと効率的な
太平 ナダカ「はっ!」
アユム先生「……ハラハラするね」
百合園 セイア「まったくだよ。誰が言ったか、『試行錯誤』と『臥薪嘗胆』のモットーのせいで現場の勝手な行動にハラハラさせられっぱなしだよ」
羽沼 マコト「だが、狂気の沙汰ほど面白いだろう? 決まりやルールに従うばかりのお利口さんにはできないことが馬鹿にはできるんだからな?」キキキ・・・
アユム先生「――――――混沌より全ての可能性は生じる」
アユム先生「だから、可能性を信じることが大人の責任でもあるんだ」
アユム先生「オメガダンスの歌の通りかもしれないね」
アユム先生「でも、私なら
――――――想像力を解き放て!
――――――
星見 コウセイ「うおおおおおおおおおおおお!」グググ・・・ ――――――火事場のクソ力で
梯 スバル「無茶をしないでください、コウセイさん!」グググ・・・
錠前 サオリ「ああ! ここはみんなで力を合わせてゾメラを倒すんだ!」グググ・・・
美甘 ネル「そうだぜ! あんたにばかり良い格好はさせられねえな!」グググ・・・
シロコ*テラー「ん! キヴォトスは私たちキヴォトス人の手で守られていくべき!」グググ・・・
小鳥遊 ホシノ「うん! だから、ごめんねぇ! ヒーローの称号を独り占めできなくさせて!」グググ・・・
空崎 ヒナ「コウセイさん! 照準を合わせておくから、
星見 コウセイ「わかったッ!」
美甘 ネル「おい、照準はこれで合っているのか!
小鳥遊 ホシノ「これ、もう少しこっちじゃない!?」グググ・・・
シロコ*テラー「ん、ダメ! これだと砲座が安定しない!」グググ・・・
錠前 サオリ「待っていろ! 調整に使えそうな資材を集めてくる!」ダダッ!
空崎 ヒナ「いや、拾ってくるより、ここは削り出した方が速い!」ズババババ・・・!
星見 コウセイ「えっと、接続するにはここに――――――」
梯 スバル「たしか、この配線をここに繋げるはずです」
星見 コウセイ「お、たしかに! よっしゃ!」
星見 コウセイ「Kモニターを有線で接続ッ! これ一つで本当に何でもできますね、黒服さん!」
――――――
黒服「こちらでも接続が確認できました。安全のため、こちらの方で制御します」
黒服「
アユム先生「ユウカ!」
早瀬 ユウカ「はい! エネルギーチャージ、開始します!」
――――――
星見 コウセイ「エネルギーチャージ開始ッ!」
梯 スバル「チャージが開始されました、みなさん!」
錠前 サオリ「よし、ここは私が前に出て囮になる! ゾメラを釘付けにする! 【アリウススクワッド】作戦開始!」ジャキ!
美甘 ネル「待ってたぜ! 【C&C】! 配置に着いているな! ここからが本当の怪獣退治の時間だ!」ジャキ!
シロコ*テラー「私も行く!
空崎 ヒナ「ホシノはガイリュウガ砲の防衛――――――、ううん、コウセイさんを守ってあげて」ジャキ!
小鳥遊 ホシノ「わかった!」
梯 スバル「いよいよですね、コウセイさん」
星見 コウセイ「ああ!」
星見 コウセイ「ソラト、見てんだろう!?」
星見 コウセイ「ソラト! お前、昔から
星見 コウセイ「だから、俺たちのことを守ったんだろう!?」
小鳥遊 ホシノ「…………!」
星見 コウセイ「お前のおかげで! やりたいこと! 大切な人たちと出会えた!」
星見 コウセイ「俺はそれを絶対に守ってみせるぅうう!」
小鳥遊 ホシノ「コウセイさん……!」
梯 スバル「ソラトさん……!」
ああ……、コウセイ……、アユ姉……、みんな……。
特定の生命体に肩入れしてはいけない。人間も怪獣も等しく同じ観測対象だ。
人間は、幼く弱い! 怪獣たちに滅ぼされてしまう……!
生命の活動を見つめ、行き着く答えを収集し続ける。それが宇宙の安定を導き出す唯一の手段だ。
人間の中には自分とちがう者を受け入れる者もいる。私を異星人と知りながら“仲間”として接する者たちもいた。
彼らなら、争いのない平和な世界を築くことが可能かもしれない……。
観測を続け、完璧な答えを導き出すべきだ。
我々には導き出せなかった!
だが、彼らとなら――――――!
私はウルトラマンなどという存在などではない!
数多いる観測者の一人に過ぎない……。
そう、私は観測者――――――。
答えを導き出す者――――――。
なら、導き出すべき答えとはどこに――――――?
