幽霊少年と霊感幼女   作:オルタナティブ

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アニメ見てどハマりして既刊全部買いました。ダークギャザリング面白いよね。


幽霊ってマジであるんだな

 

「あっ、███!」

 

 聞こえた声の方を向けば、犬が車道に飛び出していて。そしてその車道をリムジンが走っているのを見た瞬間、俺は飛び出し──────

 

 最後の記憶は、耳が痛くなるような急ブレーキの音だった。

 

 

 

 

 

「あー、死んだ死んだ」

 

 四月二日、死後二日目。よりにもよって高校初日、入学式の日に死んだ俺は自分の死に場所*1である事故現場に来ていた。なお、死因はリムジンに轢かれたことそのものではなく轢かれて吹っ飛んだ時に頭を電柱にぶつけたことによるものらしい。医学の知識がないので何とも言えないが、曰く急性硬膜下血腫だとか何とか。……気絶したまま死んだから痛みはないが、そのせいで逆に現実味がない。いや、花束やら菓子やらが供えられてるからマジではあるんだろうけども。

 俺がここにいるのは、何も地縛霊的なソレじゃない。ただ……そう。ある種の踏ん切りだ。死んで亡霊になっちまった以上、現世の繋がりなんて俺にはない。だから第二の生ならぬ死後の生の始まりの場所として、改めて俺が死んだ場所を見に来たわけだ。……まあ、本当のところは俺が死んだことで塞ぎ込んでしまった妹を見ているのが辛いだけなんだが。

 

「さて、行くか」

 

 成仏するまで何日かかるか、知りはしないが適当にやろう。

 

 

 

 

 

 死んでから一週間が経った。死ねば金も持てないが、その代わり生きている人間にも知覚はされない。観たいテレビがあればそれを観ているそこら辺の民家に不法侵入すればいいし、映画が観たければ映画館のスクリーンに不正入場すればいい。チェンソーマンレゼ編良かったな。

 なお、面倒なのは移動手段だった。肉体を失い疲労とは無縁の身になったが、それはそうとして行きたいところに徒歩でしか向かえないのは気が滅入る。なので今は専ら電車だな。同じく不正入場だが。最初は面白かったぞ、乗ったはいいが発車した瞬間すり抜けて置いていかれたから。トムとジェリーみたいな落ち方した。二回目からは意識を車体に向けることで対応したが……落ちてすっ転んだタイミングで反対の線路から電車が来た時は死ぬかと思った。もう死んでるけど。轢かれたところですり抜けて終わりだけど。

 そうして日々を何となく適当に過ごしていると、どうにも路上生活が苦しくなってくる。生前の価値観の弊害だな、こりゃ。仕方ないので定住地を探す……が、何せ都市部。どこもかしこも人で一杯だ。そうしてあまり人気のない場所を探していた結果、ある場所にたどり着いた。

 

「……ここで、いいんだよな?」

 

 そこは、ある廃ホテル。かつては上層階をキャバレーとして運営していたが、麻薬で頭バグった奴が鉈片手に暴れ回り十数名を殺害。その後は『霊が出る』と言われ廃館となったらしい。ちなみに霊側から見てみた限りでは……結構『いる』。しかし居るのは普通の人間っぽい霊ばかりで、多分俺みたいに『別に外にいたところで濡れるわけでもないけどそれはそうとして雨ざらし生活もなあ……』ってことでそれっぽい場所を探して来た果てに流れ着いた連中だろう。

 

「お邪魔しまーす……」

 

 ホテルに入り、適当な一室に。うん、やっぱり風雨に晒されないというだけでQOL*2……もとい、QOG*3が段違いだな。しばらくはここを拠点にして色々と楽しむとしよう。

 ──────そうして、二ヶ月ほど経ったある日のこと。早起きならぬ幽霊式昼夜逆転早起き……要は夜7時に起きて街に繰り出す、生前なら不良少年と呼ばれても仕方ない活動に出ようとしたその時。

 

 ──────予期せぬ闖入者が、現れた。

 

「……一人?」

 

 うわ何あの超おぞましい系幼女。怖。何というか、全身から近寄りたくないオーラが漂ってる。いやまあ大丈夫だろ。生きてる奴には俺のこと見えないし。

 

「ねえ、このホテル……貴方一人?」

 

 ねえこれ見えてない?俺のこと見えてない?……何歩か横に移動してみる。うん、ちゃんと目で追ってる。これ完璧(パーペキ)見えてんな。

 

「……さあ?俺ここの五階の部屋根城にしてるし。()()()()()()()()()()()()、そっから上は知らん」

 

 ちなみにこれは事実である。成仏したのか場所移したのか知らんけど、皆()()()()()()

 

「……そう。じゃあ、入らせてもらう」

 

 そう言いながら幼女はホテルの奥れの歩いて……いや待て待て待て。

 

「さすがにガキ一人で夜中の廃ホテルは危ねぇよ……誰か保護者とか連れてきてねえの?」

 

「いない」

 

 連れてきた方がいいよ、割とマジで。

 

「……仕方ねえな。こちとら幽霊、多少の夜目は効く。案内くらいはしてやっから危ねーことすんな」

 

 俺がそう言うと、その幼女は目を見開き……えっ何その瞳。ドクロ?えっ、ドクロ?

 

「……いいの?」

 

「ガキほっぽって怪我される方が気ィ悪い」

 

 ぶっきらぼうな俺の言葉に暫し考え込み……幼女は、申し出を受けた。

 

寶月(ほうづき) 夜宵(やよい)、8歳。よろしく」

 

「ん、比企谷(ひきがや) 八幡(はちまん)だ。享年15(ジューゴ)、一晩限りだがよろしく頼む」

 

 こうして、俺たちは出会った。復讐のために死者を従える者と、死故の天衣無縫。死を超えた自由が自ら(いましめ)を選んだその時。死と破壊により外れ落ちた運命の歯車が、拾い上げられた時。新たな運命が、回り始めた。

*1
比喩でない。

*2
Quality Of Life。生活の質のこと。

*3
Quality Of Ghost。霊活の質のこと。造語。




比企谷八幡
享年:15歳
外見はあちこちが破れた総武高校の制服を着た高校生。
一人称は「俺」。生前は普通の学生だったが、高校の入学式の日に交通事故で死亡。幽霊となった。

寶月夜宵
年齢:8歳
ダークギャザリングお馴染みのクレイジーオカルトロリ。幽霊が集まると言われており、実際にそれなりの数が集まっていたはずの廃ホテルが最近何故か急に霊の数が()()()のでやってきた。時系列的には『二期生』である『弟切花魁』が生まれた後くらい。
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