GATE 稲荷様 彼の地にて、斯く戦えり   作:名無しのペロリスト

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後始末

 日本と帝国が戦争状態になってから、五ヶ月が経過した。

 現在は帝都は外務省の役人を派遣し、講和交渉を進めている。

 

 ラブ&ピースを掲げるつもりはないが、話し合いで解決できるなら、それが一番だ。

 もちろん私が表舞台に引っ張り出されて、奔走しなくて良いに越したことはない。

 

 帝国はこれから長い時間をかけて賠償しなければいけないが、日本国に多くの被害を出したうえ、戦争にもボロ負けしたのだから致し方ない。

 

 無理難題を命じる気はないが、どちらに発言権があるかは言うまでもなかった。

 

 なお第三皇女のピニャ・コラーダさんが中心になって動いているので、講和交渉の成功は彼女の働き次第でもある。

 今のところは順調にいっているようだが、やはり日本との講和を望まない勢力も存在するようだ。

 

 私としては、面倒そうだし帝国を裏から操る気はない。

 その辺りは日本政府や現場で何とかしてもらいたかった。

 

 具体的には自衛隊と連携して、何とか上手いこと進めて欲しい。

 五百年近く経っても政治が素人同然の自分には、他にやりようがないので致し方なしである。

 

 

 

 だが流石に、これ以上は何も起きないだろう。

 ようやく肩の荷が下りて、平穏な暮らしに戻れるのだ。

 

 炎竜の討伐を依頼されたと報告があがっているが、そのモンスターはいわば生態系の頂点だ。

 三角形の天辺がなくなった場合の影響は、ちょっと想像できないがかなり大きなものだろう。

 

 少なくとも特地では、炎竜が頂点の生態系が、ずっと続いてきたのである。

 それが正常で、バランスが取れていたということだ。

 

 もっと言えば門が開いて日本と繋がったが、これは明らかに異常だった。

 地球に干渉した神様が、何を望んでいるのかは知らないし興味もない。

 

 しかし私としては、異世界には関わるべきではないと考えている。

 あちらの問題は特地の人たちに解決してもらい、日本国は静観すべきだ。

 

 同レベルの文明と繋がったのなら影響し合って、進化や発展も考えられる。

 だが地球と特地では差がありすぎて、こちらにその気はなくても一方的に飲み込んでいく。

 何も手を打たなければ、あっちの独自の文明は一つ残らず消えてなくなるだろう。

 

 私はこの地球で、世界中が狐色に染まったことを知っている。

 それが良し悪しはともかく、特地でもペロリストを量産したいとは思っていない。

 

 少なくとも帝国は、私が重い腰を上げてまで面倒を見るべき対象ではないのだ。

 人道的に考えれば手助けしたい気持ちはあるけど、やっぱり炎竜を駆除するのは不味い気がする。

 

 ペロリストとは違うが、生態系壊れちゃうーになるのは確実だ。

 ドラゴンを倒すために異世界人が協力するのは、あちらの神様的にセーフなのかアウトなのか、判定がちょっとわからない。

 

 取りあえず日本の最高統治者としては、あとになって責任を追及されたら弁護のしようがなかった。

 きっと、『まあ、そう言われるとそうなんだが、こりゃまいったなぁ』と、曖昧に笑って誤魔化すぐらいしかできないだろう。

 

 

 

 そのような理由で炎竜の討伐に難色を示していたのだが、伊丹さんと特地の人たちが協力して倒したと報告を受ける。

 

 それを聞いた私は、何やっちゃってんのこの人と、思いっきり頭を抱えた。

 

 だが詳しい事情を聞くと、あと五十年は続いたはずの炎竜の眠りを、無理やり目覚めさせた者が居るらしい。

 全ては冥府神パーディの使徒、ジゼルの仕業だった。

 

 何でも上司の冥府神が、マーキュリーさんに執着しているようで、連れてくるようにと命令を受けたとのことだ。

 

