Blue Archive -Document SKIP feat.OMEGA and...-   作:LN58

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第3話 急な寒波に御用心 ~秘密のミッドナイトパーティーで迎えた朝~

 

――――――大屋日の出ビル 3F:(有)太陽倉庫商会

 

アユム先生「というわけで、先日は怪獣:ドグリドの件でご協力いただき、ありがとうございました」

 

アユム先生「その活躍を称えて【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】より感謝状を贈呈いたします」

 

アユム先生「そんなわけで、早速ですが、独学で怪獣の研究をしていたと言うソラトさんのお話を伺いたいと思います」

 

アユム先生「どうぞ、無農薬で作ったかぼちゃのケーキです」

 

大木田 ソラト「……野菜か」パクッ

 

星見 コウセイ「あ、コーヒーか、紅茶、どっちにします?」

 

アユム先生「ああ、どうしようかな? 私はコーヒー派だけど、たまには紅茶にしてみるのも悪くないかも」

 

大木田 ソラト「あ、野菜だけど美味い!」ニッコリ

 

アユム先生「それはよかったです」

 

アユム先生「で、これまでキヴォトスに現れることになった怪獣はグライムとドグリド――――――、」

 

アユム先生「それから怪獣が現れた時に駆けつけてくれる巨人――――――」

 

 

大木田 ソラト「――――――巨人はオメガ

 

 

アユム先生「それが個体名ですか? いい名前ですね!」

 

大木田 ソラト「うん。俺のこと――――――」

 

星見 コウセイ「うおおおおおおおおおお!」ガバッ

 

アユム先生「オメガ……、ウルトラマンオメガ……」ブツブツ・・・

 

星見 コウセイ「お、オレンジジュースの方が良かったぁ?」ハラハラ・・・

 

 

アユム先生「うん! ウルトラマンオメガ! 採用ッ!」

 

 

星見 コウセイ「へ」

 

大木田 ソラト「――――――『ウルトラマン』?」

 

アユム先生「そうです」

 

アユム先生「見てください。私が居た地球ではこのような50m級の巨人が怪獣災害から人々を守ってくれていたんです」バッ ――――――スケッチブックを開く!

 

アユム先生「私が居た世界を守ってくれたのは銀色の巨人:ウルトラマンアーク!」パラッ

 

アユム先生「そして、キヴォトスに現れたのは真っ赤な巨人:ウルトラマンオメガ!」パラッ

 

星見 コウセイ「アユ姉、絵が本当に上手いな!」

 

アユム先生「本当はデータを持ち出せればよかったんですが、それは重要機密ですから、ここでは手描きで説明させていただきますね」

 

アユム先生「他にも、ウルトラマンブレーザーなる神秘の巨人も確認されているみたいですが、」

 

アユム先生「概ねウルトラマンと呼ばれている巨人の特徴と多くの点が一致しているんですよ、このオメガも」

 

大木田 ソラト「へえ」

 

アユム先生「ですので、オメガもまたウルトラマンなんです。私がそう判断しました」

 

星見 コウセイ「そっか。アユ姉がそう言うんだったら、みんなも納得するはずだよ」

 

大木田 ソラト「ああ。ウルトラマンオメガ。俺も不思議としっくりする感じがするからイイと思う」

 

 

アユム先生「でも、正直に言って、現状の戦力では怪獣に対抗することは不可能なんです」

 

 

星見 コウセイ「え、そうなんですか?」

 

アユム先生「ええ。最初の怪獣:グライムのように街中に突如として怪獣が現れた場合の対応も各自治区で議論させて、住民の避難を最優先にするように【連邦生徒会】に指示させましたが、」

 

アユム先生「【アリウス分校】の武装蜂起によってエデン条約の締結が有耶無耶になったことでキヴォトスの緊張状態が緩和されたとは言え、キヴォトスが滅亡寸前まで追い込まれた空が赤く染まった時の傷跡もまだ完全に癒えていません」

 

アユム先生「学園都市:キヴォトスの誰もが初めて体感する50m級の超巨大生物の脅威に対抗するには何もかもが足りていない状況なんです」

 

