『俺達に明日はいらない』(偽原題:Bomber and Cradle)   作:ばばばばば

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2.導火の休日

 追われている二人は駅の構内の一角に置かれている旅行用パンフレットを見ながら話し合っていた。

 

 

「行くんならあったかい所にしようぜ、クソ熱ぃのはクソヤベェけど、クソ寒ぃのはもっと死ぬほどヤベェからな」

 

「おー、意外とちゃんと考えてるんだ」

 

「たりめぇよ!」

 

 

 自然な気安さの二人は行き交う人々からは旅行先を探すカップルにしか見えず、雑踏は彼らを気にも留めずその脇を通り抜けていく。

 

 

「あーでも、寒いけど北海道とかすげぇよな、肉とか魚とか食ったことねぇのばっかだわ」

 

「今は夏だし北でもいいんじゃない? 日本の冬とか雪はすごいけど寒さはそこまでだし」

 

「オイオイつまりよぉ、冬はあったけぇとこで夏はさみぃとこに行けば最強なんじゃねぇか?」

 

「ははは、なにそれ!」

 

 

 カップルのじゃれ合いのような言葉、そんな二人に気づいてカウンターにいた旅行代理店の女性店員は営業スマイルで彼らに話しかける。

 

 

「お二人で行くのでしたら、こちらのカップル用のプランが感動体験そのまま、値段は大変リーズナブルでご案内できますよ」

 

「おー、レゼ、これ船でイルカ見るやつあるぜイルカ、しかも泳げる」

 

「私もイルカ見たときないんだよね、海水浴場でも遊べるし楽しそー、でも泳ぐなら今度は水着買わないとだね」

 

「おぉ、うん、人がいるもんな……」

 

「あっ、いまデンジ君、泳ぎ教えた時のこと想像したでしょ? 人がいるなら前みたいなのはやんないよー」

 

「ち、ちげぇよ、でも人……、人がいない場所の方がやっぱりいいよなぁ? 田舎とか」

 

 

 二人を見ていた店員はその様子を微笑ましく思いながら聞き流し、会話から希望に沿った旅先を手元からいくつか選び出す。

 

 

「あー、確かにそう考えちゃうよね、でもね案外身を潜めるならそういう田舎より都会の方が良いんだよね、田舎だと人の出入りが記憶に残りやすいから、すぐに追手に見つかっちゃう」

 

「そうなのか?」

 

「都市部の方が戸籍を求めない仕事も見つけやすいしね、でも田舎は個人的に憧れというか落ち着くかも、長閑な所で羽を伸ばしたいのはあるかなぁ、あっでもデンジ君は都会の方が良いんだっけ?」

 

「別にいいぜ田舎でも、オレは駅ンとこのパンフレットみてて気づいたぜ、東京のメシはうめぇとこ沢山あるけどよ、田舎のメシもウマそうだってな!」

 

「デンジ君あったまいい! まぁカモフラージュで明日出発の北海道の旅行プランを抑えとくよ」

 

「なんかもったいねぇなぁ」

 

 

 今旅先を探す会話として不自然な単語が聞こえた気がするが、それでも店員の業務用の笑顔は取り繕えていた。

 

 しかし、支払いの段階で店員はギョッとする。

 

 少女はバックパックから紙で止めた裸の万札……、100万円の札束を取り出すとそこから必要な枚数を抜き出してカウンターに置いた。

 

 

「今はきっと公安が主要な移動経路は抑えているだろうからしばらくは東京に潜伏、捜査範囲が拡大したところで他の都市に移ってさらに潜伏、追手から逃げたら海に近い小都市を拠点に密輸船と交渉して国外逃亡かな」

 

「スパイ映画みたいでかっけぇ……」

 

 

 公安? 潜伏? 密輸船で国外逃亡?

 

 何か、なにかおかしいと店員の口の端が引きつる。

 

 思わず彼らの方を見てしまった店員は、いつの間にかこちらをジッと見ている少女と目線が合う

 

 

「あぁ、ごめんなさい、私達スパイごっこしてるので、今の会話はそういう感じのです。困惑させてごめんなさい」

 

「えっ、あっ、はぁ、い、いえ……、すごく仲の良い恋人さんですね?」

 

「えぇ、そうでしょう? 私の彼氏、すごい面白いんです」

 

 

 この子たちはこういう二人で、そういう仲の良さの延長線上で行われたごっこ遊びの設定で戯れる恋人たち。

 

 店員はそう思うことにした。

 

 

「な、なぁレゼ、オレたちってやっぱそういう感じなの?」

 

「男女が二人でいるんだから、対外的にはそういうカバーストーリーになるのは当然でしょ?」

 

「えー……」

 

「恋人命令です。顔を隠す帽子をそこの売店で買ってきてくださーい」

 

「……へいへーい」

 

 

 肩を落として離れていく男の子に、手を振りながら笑顔で送る少女をみて店員はつくづく最近の子は変わってると思った。

 

