クリティホロウ内、道中のエーテリアスを倒しながら進んだ後、アンビーが何かに気付く。
「……ほんの少しだけど、このあたりの空気が淀んている?」
「淀んでいるったって…、いや、待て。俺の視覚センサーの解像度もなんか気にすると下がってるな…。」
「すまんな、儂の動力源の出力を高くした。コイツはエーテルとすこぶる相性が悪い。今の場所と出力なら…最長で一カ月程度は身体に影響はないだろう。」
「い、一カ月って…!?普通ならそんな物があるって分かったら、大騒ぎどころじゃないわ!大手企業がこぞってあんたのこと狙ってくるわよ!!って……何処見てるのよ?」
「…………。」
サオトメの視線の先を見たニコ。そこにはイアスが何の反応もせず立ち尽くした姿があった。
「あっ、またぼーっとしてるわね、パエトーン!」
「………。」(ジッ,ジジジジッ,ガ,ピー)
「ニコ、少し待て。何か可笑しい……!!しまった!フィンガー・ネット!!」
ポンプが動こうとした所で、サオトメの左腕、その指先から束ねられた網が投擲されると、ボンプを拘束する。
「おい、爺さん!パエトーンに何やってんだ!?」
「…やはりか。面倒なことになったぞ、お前達。イアスの目が赤くなっておる。何者かは知らんが、ハッキングされておるようだぞ…!」
「ハッキング!?そうか、それでさっきから立ち止まって反応しなかったり急に倒れてたのか!」
「それってヤバいじゃない!どうすんのよサオトメ!?」
「博士、一度見たって言ってたけど、何とかできるの?」
「…やれるだけやってみるが、誰でもいい!イアスを抑えておけ、今の姿では手が太すぎて細かい作業が行えん!」
フィンガー・ネットを戻し、邪兎屋の面々がボンプを抑えているのを確認した後、青くスマートな身体、頭には大きな2本の角が生え、左腕には傘状のアンカーを装備した『ライガー』と呼ばれる形態へと再合体し直す。
「そのまま動くなよ…。少し変な感じがするかも知れんが、我慢しておれ…!」
腹部の装甲を開き、そこからボンプの額部分に端子を接続して電子頭脳内へと侵入する。
(イアス本体には異常はないようだが…待った、アキラがH.D.D.をインターノットに接続してメモリディスクのデータを復元した、ということは……ここか。よくも面倒事を起こしてくれたな、一泡吹かせてくれる!!)
ボンプ本体には幸いにも異常は見当たらなかったが、繋がったH.D.D.側に出所不明の接続先を見つけた為、切断すると同時に細工をした。
(よし…これでよい。)「ふう…戻ったぞ、お前達。」
「おお、戻ってきたか爺さん!どうだった!?」
「やはりハッキングを受けていたようだ、全く。だが一つ細工をしておいた。…勝手にハッキングしてきた相手の場所を通報する代物だ、逮捕されるのも時間の問題だろう。…リン、聞こえるか?」
サオトメが確認のためにボンプに話しかける。
「…あ、あれ?急に接続が切れたと思ったらまた接続できて…何があったの?」
「プロキシ先生、これから何があったのか説明するわ。」
先ほどまで起きていたことをアンビーがリン達に説明する。
「H.D.D.がハッキングを…成る程、ログがエラーを吐いていたのはそのせいか。他に影響は…!?」
「─?アキラ、何かあったのか?」
「やられた、パエトーンとして使っていたアカウントと脱出経路を計画するためのデータが削除されている…!今は自動的にサブアカウントへ変更されているから通信には問題はないけれど…。まさか、さっきの切断の影響で?」
「あれ、おじいちゃん?口の部分がへの字になってるけど?」
リンの指摘により邪兎屋の面々はサオトメの顔を見る。本来なら笑っているように見えるフェイス部分が今はしかめっ面をしている。心なしか顔が青くなっているようにも見えた。(元から青いが)
「まさか…儂のせいか……?」
「いや、サオトメさんのせいじゃない。僕達が早くハッキングされていることに気付くべきだった…!」
「けど、このままじゃあホロウから出ることは出来ない。どうするの、プロキシ先生?」