アユム先生「今、急いで【GGF】の対怪獣兵器を再現しようと試みている状況ですが、基本的に怪獣災害は立て続けに起こるのが統計学的に明らかなので、防衛体制の構築が完了するまでにどれだけの被害が出続けることか……」

 

アユム先生「本当に今はウルトラマンだけが頼みなんです。正体不明の巨人の力に縋るしか、私たちには未来がないんです。情けないことに……」

 

星見 コウセイ「………………」

 

大木田 ソラト「………………」

 

アユム先生「ですので、少しでも状況を良くするためにソラトさんの怪獣の知識を貸してもらいたいんです」

 

大木田 ソラト「いいよ。俺で良ければ」

 

星見 コウセイ「俺も! 何か力になれることがあれば遠慮なく言ってくれ、アユ姉!」

 

アユム先生「ありがとう、二人共」

 

アユム先生「ところで、どうしてソラトさんは怪獣出現を予測できたんですか? しかも、キヴォトスではこれまで未発見だった怪獣の存在を」

 

大木田 ソラト「……『どうして』って言われてもなぁ? なんか『知ってた気がする』って言うか」

 

アユム先生「独学だと仰ってましたけど、具体的にはどのような方法で調査を?」

 

大木田 ソラト「……何だろう。何か、『感じちゃう』んだよね」

 

アユム先生「それって、つまり――――――」

 

星見 コウセイ「ごめん、アユ姉。黙ってたんだけど、実はソラト、記憶が所々で曖昧でさ」

 

アユム先生「――――――記憶喪失ってことですか?」

 

星見 コウセイ「そう」

 

大木田 ソラト「ああ、そんな感じ? 俺にもよくわかんないけど」

 

星見 コウセイ「怪獣のこと、時々 思い出すみたいで、俺が手伝ってた、みたいな……?」

 

アユム先生「……そうですか」

 

星見 コウセイ「あ、アユ姉?」

 

アユム先生「ああ、いや、気にしないでください。ソラトさんみたいに記憶喪失でも 毎日 元気に頑張っている生徒のことを知ってますので」

 

アユム先生「それにソラトさんが紛れもない天才で、フィールドワークを中心にした野外調査で確信を深めていく感覚派なのは、ドグリドの時にわかっていますので」

 

アユム先生「まあ、グライムにドグリドと言い、私も見たことがない怪獣ばかりで対策のしようがないんですよね……」

 

アユム先生「でも、だからこそ、怪獣災害の発生や甚大化を防ぐために地域に密着して科学調査や避難誘導を行っている【怪獣防災科学調査所 SKIP】が設立されたんです」

 

 

アユム先生「今こそ、【SKIP】の一員だった経験を活かす時です!」ドン!

 

 

アユム先生「だから、まだ非公式ですが、ソラトさんのことは【SKIP キヴォトス分所】の特別調査員として迎え入れたいと思っています。コウセイくんも助手として待遇します」

 

アユム先生「あ、常勤する必要はありません。ここはキヴォトスですから。私と同じく一発の弾丸が命取りの地球人のお二人の今の生活を失わせたくはないので、普段通りの生活をしてください」

 

アユム先生「それで何かあった時には情報交換や現場の応援に来てもらって、収穫があれば報酬をお支払いいたします」

 

星見 コウセイ「おお! いいんじゃないか、ソラト?」

 

大木田 ソラト「ああ……」

 

アユム先生「まあ、怪獣災害がなくなって【SKIP】から転職することになった私が言うのもなんですけど、怪獣災害なんて無い方が絶対にいいですから、ソラトさんの力を借りることがなければいいのですが……」

 

アユム先生「そもそも、この学園都市:キヴォトスに怪獣が現れるのが この先 続くかどうかも――――――」

 

大木田 ソラト「――――――続くよ」

 

アユム先生「へ」

 

大木田 ソラト「続く」

 

 

――――――目覚めの刻だから。

 

 

 

 

 

………………。

 

今はいろんなことを経験して、倉庫で働きながら、『やりたいこと探し中!』ってわけ。

 

アユ姉だって“シャーレの先生を”しながら、本職の怪獣災害の専門家として 一生懸命 頑張ってんじゃん。

 

私は、やるべきことをやっていけるだけですよ、コウセイくん。

 

それも私一人の力ではどうしようもできないことで、みんなの力を貸してもらっているんです。

 

――――――()()()()()()

 

――――――()()()()()()

 

 

 

ソラト!? アユ姉!?