 なので戦力増強のために炎竜を起こして卵を産ませ、二頭の新しい竜を飼いならした。

 そいつらは自衛隊が討伐したようだが、報告を聞いた私は異世界の神様連中は本当にフリーダムだなと、さらに頭を抱えた。

 

 異世界と関わりたくない理由が、また一つ増えたのだった。

 

 

 

 そして、どうやら私は相当頭にきていたようだ。

 深く考えずに、溜まった鬱憤を東京稲荷大社のラジオ放送局で洗いざらいぶちまける。

 

「銀座に門を開いたのもそうですが、使徒を使って生態系の頂点である炎竜を無理やり目覚めさせて卵を生ませたり、本当に異世界の神々はフリーダムですね!

 あと炎竜って竜の上位種なんですよね! 討伐して大丈夫なんですか! まさかアレが最後の一匹で、うちが絶滅させちゃったってことはないですよね!」

 

 表面上は笑っているが、内心は色んな気持ちが混ざりあって混沌としていた。

 まだ特地の調査も済んでいないのに、あちらの神々も日本の自衛隊もやりたい放題してくれる。

 

 最高統治者の私は、いざという時に尻拭いするために存在している。

 だができることなら、今すぐ匙を投げたい。

 

 これ以上はマジで勘弁してくださいと、大泣きしたい心境だ。

 

「まあ絶滅させてなくても、長命種は繁殖力が低くて滅多に子供を生まないし、成長も遅いんですけどね!

 異世界がそうとは限りませんけど! やむにやまれぬ事情があったのはわかりますけど! 本当にマジで勘弁してください!」

 

 私は大きな溜息を吐きながら、本音をぶっちゃける。

 

「今回の件で誰が悪いかと言うと、五十年も早く炎竜を目覚めさせたジゼルさんですね!

 さらに追求すれば、マーキュリーさんを連れて来いと命じた冥府神様にも、上司として責任を取ってもらいたいです! もっと言えば、勝手に門を開いた神様も含めて、自分勝手すぎます!

 まあ神ですし! やりたい放題が当たり前なんですけど!」

 

 やけくそ気味に大笑いしてしまう。

 私は側仕えが入れてくれたお茶を飲んで、何とか気持ちを落ち着かせる。

 

「やっぱり私は、異世界とは関わりたくないです。

 外から見てる分には面白いんですけど、立場的にそれもできません」

 

 異世界の神様は自由奔放と言えば聞こえは良いが、割と無責任である。

 各々の役割は果たすのだろうけど、それ以外はかなり適当だったりする。

 

「私は神様ですけど、日本の最高統治者です。

 日本政府どころか各国の首相でも、異世界の神様や使徒が相手では荷が重そうです。

 ……やっぱり私が体を張るしかないんですよねえ」

 

 私は見習いだが神族だし、困った時には上司を頼ることができる。

 立川にも偉大な先輩がいるので、異世界の神様関係でも多分何とかなるだろう。

 

 そして炎竜の件で骨身に染みたが、向こうの上位存在は色んな意味で頭のネジがぶっ飛んでる。

 

「向こうの神様は変わってますけど、私も大概ですけどね。

 少なくとも人間の世界を守るために奔走している自分は、神々の中では異端中の異端でしょうね」

 

 最高統治者を五百年近く勤めている神など、私ぐらいだ。

 しかし伝説で神格化された偉人などは、割と統治者をしている気もする。

 大抵は末路が酷いものだが、それはそれだ。

 

 あとはそんなに詳しくないけど、滅多にいないのは違わないだろう。

 

「とにかく帝国との講和まで、あと少しです。

 今回は侵略を許可した皇帝が、責任を取ってくれると良いですね」

 

 良くある謝罪と賠償を要求するというやつだ。

 神様はノーカンなのでスルーするとして、やはり裁くなら皇帝だろう。

 遺族、もしくはテレビカメラの前で謝罪してもらえば、多少は怒りも静まるはずだ。

 あとはきっちり賠償を取り立てるのだが、その前に講和交渉の席についてもらわないといけない。

 

