ゲーム本編クリア後の閲覧を想定している作品です。
ココの『推し』捏造注意。
pixivとのマルチ投稿です。


アリサとココが会話しているだけ。


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まるで家族のような

 

 

 それは、あの牢屋敷で過ごした日々から少し経ったある時。

 よく晴れた休日を河川敷の土手で寝転んで過ごしていた柴藤アリサは、ふと遊歩道を歩く2人組を視界の端に捉えた。

 休日という事もあって歩行者は他にも数組いたが、何故かアリサはその2人組――年の頃が

変わらなそうな少女と老人が気になった。

 

 

(どっかで見たことある気がするんだよな……)

 

 

 あまり人付き合いが得意ではない、というか苦手なアリサにとって、関わりがある人間というのは限られている。

 それこそ両親相手ですら、牢屋敷から帰ってきてから本音で話し合えたくらいなのだ。

 産まれてからずっと暮らしてきた両親よりも、あの時間を共に過ごした少女たちの方がよほど……

 

 

「……いや、待てよ?」

 

 

 アリサからの視線に気付いたのか、例の2人組もアリサの方へと視線を向けている。

 特に少女の方は首を捻りながら微妙そうな顔をしている。誰だこいつ、という言葉が顔から出てきているようにさえ感じた。

 寝転んでいた土手から立ち上がり、遊歩道の方へと進む。

 2人組の、特に少女の方へ近づくにつれて疑問から確信へと変わっていく。 

 あちらでの姿を見慣れていたせいで私服姿の彼女に違和感があったが、短い間とはいえ毎日顔を突き合わせていたのだ。忘れるわけがない。

 

 

「久しぶりだな、沢渡」

 

 

 毒舌な配信者の少女、沢渡ココ。

 かつてアリサと共に牢屋敷に囚われた少女たちの1人との再会は、お互いにとって偶然だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は? ……えっ、待って。もしかしてアリサ!?」

「あぁ。まさかこんな所で会うなんてな」

「いやそれはこっちのセリフだし! ……なんでよりによって今日会うんだよぉ」

 

 

 そう言いながらココは、ちらと自身の隣を見る。

 ココの隣には老人――恐らく祖父だろう。優しい瞳でココとアリサを見ていた。

 

 

「ココ、お友達かい?」

「えっ、あ~……まぁ、そうカモ?」

「……ウチと沢渡はいつ友達になったんだ?」

「うっさい! あてぃしもお前なんか友達だと思ったことないわバーカ!」

 

 

 そう言ってココは、アリサを指差しながら地団駄を踏み始めた。外の世界でも相変わらず騒がしい。

 先のアリサとココのやりとりの間も、老人は穏やかな雰囲気のままこちらを見守るままだ。

 アリサはココとの関係を少し逡巡したが、下手に誤魔化さず素直に告げる事にした。

 

 

「柴藤アリサ、です。沢渡とは……お孫さんとは、『あの場所』で一緒に過ごしました」

 

 

 あまり人付き合いが上手いとは言えないアリサなりに頑張った対応をしたはず。何とか失礼な対応はしなかったはずだ。

 ココが何か変な顔をしているが、どうせ大した理由ではないだろうとアリサは無視をする事に決めた。

 

 

「ココの祖父です。桜羽さんも良い子だったけど、柴藤さんも良い子そうで安心したよ。できればココと仲良くしてあげて欲しい」

 

 

 そう言いながら差し出された手をおずおずと握り返し、握手する形になりながら名前を出された今この場にいない少女を考える。

 桜羽エマ。

 あの時、あの場所で共に過ごした少女。

 ココの祖父は、桜羽エマと会った事がある?

 

 

「ココ、私は1人で大丈夫だから。積もる話もあるだろうし、柴藤さんと過ごしたらどうだい?」

「へ? ちょっ、じーちゃん何言ってんの!?」

「柴藤さんも申し訳ない、しばらく孫娘の相手を頼んでもいいだろうか?」

「ウチ……じゃなくて、私ですか?」

 

 

 アリサがココの祖父へと顔を向けると、申し訳ないという感情がうかがえた。

 それと同時に、ココの方へと心配の眼差しも向けている。

 

 

(もしかして――)

 

 

 先の、ココと仲良くして欲しいという発言。

 あれはお世辞でもなんでもなく、ただ本心からココの交友関係を心配しての事だったのではないか。

 

 アリサの脳内で1つの仮説が浮かんでくる。

 沢渡ココは牢屋敷の頃から、推しだけが自分の全てだと言っていた。ならばそれ以外、それこそ自分の交友関係が希薄でも不思議ではない。

 ならば祖父がいなくなってしまった後は?