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイ!

 

ヤバイ!

 

コウセイ。

 

……ソラト!

 

 

やっぱ、()()かな。

 

 

オメガスラッガーにオメガメテオをセット!

 

 

 

シュワーッ!

 

 

 

無重力怪獣:ペグノス 撃破!

 

 

 

アユム先生「よかった。無事だったんですね。あの怪獣に吹き飛ばされずに済みましたか」

 

星見 コウセイ「まあ、どうにか」アイタタタ・・・

 

アユム先生「――――――」

 

大木田 ソラト「ん?」

 

アユム先生「ちゃんと お礼 言えなかったから……」

 

アユム先生「助けてくれて、ありがとうございました。怪獣が起こす風で身体が浮いた時、もうダメかと思いました」

 

大木田 ソラト「ちがうちがう。そういう時は『ありがとう』って言うんだ」

 

アユム先生「……え?」

 

星見 コウセイ「は?」

 

大木田 ソラト「え? 俺たち、“仲間”だろう?」

 

星見 コウセイ「あ、そっか。まだ非公式だけど、俺たち、【SKIP】で働くことになる“仲間”だもんな」

 

アユム先生「ああ、そういうこと」

 

大木田 ソラト「うん」

 

アユム先生「うん、そうだった。キヴォトスに来てからはずっと“シャーレの先生”で、“先生と生徒”って関係だったから……」

 

星見 コウセイ「よし! じゃあ、今日から俺ら“仲間”ってことで! せーの――――――!」

 

大木田 ソラト「……『せーの』?」

 

星見 コウセイ「ああ、そっからだったか、ソラト」

 

アユム先生「まあまあ、早速だけど第3の怪獣:ペグノスに関する重要な情報提供があったことを認めて、報酬を出してあげるから」

 

星見 コウセイ「おお、やったな、ソラト」

 

アユム先生「ああ、でも、帰るのが怖くなってきた。ソラトさんを表彰しに行ったら、その足でこんな山奥にまで来て、」

 

アユム先生「それで、ウルトラマンオメガの活躍を見届けることができたのはいいけど、」

 

アユム先生「今頃、【シャーレ・オフィス】でユウカやノアがカンカンになっているだろうなぁ……」

 

アユム先生「ソラトさん、次からは準備の時間をくださいね……」

 

大木田 ソラト「ああ、わかった」

 

星見 コウセイ「本当だよ、まったく」

 

アユム先生「もしかしたらと思って準備しておいてよかった、非常食」

 

アユム先生「ほら、ソラトさん。お腹が空いているでしょう。そんなフラフラの状態で山を降りるのは危ないから、ここで食べていきましょう」

 

大木田 ソラト「おお! ありがとう、アユ姉!」

 

アユム先生「はい、コウセイくんも」

 

星見 コウセイ「アユ姉、マジ感謝です!」

 

 

 

 

 

早瀬 ユウカ「……先生?」ゴゴゴゴゴ

 

アユム先生「は、はい!」ドキッ

 

早瀬 ユウカ「今までどこをほっつき歩いていたんですか、長時間? 護衛もなしに?」ゴゴゴゴゴ

 

アユム先生「えと、第3の怪獣:ペグノスをウルトラマンオメガが退治した 電車に乗って2時間、そこから更に徒歩で…何時間かの山奥です。レポートはすでに提出済みのはずですが……」

 

早瀬 ユウカ「そういうことを言っているんじゃないんですよ!」ドン!

 

アユム先生「は、はひ……!」ビクッ

 

生塩 ノア「捜索に向かった【C&C】の報告に由れば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()そうですね」ゴゴゴゴゴ

 

アユム先生「あ、うん。ソラトさんね、怪獣に対して物凄く嗅覚がいいから――――――、」

 

アユム先生「まさか、あんな山奥で怪獣が出現するだなんて、おかげでその現場に居合わせることができましたよ」

 

生塩 ノア「それなら、せめてそのソラトさんの調査に同行する連絡と指示を出していただきたかったです」ゴゴゴゴゴ

 

早瀬 ユウカ「そうですよ! ロッピーやアークガロンも連れずに何時間も連絡もなしで!」ゴゴゴゴゴ

 

早瀬 ユウカ「いったいどれだけ心配したと思っているんですか、先生!?」ドン!

