ここだけレグルスに弟がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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パンドラさま、来ます。


短編 「もし……『私の弟』ではありませんか?」

 

華やかなお祭りをやっている街に来た。

 

街に入った途端、やぁ!ようこそ!まぁ!ようこそ!とニコニコした人たちから白い花で作られたネックレスをかけられて、花弁をはらはらとかけられる。

 

まるで結婚式のフラワーシャワーみたいだなぁ、と思う。

とっても綺麗だ、良い香りだねぇ、と笑いながら、歩いて行く。

 

街は豪華に飾り付けられていて、出店も沢山出ていてワクワクするねぇ、ヨグちゃん!

 

よお!にいちゃんたち、安くしとくぜ、なんせお祭りなんだからな!

楽しまなきゃ損だぜ!と気前の良さそうなおじさんが声をかけてくれて、丁度良いから話を聞く。

 

なんでも、この街ができてから100年のお祝いなんだそうだ。

 

 

教えてくださってありがとうございます、と頭を下げて、おじさんはリンガなんかで作られたジュースを売っていたのでお金を払って4ついただいて、みんなに渡して、一口飲む。

 

ん!!うわぁ〜!!!!!

これすっごく美味しい!!

目をキラキラさせて、美味しいですこれ、すご〜い!!果実の美味しさがこんなに閉じ込められている飲み物、初めて飲みました!えへへ、ボク、今すごい幸せです、と感想を言っていると、周りの人たちも、気になったらしい。

あらそんなに美味しいの、じゃあ私も、俺も1つ、と、どんどん売れて行く。

 

おぉ、確かに美味いな、土産に買っていくか、なんて声も聞こえる。

 

大盛況ですね、と声をかけて、邪魔にならない様にではまた、と離れようとすると待て待て、お前さんがそんなに美味そうに飲んでくれていたからこうなってるんだ、だからこれはおまけだ!もう1つ持っていきな、と、がははと豪快に笑いながら渡してくれた。

 

どこで買ったのか聞かれたら宣伝してくれよ?ガルケルの所で買ったって!と言われて、分かりました〜!ご馳走様です、と手を振って別れる。

 

おまけの1つ、どうしよ、と思っているとレグルズが貰ったんだから好きにして良いぜ、とスバルたちが言ってくれたからヨグちゃーん、と呼びかけて、虚数空間に入れておく。あ、もし飲みたかったら飲んで良いからね〜と付け加えて。

 

 

 

 

美味しいねぇ、美味しい、みんなで飲むともっと美味しいね、るんるんとご機嫌に歩きながら笑うレグルズの後ろに全力で喜びをあらわす様にブンブンと振られる大きな尻尾が見える、気がする。

 

いや、見える。なんなら耳も。

 

こいつ、そうだ、なんだか既視感があると思ったら、白くて大きいサモエドみたいだ、とスバルはこっそり笑う。

 

 

宿について、まだまだ宿までの道の出店しかさらっと見られていないので、ね、ね、お店見に行こうよ、きっと素敵な物が沢山あるし、ボクの権能も使って、ここに来ている人たち、ここに住んでいる人たちの事、色々識りたいなぁ!と身を乗り出してスバルたちに言う。

 

エミリアさんが、くすり、と手を口元に当てて笑いながら子供みたいでなんだか可愛いのね、と言うとそうだろう、そうだろう、何せ僕の自慢の弟なんだからそんなのは当たり前の事で、なんだ、今更気づいたの?あのさぁ、どれだけ君たちと一緒に過ごして来たと思っているんだい、普通もっと早く気づくべきで…え?気づいていた?じゃあさぁ、そう思ったのならそう言ってあげるっていう心遣いをする義務が…とまぁ、いつもの調子で兄さんが言うので、はいは〜い!今日はお祭り!みんなで楽しく過ごさなくちゃ!僕たちみんなにはその権利がありま〜す!と兄さんの口をそっと塞ぎながら言うと、その通りだな、ははっ、レグルス、言われてやんの〜とスバルくんがからかう。

 

 

 

早く行こ!と笑うと、おう、レグルスと先に行ってて良いぞ、たまにゃ、兄弟で過ごすのもありだろ、と言われて固まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

はぇ…え!?

 

 

ボクと兄さんだけでお出かけの許可がおりた!

