ここだけレグルスに姉がいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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短編 夜襲

 

面倒くさい事になったなぁ、とぼんやり思う。

 

野営をする事になってみんなと交代で寝る事になった。ここまでは良い。 

 

襲撃に対応できる様に見晴らしが良い開けた場所、花が咲き誇っている草原を見つけてそこで魔獣避け兼、暖をとる為に私が空中に火を浮かべて過ごす。

 

 

防御魔法をずっと展開するのは燃費が悪いから、お昼過ぎまで竜車に揺られながら寝ていた…まぁ、ありたいていに言うと寝坊した私が可能な限り起きて見張りをする提案をして、小さな火の粉を散らしてぱちぱち、と音を立てながら宙で揺らめく灯りを見つめて体育座りで膝に顔を埋める。

 

魔法があって良かった、それでなきゃこの時期でも夜は冷えただろうから。

さて、ここからが問題だ。

 

 

みんながうとうとしていて、星空が良く見えるな、そういえば此方の世界には天の川だとかがあるのかな、と思っている時だった。

 

カサ、と遠くで音がする。魔獣…では無いね、風に吹かれた葉の音でも無い。

 

小さな呟きがあちこちで聴こえる、万が一の襲撃に備えて集音魔法を使っておいて正解だったね。此方の様子を窺うかの様に、伏せの体勢で多分、何人かの偵察者が居る。偵察なのに音を立てたらいけないだろう、と少しばかり呆れる。

 

気付いていないフリをして、のんびりあくびをして天を見上げる。

 

面倒くさい事になった、という冒頭の件はここに繋がる。

 

夜襲だ。

 

はあ、殺さないように戦うのって本当に面倒なんだよね。

 

強い相手は嫌だけれど、こう言う場合の相手は数で押してくる、まぁざっくり言うと弱い奴らだ。

弱いくせに力量差も分からず突っ込んで来て、テキトーに相手にするのも面倒なのに、ひとたび仲間がやられたとなると勝手に怒り出して話も通じない。

 

5、いや、10人位の盗賊か。

なるべくみんなが起きてしまわない様に、安全に行きたいところだ、なっ、と、杖を片手に立ち上がって、ぱん、ぱん、と服をはたいて、服についた葉や花弁を落として音のした方を見据える。

 

 

私が気付いたと察したらしい、ぴゅう、と指笛の様な音が響いて周りを取り囲む様にじわじわと武器を片手に近寄ってくるガタイの良い男の人たち。

 

うん、予想通り10人だね、リーダーと思しき人が、勝ち目が無いのは分かっているだろう?見ての通り、俺たちはお前たちより数も多けりゃ、力も優っている。

抵抗しないで大人しく持ってるもん全部差し出してくれりゃあ無駄に殺したりなんぞしねぇよと、盗賊といえばこうです、と絵に描いたような事を言う。

 

…はぁ、とため息を吐いて、ウソだね、と静かに呟くと、あぁ?とガラの悪い返事が返ってくる。

 

どうせそんなこと言っても、身ぐるみ剥がして金目の物を取った後は、私たちを奴隷商にでも売り払う気でしょ、そんな子供でも分かるお粗末な話、誰が信じるの?と言うと、…ふん、馬鹿じゃねぇな、で、どうするんだ?抵抗するのか?

俺らに殺されて、結局お終いだ、ハハッ、と見下した様子で此方を嘲る。

 

 

喋り声に気付いたのだろう、うとうとしていたみんなが、何、どうしたの、と周囲の状況を見て、慌てて戦闘態勢をとろうとするので、みんなは寝ていて良いよ、私1人で十分だからね、と声を掛ける。

 

そちらが引いてくれれば私は攻撃をしない、けれど守るべきものがあるから、仕掛けてきたら容赦無く攻撃させてもらうから、と冷たい目線を向ける。

 

はぁ?馬鹿にしてんのか?やっちまえ!と言う掛け声と共に向かってくる頭の悪い人たちに、じゃ、仕方ない、交渉決別だねと杖を構える。

 

 

 

一応防御魔法をみんなの周りに展開してから、フーラで風を起こして、周りに咲き誇っていた花弁が一斉にブワリと巻き上がって、視界を遮り、はらはらと落ちてくる。

 

何だぁ?ぎゃははっ、何してくるのかと思ったら、お花遊びかよ、っはは、お嬢ちゃん、こんなんじゃあ俺たちに傷1つつけられねぇよ、と嘲笑う彼らに向けて、静かに、落ち着いた声で、ジュベラード、と詠唱する。

 

 

ジュベラードは、花弁を鋼鉄に変える魔法だ。

 

そう、舞い上がる花弁の全てが、鋭い切れ味の、一度触れれば恐ろしい程の出血が約束されている鋼鉄に。

 

 

なんっ、何だ!?いてぇ、身体が、切り刻まれてるぞ、っ意味が分からねぇと騒ぐ彼らに静かにしなよ、と告げて、身体中血塗れの彼らが、ようやく自分たちのした事の誤ちに気付いた様で、待て、待ってくれ、悪かった、手を引くからこれを止めてくれ、と懇願してくる。

 

いや、先に仕掛けたのはそっちでしょ、提案を蹴って自分たちの未来を決めたのもそっち、今ここで攻撃をやめたら私の大切な人たちに危害がくわえられる可能性がある以上、その提案は飲めない、と淡々と告げる。

 

それを聞いて、真っ青になって、逃げ出そうとするけれど、鋼鉄の花弁は逃げ出す足を容赦無く切り刻んで、歩く事すらままならない様にしていく。

 

地面に這いつくばってひいひい言う彼らに、私たちを襲った事を、後悔したかな、油断は禁物、ただの旅人と、良いカモが居ると思ったのが運の尽きだね、と冷笑する。

殺さないでください、どうか、と言うので、私は無駄な事はしたくない。平和主義者なんだ。だから、と言って彼らを縄で縛り上げた後、まるっと1番近くの立ち寄った事のある街の護衛団の詰所の所へ転移させていく。

 

転移って言ってもワープなんて便利な物、使えないから、纏めて浮かせて街の灯りの方へびゅーんって飛ばすだけだけれど。

 

どうせここいらで名の知れた犯罪集団なんでしょ?悪い事はしちゃいけないから、罪の清算でもして過ごしなよ、後は知らないから、とリーダーに伝えて、待っ、と言葉を最後まで言わせずに送り飛ばした。

 

手応えのない、口先ばかりの奴らだったなぁ、と思って、そうだ、みんなを起こしてごめん、と謝ると、いや、助かったぜ、ありがとうと返されて、仲間を助けるのは当たり前だからね、またゆっくりしていて良いよ、今ので目が冴えたし、と答えて、姉さんありがとう、お姉さんありがとう、サンキューな、と感謝の言葉をかけられて何だかちょっと彼らとの距離が縮まった、そんなある日の出来事の話。

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