 

アユム先生「わ、わかってるってば。次からはすぐに飛び出さないよう、準備する時間を意識するように約束させたから、もう大丈夫」

 

早瀬 ユウカ「全然 大丈夫じゃないですよ! やっぱり、外出する時はロッピーやアークガロンを必ず連れて行ってください! それか、誰かを!」

 

アユム先生「で、でも、留守の時の対応はロッピーにしてもらわないとだし、ガロンちゃんだといろんな場所に引っかかって電車やタクシーにも乗れないし……」

 

生塩 ノア「先生」

 

アユム先生「うう……」

 

生塩 ノア「先生、私たちは何も先生の行いを否定しているわけじゃないんです」

 

生塩 ノア「事実、学園都市:キヴォトスの歴史でこれまで存在しなかった“怪獣(Kaiju)”という未知の脅威に対して、今日も有能な人材の登用(リクルート)に動いて怪獣災害の被害を減らすために駆け回ってくれていたわけですから」

 

生塩 ノア「ですが、私たちにはまだまだ“怪獣(Kaiju)”に対する あらゆる知識や理解が足りておらず、どうすることが正解なのか わからなくて不安でいっぱいなんです」

 

生塩 ノア「そんな時、私たちを正しい知見と判断で導く立場の先生が、私たちのことを振り回すような行為を率先して行うのは、全体にとってマイナスにしかならないと思いませんか?」

 

アユム先生「それは、はい、反省してます……」

 

早瀬 ユウカ「本当ですか、先生? <アトラ・ハシースの箱舟>から脱出する時のように、ご自分のことを絶対に後回しにする悪い癖が出ていませんか?」

 

早瀬 ユウカ「その結果、<アトラ・ハシースの箱舟>からの脱出に失敗した先生は私たちの前に裸の姿で現れることになったんですから、本当にやめてくださいよ、もう」

 

アユム先生「ああ、そんなこともあったねぇ……」

 

アユム先生「あ、あの時の私、オメガが空から降ってきたのと同じだったんだ。ちょっと嬉しいかも」

 

早瀬 ユウカ「先生ッ!」

 

生塩 ノア「ともかく、これから先生は【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】と新設の【怪獣防災科学調査所 SKIP】の両立を目指すことになりますから、くれぐれも無理はなさらないようにお願いします」

 

早瀬 ユウカ「ある程度まで【シャーレ】の業務を“当番”で代行することができるようになったので、今は【SKIP】の準備と指揮に力を入れてください」

 

アユム先生「うん。そうするから、絶対」

 

 

アユム先生;キヴォトス中を駆け回って自治区や生徒たちが抱える問題の解決に奔走し、最終的にキヴォトスを救った英雄として称えられるまでになった“シャーレの先生”は実は平然と嘘を吐いている時があり、言っていることに矛盾があることが 度々 確認されている。

 

と言っても、それは無自覚なものであり、無意識というよりは無関心だからこそ引き起こされるものであり、先生には時系列というものがなく、常に現在しかない――――――。

 

つまり、過去と未来でさえも細かいことだと考えて今現在のことにのみ常に意識を全集中しているアユム先生は文字通り常人離れした思考の持ち主であり、包み隠さずに言えば異常者の仲間である。

 

先生にとって後か先かの問題(鶏が先か、卵が先か)なんてものは 今現在 眼の前で起きている事象の解決に直接的には結びつかない()()()()()()()()()として視界に入らない。

 

それが大人としての立居振舞ができているのは、キヴォトスにおいて生徒を正しく導く役割を“シャーレの先生”の肩書で与えられているから、そのように機能しているだけに過ぎない。それが極めて合理的な在り方だと、そう結論付けられているのだ。

 

だからこそ、私は先生のことを記録し続けていく中で先生の中の虚無に気づいた時、正確な記録を取り続けるために徹底的に客観性を確保するべく、全てが白一色に塗り潰された私自身の有り様に気づかされることになった。

 

