Blue Archive -Document SKIP feat.OMEGA and...-   作:LN58

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第5話 ミコとミコト ~いつかの芽吹きを待ち侘びて~

 

 

 

伝説蛇獣:オオヘビヌシノミコト 散華!

 

 

ひょっとしてミコトは『友達を守るにはああするしかない』って思ったのかも……。

 

 

大木田 ソラト「………………」

 

星見 コウセイ「ああ、アユ姉。お早い到着で」

 

アユム先生「コウセイくんもおつかれさま。まさか、百鬼夜行自治区に来ている時に怪獣が出現するだなんて」

 

アユム先生「あ、とりあえず、はい。お弁当。ソラトさん、お腹を空かせているでしょう」

 

星見 コウセイ「ありがとう、アユ姉! おお、百鬼夜行自治区の特産品がたっぷりの仕出し弁当じゃん! ごちそうさまです!」

 

アユム先生「何か情報はある? これぐらいの田舎になるとカメラを回してネットに上げてくれる人がいなくて、聞き込み調査をするぐらいしかなくなるのだけれど」

 

星見 コウセイ「おい、ソラト、どうなんだ?」

 

大木田 ソラト「……知らない怪獣だった」

 

星見 コウセイ「え?」

 

アユム先生「そうですか。ヘビが怪獣化したものだとするなら、他にも仲間が居そうですね。念入りに調査をしないとですね」

 

大木田 ソラト「あ、いや、地元の言い伝えだと“人間の女性と恋に落ちた蛇の神様”が居るんだとか」

 

 

アユム先生「――――――蛇神? もしや【花鳥風月部】が呼び出した怪異?」

 

 

アユム先生「………………」

 

星見 コウセイ「アユ姉?」

 

アユム先生「とりあえず、今日のところは聞き込み調査をして【陰陽部】に報告。後のことは生徒会である【陰陽部】に託しましょう」

 

大木田 ソラト「……そうか」

 

アユム先生「ねえ、ソラトさん、コウセイくん? 怪獣の聞き込み調査が終わったら、一緒にお祭りに行かない?」

 

大木田 ソラト「……『お祭り』?」

 

星見 コウセイ「ああ、【百花繚乱】で“燈籠祭”が始まるってニュースがあったけど、今日だったんだ」

 

星見 コウセイ「あれ? でも、もうちょっと前の日付だったような――――――?」

 

アユム先生「どうする、ソラトさん? コウセイくん? 今回の報酬があれば、祭り屋台を制覇するのも夢じゃないかもよ?」

 

大木田 ソラト「……ああ」

 

星見 コウセイ「せっかくだし、祭りを見物していこうぜ、ソラト。百鬼夜行自治区なんて滅多に来れないんだしさ」

 

大木田 ソラト「いいのか、コウセイ?」

 

星見 コウセイ「いいってば。ソラトがこんな場所まで行くことになったのも、元はと言えば 俺が発送し忘れてソラトに配達させることになったせいなんだからさ」

 

アユム先生「それで、配達先で怪獣に遭遇したんですか……」

 

アユム先生「私の方も伝説上の存在と思われていた【花鳥風月部】が起こした怪事件に巻き込まれることになったし……」

 

アユム先生「まあ、でも、お互いに無事で何よりです」

 

大木田 ソラト「ああ、そうだな。アユ姉の言うとおりだ」

 

アユム先生「じゃあ、聞き込み調査を始めますか。目撃情報が十分に集まればいいのですが……」

 

 

 

 

 

ヒュウウウウウウン・・・・、パァアアアアアアアン!

 

 

大木田 ソラト「おお!」

 

アユム先生「始まりましたよ、花火!」ナデナデ

 

天地 ニヤ「………………」ドキドキ ――――――先生の膝の上に頭を乗せて撫でられている!

