「……っ!」
――そして【私】は目を覚ました。
何だ、この風景は――【私の部屋】……だと?
馬鹿な、時間を戻し過ぎ……――、――――
「――、あぁぁ…………」
――すべて、【夢】だったのか。
自身の手を見る。
当然……私の手だ。景色も己も、先程まで見ていた二次元的な画風とは程遠い見慣れ果てた三次元空間。
知らずベッドから飛び起きていた私は当たり前に理解する。
【牢屋敷】で過ごした時間も、【小夜フゼア】という己も、【繰生エル】という少女も、すべて睡眠時の脳が作り出した単なる【夢まぼろし】なのだと――
「…………」
そうだとしても……私はこの夢の内容を異様なまでによく覚えている。
まるで夢ではなく、まさに先程まで実体験していた記憶のようだと錯覚してしまうほど鮮明で鮮烈だった。
自分が【小夜フゼアみたいな容姿のキャラ】になって、おかしなことに巻き込まれる夢を見ることはまぁかなり多いが、このレベルの物語性がある代物かつ、長期間で、しかも仔細の記憶が残っているのは初めてだ。
ゆえに――“己はこの夢を忘れてはならない”。
思考の切り替えは一瞬だった。
大嫌いな朝とは思えないほどハッキリと冴え渡った目と脳は、即座に三十分後に鳴るはずのアラーム設定を解除し、職場の同僚に『急用で今日は休む』とメッセージを送り欠勤確定。
最低限のルーティンを済ませると、茶菓子を用意し口に入れながら、すぐさまPCのメモ帳を立ち上げ、覚えている重要な出来事や台詞を殴り書きし始めた。
次に、忘れそうな内容、細かい会話や思考を時系列を無視して、キーボードに打ち込む、打ち込む、打ち込む――
――気付けば、昼は過ぎ、夜を迎え、深夜になっていた。
夢特有の奇怪な現象や思考回路に幾度となく盛大に突っ込みを入れつつも、大枠はおよそ記し終えた。
書いている内に忘れていた夢の内容を思い出し加筆することも多々あり、想定よりもかなりの時間を費やすこととなった。
しかしそれは良いことだ。覚えていることが多いに越したことはない。
夢を見た日は必ずその夢の内容を思い出しながら考察する習慣があるのも功を奏したかもしれない。
ひとまずこれで私がこの夢を、ただの夢として忘却することはなくなった。
さて、あとは面白い夢を見たという思い出を内心に留めて終わり。
【まのさば】好きの知人連中には、とんでもない夢を見た、聞けと話の種にするのもアリだな。
けれどまぁ全て口で語ろうとすると長過ぎる……本格的に話そうにも、時系列通り抜けなく完璧に伝えるなど不可能だ。
現に今なお覚えていたはずの内容が、次第に欠落し始めている。メモをしていなければ永遠に思い出せなかったかもしれない。
あとは……口伝するのなら、キャラの台詞、特にフゼアの発言を自分の口で語りたくない。文章でも恥ずかしいのに羞恥プレイなどというレベルではない。
……では乱雑なメモ内容を、時系列順に整理し読みやすくして配るか……。
いや、そうするにしても……夢独自の怪現象や記憶が飛んでいたりと支離滅裂で、このままではとても人に読ませられないな……何せ自分で読んでいても見苦しい部分が多い。
色付けするとなると……創作が入ってしまい、夢そのままだとは言えなくなるが、流石にある程度肉付けや行間を補正する必要はあるか……。
……やむを得ん、そんな中途半端なことをするならいっそのこと超絶肉付けしまくりの編集を施し、約十年ぶりに小説の体で執筆するかね。
これが本当の“夢小説”とかいう激寒なことを考えた。
まぁ重要な場面や台詞などは改変せずそのまま残しておけば問題ないだろう。……小夜フゼアという皮を被っていたとは言え、自分の言動を重要扱いするのは普通に気持ち悪いな……。
あぁ自分の存在がノイズでどんどん書きたくなくなってくる……主観視点ではなく、俯瞰だったなら私とよく似た思考パターンの奴のお話で片付けられたものを……。
小夜フゼア……だった自分の頭の悪さに辟易してしまうが、そこは致し方ないか。
ほぼ毎日何かしらの夢を見ている身として理解できることは、どう足掻いても著しく思考能力が低下する。一方で今回のように想像力の点では平常時を上回ることもある。
とは言え、脳内では突っ込みが鳴り止まない。
もっと初めから疑問に思うべきところ、解消すべきところ、立ち回り、その他にも山ほど……問題だらけではないか……!