私もまた生まれ持った瞬間記憶能力によって物事を記録し続けなければならない書記の役割と人生を規定され、そのように機能していることで、過去を記録し続けている私は現在のことだけを意識している先生の姿から私自身の未来を見た――――――。

 

 

でも、それこそが手本であり、理想であり、みんなの憧れや目標となって、今日もまた同じ時間に私は先生の絵が投稿される瞬間を待ち構えていた。

 

 

先生の故郷である地球で【SKIP】が制式採用している超高性能多目的AI搭載型サポートロボット:ユピー・ザ・ロボット――――――、

 

それをキヴォトスで一から再現した試作機:ロッピー・ザ・ロボットが拾い上げた(スキャンした) 業務時間の合間合間に先生が息抜きに描いた落書き(ラフ絵)がSNSの公式アカウントに毎日投稿されているのだ。それが常に万バズとなっており、先生の絵には人々を魅了する魔力が備わっていた。

 

そう、アユム先生の本職は【怪獣防災科学調査所 SKIP】の職員なのは知っての通りだけれど、その専門は技術開発者でかつインダストリアルデザイナーということで工学系の才能に美術系の職能力を併せ持つセミプロでもあった。

 

実際、“シャーレの先生”としてアユム先生の人気や知名度を上げる最初の原動力となったのがSNS上の【シャーレ】の広報活動で発揮された絵師としての実績であり、インダストリアルデザイナーなので描画(painting)よりも線画(drawing)が得意なのもあって、落書きのつもりで最初に描き始めていただろう何気ない風景画や静物画でも迫力がみなぎっていた。

 

漫画を描かせたら、学生時代のある人曰く皆川 亮二に匹敵する画才なのだとか。皆川フェードもお手のもの。そのため、本気で漫画家になって欲しいと、あるいは同人作家になって欲しいと引く手数多だったと言う。

 

しかし、そこでも少年漫画、青年漫画、幼年漫画、少女漫画、レディコミ、アメコミ、歴史漫画、バトル漫画、ホビー漫画、ホラー漫画など何でも画風を模写できたためにリクエストがひっきりなしで、一枚絵を専門に描くイラストレーターに落ち着いたと言う。

 

それほどまでの画伯である先生に最初に出会うことになった生徒の一人であるユウカちゃんから先生のことを聞かされた後、SNSに投稿された先生の絵が 早速 話題になると、その画力の高さはもちろんのこと、絵に込められた先生独自の世界観とでも言うべきものに惹かれることになった。先生の目にはキヴォトスがこのように写っているのだと興味を惹かれたのだ。

 

だから、失踪した“連邦生徒会長”が用意していた【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】という不特定多数のキヴォトス中の生徒を参加させる目的不明の部活動の顧問に先生が就任したことの意味と実態を探るべく、本当は好奇心から私はユウカちゃんと一緒に立ち上げ直後の【シャーレ】の活動に参加することにした。いわゆる“シャーレの当番”である。

 

ユウカちゃんの紹介で先生と対面することになった私はすぐに先生と意気投合することができた。なにしろ、先生の本職は技術開発者でかつインダストリアルデザイナーということで、最初にやっていたことが【怪獣防災科学調査所 SKIP】で量産されていたサポートロボット:ユピー・ザ・ロボットの再現であり、私たちに【シャーレ】の基本的な業務を丸投げにする傍ら、自分一人しか職員がいない状況をまず改善するべくお手伝いロボットの製作を最優先にしていたのだ。

 

そのため、私たちは【シャーレ】の活動が本格化する前の実質的なプレオープンイベントのメンバーとしてアユム先生に密着することになり、その人間性や能力を深く知る機会を得ることができた。

 

特に、私は弁理士として特許の申請・登録・管理を担当して 毎日 膨大な数を捌いているので、先生が引いた図面の内容がどれだけ凄いのかを見ただけで理解できていた。

 

しかも、CADを使うよりも手で描いた方が早いと思えば、定規を使わずにまっすぐな線を寸分違わず何本も引いて図面の下書き1枚をものの数分で仕上げてしまうのだ。自分が作ろうとしている製品の設計図や仕様が完全に頭に入っていないとできないだけじゃない。製作そのものが一種の芸術の域に達していた。

