本日は高度育成学校、その卒業式。
『卒業生、入場』
進行を進める放送の声が響き渡る。
厳かに歩み、卒業生の席に座るは今年度の卒業生。
────以上、3年A組、計160名。卒業生代表、堀北鈴音』
「はい」
名前を呼ばれステージにあがり、演台に立つはその学年を代表するリーダー堀北鈴音。
凛々しくも柔らかい雰囲気を持つ彼女は何を見ることもなく、口を開いた。
その様子を真剣に、優しく見守る者たち。
「………………用とは何だ」
その日、担任である茶柱、星之宮、坂上、真嶋の4人が呼び出された。
呼ばれた先で待っていたのは各クラスのリーダーたち。
今でこそ公然の秘密となっているが、それらは担任たちですらありえないとされていた
すぐにボロが出て崩れ去ると思われていたそれは、この卒業間際にしてゆるぎないものだと、いやでも身に染みていた。
なぜこれが当時できなかったのか、そう思う卒業生の前で不敵に待ち構える生徒たち。
「私たちはもうすぐ卒業です」
前に立つは
「………………まだ絶対とは限らんぞ」
それは負け惜しみ善意なのか、それともから来る忠告なのか、どちらともなのか。
いつものように険しい顔をしている茶柱に堀北は胸を張って言い返す。
「いいえ、卒業します。これは私たちの絶対の未来です」
私たち、そう言うことができるとは入学時の自分自身でも思いもしなかっただろう。
だが今は、気負うことなく先走ることなく言葉にできる。
してもいいと認められるほどに。
「その際に先生方に決めてもらいたいことがあります」
「…………なんでしょう」
「こちらを」
平田が操作して壁に映し出されたのは顔写真付きの名簿、そこには各自の持ちポイントが記載されている。
「私たちの持つポイント、合計は24億以上」
担任たちの顔が歪む。
「そしてクラス移動チケットもこみ」
これは分かっていたことだ。
「私たちはひとクラスに固まり、Aクラスとして全員が卒業します」
それでも彼らの心に衝撃がなかったと言えばウソになる。
「…………それで、どのクラスに移動するというのだ」
揺れる内心を表に出さないように聞く茶柱、しかしそれは誰もが聞きたい事であり、聞かねばならないということだ。
「そうだなぁ、別にどこでも良いってのが俺らの意見だが」
いつも通りの態度の悪さ、堂々の不敵っぷりが板についたCクラスのリーダー龍園。
「まぁ? お世話になった先生方に土産もないってのは悪いって話でよ」
突き出された4本の指全てが、各クラスの担任を指している。
「アンタらで決めろ、今年は誰かひとりのクラスだけがAクラスとして卒業する」
「「「「⁉」」」」
動揺が走り表情に驚きが現れる。
「何したっていい、話し合おうがジャンケンだろうが殴り合いだろうが」
立ち上がり、堂々と手を広げ大げさに語る。
「っ! …………選ばなければ」
「全員が自主退学をする」
「それは!」
「みんなで話し合って決めました」
Aクラスの代表葛城、Bクラスリーダーの一之瀬も立ち上がり言葉を続ける。
「そうなると、ポイントが無駄になりますが」
さらに続けるはAクラスにリーダー阪柳、杖を突きながらも前に出る。
「これだけのポイント、
多少の治まりはしたが性根までは変わらず、残り続けた悪戯小僧のような無邪気な笑みが4人の教師へ向けられた。
「実力あるものが全てを手に入れる、それが高等教育学校」
「私たちは、私たちの実力を持ってつかみ取りました」
「せんせー魔法使いのおにいさんきたよー」
扉の外から聞こえた子どもの声、返事をして作業途中の扉を開けるとそこには子どもたちに囲まれた友人の姿。
笑いながら抱き上げると少しだけ空に浮いてまた手元に戻る。
順番に繰り返すその姿は相変わらずだとため息を吐いた。
「あまり危ないことはしないでくれ、海斗」
「久しぶりだな清隆。こんくらい大丈夫だって」
なーと聞けばねーと子どもたちに返される。
止めること自体はとっくの昔に諦めているが、孤児院『白紙の手紙』を経営する院長としては注意せざるを得ない。それを分かっているのか、あくまで手品で説明できる範疇でいろいろなショーを見せる親友。不毛だと判断した綾小路は渡辺に声をかける。
「要件は」
「分かってるだろ?」
「俺は人の心を読むことなどできない」
至極当然のことだが、はぁー仕方ないなと首を振る相手に無言で拳を見せるとやめた。最初からしなければいいのに、とは思うが変わることはないだろう。
卒業後、世界中で撮った旅先での写真が送られてくるがどの写真にも誰かと映って笑っている様子を見ては釣られて笑う。
「同窓会、ちゃんと参加するために帰ってきたんだな」
「分かってんじゃねぇか」
心を読むことなどせずとも簡単に分かることだ。久しぶりに会えるというのに、目の前の親友が戻らないわけがない。
「そっちこそ空にしていいのかよ」
「代理人は雇っている。問題はない」
「へーへー流石資産運用で儲けている奴はすごいねぇ」
本音か分かりづらい態度だが、悔しがるのを見るのも良いと得意げに鼻を鳴らせばさらに悔しがる。
「よーし同窓会まで時間あるし、久しぶりに本気出してやろうか」
袖をまくり腕を回し始めると、周囲の子どもたちがワクワクした眼で見守る。
「勝負方法は」
「先に地球を一周した方が勝ち」
「誰が審判をするんだ」
「じゃあ50M走で」
「いきなり規模が落ちたな」
学生の頃と変わらない親友同士のバカな話。子どもたちも交えた勝負事は、迎えのタクシーが来るまで続いた。
超能力者と人工的な天才は、今日も明日も己の色で生きていく。
ちょっと投げやり気味な気もしますが、最後までありがとうございました。
別の設定か、別の作品かは分かりませんがまたどこかで出会えると嬉しいです。