――――――
アユム先生「ううっ……、【シッテムの箱】の制約を解除するプロセス『ペレツ・ウザ』を限定稼働させても、肝腎のガイリュウガ砲のチャージが思ったよりも遅いのは完全に盲点だった……」
黒服「一刻を争う事態でこれはまさに致命的ですね……」
アユム先生「やっぱり、ゾメラ相手には私の精一杯なんてのも時間稼ぎが関の山か……」
黒服「いえ、この場合は
黒服「やはり、チューブ一つで接続するのはチャージ完了まで時間が掛かりすぎます」
黒服「かと言って、直接
アユム先生「もうね、怪獣の人工肉に
アユム先生「こうして無様を晒しているところも宇宙観測隊員は見てくれているのかな?」ハハッ
黒服「ん! 見てください、先生! アレを!」
アユム先生「え」
アユム先生「……そうだよね」
――――――コウセイくんのことを“優しい”ってわかるんだから、あなたも“優しい”からずっと悩んできたんだよね。
――――――
大木田 ソラト「………………」ザッ
小鳥遊 ホシノ「あ、あれって……」
梯 スバル「ソラトさん……」
星見 コウセイ「オメガ……」
大木田 ソラト「ちがう。答えなんてどこにもない」
大木田 ソラト「探しているだけではいけないのだ」
大木田 ソラト「自分たちで生み出さなければ……!」
星見 コウセイ「…………ソラト?」
小鳥遊 ホシノ「――――――『探しているだけではダメ』?」
梯 スバル「――――――『自分たちで答えを生み出す』?」
大木田 ソラト「すでにそのことを現生人類と共に実践している地球人の先生のことを知っている!」
大木田 ソラト「それが我々には不可能ならば、この
大木田 ソラト「いや、全ての
星見 コウセイ「ソラトッ!」
梯 スバル「ソラトさん!」
小鳥遊 ホシノ「本当にソラトさんがウルトラマンだったんだ……」
錠前 サオリ「見ろ! ウルトラマンオメガだ! ウルトラマンが来てくれたぞ、みんな!」
美甘 ネル「相変わらず遅いんだよ! 怪獣が出てきたら すぐに来てくれよな! まあ、見せ場を独り占めされるのを見ているだけってのも性に合わないから、今日はこれぐらいで許してやるからよ!」
空崎 ヒナ「邪魔にならないように みんな 退避して! カエン102の爆発の範囲から離脱して、早く!」
シロコ*テラー「ウルトラマンは必ず来てくれると
これまでの自分と本来の自分の間で悩み抜いた末に辿り着いた宇宙人の結論――――――、
それこそが可能性を信じて未来を掴み取るために共に立ち向かうことであった。
人間の寿命より遥かに長い時を観測に費やしてきて、宇宙を平和にするための答えが出ないまま、数え切れないほどの星々の滅亡を見つめてきたことに“優しさ”を理解できる宇宙人が何も思わないはずがなかった。
観測し続けた結果、何をどう平和に活かすのか、その答えが一向に見つからない状況が永く続いて感覚が麻痺していたところに、等身大の人間としての永遠の中の一瞬のような日々が忘れかけていたものを思い出させていたのだ。
過去の教訓から観測対象の星に干渉しないようになったのかもしれない。自分たちの力を乱用しないように自らを戒めて平和のために傍観者に徹するようになったのかもしれない。
けれども、宇宙観測隊の使命は観測して宇宙を平和にする答えを導き出したら、実際に宇宙を平和にする次の段階があるわけであり、決して観測のための観測をしているわけではないのだ。
だからこそ、停滞に直面して『こんなことをし続けても意味があるのか?』と自然に湧き上がる疑問に対して宇宙観測隊員の使命で心に蓋をして観測に徹していたところに、
そこから歯車が狂って宇宙観測隊員のオメガは記憶喪失となり、大木田 ソラト/ウルトラマンオメガとして観測対象の星で数々の禁忌を犯していくことになったのだが、逆にそのことが宇宙観測隊の使命の原点を思い出させることに繋がったというわけなのだ。
そう、大人として子供を導く立場にある“先生”でありながら、自身が完全無欠ではなくとも、現生人類と共に厳しい現実と向き合い続けて、やがては“キヴォトスを救った英雄”にまでなった地球人の活躍を間近に見てきたのだ。
だからこそ、完璧な答え、完璧な予測、完璧な結果なんて導き出せないだろうけれど、やりたいこととやるべきことの間で葛藤しながらも、できることがあっても何もしないことはやっぱり間違いだってずっと思っていたことだから。
まさに塞翁が馬;宇宙観測隊が見殺しにしたゲネス人の恨みから 結果として宇宙観測隊が導き出せなかった答えを生み出していく新しい可能性が 今 この宇宙に生まれたのである。
星見 コウセイ「ソラト! 胸の装甲を何とかしてくれ!」
小鳥遊 ホシノ「チャージは!?」
梯 スバル「80%突破です!」
小鳥遊 ホシノ「なら、照準を合わせるよ!」グググ・・・
梯 スバル「はい!」グググ・・・
梯 スバル「おお! ゾメラがよろめいた! 今なら確実に中てられます!」
小鳥遊 ホシノ「見て! オメガの光線でゾメラの胸部が露出して弱点が――――――!」
星見 コウセイ「よっしゃあ! チャージ完了!」
梯 スバル「
小鳥遊 ホシノ「じゃあ、景気のいいの 一発、ぶちかましてやって、コウセイさん!」
星見 コウセイ「発射あああああああああああああ!」ピッ!