 だがそっちは私がわざわざ出張る必要はないし、政府関係者にお任せする予定だ。

 

 

 

 そのはずだったのだが、捕虜返還式に外務省の職員だけでなく私まで呼ばれる。

 帝国が日本との講和に舵を切ったので、仲良しアピールに必要なのだ。

 別に居なくても良いけど、効果は段違いである。

 

 炎竜が倒されたときは、異世界のパワーバランス壊れちゃうーっと頭を抱えたが、時間が経てば少しは落ち着いてくる。

 自分が関わる機会などそうはないし、直接この目でファンタジー世界を見るのも悪くない。

 

 皇帝が言うには日本の外交官と同じで、居てくれるだけで良いらしい。

 発言の機会は殆どないため、ハッタリだとしても自国の優位を保ちたいのだろう。

 

 別に私はそれで構わないし、見てるだけで仕事が終わるなら、楽なものだ。

 ただしホテルは相応のモノを期待していたが、ピニャコラーダさんの離宮に宿泊することになるとは、予想外でちょっと驚いた。

 

 彼女は第三皇女で講和派の顔だ。

 私も日本の最高統治者だし、そういうこともあるかと納得する。

 

 

 

 それはともかく捕虜返還式が始まり、皇城の謁見の間に帝国貴族や著名人が集まる。

 私と日本の外交官を合わせても、たったの数人だ。

 立場的に護衛は大勢居るが、式典には入場が許されなかったので外で待機してもらっている。

 

 やがてピニャコラーダさんと皇太子、さらには皇帝が入ってきて奥に向かうと思いきや、カエサルさんだけが途中で向きを変える。

 そして会場の隅で縮こまっている、若い貴族たちに声をかけた。

 

「皆! 良く帰ってきてくれた!」

 

 それぞれ名前を呼んで帰還を労っているようだが、式典の予定にはない行動だ。

 ピニャコラーダさんが慌てているけど、皇帝は何処か諦めた顔で椅子にどっしりと座る。

 

「我が国の捕虜を返還した日本国より! 使節団が参っております!」

 

 ここは日本ではなく帝国なので、そちらの流儀に従う。

 講和交渉は水面下では進んでいるが、表向きはまだ戦争継続中なのだ。

 

 なので少なくとも今日この時は対等な立場、もしくは私のほうが上でもない。

 一応、皇帝がトップなので大人しく使節団の紹介を受けて、外交官の人たちと一緒に、事前に練習した礼をしておく。

 

「お初にお目にかかります。皇帝陛下」

「遠路はるばるご苦労であった。日本国の方々、帝国皇帝として歓迎致す」

「感謝にたえません」

 

 定例通りの挨拶だが、日本と帝国の仲が良いことはアピールできているはずだ。

 郷に入っては郷に従えというやつである。

 

 なので、できればそんな事態になって欲しくないが、もしうちに来たら皇帝も日本の決まりに従ってもらう。

 

 しかしカエサル皇太子が若い貴族たちと今の帝国を嘆き、皇帝を睨んでいるのが気になった。

 

 

 

 けれど、特に何かが起きるわけではない。その後も式典は順調に進んでいく。

 炎竜の首が持ち込まれて、レレーナさんが帝国臣民として称賛された。

 

 それは別に良いのだが、皇帝がワインが注がれたグラスを掲げたとき、私は違和感を覚える。

 

「皆! 準備は良いな!」

「いいえ! よくありません!」

「「「はぁ!?」」」

 

 普段は空気を読んで大人しくしているが、スルーして万が一でも何かあったら困る。

 なのでこの場で異議ありと叫んで、謁見の間の空気がキンキンに冷えていく中、私は皇帝が掲げているワインをビシッと指差す。

 

「私はこちらのお酒に詳しくはありませんが、そのワイン……いえ、グラスでしょうか?

