日本人のマセガキが魔法使い   作:エックン

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監督生と勘違い

ポッターの無罪放免。

それ以降、騎士団本部でのポッターは晴れやかな表情で過ごすことが多かった。

相変わらず騎士団本部の大掃除は終わらず、夏休みも終わりに近づき課題に迫られている様子も見受けられたが、それでもこれからのホグワーツの生活や親友達との時間がポッターを前向きにしたようだった。

 

一方で、時間が経つにつれて気持ちが暗くなる者もいた。

 

気持ちが暗くなっている者の一人は、俺。

俺はホグワーツでの生活が迫るにつれ、スリザリンの親友達との再会がどうなるかを考えざるを得なかった。

親友達とはもう、一カ月近く連絡を取っていない。知り合ってから初めてのことだ。

そして、死喰い人や闇の帝王の支持者を親族に持つドラコやパンジー、騒ぎさえ起こさなければ安全でいられるブレーズやダフネやアストリアが、闇の帝王との対立を避けられない俺にどう接するのか、不安にならない日はなかった。

ルシウスさんからの誘いを断ったことは、もう周知の事実だろうか? ドラコは少なくとも知っているように思う。であれば親友達には知れ渡っているはずだ。

親友達から距離を置かれるのは覚悟をしているが、辛い事には変わりない。

そんなことばかり考え、日に日に憂鬱になっていた。

 

そんな俺の真っ先に様子に気が付いたのは、ハーマイオニーであった。

ハーマイオニーは俺の憂鬱の正体を察しているようで、一度でも親友達に手紙を出してみたらどうかと俺に勧めてきた。

 

「私の家に向かうフクロウを経由させれば、安全じゃない? 騎士団本部の事は、ダンブルドアが秘密の守り人なんだし、手紙一本でバレることはないわよ!」

 

いつも慎重なハーマイオニーらしくない楽観的な提案だった。

それほどまでに、俺が落ち込んでいるように見えたのだろう。

そう元気づけようとするハーマイオニーに、俺は笑いかけながらその誘いを断った。

 

「ありがとう。でも、遠慮するよ。俺からあいつらに連絡を取ること自体が、問題になるかもしれない。ルシウスさんは、俺からの連絡を確実に確認する。姿をくらましてるんだ。安全だって伝えるのも、結構なリスクだと思うよ。……それにお前だって、パンジーとダフネに手紙を書いていないだろ? 危険だって、分かってるから」

 

 

「……そうよね。ごめんなさい、軽率だった」

 

そう返事をすると、ハーマイオニーは一層俺に同情するような表情になり、それ以降も俺によく構うようになった。

 

そして俺以外にもう一人、日に日に表情を曇らせる人がいた。

シリウスだ。

シリウスはポッターの無罪放免を聞いてから、少しずつ塞ぎ込んでいった。

夏休みが終われば子どもたちは全員ここを去り、シリウスは再び一人きりで耐え忍ぶ生活だ。そして、まるで一足早く一人でいる準備をするかのように、あれだけ懐いているポッターにすら壁を作り始めていた。

ポッターとロナルドは、シリウスへの心配を強めているようだった。

二人が一緒になって、シリウスへの心配を口にするのを何度か耳にした。

シリウスもそれを自覚しているのか、みんなといる時は今まで以上に楽しそうにふるまうことが多くなった。そして、それと比例するように一人で部屋にいる時間も長くなっていった。

 

 

 

そうして迎えた夏休み最後の日、子どもたちの手元にホグワーツからの手紙が届いた。

ホグワーツの新学期開始の案内と、教科書のリストの二つが入った手紙だ。

部屋で一人それを見ていると、部屋の外でドタバタとする音が鳴り、ノックもなく俺の部屋のドアが開け放たれた。

ドアの方へ目をやると、興奮で息を切らしたハーマイオニーが頬を紅潮させながら勢いよく入ってきた。

 

「ねえ、あなたはどう? 貰った?」

 

「……一体何を?」

 

