Blue Archive -Document SKIP feat.OMEGA and...-   作:LN58

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外伝1 オメガダンス ~みんなもおどってみよう!~

 

アユム先生「最後に! 右手を上に掲げて!」

 

アユム先生「ゆっくり前に下ろして<オメガスコープ>のポーズ!」

 

アユム先生「そして、拳を握って上に掲げる!」

 

ロッピー「――――――」ビシッ

 

ガロンちゃん「――――――」ビシッ

 

アユム先生「――――――」ビシッ

 

 

アユム先生「完璧ぃ! やったー!」

 

アユム先生「よし、収録完了! みんな、ありがとう!」パチパチ・・・!

 

ロッピー「おつかれさまです、先生。アイスコーヒーを淹れてきますね」

 

ガロンちゃん「ガオガオー!」

 

大木田 ソラト「あ、アユ姉、何やってんの?」

 

アユム先生「あ、ソラトさん! 今、ウルトラマンオメガの応援歌の振り付けが完成したから、実際に踊ってみたんです!」

 

大木田 ソラト「おお、応援歌! オメガの!」

 

アユム先生「そうなんです! みんなのヒーロー:ウルトラマンには応援歌がつきものなんです! SKaRD体操しかり、SKIP体操しかり!」

 

 

――――――名付けてオメガダンス

 

 

アユム先生「いくつかバージョンを撮って動画共有サイトに投稿予定です。テーマソングも着メロと合わせて配信予定ですよ」

 

アユム先生「ソラトさんも踊ってみませんか? ウルトラマンオメガへのリスペクトをたっぷり込めてますよ!」

 

大木田 ソラト「ああ。俺も“踊り”やってみたい」

 

アユム先生「じゃあ、まずはこちらの映像を見てください」ピッ ――――――MV再生開始。

 

大木田 ソラト「おお、オメガだ。オメガが“踊り”を踊ってる」

 

アユム先生「そう、3Dモデル。オメガの戦闘シーンをダンスに取り入れて(キャプチャーして)、振り付けや音楽をオメガに相応しいようにAI生成したんですよ。なかなかの仕上がりでしょう」

 

大木田 ソラト「ほうほう」

 

ロッピー「アイスコーヒーをどうぞ、先生」

 

アユム先生「うん。それじゃあ、ロッピー、ガロンちゃん。今度はソラトさんも混ぜて撮影しようね」ゴクゴク・・・

 

ガロンちゃん「ガオガオー!」

 

大木田 ソラト「よし、アユ姉! 一緒に踊ろう!」

 

アユム先生「はい!」

 

 

聖園 ミカ「え、『アユ姉』って……、先生、誰、その人? 先生のことをそんな風に呼ぶだなんて、いったいどんな関係なの? それに『一緒に踊ろう』って?」

 

 

アユム先生「あ、おはよう、ミカ。ミカも来たんだね」

 

聖園 ミカ「ねえ、先生、答えて」

 

聖園 ミカ「私は先生にとって“お姫様”で、先生は私にとって“王子様”なんだよね?」

 

アユム先生「うん、そうだよ。本当は“王子様”なんて柄じゃないんだけど、ミカの“お姫様”らしさに比べたら、そうなっちゃう感じかな」

 

アユム先生「ナギサとだったら、私が“お姫様”になれるんだけどなぁ……」

 

聖園 ミカ「ナギちゃん!? ナギちゃんは今は関係ないよ!」

 

大木田 ソラト「おーい、ちょっといいかな?」

 

聖園 ミカ「うるさい! 私に話しかけないで! 私から先生を取らないでよ!」ブン!

 

アユム先生「み、ミカぁああああああ!?」

 

ロッピー「い、いけませんわ!」

 

ガロンちゃん「ガオガオー!?」

 

聖園 ミカ「あ」

 

大木田 ソラト「おっと」バシッ ――――――壁すら打ち砕く剛拳を難なく受け止める!

