興味があったらこれ見てください
幻想郷シリーズ→ https://youtube.com/playlist?list=PLOPYpyrdtTZJoBbj9sfvRYfY3sgJ6EBWK&si=Gx7EpVltXP-Y0n0X
夢を見ていたようだった。
それは暗く、深い。ただただ沈んでいくような夢だった。
出会いと別れが繰り返されて、心が磨耗していくだけの、苦しい夢だった。
まぁしかしだね、そんな辛くて冷たい気持ちともおさらばだ。
僕は
いや...戻った、と言うべきだろうか。
やぁこんにちは、僕の名前は三鶴。
博麗三鶴だ。
いやぁ、ほんと、色々なことがあったものだ。
呪いもそうだが、外の世界からの侵略者だったり...危うく世界が崩壊しかけたりとね、ははは。
まぁまぁ、何とかそれらを乗り越え...僕は今、縁側で優雅に茶をしばいていた。
「...今日は一段と
ズズズ~...と、唇を湿らすように、緑茶の苦味をゆったりと味わう。
今日、霊夢は師匠とショッピングに人里へ出ている。
あの居候三人組は数ヵ月前に家を見つけて、そこに移った。
よって今、この神社にいるのは僕と、庭で日課の筋トレ中の祝くんだけなのだ。
祝くんは筋トレの手を止めて、僕の方を見た。
「あぁ。けど、いつまた脅威が襲ってくるか分からない...てことで、一緒に筋トレ、どう?」
祝くんはそう僕を手招く。
「遠慮致しまーす、僕はこれから貧弱系男子路線を目指すんでーす」
「何を言う、男は度胸、そして筋肉だよ。パワーイズパワーだ」
「いやいやぁ、人間に戻ったとはいえ、僕には夢想天生があるからねぇ、筋肉なんぞ要らないかなぁ。結局はここなのだよ、ここ」
コンコンと、側頭部をつついて見せる。
祝くんは「分かってねぇなぁ」と徐に嘆息した。
「まったく...別世界のアンタは、まさに災厄って感じの強さだったのに、こちらの三鶴ときたら...霊夢がいるかどうかの違いでここまで変わるもんかねぇ」
「あぁ、祝くんの世界を滅ぼしたっていう...別世界の僕?想像つかないなぁ。他世界への干渉とか出来るんでしょ?...うーむ、どうやったらそんなに強くなれるんだろう」
「僕も詳しくは知らないけど...なんか、呪い?の解除に失敗して霊夢を殺してしまったとかなんとか...それで過剰に強さを欲した、みたいな感じらしいぞ」
あぁ~、なるほど...と、頷いて見せる。
霊夢を殺してしまう...それは恐らく、あの決戦時のことだろう。
想像したくもないが...うん、つまり僕は、逆の手順で呪いを解除してしまったんだ。
霊夢が僕を殺すのではなく、僕が霊夢を殺す。
それでも確かに、呪いは解けてしまうだろうな。
「それで、他世界から霊夢を取ってこようと躍起になっちゃったんだねぇ、僕。それは想像つくかな。善悪の見境消えちゃうからね(確信)」
「気持ちは分かるけど勘弁してくれよな...そのせいで世界が崩壊するところだったんだから」
なはは、と祝くんはお茶を濁すように、取り繕うように笑う。
うん...笑い話じゃないですよねぇ...あはは...
「...惜しいが...それはちと、解釈が間違っておるぞ、抑止力よ」
「え?」
なんて、談笑の合間の、その瞬間。静かな足取りで、階段を上がってくる人影を見た。
それは少年の見た目をしていた。
何の変哲もない、何処にでもいるような...いや違う。特徴がないんじゃない。特徴を認識できないんだ。
まぁなんにせよ、見た目だけは少年だった。
しかし纏うオーラ、雰囲気?
