超常現象解決倶楽部!   作:独身紳士

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5.どうだった、空の旅は?

 窓から見える今夜の星空はとても綺麗だった。

 いつもなら寝てる時間だし、この部屋から星空を見たことなんて無かったから、余計にそう見える。

 でも僕はそんな星空を見てしまうほどに暇だった。

 

「まだかなあ、飛鳥さん」

 

 だって、迎えに行くと言った飛鳥さんが来ないから。

 正直、騙されたのかなとも思う。

 超常現象解決倶楽部なんて胡散臭いし、僕はオカルトをあまり信じていない。

 夜の学校を案内するなんて、先生にバレてしまったら怒られるだけで済むとも思えないし。

 でも……。

 

「……お金、受け取ったからなあ」

 

 机の上にある分厚い封筒。

 あの時は目の前に大金が現れて、思わず頷いてしまった。

 けど時間が経つにつれて、心の中の不安がどんどん大きくなる。

 僕はその不安を消そうと星空をじっとみていた。

 その時だった。

 突然窓の外に女の人の顔が、ドアップで現れた。

 

「わっ!」

 

 びっくりして僕は後ろへ尻餅をついた。

 見間違いかなと目を擦ったけど、やっぱりいる。

 窓の外、短い黒髪を七三に分けた鋭い目の女の人が僕をじっと見ている。

 その女の人はガラリと窓を開けると、部屋に入ってきて、お辞儀をした。

 

「はじめまして、こくと様」

「え、だ、誰?」

「私は飛鳥の侍女をしております、凪山愛と申します。飛鳥に代わり、こくと様をお迎えに上がりました」

 

 侍女……?

 なんでメイド服……?

 どうして窓から……?

 色んなハテナマークが浮かぶ僕を、愛さんはひょいと脇に抱える。

 

「へ……?」

「では、参りましょう」

 

 愛さんはそう言って僕を抱えたまま、窓の外へ出た。

 月明かりが照らす街の中を、屋根から屋根へ飛び移りながら進んでゆく。

 僕は何もできないから、その街並みを見るだけで精一杯。

 でも、じっくりと見る事なんてできなくて。

 それでも見続けたのは、普段見ることのない夜の街がとても綺麗だと、そう感じたからだった。

 

 ――

 

「こんばんは。どうだった、空の旅は?」

 

 僕が通う小学校の校門前。

 そこにはもう飛鳥さんがいて、愛さんの腕の中から優しく下された僕にそう言った。

 

「……すごかったです」

「それは結構。では、案内役お願いね」

 

 飛鳥さんはそう言って進んでゆく。僕の後ろにいた愛さんもそれに続いた。

 でも、僕は疑問に思う。

 学校には防犯設備があって、簡単には入れないはず。

 それなのに二人は涼しい顔なんだ。

 どうするのかなと思って、僕が聞くと飛鳥さんは笑って右手を上げた。

 

「問題ないよ、私たちには」

 

 パチン。

 飛鳥さんが手を鳴らすと、校門の前にあった防犯カメラがかくんと動かなくなった。

 それに閉じているはずの校門が勝手に動き出して、僕たちを歓迎するみたいに開いてゆく。

 

「ほらね? では、行こうか」

 

 驚く僕に、飛鳥さんは得意げに笑った。

 

 ――

 

 僕たちの目的地は文世さんのクラス、つまり僕が通う教室だった。

 ガラリとドアを開いた先にある室内は、窓から差し込む月明かりで少しだけ明るい。

 

「……ここで何を調べるんですか?」

「調べるというか、会いにきたっていうのが正しいかな?」

 

 会いにきたって誰に?

 飛鳥さんは僕の問いに答える事はない。

 スタスタと教室の中央に行って、そこで懐から出した何かを天井に向かって振り回し始めた。

 よく見るとそれは、油揚げだった。

 

「え?」

 

 僕より年上の女性が真夜中の教室で、油揚げを振り回している。

 へんてこりんだ。

 僕は一体何を見てるんだろう。

 隣にある愛さんを見る。

 

「……ふふっ」

 

 真面目な表情だけど、肩が震えて小さな笑い声が聞こえた。

 やっぱりおかしな光景なんだ。

 僕が正しいんだと分かった。

 

「んー、おかしいな。これで会えるはずなんだけど」

 

 飛鳥さんは油揚げを振り回しながら、首を捻る。

 そして、しばらくして振り回すのをやめた。

 肩を落として、僕らの方へ帰ってくる。

 僕はそこで気づいた。

 

「ダメだね、失敗。これで会えると思ったんだけどなあ」

「飛鳥さん」

「ん、なんだい?」

「会いたい人って、どんな人なんですか?」

「うーん、私が会いたいのって人じゃなくて神様なんだよね。それも狐の神様。油揚げが好物っていうから、ここで振り回したら出てくるかと思ったんだけど、失敗だね」

 

 はぁ、とため息を吐く飛鳥さん。

 僕はそんな飛鳥の近くを指さして、こう言った。

 

「神様って、いま油揚げに噛みついてるその女の子ですか?」

「へ……? あっ!」

 

 僕が指さした先。

 飛鳥さんが持つ油揚げをはむはむしている女の子がいた。

 いつからそこにいたのか。

 それはもう美味しそうに幸せそうに食べている。

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