落ち着け、他人のつもりで書くのだ、他人。そう、アレは他人、思考パターンが幾分似ているだけで、私がやらないことを平然とやらかす他人だ。
いやはや本来の私は、たかだか数十分遊んだ程度の相手にあんなに熱を上げない。ああいうのも書いていて恥ずかし過ぎる。
まったく何を考えていたのだろうアレは……。
……あぁ……過去に積み重ねた感情が乗っているため、記憶喪失中とそれ以前のループまで含めると実は相当長い付き合いだから入れ込む理由はあると補完していたな……。
よくよく思い返すと睡眠中の脳味噌のくせに妙に自己矛盾が生じにくいように設定や背景を練っている……その時点での脳のモニタリングデータを見たい。
夢での記憶は、主に画像や映像のように残っている。
視覚的にその場面を思い返せば、こんなことを話していたな、こんなことを考えていたなと次々に夢の情景を思い出す。
よって、肉付けのメインはフゼアの思考。
会話の合間合間にも何となくこんな感じのことを考えていた、悩んでいたな……という部分について、今の私ならこの時点で何をどう考えるかを記述しようとするととんでもなく文章量が増えてしまった。
やはりと言えばやはりだが、普段頭の中では数秒ですっと思いつき考えられるような計画やアイデアですら、文章化すれば長ったらしくなるね。
Aの内容を話している時に、ふとBという案を思いついて、そこからCに派生してしまい、さてこれらをどういう順序で話そうかということも追加で悩みながらだらだら喋ってしまうというのはあるあるだと思われる。
執筆前は忘れかけの内容を思い出したり、補完に時間を取られるかと思ったが、実際は摩訶不思議な現象をどう表現して記述するべきか考える方が難しかった。
特に、夢の中で記憶が消えるという現象は不可解極まる。
たとえばハンカチ隠しなどは好例だろう。私の脳は真実を理解しているのだから夢の中で魔法をかけられようが忘れようがないはずなのに、現実として私は夢の中で魔法を使われると記憶を失った。
その後にもエルによって消され、後に甦った記憶の数々、夢の中とは言え……いや夢だからこそ理解し難い現象だ。
思えば最序盤からその現象は発生していた。
処刑ボタンを押した後、それ以前の流れが牢屋敷の廊下から回想シーンのように始まるわけだが、この時点で私は直前まで裁判を行っていたことすら完全に忘れていた。
急に魔女裁判が始まった自分と、急に廊下に突っ立っている自分。
違いを挙げるとすれば、後者の自分は記憶はないが牢屋敷で過ごしていたらしいという“知識”はあったことか。
一度目の夢が打ち切られて、二度目に別の夢が始まり、それがシームレスに一度目の夢の真相に繋がる……という感じになるのだろうか。
睡眠中の酩酊した脳だからこそ生み出せた物語と言うべきか。
少なくとも正常な私の脳味噌からはこんな血迷った物語を思いつくことはできない。
だからこそ、か。夢から醒めてこそ、それらの不可思議が頭にこびりついて離れない。忘れられない。
意識の覚醒後に、脳が勝手に細部の記憶を整合性が取れるように書き換えた可能性もあるが、それが頻発しているようだと逆に夢の内容と物語とで破綻が生じ筆が止まっていただろう。
結局、本来の私とフゼアとの思考や行動の乖離は見られても、ストーリーの進行に強引さは感じても矛盾とまで言えるものは見当たらなかった。
まぁ今の私が同じ状況に転移しようものなら、自由時間中はひとまず事件のことは無視し、時間遡行を徹底的に利用して情報収集にあたるだろう。
一時間ループを利用して、ノンストップで図書室の本全冊を解読することも現実的に考えられる。
時間遡行の回数に制限がないのなら、媒体に情報を残せないというデメリットはあるが、事実上無限に時間があるということでもある。
その前提であれば、ある日突然ワケの分からぬまま女子中学生と化して牢屋敷に監禁されたものの、まともな思考回路を有していたはずのフゼアも同じことをしようとしたはず。
となれば、たぶん初日の自由時間開始の時点で本全解読や牢屋敷のほとんどの探索を完了させてスタートしていることになるな……。
魔法と、原作知識と、現地牢屋敷の相当数の情報……そんな反則じみたアドバンテージがあってなお、失敗しまくっているなどと無能すぎないか小夜フゼア……?