 

星見 コウセイ「た~まや~!」

 

大木田 ソラト「………………」

 

星見 コウセイ「あ、どうした、ソラト? せっかく屋台のものをいっぱい買えたのに、今日一日、何だか元気がないみたいだぞ?」

 

大木田 ソラト「そうか?」

 

 

大木田 ソラト「……“お祭り”って良いもんだな、コウセイ」

 

 

星見 コウセイ「どうした、急に?」

 

大木田 ソラト「なんていうのか、自治区のみんなが“仲間”になって1つの大きなことに向かっていって、たくさんの出店や燈籠流しに花火大会を実現していっているんだろう?」

 

大木田 ソラト「――――――同じことが他の自治区でもできるのかなって」

 

大木田 ソラト「だからさ、キヴォトス全体で“お祭り”ができたら、きっと、いい結果になるんじゃないかなーって」

 

大木田 ソラト「ほら、“踊り”だって、みんなでしたら“楽しい”だったもんな」

 

星見 コウセイ「ソラト……」

 

アユム先生「なるほど。考えさせられる話ですね」

 

アユム先生「連邦生徒会長代行の座をめぐる【連邦生徒会】の内紛が終わっても首都:D.U.地区の治安はまだまだ落ち着かないですからね」

 

アユム先生「やっぱり、地域に密着して地域住民との信頼関係を築くことができなければ、公権力もただの上っ面な暴力装置にしかならないわけです」

 

星見 コウセイ「だな。俺のところは治安が良いままだったけど、ちゃんと【ヴァルキューレ】の見回りが続けられていたもんな」

 

天地 ニヤ「……あの、私はいつまでこうしていたら?」ドキドキ ――――――先生の膝の上に頭を乗せて撫でられている!

 

アユム先生「黙っていて。チセのナデナデを反故にされた責任をニヤがとるの」ナデナデ

 

天地 ニヤ「で、でも、他の人が見てますから……!」ドキドキ ――――――先生の膝の上に頭を乗せて撫でられている!

 

星見 コウセイ「ああ、見てない見てない。俺は何も見てない……」

 

大木田 ソラト「うーん、なんだろうな、コウセイが作ってくれた焼きそばの方が美味い気がするな、これ」ズズ・・・

 

 

桐生 キキョウ「――――――何してるの、先生?」ゴゴゴゴゴ

 

 

アユム先生「あ、キキョウ! 一緒にここで花火を見ない?」パッ

 

天地 ニヤ「それじゃあ、私はこれにて!」シュタタタタ!

 

アユム先生「あ、逃げた!」

 

桐生 キキョウ「まさか、【百花繚乱】だけじゃ飽き足らず、【陰陽部】部長まで手籠めにしているだなんて思わなかった」

 

桐生 キキョウ「覚悟してよね。今からあんたの時間は全部、私が独り占めする予定なんだから」

 

アユム先生「ひっ」ビクッ

 

アユム先生「あ、ソラトさん。コウセイくん。花火、楽しんでいってね。私はこれで――――――」スッ

 

桐生 キキョウ「逃げられると思う? この【百花繚乱】の参謀から」ガシッ

 

アユム先生「た、助けて、ロッピー! ガロンちゃん!」

 

桐生 キキョウ「残念だけど、ロッピーもアークガロンも子供たちの人気者だから、今 身動きがとれない状況だから」

 

桐生 キキョウ「さあ、あんたはおとなしくこっちに来るの!」

 

アユム先生「ごめんね、キキョウ! 私にはニヤの頭をナデナデする重大な任務があるから、放して!」

 

桐生 キキョウ「な、なによ。だったら、逃げられたんだから、代わりに私にやってよ、ナデナデ……」モジモジ

 

アユム先生「へ?」

 

桐生 キキョウ「だから、もう今日は放さないから、先生!」

 

アユム先生「ああああれええええええええええ!?」

 

星見 コウセイ「あ、アユ姉、いってらぁ……」アハハ・・・

 

大木田 ソラト「おお! なあ、コウセイ! これ、美味いな! 何て言うんだ?」

 

星見 コウセイ「え? ああ、そいつはな――――――」

 

 

ヒュウウウウウウン・・・・、パァアアアアアアアン!

