八幡は決意表明した後、生徒指導室で一人、
コーヒーを飲んでいた
ああ、泣くなんて、らしくもない。
けど、たぶんこの涙は“終わり”じゃなくて、“続いてきた証拠”なんだと思う。
あの日、誰かを助けたいと思って、
不器用に手を伸ばして、何度も失敗して、
それでも、また立て直してきた。
俺たちのしてきたことは、
完璧なんかじゃなかった。
でも、試して、直して、続けて――
気づけば、誰かの光になっていた。
泣けるのは、きっと“届いたから”なんだろう。
自分にも、あいつらにも。
未来はまぶしい。
けど、それをちゃんと見上げられるようになった今なら――
この眩しさも、悪くない。
「さて、やるかね」
新しい幕、磨かれた床、飾り付けられたアーチ。
それでも、この会場のどこかには、
あの日の空気が、まだ静かに残っている気がした。
雪乃と選んだ時は、二人ともまだ教師でも、大人でもなかった。
未来を語るには、少し不器用すぎた。
けれど今、その“未完成の場所”に、
生徒たちの笑い声が満ちている。
八幡は思う。
――俺たちの時間は、確かにここから続いているのだと。
会場の中では、すでに準備が始まっていた。
八幡が声をかけたメンバーたちも、次々と顔を見せる。
「ヒキタニくん、久しぶりっす」
「戸部、まだ俺の名前覚えてないのかよ」
「そんな訳ないっしょ、結衣のヒッキーみたいな感じ?」
「はあ、まあしょうがない。今日は来てくれてありがとう」
「まあ、同窓会みたいなもんっしょ」
「体力には、自信あるから、重いもん運ぶ時は
気軽に声かけてくれればいいっしょ」
「来たよ。比企ヶ谷。相変わらず、奉仕部やってるんだって?」
「ああ、お前も相変わらず、ザ・ゾーン使ってるんだな」
「はは、そういうところは昔から変わらないね」
「でも、みんなの葉山隼人は、卒業できたよ」
「今は、由美子の葉山隼人をやってるつもりさ」
「お前のそういうところが、嫌いだ」
「はは、面と向かって言われるのは2度目だ」
「どっちも比企ヶ谷だけどね」
「まあ、今日は来てくれてありがとう。助かる」
葉山の笑みは、どこか柔らかくなっていた。
八幡はそれを見て、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。
「……ふっ」
八幡は肩をすくめ、コーヒーの残りを飲み干した。
「ちょっと、あんた何、人の旦那に向かって嫌いとか言ってんのよ」
「あーしさん、すいませんした」
「あーしさんってなんだし!」
「確かに高校時代は言ってたけど…」
「今はちゃんとあたしって言ってるし!」
「はは、ちゃんとかどうかは置いといて
今日は来てくれてありがとな」
「あんたがそんなに素直だと調子狂うし」
「バカ言え、高校の頃から俺は自分には素直だ」
「ぶは〜、久々のトベxハチ、ハヤxハチ来ましたわ〜」
「ちょっと姫菜、あんたもいい大人なんだから
ちょっとは擬態しろし!」
ハンカチを渡す由美子
「やっぱり、あーしさんは、おかんなんだなあ」
「おかんって、なんだし!」
「海老名さんも来てくれてありがとう」
「いいよ、修学旅行のお返しだよ」
「そんなお返しもういらないけどな」
「はあ、あんたら本当に変わんないね」
「おっ、川なんとかさんじゃん」
「川なんとかさんってなんなの?」
「川崎沙希だよ!」
「そうだ、サキサキか〜」
「いや、サキサキでもないから」
「そうか、さーちゃんだな?」
「京華も、もうそんな呼び方しないって」
「あんたのことも、はーちゃんって呼ぶよ」
赤くなる川崎
「はは、呼んで恥ずかしくなるならやめた方がいい」