 いや、そう思い込むことにした店員は決して顔をあげることなく、上手くいった契約の手続きに没頭するふりをして、手持ち無沙汰に髪をいじる少女を意識の外に追い出すことにした。

 

 そうでもしなければ――

 

 

「こっちを見てる黒服の人が気になります? 日常の違和感を見つける勘が良いなぁおねぇさん、街中の守衛や監視員に向いてますよ、……でもスパイには向いてない、顔に出過ぎかなぁ」

 

「そ、そういう設定の遊びは彼氏さんとした方がよろしいかと」

 

「全部演技ですよ、あの人が好きな可愛い私も全部」

 

 

 店員は我が身を顧みる。

 

 あぁ、自分は昔から勘は良いが運は悪い、いっそ何も気づかぬほど愚鈍か、避けられるぐらいに勘か頭がもっとよく生まれればよかっただろうにと店員は思った。

 

 

「仕事中にごめんなさい、多分色々聞かれますけど聞いたこと全部話しても構いませんよ、まぁもともと破滅前提な逃亡計画なので――」

 

「おーい! レゼ、買ってきたぜ」

 

「デンジ君、丸いつばの帽子似合ってるね!」

 

 

 

 クルリと少年に顔を向ける少女はすでに恋する乙女の顔をしていた。

 

 これが演技であるかは疑わしいと、店員は思ってしまう。

 

 このレベルの演技を行えるのがスパイの素養だとしたら、世の中でもてはやされる女優男優やアカデミー賞など、明日からの自分は鼻で笑うだろうとも店員は考える。

 

 

「公安や他の組織がひしめいているので今日は東京に潜伏! 夏休みでごった返してる場所で東京観光デートです!」

 

「東京楽しいヤッター!!」

 

「しかも私が彼女役でーす」

 

「彼女カワイイヤッター! よろしくなぁ!!」

 

 

 しばらくして彼らはこの場を後にする。

 

 遠くでも分かる程に楽し気な二人の背中を見送った後、少女の言う通り、滑り込むように黒服の男たちが現れる。

 

 周りから隠すように二つ折りの黒の革製手帳を広げて店員に向けた。

 

 

「すいません、こういう者です。少しお話をお聞きしても?」

 

 

 ただの店員にその手帳についた金の紀章が本物かどうかなど分からない。

 

 聞かれたのは先ほどの会話、何を話しどこに向かうつもりなのか、そんなことを聞かれ、店員は怯えながらも答える。

 

 

「船で行く明日発の北海道行きの旅行を選んだようですね、旅先の話を楽しそうに話していました」

 

 

「北へ……? まだ任務を遂行する気があるのか? 標的の懐柔には成功したようではあるが……」

 

「我々の元へ戻るつもりならそれでよし、そうでないならその時だ……、直ぐ同志に連絡を入れろ」

 

 

 声を潜め囁く黒服たちに店員は内心で冷や汗をかく。

 

 真実でもないが全くの嘘ではない、ただ全てを話していないだけ、しかし彼女は結局恋人たちの味方をした。

 

 黒服たちが去った後に店員は小さく息を吐いた。

 

 

「あんな年若い二人が失楽園かぁ……、そんな青春、ちょっと憧れるかも」

 

 

 先月大ヒットしたTVドラマの名前を呟いて、店員はなんでこんな嘘をついてしまったのかを考える。

 

 

「女の勘だけど、あれであの子が男の子に惚れてないってのは嘘だと思うのよねー……」

 

 

 何が正しいかなど分からない、ただ年若い若人の恋路を邪魔することが正しいとはどうにも思えなかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおお! ペンギン見れんの!? イルカショーもあるとかもう全部ここでいいじゃねぇかよ」

 

 

 世の夏季休暇に重なり大混雑の水族館、チケットを買う前からデンジのテンションは上昇し続けていた。

 

 そんなデンジを見てレゼは呆れながらも笑ってついていく。

 

 

「ペンギンコーナーの方が近いみたい! いっちょ行っちゃいますか」

 

「行きてぇ!」

 

 

 勇み足のデンジだが人は多く、水族館の通路はそれほど広くない、目的地(ペンギン)へ一直線に通り抜けることは困難だった。

 

 

「うーん……、ペンギンはあっちか?」

 

 

 落ち着きなく背を伸ばすデンジの手にレゼの細い指が絡まる。

 

 

「ねぇデンジ君、人も多いし暗いし、手つないでもいいよね?」

 

「お、おう」

 

 

 微笑みながら手を握り、問いかけるレゼに、デンジは辛うじて小さく返事をすることが出来た。

 

 途端に遅くなる二人の歩み、デンジは今更過ぎる気恥ずかしさから展示物の水槽の方を見た。

 

 

「なんだこれ、えー、ひ、と、で?」

 

「デンジ君ヒトデ知らないの?」

 

「どっかで聞いたことあるかも……、なぁレゼ、これ生きてんの? ただの星の形の石じゃねぇ?」

 

「生きてるよ。ちゃんと動いてるでしょ?」

 

