悪魔よりもピザとストロベリーサンデーを   作:あるく天然記念物

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チェンソーマン4DX の映画を楽しんだのと、契約により更新です。
あと、最近チェンソーマンで書きたい短編が出来たのか、コツコツ浮気をしようとしている俺の身体を誰か止めてくれ!!
やべぇよ、デンジ。目を閉じると頭に二つの作品案が浮かんできやがる。


岸辺が教え込む個人戦最強のデビルハンター 理不尽編

「逃げずに来たな。ごく稀に逃げるヤツがいるから、迎えにいく手間が省けた」

 

 公安特異一課の訓練室へデンジとパワー、アキにグリフォンが入った時、既に岸辺が中央にスタンバイしていた。

 その岸辺の姿を見て、デンジがアキへ今朝との“相違点”について尋ねた。

 

「なぁ、アキ」

「どうした、デンジ」

「なんか岸辺先生、雰囲気違くねぇか? いや、雰囲気どころか手と足が明らかに違うって言うか………何アレ」

 

 デンジが指摘するように、岸辺の手足にはある道具が取り付けられていた。

 鉄のような質感でありながら、どこか生物を彷彿とさせる装具。

 人間のデンジには「ちょっとゴツいなぁー」ぐらいにしか感じ取れないが、ほぼ生態が悪魔なパワーは気付いてしまう。

 

「…………デンジ、アキ。逃げるぞ」

「はぁ? お前何言ってるんだよ」

「いいから!! あれはヤバイッ!!」

「どうしたんだよパワー。いいから落ち着けって」

「おかしいのはお前らじゃ!! もういい、ワシ一人だけでもにげ────「そこまでだ」───カヒュ……」

「ッ?!」

「はぁ……やっぱりこうなるのか」

 

 まさに一瞬だった。

 岸辺の装具に対して正しく危険性を理解していたパワーは出口へ行こうと振り返った。

 その時既に、目の前にいた筈の岸辺が居たのだ。パワーは悲鳴を上げる前に首を掴まれ、そのままへし折られた。

 

「ぱっ、パワー!! テメェ、何しやが───」

「判断が遅い。そこは叫ぶ前に襲え。敵はお前の言葉なんざまっちゃくれないぞ」

「────るぅえッ?!」

 

 あれ? どうして視界が前を向いているのだ? それと出口の方にいた筈の岸辺がどうして既に反対側にいるのか。

 岸辺へと殴りかかりたいにも関わらず、身体が一切動かない。

 デンジは混乱した。

 しかし、即座に痛みとももに答えが判明する。

 後ろへと倒れていく自分の身体──違う、前だ。俺の身体は前に倒れている。後ろになっているのは俺の頭の方だ。

 こちらも一瞬。とてつもないスピードでデンジの側を横切ると同時に、岸辺はデンジの首を180度回したのである。

 

「あの……やりすぎでは?」

『俺も見てて可哀想に見えてきたぜ』

 

 これには流石のアキとグリフォンもドン引きである。

 だが、やった張本人である岸辺は涼しい顔で答えた。

 

「今回は訓練の名を冠した調教だ。序列を叩き込む場合、犬は徹底的に力関係を分からせる。そこで俺の酒にそこそこ浸った脳ミソで考えた結果、悪魔も犬も大差ないと思った。だから、この日、この場でデンジとパワーの二人を鍛えるついでに力関係を叩き込むことにした」

「それは分かりますが、二人はまだ新人ですよ」

「新人だからこそだ。アキ、お前は悪魔や諸外国の敵相手にも同じことが言えるのか? 新人だから手を抜いてくれと? 二人がやらかしてしまった時、常識を教え込むまでまってくれと?」

「それは………」

 