これはなかなか、前代未聞の事だと思う。

 

だって逃げ出そうとすれば出来ちゃうんだから。

 

でも、良いぞって言ってくれた。

 

お出かけっていっても、すぐそこでやっているお祭りの出店をぐるっと見て来て良いよ、ってお話なんだけれど、それでも!

 

何驚いてんだ?どうせお前らは悪いことなんてしないだろ?しようとしてもレグルズが居るからな、兄弟仲良く行ってくれば良いじゃん、後で合流するからよってスバルが何の気なしに声をかけてくれて、ボクは、ボクと兄さんはとても驚いた。

 

 

だって、それって、仲間として少しは信用してくれて、ボクたちが悪いことをしでかさないって思ってくれているからであって…とにかく嬉しかったんだ。

 

だからスバルありがとう〜!!ってぎゅっとしてそのままぐるんぐるんとスバルを抱きしめたまま回って笑った。

 

スバルが、目が回る、吐く吐く、おま、やめ、と言うのであ、ごめんねぇ、と言ってから地面に降ろして、ぜぇぜぇしているスバルに気分がすっかり良くなる魔法をかけてあげて、ありがとな、いやレグルズのせいだからありがとうも違うか、いやでもありがとなと笑うので、ごめんねスバル、嬉しくてつい、何か素敵な物が売っていたら、それをあげるね!とニコニコしながら言う。

 

 

 

 

久しぶりに兄さんとお出かけ!

それだけでボクはご機嫌だった。わ〜い!

 

兄さんとお出かけなんて久しぶりだねぇ!と兄さんの腕を引っ張って、早く行こう、と笑いかける。

 

 

あのさぁ、レグルズ、いや僕と2人で出かけられて嬉しい気持ちは分かるよ?

僕だって大切な弟と久しぶりに2人で出かけられるのはとても嬉しい事だからね。でももう少し落ち着いて行動しないと…あっ、ほら、転けた。もう、今丁度段差があるって注意してあげようと思ったのに、さぁ。ほら、手を掴んで良いよ。よっ、と。興味がある事、好きな事に夢中になれる事は良い事だと思うよ、お前の場合、特にそれが僕たちの生活の質を上げる事に繋がったりするからね。でもねぇ、そうやって目先の事にばかり夢中になった結果転んだだろう?もっと周りを見て行動しないと、そもそも子供っぽいんだから余計な怪我を増やさない様にしないといけないよ、僕みたいに落ち着いて、心に余裕を持ってゆったりと満たされている状態を作るべきだね。そうでなければいくらお前が傷を巻き戻せるからといっても自分を粗末に扱う事になってしまうからね、そんな事、赦されない行為なんだからそこの所しっかり把握しておいてほしいな。

 

兄さんからの注意にはぁい、とのんびり返事をしていると、やれやれ、これだから僕が、完璧で完成されていて完全で満たされているこの僕が兄で良かったよ、と額に手を当てて首を振って言うので、ボクは、ボクもね、兄さんが兄さんで良かったなあっていつも思っているよ、とゆるりと笑って、長い三つ編みをぴょこぴょこと動かしながらじゃ、行こ〜!と今度はしっかり僕の横に並んでゆったり歩き出す。

 

 

本当に、なんというか毒気を抜かれる弟だ、言葉1つで、兄さんで良かったなんて言葉だけでこんなにも心が温かくなるのだから。

 

 

仕方ないなぁ、と宿から出て、誰も居ない裏の路地を歩いている時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、コルニアス司教」

 

 

 

背後から、澄んだ、しかし落ち着いたまるで子供の様な声がかかる。

 

…パンドラ"さま"だ。

振り返るといつもと同じ格好で、微笑みを湛えてこちらを見上げている。

 

 

 

えっと、兄さんの知り合いの方?子供…ではないね、強い力を感じる。

兄さんの事を、司教って呼ぶって事は魔女教の方なのかなぁ。

とっても綺麗な人。でも少し寒そうな格好、ここは暖かいから良いけれど、風邪ひかないか心配だなぁ、あ、でもそうみてみると全体が白に統一されていて、差し色の青が相まってなんだか雪の精霊さんみたいだな。

 

 