思わずそう返事をすると、ハーマイオニーは俺の手にある手紙を凝視し、少し残念そうな表情をした。

それから慌てて自分の封筒から一つのバッジを取り出した。

赤と金のグリフォンドールのライオンのシンボルの上に大きくPと書かれたバッジ。

 

「……ああ、そっか。今年は監督生が選ばれるんだったな」

 

呆然とそう呟くと、ハーマイオニーは勢いよく頷いた。

 

「そうなの! 私、監督生になれたわ! ……スリザリンの監督生は絶対にあなただって思ってたのに、違ったのね」

 

ハーマイオニーは自分が選ばれたことを喜びながら、俺が選ばれなかったことを気遣って少し複雑そうな表情をしていた。

俺はそんなハーマイオニーの様子が可笑しく、笑いながら賛辞の言葉を投げかける。

 

「監督生おめでとう、ハーマイオニー。それとスリザリンの監督生は、むしろ俺は絶対にないだろうな。……家柄重視の奴らを従わせる力は、俺にはないよ」

 

監督生になれなかったことは残念でも何でもなかった。

シャワールームを使えることは羨ましいが、それ以外は責務や業務まで降りかかる。

闇の帝王に狙われた状態で、そんな責務まで負いたくはなかった。

ハーマイオニーは、強がりでも何でもなく本当に監督生になりたくなかったという俺の気持ちを察したようだった。

少し残念そうな表情をしたが、素直に俺からの賛辞を受け取ることにしたらしい。

 

「ありがとう! ……でも、それじゃあスリザリンの監督生は誰だと思う?」

 

「十中八九、ドラコだろうな。あいつなら、先輩後輩問わずまとめ上げられるだろうし。……それで言うと女子は、パンジーが有力かな」

 

俺の予想に、ハーマイオニーは驚いて笑った。

 

「ええ、パンジー? ああ、もしそうだったらとっても嬉しいわ! でもあの子、落第ギリギリの成績なのに監督生だなんて、あり得るかしら?」

 

ハーマイオニーの素直な反応に俺は笑った。

 

「さあ、どうだろうな。でも、あいつはスリザリンでの地位は高いし、先輩後輩問わず従わせるだけの力はあるぞ。成績以外、監督生の要素としては満点だと思うがな」

 

「成績以外……。そうね、うん。パンジーが監督生なら、私、学校生活がもっと楽しみになるわ」

 

ハーマイオニーはそう嬉しそうにしながら言い切った。しかし、成績以外という言葉で少しハーマイオニーが表情を曇らせたのが分かった。まるで自分が成績で選ばれたと思っているようだった。

それはとんだ勘違いだ、と思い言葉を投げかける。

 

「ハーマイオニー、お前は成績以外でも監督生として満点だと思うぞ。……お前はホグワーツに来てからずっと、正しい事をしてきたしな。納得の人選だ」

 

ハーマイオニーは驚いた表情で俺を凝視し、それから少し照れたように笑った。

 

「……ありがとう。本当に嬉しい。……そうだわ! グリフォンドールのもう一人の監督生は誰だと思う? 私、きっとハリーだと思うの!」

 

照れ隠しの様に、ハーマイオニーはグリフォンドールの男子の監督生の予想を立てた。

 

「ああ、なら確かめに行ったらどうだ? ちょうど下に、ポッターがいるしな」

 

「そうね! それじゃあ行きましょう!」

 

そう言うが早く、ハーマイオニーは俺の腕を掴むと階段を下りて下の階にあるポッターとロナルドの部屋に突撃していった。

俺は行く気はなかったのだが、興奮のあまり自分が何をしているかもよく分かっていなさそうなハーマイオニーに何か言う気にもなれなかった。抵抗する間もなく引きずられ、気が付けばポッターの部屋に引きずり込まれていた。

ポッターとロナルド、そして二人の部屋にいたフレッドとジョージはいきなり突撃してきたハーマイオニーと、引きずられるようにしてきた俺に驚いた顔を向けた。

ハーマイオニーは部屋の中を見て、ポッターが監督生のバッジを持っているのを見て歓声を上げた。

 

