隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

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 ばんははろ、EKAWARIです。
 久しぶりにNARUTO熱が自分の中で盛り返してきたので、数年前に完結した中編「転生したらうちはイズナでした」https://syosetu.org/novel/297540/のスピンオフ外伝「隻眼の木遁使い」の連載をはじめることにしました。
 原作とは異なる歴史習慣をもったパラレル木ノ葉隠れの里が舞台の話であるという前提さえ理解していれば、前作は読まなくても特に問題はないです。
 それではこれから宜しくお願いします。


オビト少年編
プロローグ・夢


 

 

 

 隻眼の木遁使い プロローグ・夢

 

 

 

 ーーー判然としない意識の中でうちはオビトは夢を見ていた。

 

 

 いや、夢と言うべきなのか、正確には過去の記憶をオビトの脳みそは反芻し、描いていた。

 あれはオビトが6歳だったか、7歳だったか。幼い頃の記憶故そのあたりは曖昧だ。確実なのは当時のうちはオビトはまだアカデミーに通う忍者の卵で、大好きで唯一の家族である祖母と共に木ノ葉隠れの里が誇る祭典……武練祭に来ていた。

 

 武練祭、それは里が出来て三年目に後に二代目火影となったあの人が考案したといわれており、初代様の頃は毎年開催され、二代目以降は戦時中を除けば三年に一度夏至の日に行われる戦神に武芸を奉納するお祭りだ。

 オビトはこの祭りがとても好きだった。

 なにせオビトの夢は木ノ葉隠れの里長である火影となることだ。

 そして武練祭の目玉とはまさにその火影と、選ばれし上忍の戦いを奉納することにある。

 憧れの火影の戦いを身近で見ることが出来るなんて、オビトの知る限りはこの武練祭くらいのものだ。いつか自分もそこに立ちたい、そこに立って戦いたい、火影として、火影になって。そう幼いオビトは夢想した。

 祭囃子が聞こえる、人々の喧噪と熱気が耳朶を打つ。

 火影様の出番はまだ先だ。

 大迫力の戦いより先に、剣舞神楽の奉納が行われる。

 白と黒の装束を纏った舞手達による剣舞神楽は、年々派手になっている。

 それこそ、昔は男と女の舞手が1人ずつだったらしいが、三代目政権となって久しい今日(こんにち)では、大迫力で力強い男神楽と繊細で嫋やかな女神楽、そして初々しい子供達によって行われる子供神楽の三種が披露されており、これはこれで見応えがあるようでとても人気が高い。

 ……もっとも、このあと行われる火影の戦いばかり考えていたオビトは気もそぞろであったが。

 まあオビトがどう考えていようとも祭りははじまる。

 揃いの隈取りと白と黒の荘厳な衣装を着た舞手達が並び、代表である黒い巫女装束を纏った美しい舞姫と、対を為す白い神主姿の舞手を務める男が、シャンシャンと鈴をならしながら共に一対の宝剣を手に円を描くように前に出て、優雅に頭を垂らす。

 オビトには芸術はわからない。

 彼らの装束にも、動きにもなんらかの暗喩が込められているらしいのだが、それは少年の知るところでは無いし、神楽なんてどうでもいいから早く火影様の武練奉納を見たいとそう思っていた。

 思っていた、なのだ。

 そう、過去形。

 そんな風に興味を持っていなかった門外漢の子供にも伝わるほどに、彼らは優雅で美しく、揃いの装束に揃いの動きでただ剣を掲げながら前に出て頭を垂れただけなのに、目が離せない引力があった。

 気付けば見惚れていた。

 そんな少年の姿を見てくすり、上品な微笑みを口の端に乗せながら、祖母は己が孫息子に向かって軽やかに告げる。

「オビトちゃん、オビトちゃん、お祖母ちゃんね……昔武練祭の舞姫だったのよ」

 ほら、あの舞台に立って踊ったの。

 そう内緒話を打ち明けるように密やかな声で綴られた老婆の言に、オビトはキラキラと瞳を輝かせて「ばあちゃんスゲー!」と心底から感嘆を滲ませ返した。

 祖母との大切な……思い出。

 

 ゆらりと、意識が痛みによって現実に一瞬戻され、途切れる。

 

(リ、ンは……カカシ、は無事、なの、か……)

 

 そんな思考も濁流にのまれるかのように薄れ、朧気な意識は曖昧に次の記憶の海へと辿り着く。

 先ほどの夢よりも更に昔の……アカデミーに入学して間もなくの記憶。

 けれど、それはうちはオビトという少年にとって、とても大切な……思い出だ。

 

 二代目火影との……あの人と出会ったときの記憶。

 

 

 

 ―――その日の事はよく覚えている。

 

「君がオビト君だな?」

 叡智を移し込んだような澄んで凪いだ黒い瞳に、色の脱けた白髪を赤い髪紐で一つに結った……年老いて尚凛としながらも柔らかな空気を纏った老爺。

 木ノ葉隠れの里の二代目火影でもあるその人は、オビトにとって曾祖父にあたる彼の兄と共に家まで訪ねてきて、それから兄の曾孫に当たる幼子と目線を合わせるように屈みつつ声をかけた。