「あんたのそういうとこ、ほんと変わんない」
「今日は来てくれてありがとう、川崎」
「最初からそういいなって」
高校時代よりも女らしくなった(男だけど)戸塚が現れる
「はちま〜ん」
「戸塚か」
「戸塚かな、戸塚みたいだ、戸塚だな」
「もう、何言ってるの八幡」
「久しぶりに会えて嬉しいよ」
「俺もだ、戸塚に会うためだけにここにいると言っても
過言ではない」
「ヒッキー何言ってるんだし!」
「さいちゃん、また綺麗になってる〜」
「由比ヶ浜さんも久しぶり」
「はは、綺麗とかって言われるとちょっと、困るな」
「僕はいつだって八幡みたいにカッコよくなりたいって
思ってるんだから」
「…俺は全然カッコよくないが、
今日は来てくれてありがとう。戸塚」
戸塚の笑顔は、あの頃と同じで、どこか眩しかった。
「ま〜はっは、八幡久しぶりである」
「ええと、どちら様ですか、
こちらは総武高校のプロム会場となっております。関係者以外
立ち入り禁止となってますのでお引き取りください」
「うぉっほん、八幡、久しぶりだな」
「ふふ、久しぶりね、材木座君」
「うっ、雪乃嬢、お久しぶりです」
「相変わらず呼び方が変だけれどちゃんと
目を見て話せる様になったじゃない」
「うむ、我も成長しているからな」
「その言い方のどこが成長してるっていうんだ」
「それよりも小説はまだ、書いてるのか」
「うむ、まだまだ売れる作家ではないがな」
「八幡よ、そのうち我も声優さんと結婚するから
その時は披露宴に来るのだぞ」
「その前に売れる小説書け」
「まあ、今日は来てくれてありがとう。材木座」
「ふっ、任されよ、我を誰だと思っている剣豪将軍であるぞ」
「ちょっとかっこいいって思ってしまった自分を戒めたい。
まあいい、任せたよ、材木座」
「比企ヶ谷先生、私も手伝いに来ましたよ」
「おお、平塚か、今日はありがとな」
それを見つけた美羽が声をかける
「翠ちゃん、来てくれてありがとう」
「私も奉仕部に何かお返しがしたくって」
「それでもだよ。一緒に頑張ろうね」
「うん」
「せんぱ〜い、またプロムやるんですか?
私のこと、好きなのはわかりますけど
今付き合ってる人がいるので、ごめんなさい」
「俺はもうお前の先輩じゃねえ、相変わらず勝手に振るな」
「そして、お前の様なやつでも、付き合ってくれる奴が
いたんだな、おめでとう、そしておめでとう」
「なんですか、その言い方、本当先輩って
変わらないですよね」
大磯がその様子を見て言った
「あはは、本家が来たぞ小田原」
「なんですか、今忙しいんですけど…」
「初めまして、今の生徒会長勤めている小田原玲と申します」
「本日は私が考えたプロムを手伝いに
来てくださりありがとうございます」
「私が考えたプロム?」
「なんですか、私が考えたプロムですよ」
「へ、ああ昔やってたプロムのことですね〜」
「先輩、昔とか言ってますよ、この子」
「教育がなってないんじゃないんですか」
「まあ同族嫌悪ってのはわかるが、
そうギャンギャン言うな、後俺はもう先輩じゃねえ」
「じゃあ、せ〜んせい」
「いや先生でもないからな」
「…す、すごいです〜」
「私の本物がここにいました先生」
「いやいや、それを本物にしちゃダメだからな」
「いいえ、私の師匠になってください」
手をいろはの前に差し出す玲
「ええ、嫌ですよ、何言ってんだ、こいつ」
「やっぱり教育がなってないんじゃないんですか」
「お前が言うな」
「む〜、私だって成長してるんですからね、せ〜んぱい」
ビシッと敬礼ポーズで返すいろは
「やっぱり私の師匠はここにいた」