「ああ、そうだと思った! ハリー、私も監督生なの!」

 

自分の予想が当たったこと、そして監督生としての喜びを分かち合える相手を見つけて、ハーマイオニーはご機嫌だった。

しかし、どうやらハーマイオニーの予想は外れだったようだ。

嬉しそうに声をかけられたポッターは急いでバッジをロナルドに押し付けた。

 

「違うよ。僕じゃない。ロンなんだ」

 

ポッターは早口でそうハーマイオニーに告げ、ハーマイオニーは一瞬固まってしまった。

 

「え、ロン? でも、確かなの? だって……」

 

「手紙に書いてあるのは、僕の名前だ」

 

ロナルドの挑むような表情に、ハーマイオニーは恥ずかしそうに赤面させた。

それからあたふたとしながら、言い訳がましく口を開いた。

 

「私……えーと……ああ! ロン、おめでとう! 私、本当に……」

 

「予想外だったよな」

 

ジョージがしみじみと頷き、わざとからかう様にハーマイオニーの言葉の後をつないだ。

ハーマイオニーは顔をさらに赤くした。

 

「違うの! ほら、ロンはいろんなことを……本当に……」

 

フレッドとジョージは慌てふためくハーマイオニーを楽しみ、ロナルドはため息を吐いた。

そんな中、ポッターは引きずられるようにしてやってきた俺に意識を向けていた。

 

「……君も、監督生に選ばれたの?」

 

話を振られて少し驚いたが、直ぐに返事をした。

 

「いや、違う。残念ながらスリザリンの監督生は俺じゃない。……あの寮の連中を監督しないで済むから、安心はしてるけどね」

 

俺の返事に、ハーマイオニー以外の全員が驚いた表情になった。

中でもロナルドはかなり驚いた表情をしていた。あんぐりと口を開けて、固まってしまった。

フレッドとジョージは少し嬉しそうだった。

 

「ああ、よかった。君がこれ以上、お堅くなったらどうしようかと思ったよ」

 

「石頭が鉄頭って具合にね。君に罰則権限を持たせるのは僕らにとって、ちょっとおっかないもんな」

 

「……よく言うよ。罰則なんて欠片も気にしてないくせに」

 

二人の軽口に苦笑いをしながら返事をする。

それからフレッドとジョージは一瞬のスキをついてロナルドから監督生のバッジを奪い取ると、囃し立てるようにしながら部屋を出て行った。

 

「ロニー坊ちゃんが監督生だ! 我が家で四人目! そーら、監督生のお通りだ!」

 

「……おい、やめろよ!」

 

フレッドとジョージを追いかけ、ロナルドは急いで部屋を出て行った。

取り残された俺とポッターとハーマイオニーは少し呆気に取られていたが、急にハーマイオニーもそわそわとしながらポッターに話しかけた。

 

「……ねえ、ハリー。ヘドウィグを借りてもいいかしら? あの、私もパパとママに伝えたいの。監督生って、二人も何か知ってるから」

 

「ああ、うん、勿論。おめでとう、ハーマイオニー! 使ってよ!」

 

そう言い、ポッターは白フクロウの入った籠をハーマイオニーへ渡した。

ハーマイオニーはそれを受け取ると、少しはにかみながら、そして少し心配そうにしながらポッターを見た。

ハーマイオニーの目には、ポッターが監督生に選ばれなくて落ち込んでいるように見えたのだろう。

俺もチラリとポッターを見た。ポッターはハーマイオニーへにっこりと微笑んでいたが、確かに無理して笑っているようにも見えた。どこか、ポッターの無罪放免を祝福したシリウスに似ていた。

ポッターへかける言葉が分からず、俺は大人しくフクロウを借りて出て行くハーマイオニーについて行って部屋を出た。

ハーマイオニーは、先程の事を少し気にしていた。

 