 岸辺の行動は過激そのものだが、そこには徹底的な理念と効率が込められている。

 そう。実はデンジにはあまり時間がないのだ。

 それは永遠の悪魔がデンジの心臓を欲していた事に起因する。デンジとパワーの報告書から、永遠の悪魔はデンジの心臓を強く欲しており、対価に捕らえた檻からの解放どころか、力を極限まで貸すという条件を突きつけたのだ。

 たまたま頭の足りないパワーが取引を持ちかけられたから、大きな事にならずに済んだが、これが公安の一般職員や民間デビルハンターとなれば応じる人間も出てくるだろう。

 何が理由でデンジの心臓が欲されているのかはわからない。だが、悪魔からしたらダンテの2丁拳銃並みに重要なファクターというのは容易に理解できた。

 もしダンテ関係や、公安の上層部に対してデンジが不快な印象を与え続けてしまえば容易に切り捨てる駒へとなってしまう。

 日本は既に、最強のデビルハンターに対する依存の傾向にあるのだから。

 それが分かるから、デビルハンターとして頭のネジが飛びきっていないアキは反論ができなかった。

 

「アキ。二人に血を飲ませたらナイトメアを発動させろ。二人とマジバトルしてくるが、さすがにこの装備を訓練場で使ったら、俺が更地にしてしまう」

「は、はぁ」

『あぁ、更地ぃ? …………あぁっ!! 岸辺、お前が着けてるソレってベオウルフかよっ?!』

 

 高々手足の装甲程度で更地発言。アキは一瞬分からなかったが、グリフォンは理由にたどり着いたようだ。

 

『おいおいおいおい、なんでベオウルフを岸辺が使ってんだよ。腐ってもダンテの魔具でも上位クラス。前に使っていたヤツよりもヤベェヤツだろうが!!』

「よく知ってるな」

「前の魔具よりも上位クラス?!」

 

 まさかの道具にアキは驚愕した。

 しかし、ここでアキも納得した。最強のデビルハンターが使っていた武器の上位クラスとなれば、まともに使えば訓練場なんて更地にできてしまう。

 どうしてそんな武器を岸辺が持っているのか。少なくとも前に使っていた道具はグリフォンが言っていたように別の筈だとアキは記憶していた。

 岸辺は懐からスキットルを取り出し、お酒を飲みながら答える。

 

「これはダンテが借金返済のため公安へ売りつけた武器だ。アイツ、金に執着しないのは良いことだが、それに比例して金遣いと経営スキルが破綻してるからこういうことが度々ある」

「しゃっ?! えっ、公安から依頼とか行ってるんですよね?」

「殆ど断られているがな。そのくせお眼鏡に叶う悪魔相手の依頼は無報酬でも引き受けるから、アイツの事務所の家計は常に火の車だ。レゼちゃんが居なかったらとっくに干物だよ」

『昔から金や権力に頓着しないヤツだったが…………魔具を貸し出すのも大概だが売り払う辺り、こりゃ昔より悪化してやがるな』

「なんか………俺の中のダンテさん像が壊れていく音がします」

 

 何とも言えない表情をしながらアキは現実をどうにか受け入れようとした。

 早めに受け入れたら楽だぞ。指摘されようとダンテの私生活は外部入力されない限り変わらないのだから。

 そんなアキへ追い討ちをかけるように岸辺は説明を続ける。

 

「ダンテの魔具はマキマ経由でダンテから売られ、マキマが飽きた順に公安含め各国に売られている。このベオウルフもその一つだ」

 

 岸辺曰く数年前、マキマがダンテの魔具を欲しがったのが全ての始まりとのこと。

 ダンテは倒した悪魔を魔具にすることができた。契約している悪魔の力か、それともダンテ由来の何かかは不明だが、それにより悪魔を倒す端からダンテは武器が手に入った。

 最初は公安に対してレンタルのみ行っていた。だがある日、ダンテの強火ヲタクであるマキマが「沢山あるならいくつか頂戴」とねだったのだ。ほら、スターの私物をファンが欲しがるアレである。