 ココと祖父、どちらの命が先に尽きてしまうか。牢屋敷や魔女裁判といった特殊な事情を除いて寿命という点で見た場合、結論は明らかだ。

 ココの現状を、きっと誰よりも同じ時間を過ごしている祖父が気付かないはずがない。だからこそアリサに対して、ココと仲良くして欲しいと頼んできたのだろう。

 

 

「……分かりました。ウチで良ければ引き受けます」

 

 

 それは言外に、その願いまで含めて……という返事だった。

 祖父の方も汲み取ってくれたのか、穏やかな笑顔を深くして頷いた。

 

 

「それでは私は失礼するよ。ココ、迎えもいらないから私の事は気にしないで遊んできなさい」

「ちょっと待ってよじーちゃん! そんな勝手に……!」

「ほら、行くぞ沢渡」

「おいコラ離せよヤンキー! って痛い痛い! 分かったから手ぇ離せー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程までアリサ1人だった土手に、今度はココと並んで寝転がる。

 相変わらずの青空が視界いっぱいに広がる。穏やかで心休まる時間だ。

 

 

「じー……」

 

 

 アリサの隣でこちらを穴が開きそうなほど見つめてくるココがいなければ。

 

 

「んだよ。言いたい事があるならはっきり言え」

「いや、やっぱあの時の格好で見慣れてるから違和感が……って、そうじゃなくて!」

「うるせーから近くで騒ぐんじゃねーよ」

「なんでこんなとこにいるんだし!? じーちゃんも、あてぃしを置いて行っちゃうし……推しに振られた、もう生きてけない……」

 

 

 騒いでいたかと思ったら、今度はめそめそと泣き始めるココにアリサは呆れた表情を向ける。

 感情表現が豊か、というか色んな意味で騒がしいなと、久しぶりに顔を合わせた少女が変わっていない事に少しの安心感を覚えた。

 それ以上にある鬱陶しさは、一先ず置いておかないと話が進まなくなってしまう。

 

 

「ウチがここにいるのは偶然だ。家出してた時のクセって訳じゃねぇけど、たまに散歩したくなるんだよな」

「ふーん? あんだけ家族に会いたいって騒いでたのに、まーた家出したのかと思ったけど。なんだつまんなーい」

「お前こそ『推し』とべったりみたいで良かったじゃねーか」

 

 

 アリサの言葉に、ココがぽかーんと口を開けた表情でアリサの方を見る。

 やがて顔をしかめながら視線を逸らすと、吐き捨てるように言葉を返した。

 

 

「何それキモッ。なんか変なものでも食べたん? キャラじゃねーこと急に言うとか丸くなりすぎじゃね?」

「あぁ悪い、ちゃんと伝わるように言ってやるよ。……『推し』に心配されるほどべったりで良かったな」

「は? 心配……? あんた何言ってんの?」

「お前、友達いないだろ」

「はああああああああああ!?」

 

 

 大声をあげながら立ち上がったココは、そのままアリサの胸ぐらを掴み上げる。

 抵抗しないままアリサも立ち上がる形となると、至近距離で睨み合いながら口論が始まった。

 

 

「お前にだけは言われたくなんですけどー!? ていうか、あてぃしには『推し』だけいれば別にいいしー? なんでお前なんかにあてぃしの心配されなくちゃいけないわけ? 意味不明すぎるんですけど!」

「ウチはお前の心配なんかしてねーよ。心配してんのはお前の推しだ」

「それこそ意味わかんねーって!」

「沢渡……お前さ、爺さんいなくなったらどうするんだ?」

「……そ、れは」

 

 

 少し力が緩んだタイミングで、アリサがココの手を払う。

 ココの方も抵抗しないまま、2人の間に少し距離ができた。

 先の出来事は穏やかな休日の河川敷には似合わなかったからだろう、アリサ達はいつのまにか周囲の注目を集めていた。

 