「……ハリーとロンに、悪いことしちゃったわ。ハリーだと思ってたから、その、気まずくさせちゃったわ」

 

「あまり気にすることでもないと思うがな……。ポッターも、そこまで気にしているようには見えないし」

 

「……それだったら、良いのだけど」

 

ハーマイオニーはそう言い、力なく微笑んだ。

それからハーマイオニーは両親へ手紙を書くと言い部屋に戻り、俺も部屋に戻りホグワーツへの荷造りを始めた。

 

 

 

その日の夜は、ハーマイオニーとロナルドの監督生祝いを込めて豪勢な料理が大広間に並ぶこととなった。夏休み最後の夜、という事もあるのだろう。晩餐会が開かれるようだった。

特にウィーズリーおばさんはここ一番の喜びようで、張り切って料理の腕を振るい、「ロン、ハーマイオニー 新監督生おめでとう」と書かれた横断幕まで用意していた。立食パーティーにしようと部屋をデザインし、大広間はいつになく素敵なパーティー会場となっていた。

その日は大勢が集まった。

ウィーズリーおじさんにビル・ウィーズリー、ルーピン先生、トンクス、マンダンガス、ムーディ先生にキングズリーも来ていた。

ウィーズリーおじさんがゴブレッドを掲げて、乾杯の挨拶をした。

 

「新しいグリフォンドールの監督生、ロンとハーマイオニーに乾杯!」

 

ロナルドとハーマイオニーがにっこりと微笑んで、そんな二人にみんなが拍手をして、晩餐会が始まった。

みんなが和気あいあいと楽し気に会話をしていた。

 

「私は監督生にはなれなかったなぁ。寮監がね、私にはお行儀よくする能力が欠けているって言っていたわ」

 

トンクスは明るくそう言い、ジニーが声を上げて笑った。

それからトンクスは傍らにいるシリウスに声をかけた。

 

「シリウス、あなたはどうだった?」

 

「私かね? 私を監督生にする者なんて、いるはずなかったさ。ジェームズといつも一緒に罰則を受けている問題児だぞ? リーマス、君はいい子だったからバッジを貰っていたね?」

 

「ダンブルドアが、私が親友達を大人しくさせることを期待したのだろう。……勿論、失敗したがね」

 

シリウスは楽しそうに声を上げて笑い、ルーピン先生と肩を組んでいた。ポッターもそれを見て、クスクスと笑っていた。監督生に選ばれなかったことなど、もう気にしていないようだった

 

ロナルドがご褒美として箒を貰ったことをトンクスに自慢し、ハーマイオニーが屋敷しもべの事をルーピン先生に意見していたり、ウィーズリーおばさんがビル・ウィーズリーの髪形でジニーともめて、シリウスはキングズリーとウィーズリーおじさんとお互いがやったことのあるホグワーツでのやんちゃについて笑い合っていた。

各々が好きなように過ごし、楽しんでいた。

俺はウィーズリーおばさんの料理を楽しみながら、屋敷しもべの話をするハーマイオニーから少し逃げるようにしてこちらに来たルーピン先生との会話を楽しんでいた。

 

「やあ、ジン。君が監督生にならなかったのは正直意外だ。……スリザリンでなければ、真っ先に監督生の候補に挙がっていただろうね」

 

ルーピン先生の少し励ましの入ったその言葉に微笑みながら、返事をした。

 

「そう言ってもらえると嬉しいですよ。……まあ正直、監督生にならなくて良かったと思ってます。スリザリンの連中をまとめ上げる自信はないですよ」

 

「私も自分が監督生だった頃は親友達に手を焼いた。悪戯好きの親友がいると、監督生という立場は辛いものだったしね。……唯一良かったと思えるのは、監督生とクィディッチ・キャプテンだけが使えるシャワールームだろうか。私は満月を過ぎると、特に汚れるからね。獣臭さを消すには、うってつけの場所だったよ」

 