 

 デンジが首をひねりながら水槽を指先で軽く叩くと、ヒトデはほんのわずかに腕を動かした。

 

 

「えぇー、動きちっせぇ! もっとこうバーって動く奴を置いてくれよ」

 

「んふふー、デンジ君よく見てヒトデの中にちっちゃい魚が住んでいるんだって、そこの解説に書いてあったよ」

 

「えっ、おぉ、確かにいるな」

 

 

 デンジの小さな興味は一瞬だけヒトデを家にする小さな魚に向けられた。

 

 

「しかもその小さな魚、ナマコのケツ穴に住むらしいよ」

 

「ケツ穴!?」

 

「ナマコは知ってる? 海のウンコみたいなのなんだけど」

 

 

 レゼはデンジと接触するにあたり、公安に入ってからのデンジのおおよそのプロフィールを叩き込んでいた。

 

 

「ナマコ……、あっハイ! ハイ! 知ってるぜオレ、前にナマコの悪魔見た時ある! 確かにウンコみてぇなヤツだったぜぇ、ウンコすげぇ……! ウンコのケツ穴に住む魚とかもうウンコすぎンだろ……!!」

 

「ブフッ、デンジ君ウンコ言い過ぎ」

 

 

 もちろん公安の仕事としてレゼは彼がどんな悪魔と戦闘を行ったかも知っている。

 

 彼がナマコの悪魔と戦ったことがあることも記憶してあり、彼の幼い情緒も理解している。

 

 その人物が好むような話題を好ましく伝えることなど、レゼにとっては容易い事であった。

 

 レゼはデンジに水族館デートを楽しませるために、訓練した人心誘導のテクニックを駆使していく。

 

 

「ここらへん人気ねぇのかな、人あんまいねぇし」

 

「地味な生き物のコーナーっぽいね、でも説明とか見ると面白いよ、そこの水槽にいるイソギンチャク、真っ二つに切っても死なないんだって」

 

「イソギンチャクすげー」

 

「切っても死なないとかデンジ君みたいでちょっとかわいいかも」

 

「えーかわいいかぁ?」

 

 

 デンジにとって全く興味のない生き物ではあるがそう言われれば少し気になってのぞき込む。

 

 花びらみたいに無数の触手がゆらゆらと動き、その中心に穴が開いてる姿はよく言えば海の花と言えるかもしれないその奇妙な生物をデンジはレゼの頭越しに眺める。

 

 

「しかも二つに切ると分裂する」

 

「分裂するオレとか、ちょーツヨじゃん」

 

「さらに何も食べないで一か月、100年以上の寿命……」

 

「そのデンジ最強すぎねぇ……!? 何にもしてねぇのに生きれるとか最強じゃん!」

 

「そして何より食べるのもウンコも同じ口からする……!」

 

「イヤーッ!!」

 

 

 人気のない展示コーナーで、二人の会話は途切れることなく歩いた。

 

 ペンギンを見るまでの道行きであったはずが、いつの間にかそれらも楽しみながらはしゃぐデンジとレゼ。

 

 

「なんかスゲー海の生き物に詳しくなった気がする……」

 

「結構がっつり見ちゃったね」

 

「おーよ、まだ読めねぇ漢字もあるから、レゼが解説読んでくれてメチャクチャ楽しめたな」

 

「デンジ君、今度漢字の読み書きでも練習しよっか」

 

「おー、こういう楽しいことあんならもっと覚えてぇな」

 

 

 外国語を習得するのに最も手近な方法はその国の恋人を作ることである。

 

 同じ国の言葉を話す人間にその法則が適応されるのかは不明だが、少なくともデンジにとってレゼに勉強を教わるのは楽しそうな先の出来事の一つとして記憶された。

 

 

「じゃあいよいよペンギンだよデンジ君!」

 

「おぉ」

 

 

 既に握りあう手に緊張はなく、二人を繋いだ自然な距離感は寄り添いながら歩を進める。

 

 

「デンジ君! ペンギン! ペンギンだよ!! カワイイー!」

 

「か、かわいい……、ヨチヨチ歩きしてる……」

 

 

 時間をかけて歩いた二人は運よく餌やりのタイミングでペンギンを見れたため、飼育員の解説を聞きながらペンギンの動き回る姿を見ることが出来た。

 

 

「あっ、すごいよデンジ君、水中に飛び込んでエビ食べてる」

 

「はぁ!? 地上じゃノロいくせに水の中だと超速ぇじゃん! 卑怯! カワイイ!!」

 

 

「えー、ペンギンさんは非常に一途な動物でして、そのつがいの関係は人と同じく一夫一婦制で人と同じ恋愛なんですねー、互いに好意を示しながら羽繕いをしたり、鳴き交わしたり、添い寝など、愛情表現をしあって愛を深めていき、一生を添い遂げると言われてるんですよー」

 

 

 飼育員のそんな解説を聞きながら、レゼは手を繋いだままの肘でデンジの小脇をつつく。

 