 

聖園 ミカ「え? ええ!?」

 

アユム先生「……ミカの剛拳を受け止めたぁ!?」

 

聖園 ミカ「あ、その、ごめんなさい。私、思わず手が……」

 

大木田 ソラト「えっと、ミカって言うんだよな」

 

聖園 ミカ「あ……」

 

大木田 ソラト「ミカもさ、一緒に“踊り”やろうよ」

 

聖園 ミカ「へ」

 

アユム先生「ソラトさん」ホッ

 

 

聖園 ミカ「へえ、K-DAYを迎えてから【シャーレ】で踊るようになった先生の新作ダンスなんだ」

 

アユム先生「実は、私が朝の体操で踊るようになったSKIP体操はね、【SKIP】星元市分所の職員が怪獣災害で避難するための体力作りを楽しくできるように考案したものなんだよ」

 

アユム先生「そして、星元市を怪獣災害から救ってくれる“さいきょうのヒーロー”の宣伝も兼ねているんだ」

 

アユム先生「だから、所々でウルトラマンのアクションが組み込まれているんだ。オメガダンスもその流れを汲んでいるの」

 

アユム先生「ああ、やっぱり、ソラトさん。身体を動かすのが得意なんですね。いいですよ、キマッてますよ。上手ですね、オメガのポーズ」

 

大木田 ソラト「いえーい。アユ姉に褒められた」

 

聖園 ミカ「ねえ、私は? 先生、私は?」ムスー!

 

アユム先生「そうだねぇ。もっと自然体でいいよ。これは創作ダンスだから、基本を押さえていればいいから。ね」

 

 

アユム先生「それじゃあ、1回通しでやってみたけど、どうだった?」

 

大木田 ソラト「覚えたよ。完璧だ」b

 

聖園 ミカ「これ、結構 楽しいかも」アハハ!

 

アユム先生「みんな、準備OKだね。ソラトさん。曲振り、お願い」

 

大木田 ソラト「うん。それじゃあ、行くぞ」

 

 

ミュージック、スタート!

 

 

 

 

 

――――――先生は“裏切りの魔女”だった私を救ってくれた“最高の王子様”だった。

 

 

だからこそ、空が赤く染まった滅亡の危機を乗り越えた後、しばらくアユム先生の様子がおかしかったことがずっと気になっていた。

 

先生は『何をするにしても まず必要なのは上質なコーヒー豆』だなんて言って、本格派の紅茶以外は絶対に飲まない根っからの紅茶愛好家のナギちゃんの前でそんなことを公言して憚らない熱心なコーヒー党で、

 

エデン条約締結前に万全を期すためにホストとしてナギちゃんが【シャーレ】に“トリニティの裏切り者”の捜索を裏で依頼しようとした時、用意された紅茶に一切口をつけずに使われていないティーカップをひったくってタンブラーに容れたコーヒーを注いで飲んでいたぐらいだった。

 

これが私やナギちゃんにとっての“シャーレの先生”との衝撃的な最初の出会い(ファーストコンタクト)で、これには私もナギちゃんも唖然とするばかりで、タンブラーから注がれた湯気の立つコーヒーをティーカップで美味しそうに飲み干すと――――――、

 

 

――――――紅茶はすぐに酸化するから、熱々のものをタンブラーに容れて美味しく味わえないだなんて、スゴくかわいそうだよね。*1*2

 

 

と、なぜか初対面の相手であるはずの私たちを憐れみの目で見つめてきた。本当に意味がわからなかった。

 

後から思うに、私たちに会った時点でエデン条約締結前の重要な時期に【ティーパーティー】が率先して第三者である【シャーレ】の介入を自ら招く動機に勘付いて裏取りを済ませた状態だったみたいで、

 

先生は一計を案じて 初対面で無作法を働く交渉相手を演じて 生徒会長職である【ティーパーティー】ホスト:桐藤 ナギサの反応をじっくり確認していたんだと思う。

 

正直に言って、最初は私もナギちゃんも、なんだったらセイアちゃんも、“シャーレの先生”が【ミレニアムサイエンススクール】の“ビッグシスター”と対等に渡り合える知性の持ち主であることの凄さをまったく理解していなかった。

 