梯 スバル「め、命中ッ!」
小鳥遊 ホシノ「これなら――――――」
星見 コウセイ「あ」ゾクッ ――――――ゾメラの口から光波ビームの光が漏れ出す!
小鳥遊 ホシノ「スバちゃん! コウセイさんを連れて逃げて! 早くッ!」バッ ――――――盾を構える!
梯 スバル「はい!」ガシッ
星見 コウセイ「ソラト!」
梯 スバル「やった! 攻撃を封じた! これで私たちの勝ちです――――――!」
小鳥遊 ホシノ「待って! これは――――――!」ゾクッ
小鳥遊 ホシノ「もう遅い! どこでもいいから隠れて! 私が盾になるから!」
星見 コウセイ「ええ!?」
梯 スバル「ひ、光が――――――!」
小鳥遊 ホシノ「くぅううううううううう!」
――――――
錠前 サオリ「大丈夫か、スバル!? 応答しろ! ガイリュウガ砲が発射できたなら、早く離脱しろ! 爆発するぞ!」
錠前 サオリ「くそっ! 応答してくれ、スバル……!」
槌永 ヒヨリ「大丈夫なんでしょうか?」
戒野 ミサキ「発射した後は一目散に離脱することになっているけど……」
秤 アツコ「無事だと信じる他ないよね。今の私たちにできることなんて――――――」チカッ
錠前 サオリ「ん」
――――――
――――――
錠前 サオリ「――――――何の光ッ!?」
秤 アツコ「きゃああああああああああああああ!?」
錠前 サオリ「姫ッ!」ガシッ
槌永 ヒヨリ「こ、ここって爆発の範囲外なんじゃ――――――!?」
戒野 ミサキ「知らないよ! 『予想が外れていた』ってことなんじゃない!?」
槌永 ヒヨリ「ええ!? そ、そんなああああああああ!?」
秤 アツコ「さ、サッちゃん!」
錠前 サオリ「あ、アツコ……!」
錠前 サオリ「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
――――――
早瀬 ユウカ「そんなッ!? こ、こんなことって――――――!?」
鬼方 カヨコ「予想された範囲を遥かに超えた大爆発……」
奥空 アヤネ「応答してください、ホシノ先輩! 先輩ッ!」
アユム先生「みんなッ!?」ガタッ
百合園 セイア「コウセイ! コウセイッ!」
百合園 セイア「ソラト!? ソラトぉおお!」
百合園 セイア「逝くな! 逝かないでくれッ! お願いだから!」
鬼方 カヨコ「……オメガも消えた」
仲正 イチカ「……完璧な予測なんて当てにならないもんっすね」
羽沼 マコト「……そうだな」
羽沼 マコト「――――――“カエン102の軍事利用”も【“雷帝”の遺産】の1つである以上、遅かれ早かれ、このような悲劇が起きるということだな、ヒナよ」
アユム先生「………………」
黒服「……先生」
アユム先生「……黒服くん、ガイリュウガの爆発よりも大きくなったのはどうして?」
黒服「おそらく、ガイリュウガが蓄えているエネルギーはカエン102貯蔵器官に依存していますが――――――」
アユム先生「――――――
黒服「はい」
アユム先生「すでにガイリュウガ以外の怪獣を捕食・吸収していたから、ゾメラのエネルギー総量はガイリュウガを軽く上回っていた……」
アユム先生「それこそ最初にデマーガを捕食・吸収していたし――――――」
アユム先生「ハッ」
アユム先生「アヤネ!」
奥空 アヤネ「は、はい!?」
アユム先生「ナダカ!」
太平 ナダカ「は、はいっ!」
アユム先生「今すぐに作戦を開始して! 今度こそ
百合園 セイア「ど、どういうことだい、先生!?」
羽沼 マコト「あの爆発でもやつはまだ生きているということか!?」
奥空 アヤネ「え、ええ!?」
鬼方 カヨコ「そうか! ガイリュウガのエネルギー分しかない爆発にも耐えられるようにゾメラが進化していたとしたら――――――!?」
黒服「歩いただけで地上を溶岩に変えるデマーガを捕食・吸収していると考えるなら――――――!?」
アユム先生「そして、ゴモラの超振動波で爆発の威力を拡散させていたとするなら――――――!?」
早瀬 ユウカ「せ、先生ッ!」
アユム先生「………………!」
早瀬 ユウカ「ぞ、ゾメラが……、ゾメラです! ゾメラが生きています!」
――――――殲滅細胞怪獣:ゾメラ 健在!