となると……何かの拍子にエルの扱いをミスって魔女化させた上に記憶を飛ばされ……やり直した先でも前回のやらかしの記憶が欠落しているゆえ、また別の拍子にやらかして記憶を消されて――
という具合に各周回毎に記憶を消されながらループしまくっていたって……コトか。よって、同じミスは繰り返さないという原則を遵守できない。
どれだけ現行の繰生エルを疑ったところで、その時点での繰生エルは無実。仮に読心の魔法等の手段で解析しても一層潔白が証明されてしまう。
犯人は各周回における過去の繰生エル達であり、具体的にそれぞれのループで何の記憶を消されたかもぐちゃぐちゃになっていて検証のしようもない。時間遡行者だからこそ沼りまくっている……これは酷い。
そう言えば処刑完了後の記憶の断片でも記憶が狂った状態でループしている可能性についてフォローされていたな……律儀な脳味噌だ。
思い返すほど、やはりこれを書いている【私】と【小夜フゼア】は思想や思考パターン等の基礎部分が似ているだけの別人であるとひしひしと感じる。
小夜フゼアは、一見私の主観と意志で行動はしていたものの、夢という特殊環境下で記憶と思考能力がバグっているのが一つ。
理想に近い容姿を手に入れていたり、魔法を持っていたりで最高にハイな状態になっており、魔法と根性さえあれば何でも解決できるモードに突入しているため意志力がおかしなことになっているのが一つ。
以上のように、自分の中では、自分なのにもう自分ではない独立したキャラ……つまるところ私は既に【小夜フゼアを他人のように感じている】。
もはや、自分と似通った思考回路の奴がパラレルワールドで痛い目に遭っているぐらいの感覚。……まぁそれでも素体が自分ベースなのは事実なので、過度に奴に触れるのに気恥ずかしさは残る。
が、改めて【小夜フゼア】について振り返る。
なぜ脳味噌はこのような名前をつけたのか。
ほぼ確実に、寝る前にフゼア系の香水をつけていたから。それで“フゼア”が出てきたのだろう。超単純。
なので、この夢を小説化するにあたって、名付けたタイトルや副題も全て香水関連。超単純。
“小夜”についてはとっておきの苗字として、いずれ生まれるかもしれない良い感じの自作キャラにつけようと思っていたら、あろうことか自分に取られてしまった。
もう二度と使えないので普通に悔しい。よもや自分自身に勝手に秘蔵を奪われるとは想定していなかった。……まぁもう創作活動なんてしないだろうから良いか。
容姿や魔法については、私のオリジナル創作物ワールドの中で一番思い入れがあるキャラがベースで、能力バトル世界では時間操作、特に遡行と停止を使うことが多いというシンプルなもので突っ込みどころがない。
【繰生エル】についても振り返る。
“繰生”の苗字も後の創作のために取っておいた珍しい苗字の一つ、そこまで思い入れはない。
【“繰”り返し“生”きる】という抜き出し方なら、むしろフゼアにつきそうな苗字だとは思う。
二つ思い浮かんでいた苗字の片方をこっちにつけたのかねぇ。覚醒時の脳味噌だと、フゼアとエルの苗字は逆にしているかもしれない。
夜と言えば黒のイメージだろうけども、白夜なんてものもあるし、名前を小夜エルにして何かの場面で白夜と形容する……という感じで使い道もある。しかし語呂は小夜フゼア、繰生エルの方が良い。
“エル”がどこからきたのかも分からない。神だとか天使をイメージするワードではあるが、あの少女はそんな神々しいものじゃないし、塩の柱の処刑も人間に対する天罰だしなぁ。
まぁ処刑以前にも、彼女自身に“塩”のような潔癖さをイメージを感じたから、裁く側である天使のイメージから引っ張ってきた可能性はあるか。
なお、結果的に魔女に与しながら、その魔女をも裏切るという、とんでもない堕天使だった模様。
“繰生エル”と読み上げたときの語感から“クルーエル”を連想できるからそれかなと思うも、残酷だとか無慈悲だとかそういう意味で、彼女のキャラクター性とは合わないのでしっくりこない。
こじつけるなら“非情”が一番近そうだけれど、起きている今の私からすれば、いいねこの名前にしようという発想は出ないのでやはり分からない。
“繰生エル”っぽいキャラを過去に考えたこともないので、容姿も魔法についても完全なご新規。
真っ白な容姿と、記憶を操るという魔法の組み合わせは、記憶を真っ白に塗り潰すみたいなシンプルなイメージなのかね。
睡眠中の脳味噌が先にこのキャラを作ってから物語を組み立てたのか、物語を組み立てるために用意したのか、行き当たりばったりにどちらも適宜構築していたのかは永遠の謎。
性格も私の好みだったり、創作するキャラとは全く異なるのも謎ポイント。
私の脳味噌から生まれるキャラは性格や目的は違えど、極端な思考や思想持ちで、だいたい覚悟ガンギマリで迷わない揺らがないブレないっていうのがほとんどだ。