 どちらかはわかりませんが、他と異なる臭いがします!

 この場で言いたくはありませんが、毒を入れられた可能性があります! 今すぐ調べてください!」

 

 私は人間よりも耳が良いし鼻も効くので、微かな違和感も見逃さない。

 たとえ無味無臭でも気づくこともあるし、今回は目の前で起きた出来事なのだ。

 話し終えたあとでもう一度注意深く臭いをかぎ、やっぱり気のせいじゃなかったと確信する。

 

 しかしここは日本ではなく、帝国だ。

 味方になってくれる者は極僅かで、謁見の間はざわつくばかりで誰も動かない。

 

「黙れ! 獣人の分際で、皇帝に意見するか! 特使でなければ、即刻斬り捨てていたわ!」

 

 カエサルさんが怒りながら前に出てきて、大声で叫ぶ。

 

「父上! このような戯言! 気にすることはありません!

 事前に何度も調べたのだ! 毒など入っているはずはない!

 それに、良い香りではありませんか!」

 

 この場の全員がワインが注がれたグラスを持っているので、確かに室内には香りが充満している。

 だがそれでも皇帝のグラスだけは異なる匂いがするのだ。

 

「そこまで言うなら皇帝が飲む前に、先に貴方が飲んでください!

 毒はないのでしょう?」

「式典の決まりを破るわけにいくか!」

 

 グラスを交換するのは式典の決まりに書かれているかは、私にはわからない。

 なのでルールに違反すると言われれば、日本から来た自分たちはそれ以上言えなくなってしまう。

 

 だがこのままでは皇帝は最悪、毒入りのワインを飲むことになる。

 

 一体どうすれば良いんだと頭を抱えたが、ここでふと気づく。

 

「いえ、ちょっと待ってください。

 何で貴方は皇帝に、ワインを飲ませようとしてるんですか?」

「はぁ!? お前は馬鹿か! 決まっておろうが! 捕虜返還式を行うために!」

「カエサルさんは抗戦派ですよね?

 日本と帝国との講和に反対するなら、捕虜返還式は何があろうと中止させるべきです」

 

 捕虜返還式には日本の特使が居るが、帝国と良好な関係を築き、講和会議を進める目的でこの場に来ている。

 つまりこの式典が滞りなく進められるということは、戦争終結が近づくことを意味する。

 

 抗戦派のカエサルさんにとっては、絶対に避けたいはずだ。

 

「やはり貴方が、皇帝に毒を飲ませようとしているとしか思えませんね」

「馬鹿な! 俺は帝国の未来を憂いているが、父上を毒殺しようとは考えておらん!」

 

 現時点では情報が足りず、カエサルさんの発言が事実かどうかはわからない。

 しかし疑いの目を向けられていた私だったが、少しずつ彼に対しての疑惑の視線も増えてきた。

 

「そうか! わかったぞ!

 お前は次代の皇帝になる、この俺を! 暗殺の首謀者に仕立て上げるつもりだな!」

「そんなはずも何も、現状から考えて、貴方が犯人の可能性がもっとも高いのですが──」

 

 私は帝国の事情にはそんなに詳しくないが、カエサルには現状の不満という動機がある。

 なので皇帝が邪魔で排除したがっているのはわかるのだけど、発言は途中で遮られる。

 

「ええい! 黙れ! 我が帝国の兵たちよ! 今すぐこの無礼者を捕らえよ!

 抵抗したら殺しても構わん! どうせ下等な亜人だ!