 

「ペンギンさんは偉いね、女の人に目移りばかりするデンジ君も少しは見習わないといけないんじゃなーい?」

 

「オレぁ一途ですよ! ペンギンぐらい! ペンギンぐらい一途だね!」

 

 

「えーそんなペンギンさんも基本的にはペアと添い遂げるのですが、中には浮気をしちゃうペンギンさんもいるんですね」

 

 

「えぇ!? ペンギン裏切りアリなのかよ!」

 

「ふふっ、そこも人間と同じだね」

 

 

 二人はその後も水中ドーム、クラゲコーナー、イルカショーなど水族館を堪能しつくした。

 

 

「レゼ、これ買おうぜ! 枕にできっから!」

 

 

 デンジがペンギンのぬいぐるみを持ち上げる姿を見てレゼは呆れた様子で笑う。

 

 

「逃げる途中で荷物増やすバカがどこにいるのデンジ君」

 

 

 そう言いながら折角だからと邪魔にならないイルカのキーホルダーやペンギン人形との記念写真などを撮り二人の水族館デートは終わった。

 

 

 

 

 

 

「また行きてぇな、水族館」

 

「……そうだね」

 

 

 高いビルに囲まれた中に作られた人工的な憩いの場、ビル風を防ぐように植えられた木々に囲まれたその場所はどこに居ても木々のさざめきが聞こえていた。

 

 時は夏の夕暮れ、今は少し音を落とした蝉の鳴き声が公園を包む。

 

 二人は人気のないベンチに場所を移し、今日見たことを思い返しながら楽し気に言葉を交わした。

 

 

 

「もう一回水族館……、いや次は動物園だな! ゾウが見てぇゾウ、それにカバとゴリラ、えーあとワニとクマとサイ!」

 

「何そのチョイス?」

 

「最強動物ランキングだぜ!」

 

「男の子ってそう言うの好きだよね」

 

 

 年の割に明らかに幼い部分のあるデンジにレゼは慈しみを含んだ視線を向けて目を細める。

 

 あれがしたい、これがしたい、欲望に蓋をせず心からの望みを話すデンジは同年代に比べれば幼く、幼稚に聞こえるだろう。

 

 しかしレゼにとってはその素直さに弱かった。

 

 

「デンジ君の夢とか明日の話ってさ、なんだかすごく聞いてて好きだなぁ……」

 

 

 レゼ自身が人生で意図的に摩耗させた人として大事な部分、もうどんなものであったかも分からないその部分にひどく響いてしまう。

 

 

「おー、それよぉ、前も似たようなこと言われた時ある気がするな」

 

「へーそれって……」

 

「女じゃねぇ! 女じゃねぇぞレゼ! ……あーでも大切なヤツだ、けど女じゃねェ!」

 

「まぁいいけどさ……」

 

 

 例え演技でもレゼの表情から僅かな嫉妬心を感じ取ったのはデンジの成長であろう、だが悲しいかなそこからのご機嫌取りまで出来る程、デンジは女性に慣れてなかった。

 

 

「フフッいいよ、怒ってるのは振り、そんなに気にしないで、……きっとその人ってさ、そういう夢とか分からなくなっちゃったり、自分じゃ叶えられなくなっちゃった人だったのかな」

 

「うーん? そんなこともねぇと思うけどなぁ……」

 

「だからデンジ君が夢を叶えていく姿を見ると、元気になったり、ドキドキしたり、心安らいだり……、もっとがんばれーってなっちゃうのかも」

 

 

 デンジはレゼの話を聞いて自然と片手を胸に当ててしまっていた。

 

 レゼはデンジの手を追いかけるように腕を滑り込ませると、体をデンジの胸元に寄せる。

 

 

「なんとなく分かるんだ。きっとデンジ君が幸せになってる姿を見たい、それが見れるなら色々捨てちゃってもいいかなーって思っちゃう気持ち」

 

「他人の為にそこまでやるキトクなヤツはそういねぇんじゃねぇかな……」

 

 

 レゼはさらに身を寄せ、デンジの胸に顔をうずめるように密着させた。

 

 

「アハハ……、そうじゃなくて、んーなんていうんだろ、全部自分のためなんだよね、君が救われると自分が救われる。そんな結構身勝手な感じでさ、献身とかそういう綺麗なのじゃなくて……」

 

「へぇ、オレにしてみりゃありがたいことこの上ない話だぜ、よく分かんねぇけどつまりはよぉ、それってオレのことが好きなヤツってことだろ?」

 

「ふふっ、本当にデンジ君って単純だなぁ、……でも、そういうことかも」

 

 

 デンジの鼻先にレゼの甘い香りが香る。

 

 多分レゼは何か大事なことを伝えているのだとデンジは気づいた。

 

 だというのに、“女の子の匂いはどうしてこんなに柑橘系のイイ匂いがするのだろう”ぐらいしか考えられない己の単純さを少しだけ悔やんだ。

 

 

 