そうじゃないキャラは脇役になるので、あの繰生エルがメインを張っているのは不思議。
起きている私が繰生エルっぽいキャラを作るのなら……
『過去にもいましたねぇ。くだらないことに思い悩んでいるから都合の悪い記憶を消してあげたというのに、今度は記憶が消えたことに苦しむ? あぁ何て愚昧な恥知らず達。アレらが両親という事実は、私すら消せない汚点です。
そんな汚濁は綺麗さっぱり消し潰して、白紙のまま生涯を終わらせてあげるのがせめてもの情というものでしょう? 感謝こそされど恨まれる謂れなどありません。
さて、あなたはどう書き換えてあげれば多少マシなお人形になるのでしょう。その人生という名のゴミ溜めをわざわざ掃除して仕立て直してあげるのですから、少しは私の役に立つと良いのですが』
……みたいな感じのキャラになってしまう。自分で書いていてアレだが、尊厳破壊感があるね。けれど覚醒した脳味噌で繰生エルというキャラを作ろうとしたらこうなってしまっていた事実。
“現実”の観点から繰生エルを見つめ直すと、単に自分の感性で生み出されたキャラではなく、日頃交流のある者達の特徴を継ぎ接ぎして生まれたのであろうことが察せた。
どうも後輩連中の各々の特徴が随所に見られる。特に繰生エルから小夜フゼアへの感情、態度や文句、悪態、指摘等は、実際に私が言われたことがあるものが多々ある。
それらの共通点から無意識に繰生エルに情を感じてしまったが、それだと個人対個人として整合性が取れないので、過去フゼアと絆があったという理由付けで補完したという感じか。とてもしっくりきた。
ただ、唐突な繰生エルの嗜虐性の発露については結局……何だったのだろう。
夢の中でも繰生エルの豹変については分析しなければ……と都度思い続けていたが、その疑問を解消する前に次々と物語が進んでしまい、解明が打ち切られてしまった。
メタ的に考えると、豹変前の繰生エルままだといくら何でも自分の考えるキャラらしくないな……と無理矢理脳味噌が設定をぶち込んだのかね。
まぁ、自身の記憶を改竄しまくったせいで人格が破綻し、情緒が幼女のまま、知識や知恵だけ成長して人格を再構成した……と考えれば、その辺りがバグっていても納得はできるかな。
とどのつまり、私は繰生エルのことを完全に理解できないまま夢から覚めてしまった。
時間を遡った――と思ったあと、滅茶苦茶気合を入れて目をパチっとやったら本当に目が覚めてしまったから参る。あの瞬間は夢と現実の境界が壊れていて一瞬錯乱してしまった。
いやはや気になることだらけだ。
繰生エルは別れ際、いったいハンカチにどんな記憶を仕込んだのか。まずこれだけでも知りたかった。
それに内緒の裏切りって何だ。いつ、どんなおかしなことをしていやがったのか。……夢の主ながら気になって仕方ない。
“夢のある話”をすると、これを書いている私ではない【小夜フゼア】はちゃんと牢屋敷の初日に戻って、ハンカチを開いて、その後も血反吐を撒き散らしながら何らかの物語を紡いでいるのだろう。
そう考えると、五億年ボタンならぬ牢屋敷ボタンを押した気分だな。……この私に百万円が支払われていないのは解せない。
【ルカラ】については……夢の中でも突っ込みを入れていたが、姿も名前の由来もよく分からないものの、中身は実在している後輩。牢屋敷世界での言動にも全く違和感がない。
ソイツは、迦楼羅みたいな漢字で書いてもカタカナで書いても格好良い名前を、一字ズラしたりアナグラムにするのが好きな奴なので、おそらくそれから出てきた名前だと思う。
魔法についても【位置を入れ替える魔法】と状況から判断したものの、詳細不明。なぜそのような魔法を持っているのかも不明。心当たりは上記のように文字を“入れ替える”のが好きな奴だからだろうか……。
魔女候補の時点でなかなか壊れている魔法だが、魔女化したらどこまでできるようになるのか気になる。ハンナが島を浮かせられたぐらいだし、ビルと自分の位置を入れ替えるぐらいはやれそう。ぶっ壊れかねこいつ。
しかしまぁこんな殺害トリック構築に便利過ぎる魔法を持っていてよく誤処刑されずに生き残っていたな……。
勝手に作り出された舞台上のご都合と言ってしまうとそれまでなのだが、過去にも物語があったとすれば、フゼアは毎度またコイツのせいで面倒なとキレていそう。私ならキレる。
魔女図鑑で全メンバーを確認してもセンサーは反応しなかったので、私のついでに牢屋敷に監禁された知人はコレだけのはず。
いずれ奴も自分自身の夢で、単独できちんと監禁されてほしい。
そもそも知人が他にいた可能性としては、夢開始時点で故人となっている六人の誰かとなるが……それが親しい知人だった場合その人間が殺されることも処刑されることも、私もフゼアも絶対に許容しない。
そうなると、強制魔女化が発動して一気に時間を遡って無かったことにするからやはり他に知人はいないと推測が立つ。
と、なると、だが……他の知人はこの世界ではどうなっているのだろう。