 むしろ見せしめとして、殺してしまえ!」

 

 カエサルさんの命令で謁見の間は一気に緊迫状態になったが、流石にこれは皇帝も見過ごせないようだ。

 手を挙げて声を出そうとしたけれど、その前に他の者が大声を出す。

 

「なかなか愉快なことになったな。

 ならば我々、連合小王国は稲荷殿に味方しよう」

「デュラン将軍、来ていたのですね」

「うむ、流石に軍は連れてはいないがな」

 

 デュランさんだけでなく、他の将軍や前回会った時には見かけない人も居た。恐らく部下や息子だろう。

 彼らは前に進み出て、私や日本の外交官を守るように堂々と立ち塞がった。

 

 先程のカエサルさんの命令を受けて、謁見の間の兵士は戸惑いながらも私たちを包囲しようとしていたが、帝国のメンツを守るために過小評価している日本はともかく、連合小王国を敵に回して良いのか迷っている。

 

 一触即発ではあったが、とうとう皇帝が重い腰をあげる。

 

「そこまでにしておけ。余の酒を詳しく調べれば済むことだ。

 不満ならば、ゾルザルよ。お前のグラスと交換しても構わんぞ。

 もし本当に毒が入っておらぬなら、できるはずよのう?」

「ちっ、父上! お戯れを!」

 

 どう見ても冷や汗をかいて焦っている。

 自分で言っておいて何だが、ただ異臭がしただけで毒の確証はない。

 ただ腐っている可能性もあるし、そこは調べてみないとわからなかった。

 

 だがあの反応は、カエサルさんが毒を入れたとしか思えない。

 

「我が息子が、ここまで愚かだとは。

 もう良い。下がれ。お前には、あとで沙汰を言い渡す」

「父上! お待ちください! 全ては日本国の策略! 騙されてはなりません!」

 

 これ以上は聞くに堪えないようで、皇帝は兵士に命じてカエサルさんを何処かに連れて行く。

 そして毒殺の首謀者はわかっても、誰が関わっているのかは分からない。

 

 なので信頼できる宰相にグラスを渡し、事件の調査を命じるのだった。

 

 

 

 

 その後の帝国について、少しだけ語りたいと思う。

 

 皇帝の暗殺は未遂に終わり、皇太子のカエサルさんは幽閉された。

 だがまだ諦めていなかったようで、現状に不満を持つ貴族連中と密かに連絡を取り、クーデターが勃発する。

 

 国が割れかけたが、私はそうはさせまいと現地の自衛隊に命じて、即刻鎮圧させた。

 やり過ぎの内政干渉にも程があるが、帝国が滅亡して謝罪と賠償が行われないのは困る。

 

 そして連合小王国は健在で、帝国の切り取りを狙っていた。

 そういうのは取りあえず情勢が落ち着いてからにして欲しいので、今は我慢するようにとお願いしておく。

 

 国家の混乱で有耶無耶になって、謝罪と損害賠償を踏み倒されては、堪ったものではなかった。

 

 さらにせっかく進めた講和交渉が立ち消えになったら、これまで費やした金と時間と人材が無駄になる。

 

 

 

 あとは現皇帝は銀座事件の首謀者で、日本人受けが悪い。

 ピニャコラーダさんを支援して、次の皇帝になってもらった。

 

 本当はここまで干渉する気はなかったけれど、クーデターを起こしたカエサルさんとその一派は、非道な作戦ばかり実行しようとするのだ。

 帝国民は庇護対象ではないけど、人道的に考えてイカンでしょ案件なのは間違いなかった。

 

 なので自衛隊を動かす理由としては十分で、私が大本営発表でいつも通りに本音トークをしたことで、民意も彼の派閥を一掃すべしに傾く。

 

 今後の方針としては、治安を回復させ、講和を進めることだ。

 ゾルザル・エル・カエサルさんには大変申し訳ないが、強制的に退場してもらった。

 

 別に殺しはしない。

 彼の派閥や協力者たちと共に、一年のうち殆どが雪に閉ざされる過酷な辺境に飛ばして、二度と祖国を踏ませないだけである。

 