 最初はダンテも渡すのを渋っていたが、その時はレゼが居ないため家計は火の車を通り越して大火災状態。負債もそこそこあった。そこでマキマが当時の家賃と負債を肩代わりすることをダンテへ提案。ダンテも飾るか遊ぶしか用途が無いため了承。

 以降、マキマが仲介業者の立ち位置となり、マキマが飽き次第で日本だけでなくパワーバランスを考慮して各国に魔具が配られることになった。

 日本はベオウルフ。理由は一切分からん。

 アメリカはお喋りとのことでアグニ&ルドラ。

 中国も何の因果があるのか分からんがアルテミス。

 ソ連は寒いの一言でケルベロス。

 イギリスにはロックのイメージがあるとネヴァン。

 その他の国々にもそこそこの数が出回っているが、主に強い魔具はこのくらいである。

 

「さて、魔具についての説明はこれぐらいでいいだろう。アキ、そろそろ二人に血を飲ませてやれ。デンジは大丈夫だが、パワーが死ぬぞ」

「あっ、はい」

 

 雑談に夢中になりすぎていた。アキが時計を確認したら既に5分以上が経っている。

 いくら魔人とは言え、首をへし折られてから放置しすぎると岸辺の言うとおりリアルで死ぬ可能性がある。 アキは急ぎ懐から輸血パックを取り出し、中身を二人の口へと注ぐ。

 

「が…………がぁ………ゴクッ」

「………んぐっ………んぅ……」

「「はっ!?」」

 

 ガバッと。勢いよく二人が飛び起きた。

 

「復活したか」

「テメェ……いきなりなんてことをしやがるッ!!」

「訓練だ。そのために来たんだろう………っと」

「フギァアアッ?!」

「パッ、パワーァアア?!」

 

 そろりそろりと、復活と同時に訓練場から逃げようとしていたパワー。

 しかし、そんなことを岸辺が許すことも見逃すこともなく、呆気なく首根っこを掴まれてしまった。

 

「離せ、離すのだ!! ワシはこんなところで死にとうないッ!!」

「安心しろ、殺しはしない。まあ恐ろしい目には逢わせるが」

「鬼畜じゃ!! 鬼じゃ!! 悪魔じゃ!!」

「悪魔はお前な」

「デンジ、アキ!! この男をどうにかしたら、この世界の半分はくれてやるッ!! だからワシを助けろ!!」

「えぇー、お前同じこと前も言ったけど守ってくれねぇじゃん」

「ハァッ?! ウヌはバカかっ!! ワシはそんなことを前に言ったことは無いのだが?!」

「ほら嘘じゃん。まっ、頑張って自分で抜け出すんだなぁ」

「デンジィイイイイッ!!」

「はいはい。あんまり騒ぐな、マジバトルの前にもう一回へし折りたくなるだろ。それからアキ、さっさとナイトメアを発動させろ。直ぐに始める」

「分かりました─────起動しろ、ナイトメア」

 

 アキが背負っていた刀を地面へと突き刺す。

 すると切っ先が刺さった地面から黒色の液体が染みだし、どんどん広がって行く。

 

「うおっ?!」

「にゃあ゛ぁッ?!」

 

 やがて訓練場一帯へと広がると、一瞬で四人と一匹が液体の中へと引きずり込まれていった。

 そうして四人と一匹は液体の中、薄暗い空間へと送り込まれる。

 暗黒の空間。ナイトメア空間へと。

 

「あ? ………おぉ?! どこだここ?!」

「ここはナイトメアが作り出した空間。ナイトメア空間だ」

「ナイトメア空間? なんか直球な名前だな、おい」

「俺に言うな。名付けたのはダンテさんとマキマさんの二人だ」

「へぇ。なかなか良いセンスだよなぁ!!」

「………そうか」

 

 マキマの名前が聞こえた途端の見事な手のひら返し。歴戦のデビルハンターでなくても見逃す事はない速度に、アキは何とも言えずため息すら出なかった。

 