何せ私がTSして、実の後輩もまた美少女化……しかも若返ってもいるという異常に異常を重ねた有様だ。
まぁルカラに関しては元の外見も未成年で通せるから若返りはしていないとも……こいつまで考察に組み込むとノイズになるな……。
私とアレだけがああなっているのか。他も巻き込まれているのか、そうだとしたら誰から誰まで……。
正直、元が女だったから自然に受け入れてしまったが、流石に男の知人がTSして登場していた場合、とんでもなく気まずい。小説化も断念しかねない。そんなのが登場しなくて良かった。
ただのおかしな夢にバックボーンを求めても仕方ないのだが、他の知人もなぜか若返って美少女化していた場合、先に魔女候補として検知され牢屋敷に送られてしまった者はいるのだろうか。
……いたらフゼアの目的が根本から変わってくるよなぁ。少なくとも、死者蘇生やなれはてからの救済+復讐+反逆の三つの意志は携えて初日からスタートしているはず。
牢屋敷運営に復讐してやるみたいな描写が無かったから、フゼアとルカラの二名が知人間では魔女候補第一号で送られている可能性が高いか。
いや待てよ。遡行か停止が使えるのなら、検査に引っかかっても逃げられそうなものだ。おとなしく監禁されていることが妙だな。
もちろん初期状態の小夜フゼアの魔法出力……どの程度時間を遡れるか、止められるかも論点となるが、そんな魔法が使えると分かった瞬間から、私なら気が狂ったように魔法研究とトレーニングをする。
それに繰生エルをトレデキムで殺した過去フゼア……初代フゼア? が魔女化すらしていないのに牢屋敷の初日に戻れる程度の出力はあったみたいだし、やはり監禁されるのはおかしいな……。
そう考えると……わざと監禁されている可能性があるな。自分の知人らが巻き込まれてしまう前に、最初からクーデター目的で潜入するというのは充分有り得る。
夢の中で閃いた反逆計画を監禁以前からより入念に練っていたならば、単身での突入は危険と判断し、もう何人か最初から味方が欲しいと考えるはず。
ちゃんとした物語として考えるなら【まのさば】から得られるメタ情報は持っていないだろうし。
……そこで選んだのがまさかのルカラ……? いやいや、どうしてよりにもよってアイツ……? と言うよりどうしてアイツだけなのだ。
同時期に魔女候補として覚醒したか、検査に引っかかったのがアレだけだった……というのが自然な流れか。その上で、魔女候補十三連ガチャで二人ドンピシャに選ばれたのは……運が良かったのか、何か仕組んだのか。
もしも、ルカラの魔法が【物の位置を入れ替える】に留まらない【入れ替える】魔法だったら、やりようによっては強制ピックも可能か……そうなればルカラを選んだ理由も分かる。
……どうして夢で見た話の後付過去設定がこんなにも上手い具合に出来上がってしまっている……?
実は脳味噌はこんな設定を最初から作っていたのか。あるいは、本当はもっと長い夢で、監禁以前の導入から中盤? くらいまでを完全に忘却している可能性も……いやいや流石に厳しいな。
……前日譚の設定を捏造するなら、他にも忘れてはならない問題があったな。それは言うまでもない、容姿の変化。
性別や年齢、容姿の変化に関しては、私の夢の世界の魔女因子は、魔女候補として覚醒したら容姿が十五歳相当まで若返った上で美少女化するみたいな仕様であると割り切った方が良さそう。
これなら検査も楽そうだね。老若男女、突然美少女化したらそいつは魔女候補! 隔離! って具合で。
……これ、中身【おじさん】や【おばさん】だらけになっていないか……? 大丈夫かあの世界……? 夢の中でこんな初歩にも一切気付かずチェックしなかったフゼアは減点一。
エルは元からあの容姿で十五歳だったから……いや待て、登場人物の年齢を示す会話や証拠品は一つも夢に出ていない。これは危ない先入観だ。
……という思考には【次】のフゼアも当然至るだろうけども、どうやって残りの魔女候補の本人確認と年齢確認をするのだろうね。
それにそもそも、もしも本当に件の仕様を魔女因子に仕込みバラ撒いたのなら、あの世界の大魔女はかなり頭がおかしい。
どんな異常者か気になるが夢の続きは葬られてしまったため絶対に分からないジレンマ。
追記となるが、この“夢小説”の原稿を知人に見せた際に小夜フゼアの性別について、即座に鋭い突っ込みを入れられてしまった。
手始めに、“なぜフゼアの性別が女であると断定したのか”という点を指摘された。
これについては、原作では魔女候補は少女しか登場していなかった上に、私自身も女の容姿に見えることから自身も少女であると判断したのだろうと返した。が……
“容姿が少女であるからと言って女性であるという証拠にはならないじゃないですかあ? 自分が男で、モデルのキャラも無性か男という設定なのに、少女であると断定できる根拠がないどころか逆ですよねえ~?”