 

「……少し歩くか」

 

 

 そう言って土手を下っていき、水辺の方へと近づいていく。

 ココの方も何も言わないまま付いてきたが、顔は俯いていて表情までは読み取れない。

 

 

「戻ってきてから桜羽とも会ったのか?」

「……うん。約束、覚えてたみたいで」

「約束?」

 

 

 話を振ると、声は沈んだままだが反応が返ってきた。

 空を見たまま歩くアリサの少し後ろを、ココは俯いたまま歩いている。

 視線が交わらないまま、会話だけが続いていく。

 

 

「ヒロっちが最初に死んだ世界で、最後の魔女裁判の後……メルちゃんに追いかけられた時。エマっちにさ、あてぃしに何かあったら『推し』を頼むってお願いしたの」

「……」

「そしたらさ、こっち戻ってきて少ししたくらいに、『推し』に会いたいってエマっちが連絡してきたんだよね」

「それで爺さんも桜羽のこと知ってたのか」

「そういうこと。じーちゃんもエマっちのこと気に入っちゃったのか、ココを頼む、なん……て……」

 

 

 ぴた、とココの声が止まる。それと同時に、アリサの後ろをついてきていた歩みも止まっていた。

 アリサも足を止める。ココの方を振り返ると、呆然とした表情をしたココと目があった。

 

 

「もしかしてじーちゃん、エマっちにも……?」

「まぁ、多分そうなんだろうな」

「だからエマっちのやつ、定期的に連絡してきたのかよ!」

 

 

 うがー! と叫びながらココが頭をガシガシと掻きむしりながら振っている。

 

 

「まぁ、あれだ。桜羽のお人好しは今に始まった話じゃねーだろ」

「それはそーだけどムカつくんだよ!」

「ウチが言えた話じゃねぇけどよ、あんま家族に心配かけんなよ?」

「本当にお前にだけは言われたくなさすぎるんですけどぉ!?」

 

 

 スマホを操作し始めたココに構わず、アリサは再び歩き始める。

 どうやらココはエマに対して苛立ちをぶつけ始めたらしい。アリサも後で一言だけでも謝罪のメッセージを送ることにした。

 

 

「いよ~っし! こんだけスタンプ送ったらスッキリしたわぁ~」

 

 

 エマに対する嫌がらせを終えたココがアリサの隣に並んでくる。

 アリサは一瞬だけココの方へと視線を向けるが、そのまま何事も無かったかのように再び空を見上げる。

 

 

「……こっちに帰ってきて、家族に会ってさ。初めて本音で話せたんだ」

「は? 急に自分語りしてどしたん」

「ウチも意地張ってたのもあるけど、話してみたら意外とすんなりでさ」

「何が言いて―のか全然わかんねーんだけど?」

「もっと早く家族と話せばよかった、って思った。いつ会えなくなるのか分かんねぇから」

「……」

「ウチはあんな目に遭うまで気付けなかった大馬鹿野郎だし、それ以上に赦されない事もしちまった」

 

 

 今度はアリサの方から歩みを止めた。

 視線を空からココの方へと向ける。ココの表情は、それこそあの牢屋敷で行われた裁判中でもあまり見た事がないくらいには真面目だった。

 

 

「お前も『推し』も、お互いを桜羽に託してさ……大事にされてるんだから、あんま家族に心配かけんじゃねーよ」

「……はっ! うっせーわ! ほんっと、どのツラ下げて言ってるわけこのヤンキーは!?」

「んなもんウチが1番分かってるっての! ……でもよ、さっきウチも頼まれちまったんだよ」

「余計なお世話ですー!」

 

 

 そのままココはアリサを追い越して走っていく。

 だが少し離れたところで止まったかと思うと、急に河川敷に並ぶ石を眺める様にしゃがみ込んだ。

 

 

「もう逃げるのは終わりか?」

「……あてぃしにはさ、もうじーちゃんしか家族はいないんだよ」

「あぁ」

「だからアンタが羨ましい。家に帰れば出迎えてくれる両親がいて、くだらない事でケンカできる」

「……」

「あてぃしはアンタが嫌い。両親から愛されてたはずなのに、幸せな世界があったはずなのに家出なんてするような奴が」

「……そうだな」

 