その何もかもが、その子をヒトじゃない何かしらだ、と僕たちに教えてくれる。
「...誰だ?」
...祝くんは警戒態勢を取ったが、僕はそれをしなかった。
何故なら僕は、その子の正体を知っていたから。
「おー、こわいのぉ、よしてくれよしてくれ...割りとこう、不敬じゃよ?...にしても、随分と久方ぶりじゃな...えと、今は博麗三鶴、なんじゃったか?」
「...そうですね、久しぶりです...神様」
現れたのは、僕を転生させた神様だった。
・・・
「んー...ズズー...はぁ、にっがいのぉこれ...もう一杯」
「はいはい、おかわりですねぇ」
取り敢えず僕は、神様を中に入れた。
立ち話もなんだからね。
「いやちょっと待てよ!何故さもありなんと迎え入れている!?」
当然のように飛んでくる叱責。
いやはや、どう説明したものか...
「まぁまぁ、落ち着きなよ。この人、神?はね、僕を転生させてくれた神様なんだ。だから、危ない人じゃないよ。ただちょっと、不注意で人を殺してしまうくらいなものさ」
「何を持って安心しろと?」
祝くんの顔が青くなる。
なんとなく理解しているんだろう。こいつにはどうやっても勝てない、と。
そりゃそうだ。なんせ創造神のような存在だ。謂わば神という概念の源流にあたる。
下界においては多分最強だと思う。
ハドリーさんと同じくらい。
...そう考えると、やっぱりハドリーさんって規格外なんだなぁ.....
「落ち着け抑止力よ。なにも取って食ったりせんわい」
「その抑止力ってなんだよ...」
「...確かに、引っ掛かる物言いだね、神様。てか、わざわざ生身で降臨してくるなんて、一体どういう風の吹きまわしで?以前みたいに夢で会えばよかったのでは?」
と、当然の疑問が沸き上がってくる。
「それでもよかったんじゃがー...お主が人間になってしまった時に、どうやら繋がりが切れてしまったらしくての。一応もう一人のお主...お主の言う師匠?には神様的な繋がりで連絡をいれておいたんじゃが、聞いてないか?」
そんなの知らな...いや、あー。
言ってたな師匠。朝に。出掛ける前に。
「今日お前宛に来客があるからしっかり対応するんじゃぞー」...などとね。
「まぁ、今日来たのはな。ある種のこう...弁明?でもあるんじゃよ」
「...弁明?」
「そして、答え合わせじゃ。博麗三鶴、並びに博麗祝...お主たちがどうして死に、どうして転生したのか。その答えがようやく判明した」
「なっ!?」
祝くんがギョッと目を見開く。
対照的に、僕は冷ややかな眼差しを向けていた。
...いや、うん。そんなの.....
「...そんなの、神様が間違えたからでは?」
祝くんはともかく、僕は神様のミスで命を落とし...その落とし前として転生させて貰ったって背景がある。
なんでもくそもないだろう。
「うむ、いやな、最近まではワシのミスだと思っとったんじゃがー...なんかどーも、そうでもないらしいんじゃよ」
...なんだって?
それは、どういう意味だろう...
「...まず一つ。お主は本来、あの時死ぬ運命になかった。故に、予定になかったお主の魂が送られてきたとき、ワシが何かの手違いを起こしたのだと思っておった」
「...え?ちゃんとした原因、分かってなかったんですか?」
なんかあるだろ。金曜ロードショーを見ながら作業をしてたら手が滑ったとか。
...直接的な、神様のミスでは、なかったってことか?