正直……一切反論できなくてかなり悔しかった。
そう、私もフゼアの外見モデルのキャラも、【女ではない】のである。
よって、女の子になっちゃった……! と短絡的に信じる方が不自然だ。
普通なら、どちらをベースにしても女ではないのに本当に女になってしまったのか……? と疑うべきなのだ。
“入念に計画を練らなければ~あらゆる可能性を~とか偉そうなこと考えるよりまず最初に自分自身のボディチェックしろや! 描写を忘れてたなら書き足せ! TSしてまず自分の身体まさぐろうともしないとかイカレてんでしょ”
というイカレた暴論にも強く反論できない。
身体については鏡とインカメで確認しただけで、自分の肉体に触れて性別の確認をしたり、性別が記された資料を確認したという覚えもない。完全に先入観だけで自身が少女になったと思いこんでいた。
確かに、表面上の容姿は少女と化しても肉体の性が男だったとなれば大問題となるし、今後の立ち回りにも影響してくる重要事項であるから自身のボディチェックを行えという主張は正しい。
奴の言い方や意図に関しての異論はあるが、性別の確認不足については瑕疵があったのは事実……服の上から股間を触るだけで少なくとも男か否かの判定はできるのだから怠慢と言えば怠慢だ。まぁ夢ボケしていただけとは思うが。
夢の中、特に序盤は自分にとって激動の連続だったが、覚醒状態にある頭なら、監房に戻った時点でトイレやシャワーをどうするかという喫緊の問題、性別確認の必要性に直面しすぐさまチェックをしたはずと言い訳はしておく。
……ともあれ、今となっては確認のしようがない小夜フゼアの身体的性別については、女であると思われるが正確には不明である……と、この場を借りて訂正。
次、フゼアが監房で書いていたらしい日記については想像が容易い。
私は日記を書く習慣がないどころか、嫌いと言ってもいい。部署での日報も廃止させたぐらいだ。
そして資料をメモする習慣もない。メモをする時間があれば、普通に暗記した方が効率が良いからである。まぁ数値等の相違が許されない且つ記憶しにくいものは走り書き程度にメモをするが、原則記録は残さない。
だと言うのになぜフゼアは日記をつけていたのか。単純明快、“記憶を操れるかもしれない女”が牢屋敷に、何なら同室にいるからである。自分の記憶が操作されることを前提に、暗号化して日記……より正確には記録をつけていたのだろう。
以下は自分ならどうするかという仮定での推測となるが、紙束そのものに誰かが触れれば後で自分には分かるような仕掛けを施した上で、文書そのものを暗号化し他者が読み取ることを困難にする。さらに暗号化にはもう一つ効果がある。そもそも自分が暗号を読み解けなくなってしまっていれば、その時点で記憶を操作されていることに気付ける一つのチェックポイントになる。
次に記録を自身で読み返した際、記述に対して違和感や存在しない記憶を確認できれば、言うに及ばず記憶操作を受けている可能性が濃厚になる。同時に、独自の暗号化までされている内容ならば確りと自分が記載したという信憑性が高いため、記憶と食い違っていた場合、記録を信じて行動することで今後の行動指針にできる。
よって繰生エル曰く小夜フゼアの書いていた日記は、記憶改竄に対するアラートとバックアップのためのものと推察できる。繰生エルに対しわざわざ、これは日記だと言葉にしたのも、記憶を書き換えたらすぐに分かるからなという警告の意味合いだろう。……当の繰生エルは、そっか日記なんですねぐらいの感覚で意図を理解することなく納得していたため何の牽制にもなっていなかったようだけれども……。
……まぁ夢の中で読めなかったのは本当に暗号化されていたのではなく、夢特有の識字が困難になる現象のせいだと思うが、それに対して後に脳が整合性を取らせたのだろう。
他に特に気になったのは、死体発見後にいつまで経っても通知が流れなかったこと。
夢の中特有のガバとかご都合と言ってしまえばそれまでなのだが、無理矢理これを物語として落とし込もうとするとなかなかきな臭い。
フゼアとエルを好きに泳がせた方が黒幕にとって都合が良いからあえて放置されたとか。
もしくは、記憶を失う前のフゼアが既に黒幕サイドと内通していて協力関係にあったとか。
あとは合計何周しているのかも気になる。
まず次以降のフゼアが繰生エルの記憶を取り戻そうとする可能性がある。
すると、その考えを起点に、過去の出来事をなかったことにしないために、そして何かの作戦が失敗して遡行した後でも円滑に協力しやすくするために記憶の復元や持ち越しの手法を確立しようとするはず。