 

 ココもアリサも視線は交わらない。

 相変わらず地面を見続けるココと、空を見続けるアリサ。

 ただ1人の家族だけが世界にいれば良いと本気で思っている少女と、やっと本音で家族と話し合えた事で世界が開かれた少女。

 同じ時間、空間を共有している2人の見ている景色はまるで違っていた。

 

 

「牢屋敷の生活は本当に最悪だった。何であてぃしだけこんな目に遭わなくちゃいけないんだって思った」

「……」

「本当に今思い返しても――違う世界の自分が体験した事だけど、最悪な気分になる。あてぃしをここに連れてきたやつ許せねー! って思った」

「……そうだな」

「でもさ、最悪だったけど……嫌じゃなかった。嫌じゃなかったんだよ」

 

 

 いつも騒がしくしているココには珍しいほど、そう語る時の声は優しく穏やかなものだった。

 それこそ、ココが『推し』に対して語りかける時のように。

 

 

「さっきの話の続きじゃないけどさ、エマっちに『推し』を託す時。あの時、みんなのこと家族みたいに思ってたって言ったんだよね」

「沢渡……」

「みんなと過ごした時間、嫌いじゃなかった。……ううん、好きだった。あんな大人数で生活するなんて久しぶりで、あんな場所じゃなかったらもっと楽しかったんだろうなって」

「あぁ」

「だからさ!」

 

 

 そう言って立ち上がったココは、手元に平らな石を1個持っている。

 流れる様に構えると、そのまま石を水面へと向けて投げる。

 数回跳ねた石は対岸へと届く事なく沈んでいった。

 しかしココは投げた石のことなんて一切見向きもしないまま、アリサを正面から見据えた。

 

 

「あんたたちも、あてぃしの『推し』なんだよ!」

「お、おう……?」

「あてぃしは推しの為に生きて、推しの為に死ぬ女! 推し活こそ我が人生!」

「悪いけど、お前が何言ってるのかウチには分かんねぇよ……」

「だーかーらー! お前らがあてぃしの生きる理由だって言ってんだよ! ……ガチではずいんだから分かれ!」

 

 

 ココの顔は今まで見た事がないほどに赤くなっている。

 『推し』宣言を真正面から受けたアリサも、また。

 

 

「なっ、ウチ以上に『らしくない』こと言うじゃねーか……」

「わーってるっての! でもさぁ! じーちゃんがいなくなったら、なんて考えたくもなかったけどさ……もうあてぃしだって現実から目を背けたくないんだよ! 何かあってから、無力感を突き付けられたくないんだよ!」

「それって……」

「魔法も無くなったあてぃしに何ができるのかなんて分かんないけどさぁ……! 後悔だけはしたくなんだよぉ……だから、ありがとな。アリサ」

「……んだよ、それ」

 

 

 涙の滲む瞳を細めながら、にへらとココが微笑む。

 先程までと違い、しっかりと前を向けたその視線から逃れる様に、今度はアリサがそっぽを向いた。

 

 

「んー? なになに、アリサったら照れてるん? あらやだ可愛いでちゅねー?」

「うっせーな! ちょっと黙ってろ!」

「うっひゃあ~! ヤンキーが怒ったぁ、こわい~!」

 

 

 けらけら笑うココと、怒りをあらわにするアリサ。

 それは牢屋敷でよく見られた日常の1ページのようで。

 時間は経ち場所は違えど、それは彼女たちの記憶の中で確実に生きていたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ~アリサさぁ」

「あ? んだよ」

「こんだけお互い本音でぶつかったってことはさぁ? あてぃしら友達だよな?」

「……まぁ、そうかもな」

「よし! じゃあ写真撮るしかないっしょ!」

「待て待て待て! ウチにも分かるように話せ!」

「えぇ~? もぉ仕方ないなぁアリサってばぁ」

「友人でもムカついたら殴っていいよな?」

 

 

 アリサが口は悪いが心根は優しいことを当然知っているココだが、あまりからかっても都合が悪いと考えたのか素直に引き下がる。

 

 