仲正 イチカ「……う、嘘っすよね?」
奥空 アヤネ「……それじゃあ、ガイリュウガ砲でもあそこまで進化したゾメラは倒せない?!」
太平 ナダカ「……だ、だとしても、時間は稼げるはずや! 今はやれることをやりきることに集中しろ! いいな!? さあ、ボーッと突っ立ってないで動くんや!」
早瀬 ユウカ「せ、先生ッ!」
百合園 セイア「先生!」
羽沼 マコト「先生!」
黒服「先生……」
アユム先生「………………」
――――――
鬼方 カヨコ「え」
仲正 イチカ「……それってどういう意味っすか、先生?」
アユム先生「黒服くん」
黒服「本当にやるのですか、先生?」
アユム先生「本当はコウセイくんの方が適任なんだけど、私がやるしかないじゃん、もう」
アユム先生「幸い、
アユム先生「――――――ゾメラは私が倒す!」
アユム先生「だから、見ていてください」
アユム先生「ウルトラマンブレーザー」スッ ――――――ブレーザーストーンのレプリカ。
アユム先生「ウルトラマンアーク」スッ ――――――アークキューブのレプリカ。
アユム先生「そして、ウルトラマンオメガ」スッ ――――――オメガメテオのレプリカ。
アユム先生「どうやら、私も人間を辞める時が来たみたい、
アユム先生「黒服くん、“儀式”を――――――」
早瀬 ユウカ「だ、ダメええええええええええええええ!」ドンッ! ――――――先生の胸に飛び込む!
アユム先生「あうッ!?」ドサッ
太平 ナダカ「だ、大丈夫ですか、先生!?」
仲正 イチカ「何やっているんですか、先生に!?」ガシッ
早瀬 ユウカ「うぅ……」
黒服「立てますか?」
アユム先生「し、尻餅をついたぁ! ちょっと、しばらく立てそうにない……!」
アユム先生「な、なんで? 急に何をするの、ユウカ?」
早瀬 ユウカ「だ、だって、先生が『人間を辞める』だなんて変なことを言うから……!」
早瀬 ユウカ「い、嫌なんです! 先生がプレナパテスみたいになるだなんてこと!」
アユム先生「でも、そうでもしないとゾメラは――――――!」
早瀬 ユウカ「先生がいない明日に何の価値があるって言うんですか!?」
アユム先生「決まっているよ、そんなこと」
アユム先生「――――――
仲正 イチカ「――――――ッ!」バチン!
アユム先生「へ」ジーン・・・
アユム先生「え、イチカ? 今、私をぶったの、イチカ?」
仲正 イチカ「ええ、そうっすよ。先生のこと、傷つけました。自分の意志で」
仲正 イチカ「それより、何ふざけたことを言ってるんすか、先生? 何 勝手にこれまで散々弄んできた生徒たちのことを置いてひとりで逝こうとしてるんすか?」
仲正 イチカ「――――――先生には責任ってものがあるっすよね!?」ゴゴゴゴゴ・・・
アユム先生「ひゃい!?」
百合園 セイア「い、イチカ……?」
仲正 イチカ「もう いいかげん うんざりなんすよね」
仲正 イチカ「何すか? ゾメラが現れた原因が【NDF】がゾヴァラスとエルドギメラの細胞を掛け合わせたせい? その後始末のために先生が人間を辞めるんすか?」
――――――先生が人間でいられなくなるぐらい希望がないなら、もう全員で地獄に行くっすよ。
アユム先生「……え、イチカ?」
仲正 イチカ「そうっすよね! 【NDF】には永久凍土で眠っていた古代粘菌:エドマフィラを復活させた前科があるっす!」
仲正 イチカ「なら、今後も同じことが繰り返されない保証はどこにもないっすよ! 先生を失った瞬間、全てが崩壊するんだから、自分たちの未来に信用が置けないのが私たちキヴォトス人ってことっすよ!」
太平 ナダカ「……くっ」
羽沼 マコト「……そのことは今は関係ないだろう」
仲正 イチカ「そうっすね。今、重要なのは先生にはおとなしくしてもらうことっす」
仲正 イチカ「それには、みんな 同意してくれるっすよね?」
奥空 アヤネ「それはそうですけど……」
アユム先生「いや、時間がないから! ここで対応を誤ったら、ゾメラの洗脳波動で呼び寄せられた怪獣たちの対処が手遅れになる!」
百合園 セイア「なら、【怪特隊】代表として この場で採決するとしよう」
百合園 セイア「このまま元々の作戦通りに
百合園 セイア「または、先生には人間で居て欲しいと思う者はこの場で挙手したまえ!」
アユム先生「――――――!」
百合園 セイア「……ふむ、どうやら先生、数えるまでもなく満場一致みたいだな」
アユム先生「ズルいよ、セイア! あんな人情に訴える条件を付け加えられたら、反対することなんてできないじゃん!」
百合園 セイア「何とでも言うがいい。先生は“怪特隊の母”だが、“代表”は私だ。それが民主的な方法で合意を得たのだから、決定に従いたまえ」
アユム先生「でも!」
黒服「………………」
アユム先生「黒服くんもどうして――――――!?」
黒服「……
アユム先生「へ」
黒服「先生の価値は我々のような異形になることなく、人間のままで奇跡を起こしてきたことにあります」
黒服「だからこそ、私の手で先生の崇高さを侵すことに耐えられなかったのです……」
アユム先生「黒服くん……」
羽沼 マコト「つまり、そういうわけだから、そろそろ年貢の納め時というわけだな、先生よ?」キキキ・・・
羽沼 マコト「これまであれだけ熱烈にマコト様のことを求めてきたのだから、今こそ名実共にマコト様のものになるがいい!」
アユム先生「ええ? マコト、顔が近い……!」
羽沼 マコト「何を今更? 私のことが好きなのだろう? 私が欲しいのだろう? だから、同じ布団の中に入り込んで 一晩中 愛を囁いてきたのだろう?」
羽沼 マコト「ならば、望み通り このマコト様の寵愛をくれてやろうと言うのだ――――――」
バキューーーーーーーーーーーン!