 ……物心ついた時から、もしかすると物心つく前からも、火影はオビトにとって憧れの象徴だ。

 顔岩に刻まれた容姿よりも、実際のその人はずっと年を取っていて、絵本に謳われるほどヒロイックな姿はしていなかったけれど、憧れの一人でもある先代火影その人に話しかけられて、とてもドキドキしたのを覚えている。

 想像や物語で描かれていた姿とは違う本物の二代目火影……木ノ葉創設者が一人、うちはイズナ。

 相対したその人はなんだかとても独特の空気を纏っていて、まるでなんだか……完全無欠のヒーローというよりも夜空に浮かんだ満月みたいな人だなって思ったのだ。

 おおきくて、しずかで、キレーで、ほんのりあたたかい。

「オビト君、君は火影になりたいと聞いた。何故なりたい?」

 まさか、御伽噺に謳われたその人が、オビトの将来の夢を知っているとは思わなくて、凄く吃驚したのを覚えている。

 とても不思議だった。

 確かに親族ではあるのだが、初対面で、相手は知らぬものはないほどの有名人だったから。

 いや、もしかしたら赤ん坊の時に会ってたのかも知れないけれど、それでも物心ついてから顔を合わせるのは初めてだ、間違いなく。

 なのに火の国の民なら知らぬ者はいない『真眼のイズナ』が、いくら親戚といっても幼子の語る夢を知っているなんて思うわけがない。

 だって、オビトが人前で将来は火影になると公言したのは、この前日のアカデミーに入学した時が初めてだったのだ。なんで知っているのかわからなくて、戸惑う幼児の頭を優しく撫でながら、その人は言葉を続けた。

「どんな火影になりたい? 君は火影をどんな存在だと思っている」

 ……オビトはうちは一族内では落ちこぼれだった。

 鈍くさくて、泣き虫で、同年代のうちはの子供の中では多分一番デキが悪い。

 その自覚があった。そんな風に周囲の空気を察することが出来る程度には、オビトは阿呆ではなかった。

 だから、火影になりたいって言ったら馬鹿にされると思って、アカデミーの入学が決まるまでは自分の中で内緒にしていたのだ。

 実際火影になるって宣言しても、真面目に受け止めてくれたのは幼馴染みで友達ののはらリンだけだった。

 他は……嘲笑った。お前に出来るわけがないと。

 だから、そんな風に馬鹿にするでも茶化すでもなく、憧れを具現化したようなその人が目線を合わせながら真っ直ぐ向き合ってくれた事が、とても嬉しかったのをよく覚えている。

 だから彼もまた臆することなく答えた。

「なんでってきまってる。オレが木ノ葉がくれのさとがすきだからだ! オレは火影になる。それでそれで火影いわにこのゴーグルとしゃりんがんをきざんでもらって、それでほかの里ににらみをきかすのだ! オレはこの里がすきでみんながすきだから、仲間はオレがまもる! だからオレが火影になるんだ。みんなをまもるのが火影だから!!」

 そうオレが答えると、まるでそれが正解だというようにその人は満足そうに笑った。 

 それがオレの、うちはオビトの原風景。

 

 

 

(そうだ……だから、こんなところで、死んでなんて、いられねェんだ……)

 

 ぐっと、自分が生きていることを確かめるようにオビトは無事な左手で自分の左太ももに爪を立てる。

 少しだけ、夢から意識が戻った。

 痛みを通り超して、右半身の感覚は……ない。

 目も見えない。彼の右目は岩に塞がれており無事なのかすらわからない。左目は空洞だ。かつてオビトについていたこの左目はカカシにやったあと(・・・・・)だから当然だ、そしてそのことに後悔はない。

 ただ嗚呼、寒いな、と思った。

 1度は託した。

 友に。

 この命も、想いも、左目ごと。

 それでも、痛みがあるということは、思考できると言う事は死んでいない、ということだ。

 

(だったら、帰らなきゃ、木ノ葉に……みんなの、ところに)

 

 ぐっと手を伸ばす。

 その生を掴むように。

 そしてそのまま再び意識を失った。

 

 

「……ぃ、おい、聞こえるか」

「……綱……様、この少……は」

「ああ。運の良いガキだ」

 

 時は第二次忍界大戦。

 神無毘橋破壊任務の最中、殉職したと思われていた一人の忍びが古い防空壕の下から加藤綱手(・・・・)医療部隊によって発見、救出された。

 発見時には低体温により仮死状態に陥っており、右手右足が壊死、内臓もいくつか潰れている上に、左目も医療忍術で摘出された痕跡があり空洞と、生きているのが不思議なほどの重傷で発見されたこの忍びは、更に不思議なことにまるで岩をすり抜けたかのように戦場の真下にあった古い防空壕の通路で倒れていたのだという。

 満身創痍で見つかったこの死に損ないの忍びの少年、名をうちはオビト。

 もう忍びとしては終ったと思われたこの少年が、後に「隻眼の木遁使い」「写輪眼の双璧」と呼ばれるようになり英雄と称されるようになる未来を知っているものは、まだどこにもいなかった。

 

 

 

 続く

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