「ねぇデンジ君、もし私と一緒にいたらしたいこと、やりたいことを言ってみて?」

 

「あん? やりてぇこと……?」

 

「お願いデンジ君」

 

「えぇ……急に言われてもよぉ……?」

 

 デンジはすでにここまで密着されて、心臓は早鐘のように脈打っていた。

 

 自分は正気ではない、それは自分の胸に顔を付けてるレゼにだって分かっているのではないかと、デンジは小さな反抗心からほんの少しだけそっぽを向く。

 

 

「お願い、……聞かせて?」

 

 

 しかし、その縋るような求めに押され、デンジは思い付きを片っ端から話してみる。

 

 

「前に一緒に学校に通いてぇってのは話したけどよ、一緒に授業とかサボってみてぇな、あれ学校に行った奴しかやれねぇけどめっちゃ楽しそうじゃねぇか?」

 

「うん」

 

「んでよサボりのゲーセンでUFOキャッチャーして、景品とってみてぇ、んでレゼに渡してぇ」

 

「うん」

 

「映画もいいな、昔3Dメガネ拾ったことあってよ、赤と青のヤツ、それで3D映画を見る。けどアレ高いんだよな、でも死ぬ前には一度はレゼと見てぇ」

 

「うん」

 

「あー、学校行くんだよな、遊んでばっかじゃ駄目かぁ? 一緒に勉強して漢字読めた!ってたくさんレゼに褒められてよー」

 

「うん」

 

「えぇ、まだ言わなきゃか? じゃあさ、オレさぁコタツとか入ったことなくてよ。冬にレゼと一緒にコタツに入ってみかんを食べながらテレビ観るのとかすげぇ普通っぽくね?」

 

「うん」

 

「そういやみんな誕生日にケーキとか食うんだろ? オレ誕生日とかも忘れちまったからヤクザのヤツラに適当に決められて9月なんだよ、オレかレゼの、どっちか近い日にイチゴのやつ食ってみてぇ」

 

 

 急に言われても思いつかないと言いながらも、話始めればデンジの欲望は尽きることなく、くだらない事、荒唐無稽なこと、何でもない普通なこと、ながい間デンジは浮かんだ夢を話し続けた。

 

 いつの間にかデンジの緊張は取れ、むしろリラックスしたようにその心臓は優しく拍動を繰り返す。

 

 ふと余裕が出てデンジが自分の胸元を見れば、レゼが潤んだ目でこちらを見上げていた。

 

 

「えぇ? 泣いてんのかレゼ?」

 

「……泣いてない、ただの生理現象」

 

「じゃあアクビするぐらいオレの話が退屈だったのかよ、いやそれリフジンじゃね? レゼに言えって言われてやってんだぜ?」

 

「それは絶対に違う、いいからもっとデンジ君の夢を教えて」

 

 

 レゼは身じろぎをしながら此方を強く抱きしめてくる。

 

 彼女の柔らかい体を押し付けられ、改めて彼女の形を感じた瞬間、デンジの脳に電流が走る。

 

 語りたい夢はまだまだある。

 

 というよりは考えれば考える程湧き出していた。

 

 だが、この瞬間、最もしたいことを聞かれた時、デンジはそのことしか考えられなくなってしまう。

 

 しかし、それは彼女に身を寄せられる度に幾度も脳内をよぎった願望であり、たとえそれが表面に滲み出ていることが明らかであったとしても、それを表に出すことは避けてきた願い。

 

 

「デンジ君、早く続きをきかせて?」

 

 

 潤んだ目で見上げるレゼの頬は朱が差している。

 

 可憐さの暴力、もはやデンジ自身の中でその欲望を縛り付けるのは困難だった。

 

 

 せめてもの抵抗に、デンジは可能な限り小声で、素早く呟く。

 

 

「……エッチなこと、いっぱいする」

 

 

 その小声は声が裏返り、非常に気色悪く響いてしまったとデンジは自覚した。

 

 

「デンジ君、それって実は一番の夢でしょ」

 

 

 からかう様なレゼの声、デンジが言ってしまったと項垂れるとそこにレゼの顔があるのだから逃げようはない。

 

 

「いいよ、ほんのちょっとだけ、普通のキスしちゃおう?」

 

「キスゥ!?」

 

 

 デンジの心臓は再度爆発した。

 

 キス、今までだってしたことはある。

 

 したことはあるがその思い出にはいつも理不尽が付きまとっていた。

 

 いや、思い返せば真っ当にキスをしたことなど一度たりとも無かったことにデンジは気づいてしまう。

 

 一度目はゲロ、二度目は舌を取られ、三度目は殺害予告をされながら、四度目はキスすらできず隙を晒し首を折られた。

 

 

「いや、オレのキスが普通じゃないの、半分以上レゼのせいじゃね……?」

 

「じゃあやっぱりやめる?」

 

「半分以上レゼさまのおかげでぇす!」

 

「じゃあしよ?」

 

 

 レゼはデンジに顔を寄せていき、目を瞑り止まる。

 