ルーピン先生は俺に励ましが必要ないと分かると、にっこりとしながら監督生の思い出話をしてくれた。ルーピン先生なりの狼人間ジョークを交えて。

俺はクスクスと笑いながら話を聞きいった。

 

「監督生の仕事って、ちょっと厄介だったりします?」

 

「どうだろうね。まあ、下級生をまとめたり、寮監から見回りを指示されたり、雑用をこなさなきゃならないことは多々ある。同級生に罰則を与えなきゃいけないこともあるし、嫌なことがないわけじゃない。でも、先生や他の生徒からの覚えはいいし、ホグワーツの監督生というのは世間的にも評価されるような、大変栄誉なことではある。それが良いと思える人にとっては、監督生の仕事は全く苦じゃないだろうね。その程度の仕事さ」

 

「ルーピン先生はそつなくこなしてそうですね」

 

「おや、私の話を聞いていたかい? 私の親友に厄介者がいたのだ。お陰で私は監督生としては多忙な日々を過ごしたよ。それに私は、監督生として得られるものにそこまで魅力を感じなかったんだ。……親友達のいたずらに参加をしたいと、思うことも多かったよ」

 

ルーピン先生がそうお茶目に笑うので、少し意外な一面を見れた気になった。

そんなルーピン先生の言葉を聞き逃さなかったのが、ルーピン先生の親友であるシリウスだった。

シリウスは少し酔っているようで顔を赤くしながら上機嫌にルーピン先生の肩を組んだ。

 

「言うじゃないかリーマス! だが、私は忘れていないぞ。私とジェームズがピンズ先生を成仏させようとして、君からきつい罰則を食らったことを」

 

「……あれはシャレにならなかった。魔法は不発で、効果がなかったからよかったものの、一時的にピンズ先生の声が遠くなった時は本当に焦ったんだぞ? 君がいたお陰で、私は監督生として胃を痛めていたんだ。シャワールームがなければ、監督生など辞めたくて仕方がなかったよ」

 

「おやおや、そんなことを言うのか? 監督生として後輩からの覚えが良く、良い思いをしたこともあったじゃないか。中には可愛い子もいただろ? なんて言ったっけ、あの目のクリクリとした、ほら……」

 

「……シリウス、もう二十年以上も前の話だ。覚えていないよ」

 

ルーピン先生は少しため息を吐きながらシリウスを諫めたが、俺はシリウスの話に興味を持った。

シリウスもそれを見抜いたようだ。俺にニヤリと笑いかけ、肩を組んでいるルーピン先生の頬をつつきながら上機嫌に話を続けた。

 

「何人かいたのさ。監督生としてのリーマスに言い寄る子がね。監督生になると、シャワールームは使い放題。リーマスはやりたい放題だったよ」

 

「え、ルーピン先生が?」

 

シリウスの言葉を少し真に受けて驚いて聞き返すと、ルーピン先生が呆れたように口を挟んだ。

 

「私がそんな職権乱用をしたことは一度もなかったよ。シリウス、君もよく知っているはずだ。……付き合った子とは必ず、一カ月も持たなかったことをね」

 

「ああ、君は必ず満月の次の日に彼女と別れようとするんだ。あまりに露骨なんで、狼人間だと自白しているのかと思ったよ。私達が止めなかったら、もしかしたらバレていたんじゃないか?」

 

「……私も若かった。満月の次の日に別れを告げるのを止めてくれたことは、感謝しているよ」

 

この話はトンクスにしてあげようとボンヤリと思いながら、ぺらぺらとしゃべるシリウスに相槌を打ち続けた。

その後も、ルーピン先生の学生時代や、シリウスのイタズラの思い出話、ウィーズリーおばさんとジニーのビル髪型論争に巻き込まれ、ハーマイオニーがフレッドとジョージに監督生として早速脅しをかけているのを眺め、楽しんでいれば、気が付けばもう夜も更けていた。

 

 

 