「そうじゃな。お主を転生させてから、色々調べてはみたものの...まぁ結局分からずじまいだった...けれど、」
神様は、祝くんへと目をやる。
「お主が来たので、大体が判明したのじゃよ」
「...ぼ、僕ぅ?」
「なんでだ?」と首を傾げる祝くん。
それは、同感の極みだ。
何故なら祝くんはこの世界の人間ではなく...別の世界からの弾かれ者。
だから、関係なんてないと思ってた。
「...お主の記憶を見させて貰った。どうやら、世界の亀裂を修復したようじゃな。それは、どうやったか覚えているか?」
「...え、えっと。めちゃくちゃ強い世界の三鶴に、亀裂の原因となる時間軸に送って貰って...その原因自体を消した、って感じかな」
「その原因とは?」
「それは...別世界への干渉、だろ?本来相容れない世界同士の接続によって、壊れた...みたいな?」
「ふむ、まぁさっきも言ったが、それは解釈が間違っておる。半分正解ってところか」
「...違う...の?」
「干渉自体が原因ではない...干渉によってもたらされた因果、そっちがメインじゃ」
...えぇっと、つまりですね。
まとめよう、整理整理。
まず、本来の世界線...つまり僕が今生きているこの世界がある。
そこに、別の世界線...僕が霊夢を救えなかった世界線が、干渉してくる。
具体的には、別世界の僕が、この世界の霊夢を連れ去ろうとした...って感じだ。
それを、阻止できたのか出来なかったのかは分からない...けど、何かしら頑張りはしたはずだ。
神様が言いたいのは...世界に亀裂が走った原因が、その頑張りである...ってことだろう。
「...あ、そういうこと!?」
そうして僕は、その考えに至った。
僕がやりそうで、世界の歯車が狂ってしまうかもしれないこと。
なんとなく、直感の話ではあるが。
「...もしかして僕、もう一回神様に戻った?」
「そういうことじゃな」
合ってた。
いやしかし、うーん?
【どうやって?】はこの際もう置いておくとして、問題は。
それがどうして世界の崩壊に繋がる?
「ちょ、待ってくれ。じゃあなんだ?他の世界からの干渉がなくたって、今この瞬間に三鶴が神に戻ったら、世界は崩壊するってことか?」
「うんや?それはもう大丈夫じゃろ。人になってからかなり時間が経っておるからの...というか昨日、外の世界の三鶴が死んだからな」
「.....?」
──絶句した。
何を言っているんだこいつは。
...いや待て、
「...いたの?僕、外の世界に...僕、というか。転生する前の僕が、外に?」
「そういうことじゃ」
...思えば、そりゃそうだって話だ。
僕が転生したのは、博麗大結界が張られる前の...多分、江戸時代とかその辺りの時代だ。
そう、この転生はタイムスリップも兼ねていたことになる。
過去の時代に転生していたんだ、僕は。
そうだよな...別世界に送られたって訳じゃないんだ。この幻想郷は、日本と地続きにある土地なんだから。
「よく分からないけど、外の世界の三鶴が死んだからなんだってんだ?」
「大事なのは死因じゃ。今回、ワシはちゃんとお主の死因を探るため観察しとった。何か変なことはしてないかとか、色々な...じゃが、何もなかった。何のミスもなかった」
...ミスがなかった?
じゃあ僕が死んだのは...神様のせいではなかったってこと?
「そうしてやっと分かったんじゃ。お主の死因は、世界の収束力。世界に三鶴という
僕という存在が...二人?
僕という存在ってよりは、三鶴という人間の存在...待てよ待てよ、つまりだな。
あれか、じゃあ。僕が人間に戻ってしまったから...この世界に三鶴という人間が重複してしまったから...外の世界の僕は、死んだ。
そういうことか?