そう、終始 挑発的な態度に徹する“シャーレの先生”に会話の主導権を握られて、ナギちゃんが紅茶について語りだそうとすると先生は必ずコーヒーの話題に持っていって、終いには『せっかくだから飲み比べをしよう』と言ってナギちゃんのティーカップと先生のティーカップを交換しようとしてくるものだから、もうナギちゃんがいっぱいいっぱいになっていた。

 

ここまで来たら『もう収拾がつかない』と思ってナギちゃんのティーカップを私が取り上げた時の、ナギちゃんの心からの安堵の表情は今でも強烈に記憶に残っている。

 

それだから、本題である【補習授業部】の顧問になってもらう話をなかなか切り出せず、ついにはティーカップを口に運ぶ回数が異常に多いことをナギちゃんが先生にニッコニコの表情で指摘されてハッとなるぐらいには、私たちは最初からアユム先生の掌の上で転がされていた。

 

 

――――――役者がちがった。本物の大人だった先生の前では私たちは完全に子供だった。

 

 

そこからようやく本題に入ると、先程まで紅茶のことを語ろうとするとコーヒー談義に繋げてくる饒舌さが嘘のように静まり返り、今度はずっとニッコニコの表情で静かに聴くことに徹して相槌を打つだけになったから、逆にナギちゃんは自分で言ってて何か間違ったことを言っていないか不安になりながらも【シャーレ】に依頼を取り付けた。

 

それで、自分が大のコーヒー党ということで、『お客様の好みに合わせたおもてなしができないのに、相手と手を取り合えるはずがない』と、エデン条約が失敗することを最後に予言して笑顔で部屋を後にした――――――。

 

そんな出会いだったからこそ、先生が 紅茶愛好家と対立する コーヒー愛好家なのは【ティーパーティー】の誰もが身を持って理解させられていた。

 

特に、ナギちゃんに関しては後で先生と秘密の特訓でコーヒーの匂いを嗅ぐと覚醒状態になるマインドスイッチを仕込まれていたほど。

 

 

――――――けれども、空が赤く染まった後に“キヴォトスを救った英雄”と称えられるようになったアユム先生との最初の公式会談で、なんと、紅茶は絶対に飲まないと思われたコーヒー党の先生が自分でティーカップに紅茶を注いで一気に飲み干したの!

 

 

いきなりのことで私もびっくりだったし、ナギちゃんに至っては秘密の特訓で先生にコーヒー漬けにされるほどだったから、公式会談だと言うことも忘れて、先生の正気を疑っていた。私たちの中で先生とは関わりが薄いセイアちゃんはそれほどでも。

 

ただ、公式会談はこんな感じにまた先生に意表を突かれることになったけれど、先生の心境の変化が見て取れ、会談の終わりに『美味しい紅茶の飲み方を教えて欲しい』と微笑んだ時は、ナギちゃんが先生の両手を掴んで歓迎の言葉を送ることになって、

 

その時は滅亡の危機をキヴォトス中の生徒たちが一丸となって乗り越えた新時代を迎え、そのことを象徴する先生の新しいユーモアだと思ったけど、やっぱり後から考えると、先生の表情にはどこか哀愁が漂っていた。何かがスゴクおかしかった。

 

その予感は中たっていた。後日、先生はナギちゃんから多額の借金をしてまでロッピー・ザ・ロボットとは別の新しいサポートロボット:ミニ・アースガロンの開発に寝る間も惜しんで没頭するようになっていたみたい。

 

それで、私よりももっと近くで先生を見ていた人たちから先生が冷静じゃないことを指摘されて、借りたお金は一旦全て返してクラウドファンディングに切り替え、あらためて みんなに協力してもらうことで新しいサポートロボット:ミニ・アースガロンを完成させることができたみたい。

 

怖くなった。だって、先生はナギちゃんやセイアちゃんよりもずっと頭が良くて、“シャーレの先生”として最適かつ厳格な生活習慣を守って、いつでもみんなのために頑張れるように体調に気を遣って羽目を外すことは絶対にしない、自分が決めたルールに従って結果を出し続ける 完璧な大人としての振る舞いをずっとしてきていた。

 

だから、今までなら絶対にしていなかったことをするようになった先生の変化がとても怖くて、私のことを“大切なお姫様”って言って、私のわがままなところやダメなところを全部、全部 優しく包みこんでくれた『優しかった“シャーレの先生”がいなくなっていたら』と思うと、本当に居ても立っても居られなかった。