 

 そういえば自分からキスをしたことは無かったなと、デンジは思う。

 

 目の前にはレゼの綺麗な顔が静かに浮かんでいる。

 

 

 ここまでまじまじとレゼの顔を見る機会はない、思わず眺めるデンジにレゼは少し気恥しそうに呟いた。

 

 

「そんなに見てると、流石に照れちゃうよ」

 

 

 顔が赤い、これも演技なのかどうかなどデンジには分からないが、レゼの言葉にデンジは吸い寄せられるように顔を近づける。

 

 

 夕日に伸びた二人の影、その二つが重なった。

 

 

 柔らかさだけが触れ、デンジの脳がふわりと揺れる。

 

 

 それと同時にボキンと、首も揺らされる。

 

 

 崩れ落ちるデンジはベンチの横に静かに倒されていき、その頭はすっぽりとレゼの膝の上に収まった。

 

 

「ッってえぇぇぇ……! またか! またなのかよ!!」

 

「ごめんね? でもデンジ君この手の罠に引っかかり過ぎ」

 

「なぁレゼよぉ!? そのワナ気もちいィから避けられないンだよ!!」

 

 

 掠れた声で叫ぶデンジはひとしきり痛みに呻いた後、歪なため息をつく。

 

 

「……んでよ、どうしてこんなことすんだよ」

 

「やっぱりね、無理かなぁって、多分上手くいかないよ、デートしてるうちに冷静になっちゃった」

 

「ふ、振られた……」

 

「ちがうちがう、私はデンジ君のこと結構好きだよ」

 

「えっ、そうなん?」

 

「なんで首を折られてるのに嬉しそうな顔するのかなぁ……」

 

 

 レゼは先ほど頸椎を壊したばかりなのにコロリと人懐っこそうな表情をするデンジに大きなため息をついた後、その髪をなでる。

 

 

「私と居てもデンジ君は幸せになれないよ、だからここでバイバイ、今日のデートは最後の思い出」

 

「首折られるまではメチャクチャハッピーだったぜ? なんならオレぁ、いま生まれて初めて膝枕されてカンドウしてる」

 

「あのね、きっと君はどこだって頑張れば幸せになれるの、まぁ……。公安は止めた方が良いと思うけど」

 

「じゃあレゼのとこでもいいんじゃねーの?」

 

「……私と一緒にいたらデンジくん、きっと死んじゃうよ?」

 

「あー? なんか捕まって殺されるみてぇな話か?」

 

「殺されるだけならいい、死ぬよりひどい目に会っちゃうかも」

 

「そりゃ死ぬのは嫌だけどよぉ……」

 

「でしょ?」

 

 

 レゼの言葉にデンジは少しだけ目線を右上に逸らして考える。

 

 考えるがデンジの抱え込まれた頭部、その目線の先にはレゼの胸があったため、デンジの思索はそこで終了した。

 

 

 だからデンジはただ思ったことを言おうとしたのだ。

 

 

「けど別によくねぇか? 聞いてて思ったんだけどさァ……」

 

「ダメ聞かない」

 

 

 レゼは予感する。

 

 

 きっとこの男の子は自分の不安や恐れなんてぶち壊すぐらい単純明快でぶっ飛んでる答えを口にしてしまうだろうと。

 

 思わず腹を抱えて笑い、一緒に居たくなってしまうような、無茶苦茶なのに最高に楽しそうな言葉を吐き出すつもりだとレゼは直感した。

 

 

「アダッ! ……急に立ち上がるなよなァ……、こっちは首から下が動かせねぇんだぞ」

 

「もうお話はお終い、最期にデート楽しかったよ」

 

「えー、一緒に逃げねぇの?」

 

 

 デンジの問いかけにレゼは答えず立ち上がったまま背を向ける。

 

 

「私は君の夢の話でもう十分、じゃあねデンジ君」

 

 

 デンジは動けない、言葉でどうにかできないことも察した。

 

 デンジに言わせれば何一つ納得などできないが、レゼがそう言うなら自分に出来ることはない。

 

 

「じゃあよ、また普通に会えたら遊ぼうぜ?」

 

「君ってホントばかだなぁ……」

 

 

 別れるならシメっぽいのは嫌だ。

 

 そんな単純な考えから出たデンジの言葉にレゼはほんの少しだけ体を揺らしたが、その一言を最後にベンチから離れていく――

 

 

 

「やぁデーヴシュカ(お嬢さん)、チェンソーマンは上手に仕留められたかな?」

 

 

 

 レゼが背を向けて去ろうと決意したその時、ベンチの周りの空気がふと冷え込んだ気がした。

 

 セミの声が途切れる。

 

 街灯の下、蝉の死骸がころりと転がり、カツンと軽く地面に当たって跳ねる。

 

 動けないデンジは目線だけを傾け、その暗がりの先を見た。

 

 

 背の高い人影が二つ。

 

 最初はただの通行人かと思った。

 

