キング・オブ・ブレイバー   作:菌床

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第6話

 

■決闘都市ギデオン

 

 「ククク、またのご利用をお待ちしているぞ」

 

 〈メイズアイテムショップ〉と銘打たれた移動式販売車で買い物を終えた【聖騎士】レイとネメシスは、レベル上げに行くには時間がないので街中を回って時間を過ごしていた。

 

 「それにしても、メイズさんの新しい店も順調みたいで良かったな」

 「うむ、前の店は爆散してしまったそうだしのう」

 

 ギデオンに来て間も無かった頃、賞金稼ぎ兼アイテムショップ店長の【大死霊】メイズ、皇国所属のマスターであるユーゴーと共に事件に巻き込まれたのだ。

 その際犯罪者から恨みを買っていたメイズの店が爆破され、盗み出されたアイテムで<UBM>が発生したりと散々な目にあったメイズだったが、なんと王国騎士団から援助を引き出して高性能な移動式販売車を手に入れている。

 身の危険があるからと従業員も居なくなり、アイテムの在庫も吹き飛んだが、事件解決の報酬でアイテム作成のための素材を集めたりと、助けるつもりで買い物に行ったレイだったが、むしろその逞しさに驚かされていた。

 

 「……あ、これって騎鋼戦争がモデルかな」

 「ほう、どれどれ」

 

 レイとネメシスが見つけたのは、美術品を取り扱う店のタペストリーだ。

 それは王国と皇国、二つの陣営が向かい合う様に描かれていた。

 王国側で特に大きく描かれているのは、煌玉馬に跨った【天騎士】、星を降らせる【大賢者】、一人突出する位置にいる【超闘士】の三名。

 対する皇国は、悪魔の軍勢を従える【魔将軍】、降る星を砕く【獣王】、様々な怪物を従える【大教授】、そして、【超闘士】の正面で武器を構える【英雄王】の四名。

 見るだけで胸が躍るような、まるで神話の一幕の如き出来栄えに興味を惹かれ、他の作品も気になって店内に入る。

 

 「ん? この後ろ姿、もしかしてフィガロさんか?」

 「このごちゃ混ぜな装備、あの朗らか脳筋に間違いあるまい」

 

 そのタペストリーに描かれているのは、巨大な魔王の様な存在に立ち向かうフィガロの後ろ姿だった。

 統一感のないごちゃ混ぜの装備に、握りしめている剣は闘技場で迅羽相手に使用していた【極竜光牙剣 グローリアα】に他ならない。

 

 「フィガロさんが立ち向かってるこの魔王みたいな奴誰だろう?」

 「まあ、我々の知らない武勇伝の一つや二つ有るのではないか」

 

 今度会った時にでも聞いてみようと考えていた二人に、背後から声をかける者がいた。

 

 『それは騎鋼戦争の時に【英雄王】とやり合ってる場面クマー』

 「おっ、兄貴」

 「奇遇だのう」

 

 それはクマの着ぐるみを着た不審者、もとい、レイの兄である【破壊王】シュウ・スターリングである。

 

 「てか、この禍々しいのが【英雄王】なのか? 英雄っていうか、むしろ大魔王って感じなんだけど」

 「お主も人のことは言えんと思うがのう」

 

 【暗黒騎士】のような見た目をした【聖騎士】を見ながらネメシスはそう呟く。

 

 『本気出した時の形態らしいクマー。ぶっちゃけ大陸上で使っていい規模じゃ無いな』

 「大陸上でって……、そんなにヤバいのか?」

 『うーん、……言葉より地図で見た方が分かりやすいクマー』

 

 そう言って取り出したのは二枚の世界地図だった。

 

 『こっちが騎鋼戦争前の地図で、こっちが騎鋼戦争後の地図クマー』

 「「…………は?」」

 

 地図を見比べた二人は目を見開く。

 二枚目の地図には書き足されていた場所があるのだが、その規模が信じられないのだ。

 

 「山脈と、列島が出来ておる……!?」

 「しかもこの列島、連なってる島の大きさはそこまででも無いけど、皇国の上からレジェンダリアの下の海域まで続いてるぞ……!」

 

 山脈は国境を斜めに貫いており、海には千島列島程の規模の列島が幾つも連なって大陸の上から下の〈境海海域〉まで続いている。

 

 『これと同じことを陸地でやったら、惨事なんてもんじゃ済まないクマー』

 「騎鋼戦争のあらましは聞いてたけど。フィガロさん……、そんなヤバい奴と戦って相打ちに持ち込んだのか」

 『半分くらいはフィガ公がやったクマー』

 「まさかの互角!?」

 