羽沼 マコト「ぐわあああ!?」
アユム先生「ま、マコトぉおおおおおお!?」
奥空 アヤネ「………………」カランカラン・・・ ――――――排莢が音を立てて地面に転がる。
アユム先生「え、アヤネ!? アヤネが撃ったの!?」
アユム先生「――――――って、みんなあああああああああ!?」
鬼方 カヨコ「何、どさくさに紛れて、先生の唇を奪おうとしているわけ?」ジャキ!
仲正 イチカ「そうっすよ? 先生を即座に行動不能にする手段として、私が先生とキスする予定だったのに何やっちゃってるんすか? 死刑っすよ、そんなの?」ジャキ!
百合園 セイア「ああ、抜け駆けは許されないよ、羽沼 マコト!」ジャキ!
早瀬 ユウカ「ちょっと待ちなさい! 先生とキスするのは私なんだから!」ジャキ!
奥空 アヤネ「すみません! 撃たずにはいられませんでした! 先生が誰かの恋人になるだなんて、耐えられません!」ジャキ!
アユム先生「ええええええええええええ!? こんな時にみんな何をやって――――――!?」
黒服「こういうわけですから、先生、あきらめた方が賢明ですよ」ククク・・・
アユム先生「……そうみたい」
黒服「希望がないわけじゃありません。先程のガイリュウガ砲の運用データによって、ゾメラによって誘き出された怪獣たちを各個撃破していくことも現実味を帯びてきましたから」
アユム先生「つまり、ゾメラを完全に孤立させる作戦ね……」
アユム先生「とんでもなく辛く長い戦いになるけれど、それでもいいの、みんな?」
百合園 セイア「では、【怪特隊】の代表として言わせてもらおう」
黒服「なら、私は【NDF】の出資者として」
太平 ナダカ「だったら、自分は現場を取りまとめる者の意見として!」
――――――宣誓! 我々生徒一同は先生と共に最後まで戦い抜くことを誓います!
黒服「まあ、私は当然ベアトリーチェのように生徒ではありませんがね」ククク・・・
アユム先生「みんな……」
アユム先生「私、嘔吐反射が激しすぎてキスすらまともにできないゲロインだよ?」
アユム先生「それを知ってて、なんでキスなんかで――――――? ゲロ塗れになるよ?」
仲正 イチカ「わざと言っているんすか? いいかげんにして欲しいっすよ? 誘ってるんすか、それ?」
アユム先生「え」
早瀬 ユウカ「そうですよ! き、キス以外のことなら何だってしてきたくせに、こんなの、生殺しみたいなものですよ、先生! 私が先生に会う度にどれだけ先生の唇を我慢してきたと思っているんですか!?」
鬼方 カヨコ「うん。先生はゲロインだってことを口実にして恋人を作れないことを逆手に取って 次から次へと女の子を取っ替え引っ替えして 私たちの心を弄んできたんだから、私たちだって覚悟は決まるよ」
奥空 アヤネ「逆に言えば、先生の口から吐き出されるものを呑み干すつもりでぶつからないと、先生とは対等にはなれないということです!」
羽沼 マコト「……そ、そうだぞ、先生よ。先生のゲロは先生が大人の責任として生徒のために今まで泥を被ってきた汚れみたいなものだからな。それぐらいの汚れに怖気づくようなら、誰もゲロ塗れの先生の人生に寄り添うことなどできないということだ」ヨロッ
百合園 セイア「だから、先生。私たちは先生を受け入れる覚悟をしたから、先生も私たちを受け入れる覚悟したまえよ」
アユム先生「いや、ゲロを連発することになったら 胃酸で食道が傷つくことになるから できれば止めて欲しいんだけど……!? コーヒーが飲めなくなる!」
アユム先生「それより、何、この突然の告白大会……? 今、それどころじゃないよね?!」
アユム先生「コウセイくんたちが爆発に巻き込まれて、ゾメラも健在だって言うのに……」
アユム先生「ああ、そっか。緊張状態が続いてストレスでみんな理性が吹っ飛んでいるんだね、これぇ……」
アユム先生「う、狼狽えるんじゃあないッ! 怪獣災害のプロは狼狽えない!」
アユム先生「そう、『飲んどる場合かー』って言われそうな時こそ、ルーチンワークによるマインドリセットで平常心を保つのよ!」
