超常現象解決倶楽部!   作:独身紳士

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1 お前、付き合い悪いよな

「お前、付き合い悪いよな」

「悪いよなー」

「なー」

 

 下校時刻。ランドセルを背負ってさあ帰ろうとした時に話しかけてきた口を尖らせる3人組は、僕の数少ない友人達だ。

 

「ごめんね」

 

 友人達は放課後の遊びに誘ってくれた。でも、僕がその誘いに乗ることはできない。

 本当にごめんねと頭を下げる。

 頭の中は申し訳なさでいっぱいだ。

 

「いいけどさ、今日も家の手伝いか?」

「うん」

 

 僕は頷いた。

 いつものことだけど、三人組で一番背の高い拓海くんがそう聞いてくる。

 

「たまには好きな事をするのも大切だと思うぜ。今の時間は本当に貴重なんだ」

「でも、自分で決めたことだから」

「そっか」

 

 ちょっと悲しげにそういう拓海くん。

 でも、自分で決めたことだから適当にはできない。

 それをしてしまったら、僕の存在価値は無くなってしまう。

 

「じゃあ……、うん、また明日な」

「うん、またね」

「またなー」

「なー」

 

 そう言って三人組はランドセルを背負って教室を出てゆく。僕はその背中に手を振る。

 きっと三人組はこれから元気良く遊ぶんだろう。

 鬼ごっこだろうか。かくれんぼかな。

 ケイドロかもしれない。

 そのどれでも楽しいに決まってる。

 ……僕はランドセルを背負い直した。

 

「……」

 

 どうしてだろう。隣の席が気になって、僕はその空席に目を向けた。

 この席の子はまだ登校して来ない。

 あれからどれくらい経ったのかな。

 

 体調不良だと先生が言ってたけど、周りの子はいじめじゃないの?と噂していた。でも、その子はいじめられていたような感じではなかったし、いじめと言っていた子も冗談のように笑っていた。

 

 僕の隣の席の子。

 とても明るい女の子で、こんな僕にも親切にしてくれる優しい女の子だ。

 だから、友達も多くて彼女に会いにプリントを届けに行く子もいるくらい。

 そんな子がいじめられてるなんて、ありえないと思う。

 

「うん、帰ろう」

 

 僕はランドセルをもう一度背負い直して、教室を出た。

 

 ――

 

 人通りの多い商店街を歩く。

 とても人が多くて僕は苦手だけど、ここを通り抜けるのが家への一番の近道になるんだ。

 どこもかしこも人ばかりで、この時間はお年寄りとスーツを着た人がたくさんいる。

 僕の目の先にいるスーツの人は耳に携帯を当てながら早足で遠ざかっていくし、斜め先にいるシルバーカーを押したお婆さんだって大きな買い物袋を持ってゆっくりと進んでゆく。

 

「あ……」

 

 お婆さんが何かに躓いて、転んでしまった。

 袋に入っていたものが、道に広がってゆく。

 僕はすぐさま駆け寄って、お婆さんに声をかけた。

 

「大丈夫ですか」

「ごめんなさいね。何かに足を取られてしまって」

「怪我はしていませんか?」

「大丈夫よ。擦り傷一つついてないわ」

 

 お婆さんはにっこり笑って、そう答えた。

 僕はその言葉に安心して、息を吐く。

 

「良かった。じゃあ、拾うの手伝いますね」

「ありがとうねえ」

 

 お婆さんもゆっくりと近くのものを、僕は急いで遠くに転がってしまったものを拾い集めてゆく。

 みかんが一つすこし遠くに転がってしまって、それを取ろうと屈みながら手を伸ばした時、ぐしゃりと黒い靴に踏み潰されてしまった。

 

「ちっ、きたねえ」

 

 目線を上げると青いスーツを着たサラリーマン。

 その人はとても不機嫌な顔をして、靴についたみかんだったものを地べたに擦り付ける。その時、みかんの破片が僕の顔に飛び散った。

 

「あ? なんか文句あるかよ?」

「いえ……、ないです」

 

 首元の火傷跡が痒くなる。

 それにじっと耐えていると不機嫌なサラリーマンは僕の前から消えていた。

 なんであんな顔が出来るのか分からない。

 ハンカチで顔を拭いて、残りの転がった品を拾い集めてゆく。そして、見る限り集め終えたところでお婆さんのところへと戻った。

 

「ほんとうにありがとうねえ」

「ううん、困ってる人を助けるのは当然のことだから」

 

 学校の授業でも習った事だ。

 困ってる人には手を差し伸べる。それは人として当然のことだ、と。

 でも、お婆さんは嬉しそうに笑って小さく頭を下げてくれた。

 

「ありがとう。ボクはほんとうにいい子だねえ……、あ! そうだわ。お礼をしないとねえ」

 

 お婆さんはそう言うとポケットからくしゃくしゃになったビニール袋を取り出して、そこにパンパンになるほどの果物を入れて僕へと差し出した。

 

「大したものは持っていないけどお礼にこれを持って行きなさい」

「こんなに! 貰えないですよ……」

「いいんだよ。どうせこんだけの量、お爺さんと二人じゃ食べきれないんだ。それにお礼は素直に受け取るものだよ」

 

 お婆さんの目は真っ直ぐ僕を見る。

 とても強い目で、僕は頷く事しか出来なかった。

 

「分かりました……」

「うん、それでいいの」

 

 僕はお婆さんからビニール袋を受け取った。

 見るとやっぱりたくさんの果物が入っている。

 僕と姉と二人で食べ切れるだろうか。ちょっとだけ不安になった。

 

「さあ、もう生きなさい。私はもう大丈夫だから」

「うん」

 

 僕が頷くとお婆さんは笑って、僕の頭を撫でると小さく手を振ってくれた。

 それがくすぐったくて、嬉しくて何度も振り返りながら手を振った。

 

 ――お前の行き先に幸多からんことを。

 

 商店街の出口で後ろを見た時、お婆さんの姿はもう見えなくなっていた。

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