それも、最大十三人+αに対して。ミリアが暴走したときのアレの再現を狙うのかな。いや、それぞれの主観の記憶まで共有するとヤバいから、あくまで各自が自分の記憶が戻るように仕向けるな。
【時間操作】、【記憶改竄】、【位置交換】の三つの魔法が手札としてあるわけで、これらを魔女化して共鳴させるだけでも何とかできそう感があるが、他にもさらに十人もいる。絶対に何かを仕出かす。
で、その際に冒頭で述べた合計何周しているのだろうというのがかなりのネックになりそう。
原作二周の時点でだいぶアレだったのに、最低九周以上はしていそうな記憶全てを各人に叩き込んだら、半数以上は魔女化の暴走を飛び越えて、精神の破壊でなれはて化まで引き起こしかねん気がする。
もちろん、その辺りも考慮するのだろうがどうケアするのかね。
もしかしたら今後の立ち回りはその辺りも考えて、無駄に周回しなければならないような事態は避けるかもしれない。
あと、時を戻すから何をやってもいい……と少女達に対して非道な立ち回りをしまくっていると、皆の周回記憶が戻った際に人望が最悪になるからそこも考慮して動かないとならないのは大変そうだ。
繰生エルの最期に、なぜ黒い羽……【過去のフゼア】も同時に消えたのかも気にかかる。描写的にはおそらく繰生エルを【裁く】――つまり【処刑】することを約束した小夜フゼアなのだろうが……
アレは約束を果たしたからと言っておとなしく共に消えようなどという潔い奴ではない。目的を達成しても満足死を受け入れず、まだだ、次だ、それでも、さらに――と、つくづく諦めが悪い。
であれば偶然、繰生エルに紛れ込んでいたとも思えんし、何かを仕込んでいるとしか考えられない。
と言うか、繰生エルを処刑しようとしていたのなら、おそらくフゼアの中に存在する唯一? の【裏切者の自分】になるわけで、そうなると他の大多数の自分にバレずに目的を果たすため離脱していたと考えると筋が通る。
羽の色も黒いまま塩化していなかったところを見るに、処刑も効いていなさそう。……となれば、処刑台に発生していた怪現象の数々も奴が引き起こしていた可能性がある。
処刑台に時間停止が効かなかったのは、内部で停止魔法に対抗するための何らかの時間魔法を使用していた……
あるいは【自分】以外の時を止めるの定義に、【分かたれた羽も含めて自分】という処理を予め組み込んだ上で、それに隣接している繰生エルと処刑台まで自身の一部であると強引に内包した可能性も考えられる。
ともかく用意している小細工はいくらでも考えられるため、おとなしく処刑台で消滅したのではなく、もしかしたら一足先に【時間遡行】を発動させたのではないか……?
仮に魔法効果の拡張によって回帰の渦に繰生エルを巻き込んだのなら、【繰生エルを処刑する】、【繰生エルを救う】、【自分も消えない】というすべての目的を同時に果たせる……!
もしもこの理屈通りで次周まで夢が続いていたのなら、互いに記憶を有したまま牢屋敷の初日で再会もありえたのか……?
……それならとんでもない赤っ恥じゃないかね。あんな恥ずかしいことを散々言っておいて初日に回帰したら、あ、何故か記憶残ってます……みたいな感じで再会するのだろう……? どんな空気になるんだこれ……。
まぁどれだけ考えても答えは永遠に出ないが、こうして軽く考えただけで思いつくようなことなのだから、無意識の脳がそうした舞台設定に仕立てていても不自然はない。
……自分の主観視点というノイズを取り除いて、どういう設定やストーリーを構築していたのかを脳味噌くんにはきっちりと開示してもらいたい。
夢の続きを見たいとは思うものの、残り十人の名前、容姿、性格、魔法の設定を睡眠中に構築して、それらをちゃんと独立したキャラとして動かした上で、目覚めても記憶がある……これは流石に脳の処理能力的に無理だろう。
何せ今から残り十人考えろって言われても何も思いつかない。一応登場はあったラウンジ三人組とアズサから始めろと言われても相当厳しい。
あとは私のセンスで考えると狂人しかいなくなってしまう。エルが他のメンバーについて、初っ端看守とゴクチョーの殺害計画を立てようとしていたと言っていたが、一周ぐらいはそいつらが本当に実行して壊滅していそう。
脱獄という逃亡や、一生仲良く暮らそうという平穏ではなく、支配者を殺害することで解放を勝ち取ることが第一候補である辺りにきっちり私の考えるキャラっぽさが出てしまっている。
……まぁ願わくば残りメンバーを二人セットぐらいに分けて、五日ぐらいに刻んで夢で見られると良い。それなら繰生エルのようにちゃんとしたキャラが……生まれる、かねぇ……。