各々が食事も終え、この晩餐会に満足して部屋に戻り始めた。

ロナルドはプレゼントの箒を大事に抱えながら自室に戻り、フレッドとジョージも何やらこそこそとしながら自室へと戻っていった。ジニーは本当に眠そうにしながら大広間を後にした。ハーマイオニーも周りに合わせて、自室に戻るようだった。ポッターはいつの間にかいなくなっていた。

俺も他の奴らと合わせて自室に戻ることにした。

自室に戻ると急な静けさに襲われ、少し寂しくなった。

晩餐会は楽しかった。色んな人と話しをし、興味深い話も多かった。

それだけに、明日以降に迎えることになるホグワーツでの生活に不安もあった。

 

親友達ともこんな風に話が出来たら、どれだけ良いだろうか。

 

そんな事を思いながら寝れずにいると、ドアがノックされた。

不思議に思いながらドアを開けると、立っていたのはハーマイオニーだった。

突然の訪問に呆然としていると、ハーマイオニーは少し心配そうに微笑みながら話をした。

 

「……あなたが、明日からの事が不安そうだったから。少し話でもしない?」

 

俺は晩餐会では純粋に楽しんでいた。だから、明日以降の不安を見抜かれたことに少し驚いた。だが、同時に少し嬉しかった。

 

「……実は不安だった。来てくれて嬉しいよ」

 

そう笑いかけると、ハーマイオニーは嬉しそうに笑った。

部屋に招き入れ、ハーマイオニーは椅子に、俺はベッドに腰かけて向かい合う。

 

「……不安よね。パンジーやダフネと連絡も取れず、明日いきなり会うのって」

 

「……そうだな。一カ月も音沙汰なしで、急に会うんだ。それに複雑な立場だしな。……俺と縁を切っても、おかしくない」

 

自分で言って、自分で傷ついていた。自嘲気味に笑うと、ハーマイオニーは俺に安心させるように笑った。

 

「……ね、いいもの見せてあげる。……パンジーとダフネには内緒にしてね?」

 

そう言いながらハーマイオニーは俺の隣へ移動してきて、ポケットから羊皮紙を取り出すと、慎重にそれを見せてきた。

それは、パンジーとダフネからハーマイオニーに宛てての手紙だった。日付を見ると、一週間前の物で、ごく最近までのやり取りの証拠だった。

ハーマイオニーが未だに二人と手紙のやり取りをしていたことに驚き、目をやる。

 

「ハーマイオニー、お前まさか、騎士団本部から二人に手紙を……?」

 

そんな危険なことを、と言葉を失った。

しかし、ハーマイオニーは悪戯っぽくそして誇らしげに笑った。

 

「残念、違うわ。私は騎士団本部から手紙を出してないの。……騎士団本部に来ることになってから、急いで夏休み中の二人あての手紙を全部仕上げたの。週に一回ずつ、フクロウ便で届けるように手配してね。手紙には、旅行中で私宛の手紙はすぐには確認できないからって言い訳をして、手紙の返事に齟齬が出てもごまかせるようにしたわ。それに、あたかも旅行先から出してるかの様に手紙の内容も偽装して。……パンジーとダフネとね、連絡がとれなくなって、疎遠になっちゃうのが本当に嫌だったの」

 

騎士団本部に来ることになってから、移動するまでに与えられた時間はわずかだったはずだ。それなのに、そのわずかな時間でここまで手の込んだことをするハーマイオニーに、彼女がいかにパンジーとダフネへの友情を大切にしているのか、感じずにはいられなかった。

驚いて固まる俺に、ハーマイオニーは羊皮紙を折りながら、手紙の一部を俺に見せた。

 

「……これはね、パンジーからの手紙。ついこの間の物」

 

その内容は、俺への文句だった。

 

『何度か書いてるけど、私は決めたことがあるの。新学期にジンに会ったら、一発殴ります。旅行先でもハーミーは欠かさず手紙をくれるのに、あのくそ野郎は一通もくれません。何通か書いても、返事なしです。私は怒ってます。ドラコもダフネも、アストリアも不安にさせて、のうのうとしてるあいつを許せない。絶対文句言ってやる』