「先輩、私この子、苦手です〜」
八幡は苦笑しながら受け流す
「小田原、仕事が残ってるんだろ、早く行け」
「はい」
ビシッと敬礼ポーズで返して去っていく
「お兄ちゃんはやっぱりお兄ちゃんだね」
「お米ちゃん久しぶり〜」
「その呼び方も久しぶりですね」
「お久しぶりです。いろはさん」
「おう、小町今日は来てくれてありがとな、お兄ちゃん嬉しいよ」
「出た、シスコン」
「シスコンじゃねえ、千葉の兄弟愛は永遠なんだよ」
「小町はそうでもないけど、ありがと、お兄ちゃん」
「小町〜」
「あなたは、何をやっているのよ、さっさと仕事しなさい」
「はい、すんませんした」
「お兄ちゃんは、ひねデレですから、ちゃんとした姿を
旧友達に見せるのが恥ずかしかったんですよ」
「ええ、わかっているわ、小町さん」
「雪乃先輩お久しぶりです」
「ええ、久しぶりね、一色さん。会えて嬉しいわ」
「あなたとやったプロムも良かったけど今の生徒たちのも中々よ」
「今日は来てくれてありがとう」
「まあ初代プロムクイーンの私がいれば、大丈夫ですよ」
「ふふ、相変わらずね」
「そうね、信頼しているわ、よろしくお願いします」
「雪乃先輩って、そう言うとこ、ずるいです〜」
「さあ、さっさと終わらせてしまいましょう」
瑠美が舞台の袖でインカムで指示を出している
それを見たいろはが八幡達のとこへ来て
「あの子誰ですか?雪乃先輩みたいじゃないですか?」
「今の奉仕部部長、鶴見瑠美さんよ」
「鶴見瑠美って、ああクリスマスイベントの時に
先輩が口説いてた子ですね」
「おい、変な風評被害流すな、俺の今の立場を考えろ」
「ふふ、あの頃も私に何度も通報されかけたけど
本当に通報されそうね」
「一色さん、冗談はそれくらいにしてあげなさい」
「やだなあ軽いジョークですよ、ジョーク!」
「でも、あの瑠美ちゃんが今の奉仕部部長なんて
時の流れを感じますね」
「お前はどこの親戚のおばちゃんだ」
「む〜先輩ひどいです、やっぱりそう言うとこ
変わってないんですね」
「はは、ヒッキーにそういうの、
求めちゃいけないんだよ。いろはちゃん」
「由比ヶ浜に言われると来るものがある」
「まあ、一色に会えて、ちょっと嬉しかったのかもな」
「なんですか、口説いてるんですか、
でも雪乃先輩のいないところでしてください、
ごめんなさい」
「何を言ってるのかしら?一色さん」
やばっ、久しぶりの雪乃先輩の圧力、半端ない
「いやあ、でもあの男の子もいい感じで周り見えてる
みたいですよね」
「ああ、大磯な」
「後、あの女の子も、すごく気を使ってる感じがします」
「ああ、茅ヶ崎な」
「ん?なんですか」
「あいつら全員、今の奉仕部だよ」
「なんですか、すごいじゃないですか」
「教育の賜物ってことですか?」
「いや、あいつらが勝手に成長しただけだろ」
「やっぱり奉仕部っていつの時代もすごいんですね」
笑い声の向こうで、生徒たちの声が重なっていく。
――この場所は、もう俺たちだけのものじゃない。
プロムの進行中、陽乃と城廻めぐりがやってくる
「比企ヶ谷君、久しぶり」
「めぐり先輩、久しぶりです」
「来てくれたんですね」
「うん、はるさんがどうしてもって言うから」
「でも私も比企ヶ谷君達に会いたかったからね」
「私に感謝なさい、八幡君」
「いや、その呼び方はちょっと…」
「何言ってるのよ、本物のお姉ちゃんになったんだから
当然でしょ。いい加減慣れなさい」
「雪ノ下さんはもうちょっと仮面かぶってたほうが
良かった気がする」
「それよ、その呼び方もいい加減、やめなさい」