他にも気になる点はどんどん湧いてくるが、際限がないのでこの辺りで切り上げよう。
あ、そうだ。
元凶のフゼアの名前が香水から連想されているのと、自キャラ達のイメージ香水を考えるのが好きなので、ネームド三人の香水を考えてみた。
【小夜フゼア】……言うまでもなくフゼアノート。
ペトリコールも若干感じ取れそう、雨とか霧っぽさ。オゾンまではいかないかな。あっても瓜っぽさは全く感じないタイプの濃度。
高貴とか大人びているというよりは、ちょっと胡散臭いタイプのフゼアだね。フローラルよりはハーバル感。
魔女化前はフルーティーまではいかない葡萄の香りがほんのり混じっていて、魔女化後はスモーキーがうっすらふわっと漂っているイメージ。揺らめく影のイメージだから、もくもく感はない。
……もっと色々書くつもりだったが、私が普段遣いしている香水をちょっとアレンジした感じとしか言いようがない。私定番のブレンド香水。素体が私のキャラだしそこまで書かなくて良いな。
【繰生エル】……シプレノート。
“フゼア”も“シプレ”も説明が難しく共通点が多いながらも、前者は男性的、後者は女性的と分類されることからも、めちゃくちゃしっくりハマった。
シプレは重い香調に分類されるものの、エルの場合はクリアと前置きしても良いぐらいトップが無機質で半透明なイメージ。清潔感と言うよりも潔癖までいっている感じ。これシプレ? って突っ込まれるぐらいのギリギリで……。
魔女化前は、既に例に上げた綺麗すぎて面白味がないとすら言えるぐらいに薄っすらと、シプレ特有の複雑な香りを何とか感じ取れるような……こんな香りどうやって作るのってぐらいシンプルで面倒臭い香りがしっくりくる。
魔女化後は、半透明感が減って、バニラやソルティが混じることで人間味の増した複雑な感情と嗜虐性を連想させ、魔女化前と比べて香りが重くなる。個性的にはなったが普段遣いには厳しくなりそう。
ハンカチの香りを確認したときに、ラクトン……と明言できるほどがっつりじゃないんだけど、それ系統の甘みを感じたからほんのり微かにピーチをトップに据えるのもアリだね。
【ルカラ】……シトラスノート。
アホっぽいからミドル以降でも引き続き軽やかなフルーティーな何かを追加しても良い。
トリックスター……とまではいかないものの、面白おかしく場を乱すキャラ……というか人間性と、奴の魔法の特徴を掛け合わせて、トップとラストで一気に印象が“入れ替わる”のも面白そうだな……。
と思ったが、ラストに組み込む香りを思いつかなかったのでシトラス一辺倒で良いかな。夢の中でルカラの出番が多かったりシリアスシーンがあれば思いついていたかもしれない。
貶しているように見えるかもしれないが、三人中最も好意的なイメージを持たれる普段遣いしやすい良い香りだと思う。……私はシトラス系は使わないが。
さて……お気づきのこととは思いますが、お話はとうの昔に後書きに突入していました。自分の夢のセルフ考察に長々と付き合わせてしまいましたね。
本編を執筆しながら後書きを執筆している……自分の“夢物語”を書いているゆえ、本編も後書きも地続きというのはとても新鮮な感覚です。
仕事中でもそうそう敬語を使うことがないため、公私ともに使い慣れていない下手な敬語で続けますがご容赦を。
自己嫌悪と妙な感心を行ったり来たりしつつも……盛りに盛りまくって、当初は二万字以上、三万字以下? だったメモの中身はこんなに大きくなりました。
この夢の産物は本来、仲間内だけで共有して終わりと思っていたものの、私の中に芽生えたとある一つの想いを無視できませんでした。
それは、一人でも多く牢屋敷に監禁される体験をしてほしいという直向きな想いです。
裁判したり、告発したりされたり、魔女化したりされたり、処刑したりされたり、見送ったり見送られたり――それぞれの牢屋敷生活を骨の髄まで堪能してもらいたいという純粋な願いとも言えます。
放っておいてもこういう夢を見る者は数多いるだろうが、やはり極小でも確率を上げるに越したことはない――
というわけで、まのさば二次創作なのにまのさばキャラが登場しないという絶望的なまでの需要の無さを自覚していながらも、僅かでも素質のある人にきっかけを与えるため、こういうオープンな場で公開することになりました。
斯様な怪文書をここまで読み進められた心の強い人は、間違いなく牢屋敷に監禁される素質があるでしょう。
私の夢から生成された駄文に付き合ってくれた数少ない人達へ。
是非とも各々の夢の中で牢屋敷ライフを存分に“実体験”されることを心からお祈り申し上げ、ここに筆を置きます。