アユム先生「えいッ!」ゴクッ ――――――タンブラーに淹れたコーヒーはまだ湯気を放っていた。
アユム先生「あ~、やっぱり、何をするにしても まず必要なのは上質なコーヒー豆ね。素晴らしい香り……」
黒服「先生。万が一のことがあれば、先生だけを連れてキヴォトスを脱出することもできますので」
アユム先生「うん。そう。ありがとう、黒服くん……」
アユム先生「コーヒーを口に含んで少し落ち着いたけど、現実は何も変わってない……」
アユム先生「何だろう、何をやっているのかな、私たち……」
アユム先生「ヤバイ、限界なんだ、みんな……」
アユム先生「こうやってゲネス人たちも“目覚めの刻”の中で精神的に参っていって、自分たちの星を滅ぼすことになったのかな……」
アユム先生「だとしたら、尚更 私があきらめるわけには――――――!」
アユム先生「ん」
――――――ふと見ると、大木田 ソラトから複製したオメガメテオが眩い光を放っていた。
アユム先生「オメガメテオが!」
太平 ナダカ「先生! 見てください、あれを!?」
アユム先生「!」
黒服「あの光は――――――!?」
アユム先生「もしかしてソラトさん!?」
アユム先生「ううん! コウセイくんも!?」
アユム先生「じゃあ、あれはウルトラマンオメガ!?」
空が赤く染まる最初のキヴォトス滅亡の危機とは異なる、いつまで続くかわからない“目覚めの刻”を迎えて続々と復活し続ける怪獣との戦いに誰も彼も疲れ切っていた。
終いには防衛チーム【NDF】がまたやらかしたことで最凶最悪の怪獣を生み出してしまい、そのために大切な仲間たちが傷つき、倒れ、犠牲になり、最後の希望であるウルトラマンからも一時は見放されてしまったものと思われ、心の中がズシンと重たくなっていたわけなのだ。
そのため、ゾメラ撃破作戦での希望と絶望が怒濤のように押し寄せてくると山から谷から落ちる深さも相当なものとなり、疲弊していく精神の中で正気というものがガリガリと削られていき、現場は半狂乱で誰が先生の唇を奪うかの突然の告白大会にまで発展してしまったのである。俗に言う『死の危険が迫ると性欲が高まる』ということなのか――――――。
ウルトラマンオメガにもう頼れないということで エレクトロ粒子を用いたサイバー怪獣の力を利用した隠し玉を用意していたわけなのだが、そこでアユム先生も やっぱり疲れていたので つい周りを刺激してしまう爆弾発言を漏らしてしまったものだから、見事に現場がグチャメチャになってしまったのである。
一方、現実世界がそんな風にグチャメチャになって人々の心の中に絶望が拡がっていた時、時間と空間を超越した場所で地球人:星見 コウセイと宇宙人:大木田 ソラトが一つとなって“二人で一人のウルトラマンオメガ”として復活を果たしたのである。
行くぞ、コウセイ!
よっしゃあ! 行くぞ、ソラト!
強い! 迸るほど強い! 今までのウルトラマンオメガとはちがう! 地球人と融合したことで宇宙観測隊員に今まで足りなかった何かが宿ったんだ! 二人の力の相乗作用!
怪獣と真正面からのぶつかり合いには常に不利だったウルトラマンオメガだったが、数々の怪獣を捕食・吸収して強化された殲滅細胞怪獣:ゾメラの攻撃を完全に受け止めて反撃に転じている! 繰り出す一撃の重みがこれまでと段違いだ!
そして、その勢いで ゾメラのヤバイ能力その1である 怪獣を操る洗脳波動を発生させるゾヴァラス由来の発光器官がついた左肩をバリアーごと突き破ってオメガスラッガーで粉砕! これで怪獣たちが操られる心配がなくなった!
となれば、ここで戦力の出し惜しみはしない! メテオカイジュウ3体を同時召喚して一気に畳み掛ける!
レキネスの念動力でゾメラの攻撃を防ぎ、トライガロンの俊敏さでゾメラを翻弄し、その隙を突いてレキネスアーマーを装着してウルトラマンオメガがゾメラを斬り込み、念動力で動きを封じたら、トライガロンアーマーで一気に飛び上がっての急降下攻撃!