 

 

 

 

 

――――――本当に反吐が出る。

 

 

アユム先生が祭りの出し物で創作ダンスをユカリと踊るのまでは許せた。ユカリのおかげで私たち【百花繚乱】もみんなが暮らしている【百鬼夜行】も守られたわけだから、それには報いてあげないとだから。

 

けれども、その創作ダンスの最初の収録で"トリニティの魔女”聖園 ミカと一緒に踊っていた要注意人物:大木田 ソラトがこの【百鬼夜行】にも現れて、ユカリやアユム先生と一緒の舞台で踊るのは物凄く腹立たしかった。

 

ああ、反吐が出る。私の中では泥棒猫:杏山 カズサがこれまで一番の要注意人物だっただけに、ここに来て先生と同じ地球人でかつ先生と同年代の大人の男性が現れるだなんて、完全に想定外だった。巷では先生との関係の噂で持ち切りなのが本当に腹が立つ。

 

だからこそ、自称:怪獣研究家という胡散臭い大人の大木田 ソラトの弱点を探るために、その従兄弟である星見 コウセイの護衛を引き受けることにしたのだけれど、あまり有益そうな情報はなかったのでとんだ無駄骨だった。

 

けれども、先生に紹介された大切な御客人だと言うのに、この星見 コウセイという先生と同じ地球人の男性は親とはぐれて泣いている子を見かけたら すぐに声を掛けて 必死に親を探し出そうとし、【百花繚乱】がやるべきことを率先してやろうとするのだから、それが不思議でならなかった。

 

 

――――――()()()()()()()()()()。だから、そのために身体が自然と動くのだと。

 

 

私にはまるで、それこそが【百花繚乱紛争調停委員会】の一員に求められる最大の資質のように思えた。

 

打算がないというよりは、そうすることが当たり前と言った態度であり、それこそがアユム先生が超人的な活躍を重ねてキヴォトスを滅亡の危機から救った根底にある原動力になっているのではないかと考え込んでしまった。

 

というのも、空が赤く染まったキヴォトス滅亡の時、私たちの【百鬼夜行連合学院】は主要学園の生徒たちが先生の下で団結して総力を上げて滅亡の危機に立ち向かったというのに、

 

この時、【百花繚乱紛争調停委員会】では委員長と副委員長が同時に行方不明となった影響で活動停止状態が長く続いていて解散の要請が出ていたのと重なって、まともな抵抗もままならないまま自治区が蹂躙され、

 

それによって、【百花繚乱紛争調停委員会】の存在意義が揺らいだところにようやく帰ってきた副委員長:御稜 ナグサの返答によって、歴史と伝統のある【百花繚乱】を私たちの代で終わらせることになるはずだった――――――。

 

けれども、全てにあきらめきった私たちの下した決定に対して一人だけ異を唱えて『継承戦』を決意し、その立会人として“シャーレの先生”を招き入れてくれたのが私たちの大切な後輩:勘解由小路 ユカリだった。

 

結果として、先生の存在が伝説上の存在と思われていた【花鳥風月部】が仕掛けた陰謀を打ち破る中心的な働きをしたわけだけれど、その先生を【百鬼夜行】に呼んできたのはユカリの【百花繚乱】へのたゆまぬ情熱と誇りが原動力にあった。

 

 

要は、理屈なんて後付の 飾り気のない 素直な感情の有り様に私やみんなが感じている素質というものがあるのだろう。

 

 

それこそが私がアユム先生に感じていたものを星見 コウセイにも覚えた理由であり、私は【百花繚乱】の参謀として人を謀る人間だけれど、素直な感情を表に出すことが力に繋がると思ったからこそ、私は私の先生に対する感情には素直でいようと決心できた要因にもなった。

 

知らなかった。自分がこんなにも嫉妬深い生き物だったなんて。

 