 あまりにも規模の大きすぎる話に驚愕する。

 いや、寧ろ王国でのフィガロの人気の理由が分かった気がしたレイであった。

 怪物に挑む神話の英雄のような光景を想像していたのだが、今では怪獣同士の大決戦としか考えられない。

 

 『おかげでどこの国も超級の抱え込みに精を出して、核抑止みたいな状況になってるクマー』

 

 マスターを用いた国同士の戦争にて大陸の形を変えるほどの武力を示したことで、他国も対抗できるだけの武力としてこれまで以上に超級を集め始めたのである。

 

 「そりゃ、こんな火力を自分の国で使われたくはないだろうし……。まあ、それで牽制しあって戦争にならないならそれに越したことはないな」

 

 戦争になればティアンも多く死ぬことになるだろうと考えたレイは、戦争が起きにくくなるかも知れないと喜んでいた。

 先日のフランクリンが起こしたテロ事件も、皇国からすれば全面戦争にならないための行動なのかも知れないと考える。

 

 『……それがそうも行かないクマー』

 「なんでだよ?」

 

 そう言うレイの疑問にクマーニーサンが答える。

 

 『騎鋼列島の所有権を巡ってアルター、ドライフ、レジェンダリア、グランバロアの四ヶ国がバチバチに政争してて、ぶっちゃけいつ開戦してもおかしくないくらい緊張が高まってるクマー』

 「島というのは、そこまでして欲しいものなのかのう?」

 『グランバロアは活動拠点に出来る土地を探してるってのもあるが、単純に資源が豊富クマー』

 「どこでも同じような問題はあるんだな」

 

 リアルでも島やその付近での資源を巡って不法占拠したりと、世界が違っても嫌な共通点があるものだと感じていた。

 

 『ただ、希少な資源が有る島程危険な環境になってることが多いから、どこの国も手こずってるクマー』

 「危険な環境か、例えばどんなのがあるんだ?」

 『溶岩地帯は楽な方で、雷が凍りついた森とか、重力が出鱈目になってたり、空間が歪んでたりするな』

 「空間が、歪む?」

 『波みたいに撓んでて、うっかり挟まれると強度無視して引きちぎられるクマー』

 「「怖!?」」

 

 【英雄王】と【超闘士】の戦いによって出来た島々だが、出来た経緯からして二人の戦いの影響を強く受けており、極悪な環境や、そこに適応したモンスターが潜む魔境となっている。

 勿論安全な島も存在しているのだが、危険な島程の特殊な素材は存在しない。

 そのため、各国は占拠した海域の島々に適したマスターを派遣することで希少素材の採取などを行っている。

 高品質な神話級金属や、それに匹敵する特殊な素材が自然魔力によって形成されるため、どこの国も血眼になって陣取りをしているのだ。

 

 『そういう意味じゃ、既に四ヶ国で戦争してるようなものクマー』

 「ちなみに、どこが一番多く領土を所有しておるのかのう?」

 『一番はドライフで、二番がグランバロア、三番にレジェンダリアで、ビリッケツがアルタークマー』

 「意外だな、二番目くらいかと思ってた」

 

 ドライフ皇国は多くのマスターや超級を動員しており、その武力によって半分近い海域を抑えている。

 グランバロアは海においての経験が圧倒的であり、海上国家の力を遺憾無く発揮していた。

 レジェンダリアは過酷な環境に対して適応した亜人を送り込むことで、特に危険な島を複数抑えている。

 アルター王国は先の戦争によってティアンの力が削られており、マスターと協調が上手く出来ていないため、殆ど島を取れていない有様であった。

 

 「結構詳しそうだけど、兄貴も島の取り合いに参加したりしてたのか?」

 『本腰入れようって時にちょっとしたトラブルで動けなくなったクマー』

 

 そう言いながら僅かに視線をずらすと、少し離れた場所でポップコーンを美味しそうに食べる秘書風の女とヤマアラシの姿があった。

 

 「俺もレベル上がったら皆んなと行ってみたいな」

 『カンストした辺りが目安だから、そのくらいになったら行ってみるといいクマ』

 「そうするよ。……あ、もう時間だからログアウトしないと」

 「でわの、クマニーサン」

 『学生はしっかり学業に励むクマー』

 

 そうして、一人のルーキーは去っていった。

 騎鋼列島を巡る戦いで、彼がどのように関わるのか。

 どっちにしろ何ならかのトラブルに巻き込まれることは間違い無いだろうと考えるクマであった。

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