 

なので、その作業風景を見れば誰が見ても天才だと理解できるだけに、常人とは物の見方や、聞こえ方、感じ方がまったく異なることから『普通のことが苦手』という天才に特有の弱点もはっきりしていたため、誰かが常に側にいて支えてあげないと危なっかしいと思わせる隙の多さも持ち合わせていた。

 

そう、アユム先生は仕事そのものは精密機械のごとく完璧にこなす代わりに、終わらせた仕事の前後関係があやふやになるところがあり、進捗管理表や仕様書を逐一確認しないと何をやっていたのかを完全に忘れてしまうのだ。もちろん、自分がやった仕事は完璧であるため、自分がやった内容を確認すれば何をしていたのかを完璧に思い出せるのだが、いちいち確認する分、その手間が惜しい。

 

これの何が深刻なのかと言えば、仕事ならば進捗管理表や仕様書があるので必要な時に確認すれば完璧に仕事の内容を思い出せるのだけれど、日常生活であっても常に1日の予定を記録しておかないと、ふとした瞬間に自分が何をしていたのかを次の瞬間には忘れてしまうため、

 

1つのことに集中できている時はいい。だけど、たとえば料理をしている最中にちょっとの間だけ別のことで呼び出されて台所に戻ってくると、自分が何を作っていたのかを完全に忘れているほどなのだ。そうなることが自分でもわかっているので、自分で推理できるように離れる時の工夫はしているものの、推理を必要とするぐらいに思い出す手間が発生するのは明らかに生活に支障を来していると言えるほどだった。

 

もちろん、仕事の時のように都度メモを残しておけば安心なのだけど、何をするにしてもメモを残すメモ魔になれるほどの病的な几帳面さまでは持ち合わせていないので、日常生活の中で『ちょっと時間をもらう』行為が物凄く迷惑に感じていたのだ。

 

たしかに、これはロッピー・ザ・ロボットなるお手伝い(介護)ロボットを自前で用意しておかないと まともに生活ができない 仕事人間ということがプレオープンでしっかりと理解されることになり、

 

だから、誰かの日常を記録することがその人の生活の大きな助けになっていると言うのが、お世話好きなユウカちゃんだけじゃなく、記録することが人生の私にある種の使命感や庇護欲を掻き立てたのは言うまでもない。

 

そして、そんな仕事人間の先生はただ単に職能力が高いだけじゃなく、自分が周りから大いに助けられている立場を自覚して周りをもてなす能力もあるため、【シャーレ】の業務を手伝ってくれている生徒たちへの気遣いもしっかりとできていて、

 

その上で適度なタイミングで休憩を挟み、お菓子作りにも凝っていたので、物凄く手の込んだ手作りのお菓子を出されただけで先生の両極端なところを全て愛したくなるぐらいに心を鷲掴みにされてしまうのだ。もちろん、お菓子作りしている最中に先生の気が散るようなことをした時の味の保証はない。

 

あくまでも先生は常人よりも能力が極めて高く、やるべきことの取捨選択がたくさんあって、それで割り切りが良すぎるだけで、本来ならば自分がすべき業務を代行してくれている生徒たちに対して心から礼を尽くしてくれる大変律儀で心優しい性質なのが伝わってくる。

 

だから、この割り切り具合に最初は呆気に取られることになったものの、性質が理解できてくれば、プレオープンでは『運営の仕方がわからないので運営マニュアルの作成を先生が依頼した』という体で処理し、先生がやろうとしていることを心から応援することにした。

 

この後、私たちは【ミレニアムサイエンススクール】の生徒を何人も紹介してプロジェクトを組んで先生の業務と生活に必要不可欠なお手伝い(介護)ロボット:ロッピー・ザ・ロボットを完成させることになり、得難い経験と喜びを共有することになった。

 

この時、先生はプロジェクトに参加した生徒たち全員と技術共有しながらSNSで万バズの絵師として絵を使って場を和ませながら良好な関係を築いていて、そこにはあまり人前に姿を現すことのないリオ会長も一度だけ先生に意見交換に来ていたのが印象深かった。

 