「んーとさ、アリサ……というかエマっちでもいいんだけど、とにかく友達との2ショット写真とか見せてあげたら喜ぶかなって。じーちゃんが」

「あぁ、なるほど。確かにそれはあるかもな」

「で、エマっちは今いないからアリサで。しゃーなしね」

「文句あるならウチはやらなくてもいいんだぞ?」

「あーはいはい! あてぃしが悪かったってぇ!」

 

 

 どうしても一言多いココにアリサはため息を吐く。

 お互いの肩がぶつからない程度まで近づく。

 流石に撮る段階ではおふざけが入ることもなく、何事も無く撮影は終わった。

 

 

「なんかカメラ目線じゃないやつが1人いるけど、まいっか」

「撮り直しはしねぇぞ」

「うんうん、照れ屋さんだもんねぇ? 仕方ないよねぇ? ……よし、送信完了~」

「……なぁ、沢渡」

「うん?」

「お前、氷上のこと……恨んでるか?」

 

 

 スマホを操作し終えたタイミングで、アリサはココに声をかけた。

 それは先程言っていた、ココを牢屋敷に連れてきた――牢屋敷の管理人であった少女。

 それと同時に、自分たちの仲間でもあった少女。

 氷上メルル。

 

 

「んー、まぁね」

「……っ」

「だってもう会えないし。言いたい事もたくさんあったのに、勝手にいなくなりやがって~! って感じ」

「は……?」

「メルちゃんが……っていうより全部の元凶は大魔女だけどさ。それでもあてぃしらを牢屋敷に集めたのはメルちゃんじゃん? だからその文句とか感謝……感謝? も何も言えないまま消えちゃってのは許せないっていうか」

「あぁ、なるほどな」

「っていうか、あてぃしよりあんたの方が恨んでないの? 睡眠薬のフリして毒薬渡されて」

 

 

 ココからの問いに対して、アリサは再び空を見上げる。

 それはまるで過去を思い返すようで、ここにはいない誰かを探すようで。

 つられてココも空を見上げた。相も変わらず青空だが、ふと2頭の蝶が視界を横切った。

 

 

「元々ウチは薬の過剰摂取で死ぬつもりだった。それが毒薬になっただけだ……氷上の事は恨んじゃいねぇよ」

「ふーん、そっ」

「それに、あいつも大魔女に……家族に会いたかっただけだ。やった事の全てを赦すわけじゃねぇけど、少なくともウチはあいつに救われた」

「マッチポンプって知ってる~?」

「発火の魔法を持ってたやつに対する仕打ちとしてはピッタリだと思わねえか?」

 

 

 例え偽善だとしてもアリサが救われた事実は変わらない。

 氷上メルルは罪深い少女かもしれないが、1人くらい赦してやってもいいだろうとも思っている。

 だってアリサも、赦される事で救われたのだから。

 

 

「なんつーか、さ」

「あぁ」

「みんなに会いたい……また牢屋敷でも、そうじゃなくてもいいからさ」

「あぁ」

「メルちゃんはもういないし、簡単に会えなそうなやつもいるけどさ……またみんなで会いたいよぉ」

「あぁ、そうだな」

 

 

 きっとあの時のように集まれることなんてない。

 この世界から魔法は無くなった。

 1人とは永遠の別れをした。

 帰った者と残った者に別れた。

 それでも、不可能ではない。

 

 

「……じゃあ、お前のやる事は決まったじゃねえか」

「え?」

「全員で集まる為には、誰かが声を上げる必要がある……後悔だけはしたくないんだろ?」

「そ、れは」

「まぁウチはどっちでもいいけどな。でも、爺さんに全員で撮った写真でも見せてやれば喜ぶんじゃねえのか?」

「……確かに! こうしちゃいられねぇ~! 早速グループにメッセージ送ってスケジュール調整しなくちゃなぁ!」

 

 

 勢いよくスマホを弄り始めたココを尻目に、アリサは空から水面へと視線を移す。

 魔法が無くなっても水辺にいると落ち着く習性までは無くならなかったようで、苦笑を浮かべてしまう。

 変わったもの、戻らないものはある。

 ただ、変わらなかったものも、残ったものもある。

 前を向く生き方を教わった彼女たちの未来は、きっと明るい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、やべ」

「あん?」

「さっきの写真、じーちゃんじゃなくてエマっちに送ってた……」

「……やっぱお前、1回殴っていいか?」 

 

 

 


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