そう強く思えたのはユカリをはじめとしてたくさんの人たちの生の感情に触れたからで、【百花繚乱】の参謀だなんて言って、ユカリが動かなかったら何もできなかった自分の不甲斐なさを呪っていたから。

 

それだけ、聞けば倉庫で住み込みバイトをしているだけの何の責任も持たないはずの一般人の余所者にすら何気ない日常の一コマから人助けの志で負けていることに気付かされて、私は変わりたいと強く心から願った。

 

でも、わからない。変わりたいと願っても、どうしたらいいのかなんて、わからなかったから。

 

だとしても、何もしないままでいたら、本当に何も変わらないままなだけ。そんなのは絶対に嫌だ。

 

だから、私は答えが欲しかった。答えを教えてくれる人を求めて、自分の感情に素直になる他なかった。

 

そんな人は自分の人生の中で一人しかいなかった――――――。

 

元々、【百鬼夜行】の参謀として噂の“シャーレの先生”のことを知ろうとして何度か“シャーレの当番”になって、そこで泥棒猫:杏山 カズサと遭遇し、相性の悪さから先生の前で睨み合うことになり、それを先生にSNSで万バズのイラストのネタにされたことで杏山 カズサとの間で嫌な意見の一致を見ていたのだ。

 

 

――――――いつか誰かが先生に襲いかかったとしても、その時は自業自得だからね。

 

 

本当に反吐が出る。こんな自分に対して。

 

どうして素直になりたい心の動きとは正反対の言動にしかならないのだろう。そんなことをしたら嫌われてしまうだけなのに。

 

みんなが花火に夢中になっている中、私が人気のない場所に先生を連れ込んで馬乗りになり、無我夢中で先生の服を脱がせようと触れた時、さっきまで抵抗していた先生が覚悟を決めて優しく私の名前を呼んでそっと私の頬に触れた。

 

その瞬間、自分が誰に対して何をしようとしていたのか、立ち所に理解することになり、それが罪悪感となって 花火の音に掻き消されるような か細いうめき声になった。

 

私は手で顔を覆った。情けなかった。許せなかった。まさに反吐が出る所業。泣きたいのは襲われた側の先生の方なのに、こんな――――――。

 

けれども、次の瞬間には私の顔は先生の胸の中へと飛び込み、震えるほど未体験の空中浮遊感で心も身体も浮き上がり、そこを先生の優しい手が強く抱き留め、悪いことをした悪い子の私のことをナデナデしてくれた。

 

温かった。居心地が良かった。先生の心臓の鼓動も感じた。それがまるで子守唄のように安心させるものがあり、私は先生に体を預けて すぐに寝息を立てていたらしかった――――――。

 

 

こんなことがあったせいで、私は先生とふたりきりになった時には必ず自分の正直な想いを伝えるようになっていた。わがままだとか、面倒な女だと思われたとしても、私には先生が必要で、先生にも私が必要であって欲しかったから。

 

まさか、それが【百鬼夜行】が存在感を発揮することができなかった、空が赤く染まったキヴォトスの滅亡の危機において、“キヴォトスを救った英雄”になったアユム先生の心の傷を癒やすことになっていただなんてことは知る由もない。

 

だって、先生は並行世界の自分自身(プレナパテス)を討伐することで“キヴォトスを救った英雄”になった。それも、戦っている途中で何があっても倒さなければならない相手と心から通じ合った上で。

 

そのことがどれだけ先生の内面に影響を与えていたのか、裏コミュニティサイトでの過去ログの証言から見える先生の最近の行動の変化から察するに余りあるものがあった。

 

だから、私は段々と飼い猫のように飼い主に媚びような態度をとってでも、先生の気を引こうと無意識に必死になっていた。

 

そうじゃないと、先生はふとした瞬間から並行世界の自分自身(プレナパテス)の後を追いそうな気がして――――――。

 

 

無言でいなくなったりしないで。

 

常に私の目の届く場所に、体温の伝わる距離にいて。

 

望みは、それだけだから。

 

 

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