「さて、これでようやくマジバトルできるな」

 

 ナイトメア空間へとやって来たことで、岸辺はようやくパワーを解放。

 自由になったパワーは素早くアキとデンジの後ろに隠れた。

 アキの制服を強く握り、岸辺を睨み付けながらアキへと質問を飛ばす。

 

「アキ!! ここはどこだ!! ワシは暗いところに居てはいけないとおばあちゃんから教えられておるのだぞッ!!」

「ここはナイトメア空間だってよ」

 

 ぶっきらぼうに要点だけを短く伝えるデンジ。

 だが、それでパワーが理解できるわけがない。

 

「ナイトメア空間? ずいぶんと訳の分からん名前をしておるのぉ。はっきり言ってダサい」

「はぁ?! テメェ、マキマさんが名付けた名前にケチつけんのかよッ!!」

「なんじゃ、ダサい名前にダサいと言って何が悪い!!」

 

 ギャーギャー、と言い争いをする二人。

 その二人の背後へと忍び寄る影が一つ。

 

「はい。敵を目の前に呑気に会話をしないように」

「グヘッ?!」

「ギャンッ?!」

 

 ボキボキ。

 軽く二つの骨が折れる音とともに、デンジとパワーが地面に倒れた。

 それは紛れもなく、岸辺の仕業だった。

 

「アキ、蘇生」

「はい」

 

 指示を受け、アキはナイトメア空間へ来る前と同じように輸血パックを取り出し、倒れた二人へ飲ませる。

 一秒と経たずに二人は復活した。

 

「ってぇな!! 流石に二回目はアウトだろ!!」

「悪魔のお前たちに対する訓練だからアウトもへったくれもないぞ。人間と比べてお前らはだいぶ頑丈だからな」

「………デンジ、もうこれはやられる前に殺るしかもう手はないぞ」

「なるほど、実に良い考えだな。俺もそういう分かりやすいのは好きだぜ」

 

 提案したパワーは即座に能力を発動。血で作成した斧をデンジへと渡す。

 デンジは片手で受け取り、すぐさま岸辺の脳天目掛けて斧を振り下ろす。

 その動作に、岸辺は感嘆の声を上げた。

 

「ほぉ。初回で迷わず頭狙いか。筋は良い。だが甘い」

 

 だが、そのまま受けることはなかった。

 まるで蚊を振り払うような動作で斧を壊すと、そのまま流れるようにデンジの顔面を殴る。

 

「は─────ブッ?!」

 

 吹き飛ばされるデンジ。

 顔面を潰され、見るも無惨な死体へと変貌しただろう。

 だが、吹き飛ばされる直前に岸辺は胸のスターターを引っ張っていた。

 そのため吹き飛ばされ、地面に倒れ込む時には、彼は悪魔と姿を変える。

 チェンソーが頭と両手に生えたチェンソーマンへと。

 

「イッテェなァアアアアッ!! いきなり人様の顔面を殴って良いと思ってんのかよぉ!!」

「お前も人様の頭に斧を振り下ろして良いと教わったか?」

「んなもん、学校すら行けてない俺が知ってるわけねぇだろうがあァッ!!」

 

 勢いよく胸のスターターを引っ張り、両手のチェーンソーの回転数を引き上げる。

 威嚇のような行為に、ようやくかと岸辺は息を漏らす。

 

「さて、これで悪魔くんもエンジンがかかったな。これでようやくマジバトルができるな」

「随分と余裕そうだなぁ、おい」

「安心しろ。ベオウルフを装備した俺はそう簡単には壊れん。寧ろ、人間なら一瞬で壊してしまう」

『気を付けろよぉ。ベオウルフはオメェらで言うところ光の悪魔みてぇなもんだ。殴られたらよくて炭化、悪ければ即蒸発だぜ』

 

 グリフォンの補足説明に、パワーが抗議の声を上げた。

 