僕の思案を神様は少しの間見守り、頃合いと見ると、再び口を開く。
「...そしてここから、逆説的に考えてみると...全てが繋がるのじゃよ。一つ一つ説明していくぞ。まず...例えばもし、お主が人間に戻らなかった場合、どうなる?」
「...外の世界の僕が死なないことになる?」
「そう、つまるところ、転生体であるお主の存在がなかったことになる...矛盾、が生じるわけじゃな」
矛盾...そう、矛盾だ。
なるほど、この矛盾が、亀裂の原因。
神様に戻ることを決断したとき、発生してしまう矛盾。
「故に、ここで世界の修正力が発動する。矛盾を引き起こさぬよう...転生体のお主は人間とならねばならない。お主、自分がどうして人間に戻ったのか、分かっとらんかったろ?」
「...そうですね。朝起きたら、師匠と分離してて...僕は人間になっていた。色々原因を探ってみたけど、分からなかった。そしてなんやかんやであやふやになってたけど...なるほど、確かに、繋がる」
つまり、その修正力とやらで無理矢理師匠と分離させられ、収束力とやらで外の世界の僕が死ぬ。
「...腑に落ちない部分もありますけど、大体呑み込めました」
「うむ...まぁつまりな、そこな博麗祝...お主の存在というのは、今のような理屈で考えて、世界の修正力によって生み出された、と結論付けられる」
「...僕が?」
「三鶴が再び神となり、矛盾が生まれ、世界はそれに耐えきれず崩壊を始めた...その歴史が確定してしまった以上、強引な時間逆行による修復は、その歴史の存在をなかったことにする...つまりこれまた矛盾を発生させてしまう。だから、その詰みを回避するため、世界は抑止力を生み出したんじゃろう」
「...それが、僕だって言いたいのか?」
「そうじゃな。つまるところな、世界は矛盾を解決するまでの一連の流れを正しい歴史と定めたんじゃ。その為に、お主が生み出された。亀裂の原因となる存在から、ほんの少しだけ全ての要素をずらして造られた存在。死因をずらし、立場をずらし...お主のいた世界が消えたにも関わらず、お主だけ消えずこちらの世界に移ってきたのは、そういうことじゃ。なんせ...お主が存在しなかったことになることは、矛盾なんじゃから」
「......」
驚きはあった、唖然ともした。
けどそれ以上の、なんか...納得感?があった。
いつぞやの、
主人公...そうか、きっとそれは、世界に大きな影響を与えることの出来る存在のことだったんだろう。
矛盾を作り亀裂を発生させる可能性のある存在...その危険性の証明が、主人公なのだ。
...彼が言うには、どうやら僕は主人公でないらしい...いや正確には、
だから、崩壊を作り出す心配はない。
それだけで、幾分か安堵する。
「...とまぁ、伝えておくべきことは伝えた...これから数百年ぶりの仕事が待っておるんでの...ここいらでお暇としよう」
「...数百年ぶり?」
「ちなみにというレベルなんじゃが、お主が過去の幻想郷に転生したのはワシの意思ではなく、これまた世界の修正力によるものじゃったんよ。過去に戻らない限り、存在の重複なんて現象は起こらんからの...故に、お主が過去に飛んでしまったことを感知したワシは、時間逆行をし、再び現代に戻ってくるまでの間休職してたわけじゃな」
「...じゃあこれから、現代の神様とバトンタッチ?」
「そゆことッ、じゃ」
...と、神様はひょいっと縁側から跳ね降りた。
「じゃあのお主ら。もう会うことはないじゃろうな...まぁ、それなりに、幸せになるがよい。お主らには、その権利があるからの」
神様は背を向けたまま、手をひらひらと振って去っていく。
僕たちは、その背を見送るように、見つめ続けた。
いつしか階段を降り、見えなくなる。
「...なんだか、怒涛の情報ラッシュだったね」
「あぁ、そう、だな...答え合わせ...か。まぁ、実際気になっていたし...悪い時間じゃなかった、な」
...祝くんは、静かに瞳を閉じながら、そう呟く。
瞼の裏に映る景色を、噛み締めるように。
「...さて、そろそろ霊夢たちが帰ってくる時間じゃないかなぁ」
僕は徐に背伸びをして、踵を返した。
...自分がどんな存在か。
それが分かろうが分かるまいが、これからも人生ってやつは続いていく。
何故なら、僕は人間なのだから。
限りある時間の中を生きる、儚い種族なのだから。
...ただ、そうだな。
今が...外の世界の僕が死んだ時代であるなら...
前世の僕の家族や友人も...そこにいるのだろう。
...機会があるのなら...会いに行きたい。
今更、そんな感情を抱いてしまった。
これで書きたかったことは全部書けましたさようなら