綺麗な羽蛾 作:伝説のゴキボール二世
「はっはっは、いっそ清々しいくらいに完敗じゃ」
羽蛾と梶木の、デュエルが終わり、仰向けに寝転びながら梶木は呟いた。だが、その顔は不思議と満足気な様子だ。
「梶木くんの海の戦術もすごかったよ。攻略できるカードを引けなかったら勝負は分からなかったかもしれない」
「それでも羽蛾、やっぱりお前はすごいぜよ。海竜神が敵に回った瞬間に手も足も出んかった。正直、得意なフィールドで負けてとても悔しいのが本音じゃ」
「そうだね。でも、このまま終わるつもりはないんだろ?」
「ああ、勿論じゃ。俺はいつか海、そして、羽蛾、お前を超えてみせるぞ!その時こそ今度は俺の恐ろしさを教えてやるぜよ」
起き上がりそう宣言する梶木はとても真っ直ぐで、自分の弱さにも逃げずに受け入れられる強い海の男だと思う。
恐らく彼はもっと強くなる。それこそ自分をいつか超えてしまうんじゃないかと思えてしまうくらいに…。
「望むところさ。その時が来るのを楽しみにしているよ」
だからこそ、そんな強敵になった梶木とまた、デュエルするのが楽しみだと、思ってしまった自分は相当なデュエルバカに違いないなと笑みを溢しながら、彼に手を差し出した。
「おう、次は負けないぜよ」
差し出された手を取り、力強く立ち上がった梶木と羽蛾は互いに笑みを浮かべていた。
「まだ、スターチップは残っているし、これから武者修行開始じゃ。じゃあな羽蛾」
「ああ、梶木くん、また良いデュエルをしよう」
梶木と別れて、森を歩いている中、原作の初戦敗退を知っている羽蛾は内心、初戦の勝利にガッツポーズをしていた。
原作で使ってくる戦術は知っていた為、少しズルいかもしれないが、梶木のあの海の戦術を見ても、お陰であまり動揺せずに済んだし、あの戦術も上手くハマって良かったとひと息をついた。
それにきちんと切り札も引けたしねと羽蛾は、デッキからブレイン・クラッシャーのカードを取り出した。
このカードは、攻撃力がこの時代では高水準であり、生贄無しで召喚できるこの時期ではあってはならない性能をしているが、何故か普通にパックから当たったカードだ。
『
適当に発動して、弱いモンスターを蘇生させて、貫通効果付きのモンスターで倒されて、即死ということもあり得るので、闇雲に使ったらいけない効果だと思う反面、うまく使うことができたら、かなり強くて、頼もしい切り札だ。
自分が持っている中でもお気に入りのカードである。
ただ、こういうカードを使ったり、海馬に勝利したり、エクゾディアを捨てなかったりと、もう色々と原作と違うことをやっているし、そろそろ原作知識もあてにしない方がいいかなと思えてくる。
これでもう原作と流れが変わってきたし、油断していたら、すぐに潰されてもおかしくはないと思うが、そんな分からないことが今はたまらなく楽しい。
だって、思い通りに進む知っているストーリーより予想外なことが起こるストーリーのゲームの方が面白いのと一緒だ。
この世界で自身がどれだけの高みに至れるのか今は楽しみでならなかった。
「貴方は全国大会優勝の羽蛾さんであってるかな?」
その高揚感が溢れていく羽蛾の背後の茂みからガサガサと嗅ぎ分けて、現れたのはどこかで見覚えがあるスキンヘッドで髭面の男だった。
「ああ、そうですけれども。貴方は…?」
「私の名は、鮫島。サイバー流の師範をやっているものです」
あ、思い出した。確かこの人、デュエルアカデミアの校長になる人で、グォレンダァ!!で有名なヘルカイザー亮、もとい、丸藤亮の師匠だった結構すごい人である。でも、なんか修行はドロー何千回とかいうような本当に意味があるか、分からないような修行内容だった気がするけども。
「私は全国大会の当日、己に課したデュエルの修行が終わっておらず、全国大会に参加できなかった。しかし、私の実力は羽蛾さん、貴方に及ぶと思っている。だから、早速で悪いが貴方にデュエルを申し込みたい」
「別に俺は問題ないです。それでスターチップはいくつかけますか?」
「私のスターチップは全部で4つ、羽蛾さん、貴方も見るところ4つのようだ。お互い全部をかけてデュエルを行うのはいかがかな?」
「俺はその条件で問題ないです」
確かデュエリストキングダムでは、鮫島は登場しておらず、もし、仮に参加していたとしても原作では登場機会がなかったが、相手はいずれデュエルアカデミアの校長になり、丸藤亮の師匠になる人物、相手にとって不足はない。むしろ、この状況で勝ったら、スターチップが4個も手に入るし、願っても叶わないような状況だ。
だが、負けたら、終わりのデュエル、いや、この世界、負けたら魂が盗られたり、世界が終わるようなデュエルでもあるし、負けても、予選敗退で済むのは全然生温い方だったね。
じゃあ、ただただこの緊張感と強敵らしき相手のデュエルを楽しむとしようかなと思いながら、リフトに乗り、デュエルリングで鮫島と相対する。
「フィールドは森80%と荒野が20%ありますが、私は荒野を選択するが問題はないかな?」
「…問題はないですが、もうスターチップが4個あるなら、このルールは理解して、俺が使うデッキも知っている上で荒野を選ぶんですか?」