「壊すどころか消滅ではないかッ?! あのジジイ、訓練とか言っていたが嘘ではないかッ!!」

「そう喚くな。別に嘘じゃない。マジバトルで四肢は消えるかもしれんが、パワー、お前の生命活動に必要な器官は狙わない。デンジは心臓以外は吹き飛ばしても大丈夫。だから死ぬことはない。まあ痛みで死ぬ時は来るかもしれんが………まあその時に考えるか」

「結果死んでおるではないかッ!!」

「大丈夫だって。相手が殺す前に、此方が殺せば解決だかラヨぉっ!!」

 

 パワーを安心させるようにデンジは走りだし、両手のチェーンソーを岸辺へと振るう。

 

「悪魔になっても筋は良いが、まだまだ頭が固い」

 

 一回、二回と攻撃を避け、続く三回目の攻撃に岸辺はカウンターをデンジの両肩へと当てる。

 まるでバターに焼けた鉄を押し当てたようにデンジの両肩は瞬時に熔け、そのまま消失する。

 

「イッテェエエエエええッ?!」

「ここじゃッ!!」

 

 カラン、と。繋ぎ目を失ったデンジの腕と身体が地面へと落ちると同時に、パワーは血で生成した槍を岸辺へと投げる。

 意識がデンジへと向いており、常人では反応できない速度で投げられた槍は普通なら当たるだろう。

 だが、二人が相手する岸辺はダンテ程ではないが普通ではない。

 魔具は人を選ぶ。それがベオウルフクラスとなればそのハードルはとんでもない。

 にもかかわらず、岸辺はなんの問題もなく“ベオウルフを扱えている”のだから。

 

「仲間のピンチに駆けつけず、確実に始末する動きにシフト。パワー、お前も筋がいい。だが、殺るなら確実に殺せる質量を向けろ」

「なんとぉ───ガフッ?!」

 

 岸辺は投げられた槍をノールックで槍を掴むと、投げられた方向へ投げ返す。

 パワーが投げた時以上の速度で投げ返された槍にパワーは反応することができず、首に思い切り突き刺さった。

 それを見届けること無く、岸辺はスキットルを取り出し、酒を一口飲む。

 

「さて、耳は生きている筈だからよーく聞いておけ。この訓練の終了条件について教えてやる。俺がお前らをボコボコにする度、アキがお前らを蘇生する。復活したお前らは何度でも俺に向かってこい。その度にボコボコにしてやる。お前らが心から俺に降参をしたら訓練終了だ。安心しろ。輸血パックは大量に持ってきた。お前らが永遠の悪魔と遊んだ三日間より長く遊べるぞ」

 

 それはデンジとパワーの二人にとって絶望の宣言だった。

 勝てない理不尽。

 世間ではムリゲーと呼ばれる訓練が始まってしまったのだ。

 この男、マジで降参するまで殺る気だと、足りない脳みその二人でも理解できた。

 だが、そう簡単に認めるのは二人のプライドが許さなかった。

 

『ほらー二人ともー。新しい輸血パックだぜー。それー』

「「………ごくッ」」

 

 ばた……グリフォンさんから輸血パックを直接口に放り込まれ、二人は復活。

 デンジは素早く胸のスターターを引き、パワーは両手に血で生成したハンマーを握る。

 二人の闘志はまだ健在だ。

 

「パワ子、ここは頭を使おうぜ」

「乗った。どう殺る?」

「俺があのジジイに食らい付く。腕が吹き飛んでも徹底的に動きを抑えるから、その隙にお前が殺ってくれ」

「………よかろう。最悪デンジ、お前の脳天ごと仕留めてやる」

「流石に俺は除けって言いたいが………それはあの変態染みたジジイ相手に無理な話だよな」

 

 化物相手に高度な戦い方は無理である。流石に学の無いデンジでもそれは知っていた。

 それに自分ごと殺っても、自分は復活できるが岸辺は復活できない。トレードとしては破格の条件だ。

 こうして二人の作戦が固まったところで、岸辺が二人へ声をかける。

 