 だが、そこに立つ二つの影は妙に静かで寒々しい、まるで最初からそこにいたかのように揺らぎもしない。

 

 

 一人はレゼに話しかけてきた上背に見合った筋肉質な体を持つ男。

 

 もう一人は、案山子のように病的に瘦せこけている長身痩躯の男。

 

「……ッ」

 

 レゼの肩がびくりと揺れる。

 

 

「同志よ、君はチェンソーの心臓の確保のために目標を無力化してくれた。そして我々に引き渡す……、まさに丁度その時だった。 そうだろう?」

 

「あぁ? オッサン達だれだよ」

 

 

 しかし大柄な男はデンジという存在がまるでいないようにレゼにだけ話しかけ続ける。

 

 

「君は優秀な兵士と聞いている。我々が誰だか分からない訳ではないだろう? 答えてくれないか同志? すぐに心臓をもって祖国に凱旋しよう」

 

「ウワーでたよ、出ましたよ、そうやってオレん無視してチェンソーの心臓狙うヤツよぉ、それやられるとデンジくんのハートも傷つくんだぜ?」

 

 

 再度の問いかけにもレゼは何も答えず、デンジを覆い隠すようにしゃがみ込む。

 

 

 

「デンジ君、エンジンをかけたらすぐに逃げて」

 

「あぁ……、なんということだろうか? 見間違いか? そうだと言ってくれ同志よ、私のつたない目と頭では君がその“容器”を守ってるように見える。早くそれを小さくしてスーツケースに仕舞い、素晴らしき我らが祖国へ帰ろう」

 

 

 手を伸ばす大男の言葉に今まで一言も声を発していない痩せた男が大きく息を吐く。

 

 

「……もう諦めましょうよ旦那、ありゃぁどうみても足抜けでしょう? どっちも手足をつめるなりバラすなりしてしまいやしょうよ、それにしても馬鹿だねぇ……、国に忠を誓った兵器が、ただの女になりたがるなんて」

 

「私は……」

 

「殺す奴の話なんて聞きたくねぇ、頼むから静かになってくれ」

 

 

 痩せた男は針金のような手を両耳に当て頭を挟み込み――

 

 

 そのまま首を上に持ち上げ、頭と胴体を二つにパックリと分かれさせる。

 

 

「逃げて!!」

 

 

 それと同時にデンジのスターターが勢いよく引かれ、痩せた男の首から鉤のような刃物が噴き出す。

 

 首から花を咲かせるように広がる刀が持ち上げた自身の頭部を突き刺し、突き破る。

 

 まるで宮廷道化師の被り物(ジェスター・ハット)のように垂れ下がった長い突起は全て曲刀よりも深い反りを持つ刃物。

 

 立ち枯れた腕のような手の先からは自身を傷つけかねない程に曲がる刃が突き出す。

 

 足先からも上方へ反り返えるように生えた刃はピエロが履く靴の様であった。

 

 

「おー、すっげぇ痛そうな変身すんなぁ」

 

 

 エンジンを吹かし、跳ね上がる様に飛び上がったデンジは当然のようにレゼの隣に立った。

 

 レゼは隣の男になぜ逃げないのかという怒りを覚える。

 

 

「坊主、オレの殺しは動かなきゃ痛くねぇから黙って立ってろ」

 

「嫌でェーす」

 

 

 ――だが、隣の愚か者はどうせお道化たことしか言わないのだ。

 

 そうと分かりながらもレゼは横目でデンジを強くにらむ。

 

 

「でもいてェのもイヤだからよ~、こりゃ戦うしかねぇんじゃねぇかァ? あいつらオレを殺す気だろ」

 

「……逃げてよバカ」

 

「あいつら相当強いンだろ? じゃあレゼだけじゃキツくね?」

 

 

 男はデンジの言葉を聞き、離れた間合いのままで刃の生えた腕を軽く振る。

 

 

「あ?」

 

 

 その瞬間離れたデンジの体が割れて血が噴き出す。

 

 指先の幅ほどの浅い裂け傷は吹き出す程ではないが確実に上着に赤い線を滲ませるほどに深い。

 

 

「オレだけでテメェらガキ二人を殺すぐらいわけねぇなぁ……」

 

 

 超常的な現象。

 

 見えない刃、その防御不能の一撃で生きたまま相手を刻む、それがこのソ連の刺客の痩躯の男には出来る。

 

 そんな男がこちらに向かって鋭利な刃がついた両手を軽く持ち上げてみせている。

 

 

 それを見たデンジは――

 

 

「クックク、めちゃツヨじゃねぇかよ なぁレゼェ……?」

 

 

 その傷をなぞって、喉で鳴る笑いを出した。

 

 

 レゼですら困惑しながらデンジを見返すが、デンジは嬉しそうにレゼを見てその頭のチェンソーを向けてくる。

 

 

「……あん? てめぇ状況分かってんのか?」

 

「おうよ、アンタらメチャクチャタイミングいいな、感謝するぜぇ~」

 

「はぁ?」

 

