「すっかり遅かったな……」
ぬ~べ~とその生徒達との会話からしばらくした後、星徒は自宅へと帰る道を歩きながら呟く。
あれから星徒はしばらくの間ぬ〜べ〜と連絡先を交換したり色々と話したりして、気がつけば長時間話していたようで日付も変わっていたのだった。
「今日も帰るのが遅くなってしまったし……『あの人』を心配させてしまうかな? ……ん?」
「チクショーーー! 覚えていろよ、あのガキーーーーー!」
星徒が一人の女性のことを思い浮かべて自宅へと帰る足を早めようとしたその時、道路を挟んだ向こう側の歩行者通路から男の怒声が聞こえてきた。
一体何事かと星徒が声の聞こえてきた方を見ると、向こう側の方向者通路をリーゼントの男を先頭にした数人の男達が全速力で走っているのが見えた。リーゼントの男達は全員が傷だらけであり、気のせいでなければ悔し涙を浮かべているようだった。
「何だあれは? ケンカでもしたのか? ……ん?」
走り去っていくリーゼントの男達を見た星徒は、自分の呟きにどこか引っかかる点があったような気がしたが、すぐに気のせいだと思うことにして自宅に帰ることにした。
それから数分後。やっと自分の自宅、とあるマンションの一室に辿り着くと、星徒は部屋のドアの前で向こう側の通路から見知った顔が近づいてくることに気づく。
「あっ、幽助君」
「おう、星徒。お前も今帰りか?」
星徒が声をかけると、向こう側の通路から来た星徒と同じ学生服を着た男子生徒が右手を挙げて返事をする。
浦飯幽助。
星徒と同じ皿屋敷中学の二年生で、皿屋敷中学をある意味有名にしている、この周辺で知らない者がいない二人の不良の一人である。
見れば幽助は服のいたるところが汚れており、顔もよく見れば誰かに殴られたような痕があって、それだけで星徒は幽助が少し前まで何をしていたのかを理解する。
「またケンカ?」
「おうよ。帰る途中によ、俺が学校サボった時によく行く空き地に桑原みてーな髪型をした男が『ここが俺達のベストプレイスだ』とか訳わかんねーことを言って占拠していたからよ、つるんでた仲間ごとボコってやったわ」
「桑原君みたいな髪型の男……」
笑いながら言う幽助の言葉に、星徒は帰る途中で見かけたリーゼントの男とその仲間と思われる男達のことを思い出す。すると幽助は先程とは違う種類の笑みを浮かべて星徒を見る。
「それにしてもこんな遅くまで夜遊びとは……星徒、お前も中々の
「そうかな? 俺は結構真面目な生徒のつもりだけど?」
星徒は若干心外そうに幽助に返事をする。確かに星徒は霊界探偵の任務で夜遅くに帰ることは多いが、普段の学校での授業態度は真面目だし、成績も学年上位であるため優等生の部類に入る。
しかしそれでも幽助はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべたまま星徒に話しかける。
「いやいや。一人暮らしの部屋に女を二人も連れ込んでいるなんて充分ワルだろ? いや〜、流石あのエロい坊さんの孫だけあってお盛んですなぁ?」
「……うっ」
幽助に自分の祖父のことを言われた星徒は痛いところを突かれたような顔をする。
星徒の「この世界」での両親は彼が産まれてすぐに他界しており、現在は寺の住職の祖父に引き取られて生活をしている。今住んでいるこのマンションの一室だって祖父の持ち物であるのだが、その星徒の祖父と言うのが寺の住職でありながら金儲けが趣味で愛人も五人以上いるという所謂生臭坊主であり、しかも自宅の部屋に女性が一人または二人いるという話も事実であるため星徒は何も言い返すことができなかった。
「まあ、痴情のもつれで刺されたりするなよ、色男? じゃあな」
「……はぁ」
幽助はそれだけ言うと自分の部屋に帰っていき、幽助が部屋に入ったのを確認した星徒は一つため息を吐いてから自分の部屋のドアを開き中へ入っていった。
「ただいま戻りました」
「おかえり、星徒君」
「おかえり、我が王よ」
星徒が部屋に入って言うと、リビングから二人の女性の声が返ってきた。リビングには水色の髪を後ろに縛った女性、そして夜空に浮かぶ月のような蒼白い髪と肌をした星徒の最愛の女性の姿があった。