 

それを読んだ俺の表情を見て、ハーマイオニはクスクスと笑った。

 

「パンジーらしいでしょ?」

 

「……あいつに会う時は、気を付けないとな」

 

言葉と裏腹に、俺への壁を感じさせないパンジーの手紙に嬉しさがこみあげてきた。

そしてハーマイオニーは次にダフネからの手紙の一部を見せてくれた。

 

『ジンから返信がないのはやっぱり不安。私の手紙も届いているか不安。もし、ハーミーに返信があったら、私にも教えてください。彼が無事だってことが分かるだけでいいの。折角の旅行の楽しい思い出を邪魔するような手紙でごめんなさい。勿論、新学期には何事もなかったかのようにしている彼と会えるって信じてる。ハーミーに会えることもとっても楽しみにしています』

 

ダフネの手紙に、少し後ろめたい気持ちになる。

ハーマイオニーは控えめに笑いながら言った。

 

「……この手紙を見ると、軽率でもいいからあなたからダフネへ手紙を出してもらいたくなったの」

 

「……だから、俺に手紙を書くことを勧めてたんだな。納得したよ」

 

ハーマイオニーからの提案を思い出し、そう笑いかけた。

ハーマイオニーは頷きながら返事をした。

 

「勿論、あなただって手紙を出したいだろうってことは分かってたから。……それに私は、二人からの手紙は受け取れるし、二人への手紙もすでに手配してたから、なんだかズルをしている気になって」

 

後ろめたそうにそう言うハーマイオニーに、俺は笑った。

 

「大変だっただろ、夏休み中の手紙を二人分も書くのは。これはズルなんかじゃなくて、お前の努力だ。……でも、なんで今更教えてくれたんだ? 手紙を書くように勧めてくれた時は、教えてくれなかったし。隠すつもりだったんじゃ?」

 

ハーマイオニーは困ったように笑った。

 

「……恥ずかしかったの。二人宛ての手紙を先回りして書いて、それを偽装して送ってるだなんて、言いたくはなかったわ。……でも、やっぱりあなたが寂しそうだったから、特別に。手紙を見せたこと、二人には言わないでね? 本当に特別なんだから」

 

そう言いながら、ハーマイオニーは二人からの手紙を大事そうにたたんでポケットにしまった。

 

「……ね、安心して。少なくともパンジーとダフネは、あなたと対立したり、距離を置いたりなんてしない。きっとマルフォイもザビニも一緒。……安心して、ホグワーツに行きましょ?」

 

そう微笑むハーマイオニーに救われた気持ちになった。

俺は心から、お礼を言った。

 

「……ありがとう。お陰で、今日はぐっすり寝れそうだ」

 

「それならよかった。来たかいがあったわ」

 

ハーマイオニーはクスクスと笑いながら立ち上がって、部屋を出る準備をした。

そんなハーマイオニーに、声をかける。

 

「本当に感謝してる。お礼に何でもするよ。……困ったことがあったらいつでも言ってくれ。力になるから」

 

ハーマイオニーは嬉しそうに笑った。

 

「お礼なんていいわ。私、あなたには随分と助けられてきたし。それに……」

 

「それに?」

 

ハーマイオニーは茶目っ気たっぷりに笑った。

 

「あなたが弱ってるところを見せるようになって、ちょっと嬉しい」

 

そう言って、ハーマイオニーは今度こそ部屋を出て行った。

残された俺は少し固まって、ハーマイオニーからの言葉をかみ砕いていた。

弱みを見せないようにしてきた今までの四年間を、ハーマイオニーは少し根に持っているのだろうか?

そして、弱みを見せることが嬉しいとは、随分と甘やかした言葉だとも思う。

ハーマイオニーは、何と言うか、男を駄目にする才能がありそうだ。

そんな取り留めのない事を考えてから、俺は布団に入った。

明日からの生活を少し楽しみにする気持ちと一緒に。

 

 

 

 

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