「作戦会議は終わったか? なら、再開と行くぞ」

「来るぜ。そんじゃパワ子。作戦開始だ」

「おう。頭脳作戦開始じゃ」

 

 こうしてデンジとパワーにとって某ハクスラゲームも真っ青なボス攻略が幕を上げた。

 そんなボス攻略を端から眺めるアキとグリフォンは二人が殺されるまでやることがないため、雑談タイムへと洒落込む。

 

『さーて、アキ。あの二人の心は何回保つだろうな?』

「20は行くだろう。俺たちの時でもそれぐらいは行った」

『あの時は流石にベオウルフじゃなかったけどな』

「だが、爆発する剣を何本も投げられたぞ」

『あぁ、あの時はルシフェルだったな、俺たちの時に岸辺のヤツがダンテからレンタルして持ってきたのは。あれもあれでヤベェ代物だが、ベオウルフほどではねぇな』

 

 二人は遠い日を思い出す。

 岸辺からルシフェルで作られた剣で何度も切りつけられ、いつの前にか刺された剣を爆破される訓練の日々。

 アキは人間ゆえに致命傷となる攻撃は受けなかったが、契約する悪魔三人はひどい有り様だった。三人が特殊な悪魔でなかったら、今ごろは地獄に飛ばされていただろう。

 ほぼ無敵とされるナイトメアですらコアが露出しかけたと言えば、その筋の人にはこの岸辺の訓練のヤバさに気付ける。

 事実、この事をダンテに話せば「アイツは人間世界のバグだ」と表された程だ。

 もっとも、これはアキが契約した三体だから。という前提によるものだと、三体の名誉のために記録しておこう。

 

「「ギィヤァァァァァアッ?!」」

『おっと、昔話をしていたら二人の頭脳作戦とやらも失敗したみてぇだな』

「みたいだな。それとグリフォン、二人が終われば次は俺たちだ。今からでもアップしておけ」

『おうよ。前は岸辺のギブアップで終わっちまったからな。不完全燃焼そのものだ。けどなぁ、本当の意味で勝ちたければ俺たちじゃなくてお前が頑張るのを忘れんなよ。今の俺たちの能力がミジンコなのは単純にテメェの実力が全く足りてねぇからだ。本当なら岸辺程度、一人で倒せるレベルの実力がなければ俺たちを制御できねぇし、させねぇんだぞ?』

 

 グリフォンの指摘に対し、アキは怒ること無く頷きを返す。

 事実その通り。ダンテがいなければアキはグリフォン、ナイトメア、そして最後の一体と己の全てを差し出しても契約は不可能だ。

 グリフォン一体だけでも、完全装備の岸辺が決死の覚悟で挑んで勝てるかどうかの存在。そんな悪魔と契約出来ているのは、弟子として死んで欲しくないダンテの過保護ゆえのものであった。

 また他にも、ダンテの過保護が見えかくれしている事実も、グリフォンの指摘に重みに加算されていた。

 

「分かっている。だから岸辺さんの訓練にお目付けとして参加してるんだ」

『ならさっさと強くなれよ。いつまでもダンテちゃんにおんぶに抱っこは恥ずかしいだろ。なぁ、アキさんよぉ』

「勿論だ。流石に大人になって裏で助けてもらうのは、人としてダサすぎる」

 

 公安最強と周りから評価されようと、ダンテにとってはひよっ子同然。

 自分が同期や後輩を守れずに裏で泣いていればと知れば、そうならないように努めてくる。

 守られてばかりでは、自分は何時まで経っても強くなれない。

 自分は守られるのではなく、守る側へと行きたいのだ。

 あの日の憧れ。

 銃の悪魔を倒したあの大きな背中へと。

 