「ええ、私だけが一方的に貴方のデッキの特徴を知っているのは不公平だ。私が日頃から行っているリスペクトデュエルの信念に反する」
言っていることは納得できるが、不正をしない限り勝つために努力するのはデュエリストとしては当然のことであり、むしろ、こんな風に相手のデッキが分かっているから有利なフィールドを譲るという行為は、相手によってはこちらが有利になっても問題ないから譲っても問題ないと誤解してしまう人もいるような気がする。
勿論、鮫島はそんな意図はないし、できる限り条件はフェアにして戦いたい気持ちも理解はできるけどね。
「わかりました。でも、それで負けても知りませんからね」
「ええ、全力で戦おう」
「「デュエル!!」」
鮫島LP2000
羽蛾LP2000
「私のターン、私は『サイバー・フェニックス』を攻撃表示で召喚する」
《サイバー・フェニックス》
効果モンスター
星4/炎属性/機械族/攻1200/守1600
(1):このカードがモンスターゾーンに攻撃表示で存在する限り、
自分フィールドの機械族モンスター1体のみを対象とする魔法・罠カードの効果は無効化される。
(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。
銀色に輝く機械のボディを持った不死鳥が鮫島の場に現れ、飛翔しながら咆哮をあげる。
「さらにカードを1枚伏せて、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー」
1枚の伏せカード、低すぎるサイバー・フェニックスの戦闘を補助する魔法、罠カード、攻撃反応系のカード、ブラフ、色々な可能性がある。また、サイバー・フェニックスは炎属性、同程度の攻撃力だと返り討ちにされてしまう。ここは様子見のカードから出していき、相手の動きを探るのが良さそうだ。
「俺は『ゴキボール』を攻撃表示で召喚」
《ゴキボール》
通常モンスター
星4/地属性/昆虫族/攻1200/守1400
丸いゴキブリ。
ゴロゴロ転がって攻撃。
守備が意外と高いぞ。
「森のフィールド効果により攻撃力が30%アップする。これでサイバー・フェニックスの攻撃力を超える!」
ゴキボール 攻撃力1200→1560
「ゴキボールでサイバー・フェニックスに攻撃、Gインパクト!」
ゴキボールが猛スピードで転がりながら、サイバーフェニックスに突進攻撃を仕掛けようとする。
「私は伏せカード発動、『収縮』!」
《収縮》
速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの元々の攻撃力はターン終了時まで半分になる。
「ゴキボールを対象にする。これでゴキボールの攻撃力は半分になる。返り討ちにしろサイバー・フェニックス!!」
ゴキボール 攻撃力1560→780
ゴキボールの体が半分程度の大きさになり、サイバー・フェニックスが口に炎を溜めて、反撃しようとしてくるが、あのカードが収縮ならこっちもカウンターできる手はある。
「ダメージステップ時、俺は手札から『突進』を発動する」
《突進》
速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで700アップする。
「むっ、そのカードは…」
「ゴキボールを対象にしてその攻撃力をターン終了時まで700ポイントアップする」
ゴキボール 攻撃力780→1480
「突進の効果により勢いを増したゴキボール、敵を貫け!!」
突進の効果により転がるスピードが増したゴキボールがサイバー・フェニックスの攻撃の前に装甲で包まれた中心の核を打ち貫き、サイバーフェニックスが爆散する。
「サイバーフェニックスを撃破」
鮫島 LP2000→1720
「カードを一枚伏せてターンエンド」
「羽蛾さん、見事な魔法カード捌きだ。全国大会を優勝したのも、頷ける」
「たまたまですよ」
「いや、今のは普通のデュエリストなら収縮で攻撃力が下がったことにより動揺し、今、使った突進のようなカードを持っていたとしても咄嗟に使うことはできないだろう。攻撃に反応するカードが伏せられていると想定しているほどの羽蛾さんの冷静さがあってこそ私のサイバー・フェニックスを戦闘破壊できたと思う。この序盤の攻防で分かったが、羽蛾さんは今までデュエルしてきたデュエリストで1番強い。恐らくこのデュエルは今までのデュエルの中で歴代最高のデュエルになるだろう」
デュエルアカデミアの校長になる人に褒められたのはとても嬉しいが、今はデュエル中、顔から情報を悟られないようにポーカーフェイスを貫く。
それにまだ、序盤の攻防を勝ったに過ぎないし、まだまだ、喜べる範囲にいないのは事実。
恐らく次から相手も大きく動いてくるはずに違いないと考える羽蛾に油断する余裕なんてない。
サイバーの後攻ワンキルを知っている羽蛾の首から一雫の汗が滴れるが、その口角は上がったままだった。
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