 流石に皇族を殺害するのは、外交的にちょっとどうかと思ったのだ。

 日本の法律で裁けば間違いなく死刑になるだろうけど、それでは苦痛は一瞬である。

 死は救いというが、うちの国だけでなく今まで虐げられていた人々が、楽になることを許さなかった。

 

 どっちも酷いことには違いないが、これも一応は断罪だ。

 

 さらには監視を徹底させて、少しでも不審な動きをしたら逐一報告してもらう。

 これまで不当な扱いを受けてきた帝国民たちは、喜んで協力してくれた。

 

 放っておいたらカエサルさんの影響を受けた帝国貴族が、家畜に神はいないとか言い出しそうだし、日本の隣国としては正直よろしくない。

 

 なので、以降は表舞台に出てこなければ好きにすれば良い。

 現地住民だけでなく、隠し撮りや盗聴など二十四時間体制で監視をしているので、悪巧みもできない。

 

 

 

 さらに帝国の奴隷制度は完全撤廃させ、双方が同意した場合に限り継続を認める。

 ただし奴隷としてではなく、給料が雀の涙でも表記的には住み込みの従業員なのでセーフ理論だ。

 

 とにかく人間至上主義で、異種族に対して風当たりが強いのは、日本との国際関係では致命的になりかねない。

 

 何しろ、狐っ娘が最高統治者をしている国なのだ。

 多少は改善しないと、帝国にガチギレしてしまう。

 

 だが今まで、タダ同然でこき使われていた人々だ。

 自由になった途端に職を辞すのが普通で、しかし行く宛はない。

 仕方なく、当面はアルヌスで自立支援を行うことになった。

 

 だがそこで、銀座で捕らえられた若い女性を発見する。

 事前の講和交渉で鉱山奴隷や他に捕まっていた人たちは、日本に返還されていたはずだ。

 

 しかし、どうやらカエサルに奴隷としてこき使われていたようで、皇族特権で報告されていなかったようだ。

 再び国民感情が『帝国……頭高くない? どうする? 処す? 処す?』に傾いた。

 

 しかしそこはピニャコラーダさんの必死の頑張りと、元皇帝との親子の謝罪会見、それに最終的には神様が門を開いたからだと責任転嫁する。

 

 神をも恐れぬ発言にちょっと驚いたが、実際その通りなので何も言えなくなる。

 

 その後も色々あったけど、何とか首都が更地になることは防がれた。

 

 皇帝も裁判で裁かれて、無期懲役で刑務所に送られる。

 異世界の神様のやらかしが原因だが、それはそれとして日本に侵略してきたのは変わらない。

 

 死刑を免れただけでも、ありがたいと思って欲しい。

 まあお金を支払っても国民感情を考えると、一生刑務所で暮らしてもらうけど、これは彼の安全のためでもある。外は色々物騒なのだ。

 

 とにかく日本の怒りは何とか静まったが、相変わらず火種は燻っているので油断はできない。

 

 

 

 もちろん他にも日本人の奴隷が居たら、速やかに返還するように契約を結ぶ。

 

 なお、テューレさんというワケアリの奴隷が、悲しき過去を背負っているようだ。

 非常に扱いに困る。対処を間違えると、色々不味いことになりそうである。

 

 しかし、後味が悪いのも見捨てるのも嫌だ。

 仕方なく、精神科医にも立ち会ってもらい、私が直接話を聞く。

 

 その際に、大本営発表で色々暴露したり、過去の誤解を解いたりと本当に大変だった。

 しかし目の前で困っている人がいたら、助けるのは当然だし、見捨てると嫌な気持ちになる。

 

 つまり私がスッキリするために、各方面に働きかけて何とか穏便に済ませたのだ。

 

 幸い彼女は頭が良かったので、日本と特地の交渉役に使えそうである。

 改心したというより狐色に染まったような気もするが、帝国を陥れる策略を巡らせていたとは思えないほど、優秀な外交官として働いてくれている。

 