「アキ~。蘇生~」

「お呼びみたいだな。グリフォン、頼む」

『オッケー。んじゃ、新鮮な血液を届けてくるか』

 

 岸辺から声をかけられ、見れば二人がボロボロになっていた。

 昔話や現状を振り返っている間に二人の頭脳作戦が底が尽きたようだ。

 グリフォンは二人の元へと向かうのを尻目に、アキは取り敢えず目の前で死にかけている二人だけでも守れるようになろうと決意を新たにして岸辺の訓練の見学を続けるのだった。

 

 ちなみに、訓練結果はというと。

 

「デジジジジジジジジ」

「ぱわわわわわわわわわ」

「今日は二人の脳みそが壊れたから終わりだ。明日も同じ時間に訓練室へ来るよう伝えてくれ。俺は別の後輩と飲みに行くから帰る。それとアキ、二人が折れるまでお前との訓練は後回しだ。それまでに少しでも頭のネジを緩めとけよ」

「………はい」

『やべーな。ダンテとは違った意味で岸辺のヤツも悪化してんじゃねぇか?』

 

 逆だ。

 ダンテの影響で岸辺の飲酒量は減っている。そのため思考回路が悪い方向で回っているだけである。

 しかし、心労が減ったことと壊れない玩具(魔具)のお陰で戦闘が楽しくなっており、訓練と称して新人や魔人をボコボコにする頻度が増えたため、グリフォンが言っていることも間違ってはいない。

 要は、常にテンションが高い状態をキープしてるのだ、今の岸辺は。

 

 そうした訓練が三日三晩続き、デンジとパワーは岸辺やアキ、そしてダンテに逆らうことはしないと誓うこととなった。

 だが、パワーの野菜嫌いは克服することは無かったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃だ。

 

○ ○ ○

 

 とある反社会勢力事務所。

 そこに三つの影があった。

 

「なっ………なんで……」

「ちく……しょう………」

 

 二つはモミ上げが特徴的な男と、若い女性。

 男の方は両手を綺麗に切り取られており、今にも失血死しそうである。

 女は女で恐怖や畏怖、そして得体の知れない存在に対する困惑から口を半開きにして座り込んでいた。

 明らかに異常な状況。

 そんな状況を作り出したのは一人の男だった。

 

「ふん。刀の悪魔と言うから多少は期待したが、所詮は小物か」

「どうして………悪魔の心臓を埋め込んだのに………」

「貴様が知る必要はない。しかし、何の足しにもならなかったが、この小太刀はいいセンスだ。それに免じて命だけは見逃してやる」

 

 男はそう言い残し、事務所を後にする。その手には血のように赤黒い刀身の小太刀が握られていた。

 立ち向かう者などいない。

 何故なら二人を除いて男が全員斬ってしまったからだ。男がふらっと立ち寄った事務所。そこにいた数十人のメンバー。そして手にもった拳銃、ドス、包丁、ゴルフクラブに釘バット。

 ありとあらゆる武器で男を襲うも、男が片手に持つ刀1本で叩き伏せられた。

 小太刀を懐へと仕舞い、男は最後に事務所を一別した。

 が、特に感情が動くこともない。興ざめ、そして無駄足だったという思いしか男にはなかった。事務所側が持っていた情報は、既に男が持っていたからだ。軽く鼻を立てて男は去っていく。

 もう既に、男の記憶から事務所と中にいた存在など頭から消えていた。

 男は胸元からアミュレットを取り出し、誰に聞かせるわけでもなく呟く。

 

「ようやくだ。引きずってでも連れて帰るぞ──────ダンテ」

 

 アミュレットを乱雑に、しかし傷一つつけないよう服へと仕舞い、男は歩き出す。

 男の向かう先は───東京方面であった。

 蒼き恐怖が来るまで、ダンテに残された時間は少ない。




ついにみんな大好きのあのキャラが出てきて、一旦完結となりそうです。
次回はレゼとマキマの話をしたいなー
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