 

 

――――――会いたかった。会って確かめたかった。私は“大切なお姫様”で、先生は“最高の王子様”のままなことを。

 

 

その時はようやく訪れた。先生が夜明け前の広場で新作ダンスの練習をするという情報が裏コミュニティサイトに入り、私は日付が変わった時間に寮を抜け出して徒歩で情報の場所を目指した。

 

この時間には電車もバスもないことはわかっていたし、悪い人たちが夜の闇に紛れて悪さしていたけれど、どうしても先生に会いたい一心で歩き通した私の目の前には、先生が裏コミュニティサイトで要注意人物として情報共有されていた例の男の人と一緒に居た。

 

信じたくなかった。私は先生のものなのに、先生が他の人のものになっているかもしれないと思うと、今すぐに先生を自分だけのものにしたい衝動に駆られる。それがいけないことだとわかっていても、もうどうしようもなかった。

 

けれど、私の突き出された手はアユム先生以上に大きな手にすんなり受け止められて、その時の私の目には目の前にいる男の人がとてつもなく巨大に見えた。

 

 

でも、先生のことを気安く“アユ姉”と呼んでいるソラトさんは私が悪いことをしたのにまったく気にした様子もなく、“トリニティの裏切り者”としてみんなから距離を置かれている私のことを『一緒に踊らないか』と誘ってくれた――――――。

 

 

悔しかった。私にとって優しい大人はアユム先生だけであって欲しかったから。アユム先生が私の運命の人であって欲しかったから。私の世界を包み込む優しさの全てであって欲しかったから。

 

言葉を交わしてすぐに優しい人だと信じられる雰囲気を持つソラトさん。要注意人物として先生との関係を疑うことがなければ、きっとコハルちゃんのようにごく普通に接してくれたソラトさんに対してこの場で素直になれていたと思うと、いかに自分が夢見がちな子供なのかと笑えてきた。

 

けど、怪獣(アークガロン)の気配を感じて たまたま早朝の広場に徒歩で来たという自称:怪獣研究家のソラトさんも物凄く子供っぽいわけで、『そんなことがあるのか』とつい声を出して笑ってしまってもまったく気にしない関係性が思ったよりも居心地が良かった。

 

それで、早朝の静けさと涼しさの中で 思い思いに思いっきり身体を動かすのが 思いの外 楽しくて、楽しくなって何度も声を上げることになったよ。くるくるくるくるー。

 

 

だから、これが私とアユ姉とソラトさんだけの早朝の秘密のダンス撮影という楽しい思い出――――――。

 

 

そう、先生と生徒の関係から一歩踏み出すことができた記念になったし、本当に楽しかった。

 

一瞬だけちょうどよく差し込んだ朝日を本当に眩しく感じながらフィナーレを飾って完全にやりきった後、颯爽とその場を後にしたソラトさんの大きな背中を見送った。

 

それで、私は先生と一緒に【シャーレ・オフィス】まで歩いていって、先生と一緒にシャワーを浴びて、先生と一緒に髪を乾かして、先生と一緒に朝ごはんを食べて、先生と一緒にクルマに乗って、先生と一緒にナギちゃんのところへ怒られに行ったよ。

 

 

――――――右手を上に掲げて、ゆっくり前に下ろして<オメガスコープ>。最後に拳を握って天に掲げろ。

 

 

あ、そうだ。“楽しい”だ。一緒に踊れて“楽しい”だ。

 

コウセイやキリノにも教えてくる。

 

みんなでやった方がもっと“楽しい”だもんな。

 

 

*1
紅茶はタンブラーに入れて持ち運んでも大丈夫ではあるが、ホットティーだとその熱によって酸化して味が変わるため、水出し紅茶やアイスティーが推奨。

*2
一方、コーヒーの酸化の主な原因は空気との接触によるものなので、密閉性の高いタンブラーに容れたホットコーヒーなら1時間ぐらいは味が保たれるとされる。が、当然 水出しコーヒーやアイスコーヒーの方が遥かに味が長持ちする。

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