「ギャハハハハハ!! こんなやべぇ追手がオレ達を殺しに来てたらレゼはオレと二人で逃げるしかねぇよなぁ!! そしたらこのまま二人でランデブーよ!!」

 

 

 男の片手が驚きに脱力してずり落ちる。

 

 

「はぁぁぁ……、噂に聞いたイワン野郎だな坊主」

 

「あぁ? いわん? どういう意味だよレゼ、ヒトデの仲間か? オレは言うときゃ言う男だぜ?」

 

「すごい大馬鹿野郎ってこと」

 

「旦那ぁ、俺コイツ嫌いだわ。多分コイツすげぇ面倒ですぜ、いい加減やっちゃいましょうよ、……俺が娘っ子の方をやるんで――」

 

 

 痩躯の男がいままで不自然なほどにだまりこんでいた男に目を向けると、男は俯きながら自分の太ももに拳を叩きつけていた。

 

 

Говно(クソッ)……、Говно(クソが)……!Сука(この売女め)……!! そ、祖国をう、裏切る? この恥知らずッ!! Чёртова предательница!(薄汚い裏切者がァ)……!!」

 

「アイツすっげぇキレてね?」

 

「あー、クソッタレ、旦那はこっからがもっとすげぇぞ、この手じゃ耳も塞げねぇのにふざけんなよマジで……」

 

 

 男の叩く拳はさらに勢いを増し、それに比例してその怒声も無制限に大きくなっていく。

 

 

「死ねッ! 売国奴は死ね!! 汚らわしい!!!! 豚のひりだした糞の肥溜めとヤリ過ぎて死んだ女狐の間から生まれた蛆虫め!!!!!! こ、こんな汚物を私は同志と!? 同志と呼んだのか!!?? ア゛ア゛ア゛アアアアァ゛ァ゛ァァ!!!!!!!!」

 

「コワ~……」

 

 

 叩く位置は足から這い上がる様に腰、腹、胸へと移動していき、その叩きつけていくる拳の力は強くなっていく。

 

 その自身を顧みない自傷は凄まじく、とうとう体から血を吹き出し、骨すら折れる音を響かせはじめる程にまでなっていた。

 

 そして最後に片腕を天高く振り上げると、その巨大な拳を桁外れの握力で二回りほど小さく握りしめて、渾身の力で男自身の頭に叩きつける。

 

 

 そして男は割れた。

 

 

 それは人体が出していいような音ではない、生温かい湿った肉塊の弾ける音に交じり陶器を割ったかのような甲高い音。

 

 

 比喩でなく男の頭蓋を中心に全身へヒビが走る。

 

 

 ヒビはその自傷の衝撃で殻が割れるようにはじけ飛び、マトリョシカのように中身が露出する。

 

 

 中から現れたのは頭と両腕に鉄塊を嵌め込まれた異形の人型。

 

 

「一人の裏切り者は万人の忠誠者を犠牲にするゥ! 裏切りは重いィ!だから重さで裁く!! 祖国の名で叩き潰す!!!!」

 

 

 憤怒に支配された男がそう叫ぶ。

 

 

「あー、爆弾はチョロチョロ飛んだりできるんで、相性的に旦那にはチェンソー野郎の方を――」

 

「裏切者の女狐は粛清だ!! 私が祖国に代わって断罪の鉄槌を下すッ!!!! 」

 

「……ダー(了解)

 

 

 デンジはその様子をちょうどいいアトラクションを眺めるように観察しながら、まだ首のピンに手をかけたままのレゼに問いかける。

 

 

「なぁ一応聞くけどよ、アイツ等ぶっ飛んでるけどレゼの仲間? 殺したらマズいかァ?」

 

「デンジ君、奴らはSMERSH(スメルシュ)……」

 

 

 「Смерть шпионам!(スメールチ・シピオーナム)」1943年、書記長の命令により創設されたソ連の督戦隊。

 

 今は既に存在しないはずであるソ連の亡霊部隊。

 

 

 

「相手はソ連の処刑執行人、祖国の裏切者を絶対許さない、“鎌”と“槌”の武器人間だよ」

 

 

 

 裏切り者やスパイを狩る精鋭部隊である彼らの組織名が意味する所はСмерть шпионам!(スパイに死を!)

 

 

「じゃあぶっ殺しても問題ねぇなァ! レゼも変身してさっさと倒して逃げようぜェ!」

 

「いいの? この距離だと私の爆発に巻き込まれるよ」

 

「あっ、そうじゃん、いま離れ――」

 

 

「死ねエエエエエェェェェぇぇぇいッッッ!!!!!!」

 

 

「やば、ごめんデンジ君」

 

「え、あ、ちょ――」

 

 

 デンジは半身に凄まじい閃光と衝撃を感じ、叫びながら吹き飛んだ。

 

 

 爆弾と電鋸、鎌と槌

 

 

 二対二の戦いの始まりは爆弾の爆発と槌の爆音、そして電鋸男の悲鳴を合図に激突した。 

 

 

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