仕上げは最強形態:ヴァルジェネスアーマーをまとって流れるように一閃を浴びせた後、すでに満身創痍のゾメラが放った光波ビームをいとも容易く切り払って、ここでまさかのアーマーを解除してのウルトラマンオメガ必殺のレティクリュート光線であった!
だが、それはいつもとはちがう眩い輝きを放っており、殲滅細胞怪獣:ゾメラを跡形もなく粉砕した特別なレティクリュート光線だったのである!
そして、怪獣を倒した光の巨人はいつものように大地を蹴って空を飛び、星となって姿を消した――――――。
太平 ナダカ「怪獣たちの活動も沈静化したようです」
アユム先生「そう」
アユム先生「了解」
アユム先生「おつかれさまでした。これで当面の危機は去ったね」
太平 ナダカ「はい。では、先生」
太平 ナダカ「撤収だ。だが、気を抜くんじゃないぞ。当面の危機が去っただけなんやからな」
百合園 セイア「……先生」
羽沼 マコト「……我々は勝利したんだよな?」
アユム先生「さてね」
――――――ありがとう、ウルトラマン。
アユム先生「それで、コウセイくんたちと連絡はついたの?」
早瀬 ユウカ「今、通信が繋がりました、先生」
鬼方 カヨコ「やっぱり、ガイリュウガ砲が直撃したことで引き起こされたカエン102の大爆発にみんな巻き込まれて気を失っていたみたい」
奥空 アヤネ「それじゃあ、ホシノ先輩でさえ爆発に巻き込まれて意識を失っていたのに、銃弾一発が致命傷になってしまう地球人のコウセイさんじゃ――――――!?」
仲正 イチカ「だとしたら、死体すら残っていない……」
アユム先生「見つからないのはコウセイくんだけ?」
アユム先生「そう。なら、私が迎えに行くから安心して。みんなは救助が来るのを待ってて」
アユム先生「じゃあ、唯一の行方不明者を探しに行ってくるから、後のことはいつも通りにね、セイア」
百合園 セイア「しかしだな、先生! あれだけ爆心地の近くに居て どこにもいないということは、つまり私は彼を死なせて――――――!」
アユム先生「大丈夫だから。そんなに怯えないで、セイア」
奥空 アヤネ「先生!? 今、ドローンで空中から捜索していますが、どこにもコウセイさんの姿は――――――!?」
羽沼 マコト「行かせてやれ。先生には確信があるのだろう」
アユム先生「うん。そういうことだから」
鬼方 カヨコ「いってらっしゃい、先生」
アユム先生「いってくるね、カヨコ。オーナーのためにもね、【太陽倉庫】で住み込みバイトしているコウセイくんのことは絶対に帰してあげないとだから」
早瀬 ユウカ「あの、その、私たち、さっきまでどうかしていたと思いますけど――――――、」
早瀬 ユウカ「気をつけて行ってください、先生」
アユム先生「うん。じゃあ――――――」
早瀬 ユウカ「先生!」
アユム先生「ユウカ?」
早瀬 ユウカ「本当はこんなことを言えた立場じゃないと思うんですけど……!」
早瀬 ユウカ「私たちにとっては“シャーレの先生”なんですけど、それ以外にも“SKIPのおねえさん”とか“怪特隊の母”とかいろんな呼び名があって、それぞれに人との繋がりがあるから……!」
早瀬 ユウカ「だから、その、少しばかり嫉妬しています、コウセイさんに……!」
アユム先生「え? なんで? どうしたの、ユウカ?」
早瀬 ユウカ「だって! まるでコウセイさんがどこにいるのかも、生きているのかも、完全にわかっているみたいじゃないですか!」
早瀬 ユウカ「それぐらい目には見えないけれども確かな繋がりがあるんだって、」
早瀬 ユウカ「私が――――――、私やみんなが同じことになっても先生がすぐに見つけ出してくれるって思えないから……」
早瀬 ユウカ「だから、悔しいんです。先生がキヴォトスで最初に出会った生徒は私なのに、そこまで深い仲になれていないことを見せつけられた気がして……」
アユム先生「そんなことないと思うんだけど」
アユム先生「でも、ユウカがそんなに私に見つけてもらいたいのなら、私はユウカのことを必ず探し出してみせるから」
アユム先生「私もユウカにこれからも会いたいから」
アユム先生「――――――可愛いユウカ。大好きだよ。最初に会った時からね」ニコッ
早瀬 ユウカ「あっ! せ、先生……!」アゴクイッ!
アユム先生「じゃあ、また!」
早瀬 ユウカ「先生……」
百合園 セイア「まったく、誰彼構わず見せつけてくれる……」
鬼方 カヨコ「本当だよ。でも、そんな先生の魔性に魅せられてきたのが私たちだから……」
仲正 イチカ「そうっすね。今度こそ
奥空 アヤネ「そ、それは…………」
羽沼 マコト「おい、馬鹿なことを言ってないで、後始末に取り掛かるぞ、お前ら」
百合園 セイア「ああ、わかっているさ」
――――――けど、いったい何が起きたと言うんだい?