 なので文句はないのだが忠誠心が天元突破して、ペロリストの仲間入りを果たしたのは困った。

 自衛隊の料理人と仲が良いようで、いつ付き合うのかと賭けの対象になっている。

 

 さっさと結婚して籍を入れて、私と関わらないところで幸せに暮らして欲しい。

 会うたびにいちいち重い感情をぶつけられるのは、精神的にしんどいのだ。

 

 それに精神的に問題があるとはいえ罪人なので、常に監視がついていて、アルヌスの丘からは出られない。

 ここが彼女の刑務所なので、一生をかけて償ってもらう。

 

 

 

 ついでに私がその場のノリで、せっかくなので門を開いた神様にも責任を取ってもらいたいと、大本営発表でついポロッと漏らしてしまった。

 するとマーキュリーさんを依り代にして対談が実現したのだが、正直全然嬉しくない。

 

 相手は本物の神様でこっちは偽者の狐っ娘なので、どちらが偉いかは明らかだ。

 と言うか常に監視してたのかと言わんばかりのタイミングの良さであり、本当に勘弁して欲しかった。

 

 どうにも対処に困ったので、この際だからと特別ゲストとして立川の二人に連絡すると、後輩の頼みを二つ返事で聞いてくれた。

 

 さらには何故か私の保護者というか母親役をノリノリでやっている、天照大御神様まで飛び入り参加し、今度は向こうの神様が萎縮してしまう。

 

 あとで知ったのだが、神様パワーだけなら私のほうが上らしい。

 今現在は、七十億もの信者がいる狐っ娘は格が違うという奴だ。

 

 しかし中身が元女子高生は一向に慣れないし、神様をやる気もない。

 だがあっちの女神様に責任を取ってもらわないと、地球だけでなく異世界の人たちも納得しなさそうなので、急きょ謝罪会見を開くことにした。

 

 まあ当神が本当に反省しているかどうかはともかく、一応それっぽい言葉は口にしてくれた。

 あとは今後は同じ過ちは二度と繰り返さないことを誓ってもらうなど、彼女の信者がメンタルブレイクするような行いをいくつもやらせる。

 

 だがこれは仕方のないことで、また勝手に門を繋がれては大変だ。

 少なくとも事前に両世界、そして神々に許可を取るべきである。

 

 そういうことで女神様の反省会を行い、喉元過ぎれば熱さを忘れるにしても数百年ぐらいは安全が保証された。

 

 しかしそれ以外は一切関わりたくはないので、地球は立入禁止にしてもらう。

 すると何故か、私の足に泣き縋って離してくれなくなる。

 

 神様らしくない態度に驚くが、これでは私が悪いように思えてしまうので、渋々でアルヌスの丘だけは立ち入りを許可するのだった。

 

 

 

 

 

 

 その後も、日本の銀座とアルヌスの丘を繋ぐ門は存在し続けた。

 だが、こちら側から過度な干渉はしない。

 

 特地の文化を保全する方向に舵を切ったからだ。

 こうなった原因は、あっちの神々や使徒や信者と関わるのが嫌だからだ。

 

 異世界の上位存在があまりにも好き勝手にやらかすので、当然のように地球への立ち入りは禁止しているし、アルヌスの丘にも許可を取ってからである。

 もし勝手に入ってきたら、申し訳ないが私の先輩や保護者、他の神々にお願いすることになる。

 

 

 

 しかし、帝国が遺族と和解したり賠償を支払うまで非常に時間がかかる。

 だからアルヌスの丘は、相変わらず自衛隊が占領したまま管理運営を行っていた。

 

 けれど稲荷大社に引き籠もっていても、世界を揺るがす問題が勝手に起きる。

 やはり、平穏に暮らせそうにはない。

 

 結局、表舞台に引っ張り出されては、仕方なく事態の解決に奔走するハメになるのだった。




ラスボスが退場してしまったので、お許しください!
最後は駆け足ですみません!
以上で完結とさせていただきます!

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたら、幸いです!
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