「あなたも雪ノ下家の一員でもあるのだから
お姉さん、もしくは陽乃さんと呼びなさい」
「はは、そうする様に前向きに検討して善処します」
「それ、絶対にやらない奴じゃない」
そこへ平塚静が現れる
「やあ、久しぶりじゃないか、比企ヶ谷」
「…先生どうしてここに」
「いや、私の親戚がここに通っているから見に来たんだ」
「それと君に会いにな」
彼女の瞳には、あの頃と同じ光が宿っていた。
けれどそこには、もう少しだけ誇らしげな色があった。
「翠に聞いたよ、奉仕部、また作ったんだって?」
「はい、雪乃の様な問題児がいたんで、
サナトリウム作らなきゃって」
「ははは、あの頃、君はそんなことを言っていたな」
「で、治療は成功したのかね」
「治療っていうか勝手に治ったって感じですかね」
「その成果に感動して、ちょっと泣いちゃいました」
「比企ヶ谷、それが教師というものだ」
「私も君らの時は涙したものさ」
「えっ、先生みたいなベテランでもそんなことあるんですか?」
「ふん!」
八幡の顔の横を一陣の風と平塚静の拳が通って行った
「女性に年齢の話をするなと教えただろう」
「そういうところは成長していない様だな」
「衝撃のファーストブリッドは勘弁してください」
「はは、君は相変わらずだな」
「先生もね」
「比企ヶ谷、私は今、君が成長してくれたことを
嬉しく思っている」
「あの頃の私の指導が正しかったんだと誇りにも思う」
「君が私を成長させてくれたんだとも思う」
「えっ、あの頃、先生は完成している様に、見えましたけど」
「比企ヶ谷、人は完成したと自分で思ってしまったら
成長できなくなる」
「そうだろ」
「はい」
「平塚先生の教えは、確かに、俺の中にある」
「平塚先生の言葉を借りた事もあります」
「はは、例え、元は私の言葉であったとしても
それを君の心で伝えたなら…」
「それは本物と呼べるんじゃないのか」
「…そうかもしれませんね」
「そうだ、比企ヶ谷、今はちょうどいい音楽が流れている」
「また、私と踊ってくれないか」
「また、足踏まないでくださいね」
体育館の照明が少し落ち、ステージからこぼれる光が二人の影を並べた。
――かつて導かれた場所で、今度は並んで歩く。
プロムが成功に終わった後
後片付けをしている生徒達と八幡達
その片付けが終わるころ
ベランダデッキで雪乃と八幡が二人で休憩していた。
「ここも懐かしいわね」
「ああ、そうだな」
「そう言えば、忘れ物があったわ」
「なんだ、何を忘れたんだ?」
「どこだか覚えてるか?」
「ふふ、違うわ。忘れ物はここにある」
胸を押さえる雪乃
「ここで、あなたに言わなければ、いけないことがある」
顔を赤くしながら優しい笑顔になった雪乃が宣言する
「あなたのことが好きよ。比企ヶ谷君」
恥ずかしさでその場を立ち去る雪乃。
赤くなりながら八幡が
一人で呟く。
「全く、うちの奥さんは成長してるんだか、してないんだか」
「でもあいつとだったらやっていける、そう思える自分が
成長した証なのかもしれない」
「きっとあいつもそう思ってる」
「これからもやってみて、間違って、修正する」
「そうやって、俺たちは成長していくんだろう」
「だとしたら今はまだ間違っているのかもしれない」
「ならば、こう言うしかないだろう」
「やはり俺の結婚生活は間違っている」
ラストシーンの後に流れる曲は
私の中ではアニメ3期のエンディング曲です。
皆さんはどんな曲を流したいですか?
最後まで読んで頂きありがとうございました。
それでは、また会う日まで。
俺ガイルを愛する全ての方へ感謝します。