「それについては、私達にも考えがあるの。まずはこのまま金庫の場所まで行こう!」
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クリティホロウ内、廃棄された地下鉄の深部。目当ての金庫までの道中、ハッキングされた際の話をしていた。
「…それで、原因は何かわかったのか?儂としては、あのメモリディスクを介して行ったとみるが。」
「その通り。こっちでH.D.D.の脆弱性診断を行ったけど、その可能性が一番大きい。」
「それじゃ、赤牙組の連中も誰かに依頼されて金庫を奪ったってことになるわね…。」
「俺たちと一緒だな!」
「…プロキシ先生の介入が無かったら、私達が正体不明の黒幕と対峙することになっていたはず。」
黒幕かどうかは別として、裏で何者かがいるのは事実だろう、サオトメらはその言葉に頷いた。
「やっぱ店長は頼りになるぜ!まるでスターライトナイトの相棒犬、メテオマットみてぇだな!」
「おいビリー、貴様誰に犬みたいだと言った……?」
「じ、爺さんストップストップ!肩強く掴みすぎだ痛ぇって左腕のドリル…じゃねえミサイルってなんてもん出してんだ!?」
「博士、落ち着いて。ビリーにとっては、最上級の褒め言葉なの。」
「……すまん、それならそうと早く言え。」
掴んでいた右手を離し、左腕のアンカー内にミサイルを収納する。小型ではあるが、至近距離なら無事では済まないだろう。
「ちょっと、今はそんな事してる場合じゃないでしょう!?はぁ…あの時は多額の報酬に目が眩んだけど、結局今回もロクな仕事じゃなかったわね。もう二度と情報屋の口車には乗らないんだから!」
「なら無事に戻って、追加で報酬でもむしり取っておけ。草の根1本とて残すことはするなよ?」
「博士、怒るのもわかるけど、落ち着いた方がいい。下手に判断力が鈍ったら、金庫の探索中に起こり得るアクシデントに対応出来なくなる。」
「……すまん、少し頭にきていたようだ。こんな所で道草を食っている訳にはいかんな。」
まだこのホロウ内には上級エーテリアス、デュラハンが徘徊している。こうしている内にも邪兎屋の面々やサオトメらを探しているだろう。
「まずはあの化け物より先に金庫を回収しなくちゃ!急いでターゲットを追うわよ!プロキシ、引き続きガイドをお願い!」
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「見つけた!」
そのままデュラハンに見つかる事なく探索していた一行。暫くしてようやく金庫を見つけることができた。
「今日はツイてるぜ!」
「あたしの金庫!」
「はぁ、やれやれ…。」
話しながら金庫へと向かう一行。しかし。
「…っ!後ろか!ドリルアァァァム!!」
エーテルで構成された剣がサオトメを襲う。咄嗟に彼は左腕のアンカーからドリルを展開し、その剣を受け止める。その隙を突いてビリーが援護射撃を行うも、相手はサオトメから離れ、盾で防御した。
「大丈夫か、爺さん!?」
「ああ、問題ない。クッ…できれば会いたくはなかったのだがな…。」
左腕にエーテル結晶で出来た身体を隠せる大盾、刃渡りが長く物や人を簡単に切断できそうな剣と一体化した右腕が特徴の上級エーテリアス…デュラハンがそこにいた。
「見つけた…!」
「今日はツイてるぜ…!」
「あ・た・し・の・金庫ぉ!!!」
「はぁ、やれやれ…!」
デュラハンを前に、彼らは戦闘態勢に入った。
同時刻、修理屋サオトメ。
その裏口が開き、そこから一人の少女が中に入ってくる。
「ただいま。……あれ?いつもなら早く終わって、自室で休んでいる筈…って、これは?」
眼帯を左目につけた少女は、作業台の上に置いてある置き手紙を見つける。
『ホロウレイダーとして暫く外に出る。留守は頼んだぞ。 サオトメ』
「博士ったら…また『隊長』と一緒にホロウに行ってるなんて…仕方ないわね。」
両手両足が義手義足の……何処となくアンビーに似た顔立ちの少女は、そう独り言ちた。