こうして完成したロッピー・ザ・ロボットは普段から多忙を極める先生の負担を大幅に軽減させながらも、本来の自律AI搭載型サポートロボ :ユピー・ザ・ロボットが持つ多彩な機能をアップデートを重ねて実装していくことになり、その技術力の高さから多くの学園や企業から注目の的になった。

 

そこから本格的に【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】の活動が始まり、“シャーレの先生”を【ミレニアム】に囲い込むべく リオ会長が常に【C&C】のエージェントを護衛に派遣するようになり、私たち【ミレニアムサイエンススクール】の庇護の下で先生はキヴォトス中の数々の難事件の問題解決に奔走することになった。

 

そうやってキヴォトス各地で先生の活躍が報告されるのは大変嬉しいことではあったけれども、その度に先生のことを慕う生徒たちが増えていっていることに私もユウカちゃんも焦りと苛立ちを覚えずにはいられなかった。

 

先生はただでさえ生活に支障を来しているほどの極端な仕事人間で、常に隣に立つ誰かの支えを必要としているからこそ、あれだけの心遣いができる優しい人なのだから、みんながその隣に立ちたがるのは当然の話だった。

 

もちろん、【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】の存在感と影響力を正しく理解した各学園の生徒会長たちが“シャーレの先生”を手中に収めんと水面下で動き始め、先に出し抜こうとすれば袋叩きに遭う睨み合いの状況が続き、結果として誰も先生に手を出せなくなっていた。

 

そのおかげで、普段は政治的な動きやその裏にある思惑を見通す卓越した頭脳があるのに 自分事になると途端に鈍感になる先生の何気ない日常は守られることになり、キヴォトスでも怪獣が現れるようになった新たな危機の時代においても、先生を中心にまとまりを見せたキヴォトスの連帯感は維持され、一定の秩序と平和が保たれることになった。

 

だから、私もユウカちゃんも、これからも先生のことを側で支え続ける道を歩み続けたいと思っている。それがキヴォトスの平和に繋がるだけじゃなく、並行世界の先生(プレナパテス)の弔いになると信じて。

 

 

――――――話は変わって、アユム先生の人間性を生徒で喩えるとしたら、【C&C】一之瀬 アスナと【補習授業部】浦和 ハナコを足して2で割った人物かもしれない。

 

 

どちらも常人には突拍子もない発想と行動力の持ち主で問題を起こすことがしばしばあるものの、先生自身も自分に似たところがある生徒として2人の名前を挙げたことがあり、それだけに非常に気を遣って接している生徒として印象深い。

 

実際、【C&C】一之瀬 アスナはその卓越した直感力で直接“正解”を引き寄せているかのような異能を発揮する一方で、気の向くままに突飛な行動をしては浮かんだ疑問は何でも悪気なく口にする傾向があり、相手によっては絶対に聞いてはいけないような内容と尋ね方をして逆鱗に触れるため、目を離した隙に何をしでかすかわからないので気が気でならない。

 

そして、【補習授業部】浦和 ハナコもエデン条約を巡る陰謀や<アトラ・ハシースの箱舟>占領戦で抜群の頭脳明晰さを見せて先生の力になっていたが、その功績を打ち消すほどに晄輪大祭の選手宣誓を放送中止に追い込んだことに代表されるような普段から風紀を乱す行いに邁進している変質者でもあった。

 

それぐらい二面性のある生徒たちとは『似通っている』と自分で認めているのがアユム先生であり、先生もまた常人離れした二面性の持ち主なのにはすぐに気付かされていたが、

 

それでも、私たちの前では大人として常識と良識のある振る舞いをちゃんとしてきているだけに、一之瀬 アスナと浦和 ハナコを見て『昔の自分を見ているみたい』と呟いていたことが今も心に引っかかっていた。

 

ただ、そんな私たちとの関係性もK-DAYを迎えたことで変わらざるを得なくなっており、【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】と【怪獣防災科学調査所 SKIP】の代表を兼ねていくことで変わっていく先生の人間関係の中に私たちの存在をどれだけ刻みつけることができるのか――――――。

 

そんなことを考えながら、私はアユム先生が【SKIP】の職員として迎え入れようとしている男性2人について不快感と警戒心を深めていくのだった。場合によっては【C&C】に動いてもらうことも視野に入れないとならないだろう。

 

 

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