今は見つめたい 向かい合うのは
自分映す 瞳だから
Missing Link 繋いでくだけじゃ
そこから溢れた 想いに気付けない
いつしか信じた 胸に光る真意は
満ちた月を見上げ 消えないように掴む
何を為すべきなのか
それは答えじゃない 創り出していく Piece
一つ一つ集めるほど感じる
刃の様な月の影にある消せない願い
いつしか心、重なっていく 分かり合うことの奇跡に
自分の瞳じゃ見えない自分自身
きっと欠けてた月がまた満ちてくための光だ
You are my Missing Link. 過去と未来を
繋ぐのは今という瞬間だった
護りたいという想い 消えなかったTrue to myself
見つめあえる誓いなんだ 導いてShiny Eyes
星見 コウセイ「あ、ああ……、ああ……!」ゼエゼエ
星見 コウセイ「――――――?」ゼエゼエ
星見 コウセイ「………………!」ハハッ
星見 コウセイ「やったな、ソラト!」
星見 コウセイ「俺たちでゾメラを倒したんだ!」
星見 コウセイ「俺たちは俺たちのやるべきことをやれたんだ!」
星見 コウセイ「……あれ?」
星見 コウセイ「ソラト!」
星見 コウセイ「ソラトッ!?」
星見 コウセイ「――――――ッ!」
――――――大木田 ソラトから受け継がれたオメガメテオを強く握り締める。
星見 コウセイ「……ソラト」
星見 コウセイ「………………」
星見 コウセイ「……ああ、これからも俺たちのやるべきことをやっていくんだ」
アユム先生「コウセイくーん!」
星見 コウセイ「あ、アユ姉!」
アユム先生「やっぱり、居た! こっちだと思った!」
星見 コウセイ「どうして、ここが?」
アユム先生「ほら、私も持っているから」
――――――大木田 ソラトから複製したオメガメテオが導く。
アユム先生「で、そっか。そういうこと。そういうことか……」
アユム先生「ごめんなさい、コウセイくん。私はあなたのことを死なせちゃった……」
星見 コウセイ「あ、いや、アユ姉! 俺はこの通りピンピンしているから!」
アユム先生「でも、
――――――今はあなたが“ウルトラマンオメガ”なんだよね?
星見 コウセイ「ああ、その通りだ、アユ姉」
アユム先生「ああ、本当に良かった……」
アユム先生「やっぱり、どんな形であれ、二度と会えなくなるのはとんでもなく悲しいことだって嫌でもわからされた」
アユム先生「ねえ、コウセイくん?」
星見 コウセイ「何だよ、アユ姉?」
アユム先生「これでコウセイくんの自分探しの旅は終わりだね」
星見 コウセイ「ああ。それはソラトも同じだ」
アユム先生「うん」
アユム先生「じゃあ、帰ろうか、コウセイくん」
アユム先生「お腹も空いているよね。はい、今はこれで我慢して」
星見 コウセイ「ああ、ありがとう、アユ姉。いつも助かる」
星見 コウセイ「アユ姉がいてくれたから俺たちはここまで来れた。アユ姉の言葉が俺たちを導いてくれたんだ」
星見 コウセイ「だから、俺とソラトは最後に1つになって戦うことができたんだ」
――――――想像力を解き放て!
アユム先生「これからどうなっていくんだろうね?」
星見 コウセイ「わからない」
星見 コウセイ「でも、あいつはずっと
星見 コウセイ「きっと、未来はより良いものなっていくと思う」
星見 コウセイ「いや、本当のところはわかんないけど、少なくとも希望は持てると思う」
アユム先生「そうだね。これからも世界は何事もなかったかのように続いていく」
――――――ああ、見上げた先にあるのは 透き通るような世界観の いつもの青い空だった。
そう、この物語は「ソラ」から落ちてきた宇宙人“記憶喪失のオメガ”が怪獣と向き合いながら人々との交流を重ねていくうちに記憶を取り戻して“宇宙観測隊員のオメガ”に戻り、そこから新たな未来に向かって進み続ける“ウルトラマンオメガ”になるまでの物語。
だから、本当の物語は 今 始まったばかりであり、これからも世界は終わらない。終わらせない。ウルトラマンと共に怪獣と向き合う日々は続いていくのだ。それが生きるということだから。
ウルトラマンオメガ。その名は“究極”の名を冠した新しいヒーローであり、同時にひとつの時代の終わりの始まりをもたらし、新しい世界の始まりを告げる存在。
――――――それこそが誰のところにも起こり得る“目覚めの刻”を告げる存在。
オレとコウセイはウルトラマン。
でも、二人だけじゃウルトラマンとしてやっていけない。
アユ姉やセイア、みんなに助けてもらって、
はじめて がんばれる。
オレもコウセイのおかげでやりたいこと、
大切な人たちと出会えた。
怪獣とも、きっと仲良くなれるさ。
ありがとうコウセイ。
これからもよろしくな!