ぼんやりパンドラさまを見つめる弟は、きっと"兄さんの事を司教って呼ぶって事は、魔女教の方なのかなぁ"とかのんきに思っているんだろう、こいつのことを弟に言うのを忘れていた。クソ、失態だ。

 

弟はパンドラさまと僕をじっと見比べている。

 

 

「こんにちは、パンドラさま。こんな所でお会いするとは思っていませんでしたよ。何かご用ですか?そうでないなら、僕たちは失礼しますが」

 

 

一応、敬意を評してお辞儀をしながら伺う。

にこり、と凪いだ様な笑みを浮かべるその真意が分からない。

 

 

 

「そちらの方は、コルニアス司教のご兄弟でしょうか…?良く似ていますね、双子、でしょうか?」

 

 

 

チッ…。内心、舌打ちをする。

本当に面倒くさいな、会話が成立していないじゃないか!

 

というか弟に興味を示さないで欲しい、関わらないで欲しい、絶対に面倒な事になるに決まっているのだから。

弟に何かしてきたら、僕はこの女を殺さなくちゃいけなくなる、それってつまり僕を加害者にする為に仕向けられた事であって、仕方なく殺す事になっても、僕や弟の気分を害する、あってはならない重篤な僕たちへの権利の侵害だ。

 

 

 

そんな事を考えている僕とは対照的に、レグルズは明るく答える。

 

 

「あの、ボクもパンドラさま、と呼ばせていただいてもよろしいでしょうか…?

…ありがとうございます!初めまして、パンドラさま!ボクは兄さん、えっと、レグルス・コルニアスの双子の弟のレグルズ・コルニアスです。一応、強欲担当の2人目をさせていただいております。貴女は、魔女教の偉い方ですよね、兄が敬称をつけて名前をお呼びしていましたから。ボク、他の魔女教の方と、しかも立場が上の方とお会いするのは初めてで、とても光栄に思います。よろしくお願いします」

 

 

ぺこ、と腰を綺麗に折って、肩口から三つ編みがゆらゆらと揺れて、3秒ほどそうしてから、人当たりのいい顔でにこにこしながら元の姿勢にぴしっと戻る。

 

 

普段はのんびりしているくせに、こういう所はしっかりしているんだよなぁ、と思う。

 

 

 

で、現実に戻る。

 

そうだった、こいつ、パンドラさまに会うのは初めてだった、エリオール大森林の時も居なかったし、そもそも僕から強奪した権能だから福音書もなければ指示もない。

 

 

「まぁ、丁寧なご挨拶、ありがとうございます。私は虚飾の魔女、パンドラと申します。今日はコルニアス司教に福音書の導きになぜここの所従っていないのか、それを尋ねに来たのですが…」

 

 

 

そうか、福音書。暫く見る事も忘れていた。

 

そもそも僕は、まぁ一応、あいつらに歩み寄って今は一緒に居てやっているんだから、それを無視していたと捉えられても仕方がない。

 

さて、なんて言い訳をしようかと考えていた時だった。

 

 

 

 

 

「ですが、気が変わりました。コルニアス司教は双子だったのですね、大変可愛らしく、そして聡明に見えます。貴方の権能について伺っても?」

 

 

……おい、おいおいおい、待て、まずい、興味が完全に弟に向けられた事を察する。ヤバい奴とヤバい奴が出会ったらどうなるかなんて馬鹿でも分かる。

  

 

 

『めちゃくちゃにヤバい』その一言に尽きる。

 

 

弟はそんな事まるで気にしていない様子で、というかコイツのヤバさを知らないからそう振る舞えるんだろうけれども、いつもの調子で丁寧に対応しだす。

 

 

はい、パンドラさま。

ボクの権能は兄から、えっと、ヨグちゃんの力を使って強奪したので、兄の劣化版と言えます。

ボクだけの権能は対象範囲内の人物の記憶を識る事が出来るというだけのもので…

 

 

謙遜しなくていいのですよ、それは人々の持つ苦難や喜び、愛や幸せを識る事が出来る素晴らしい権能ですね。

 

それで…もし、その、ヨグちゃん、というのは…?

 

 

失礼しました、説明不足でしたね、お詫びいたします。

 

ヨグちゃんは、うぅん、外なる神さま、この世界とは隔絶された世界の神さまでして、あらゆる時空を操り、知識を有する神さまなのですが、この世界の事は分からない、との事ですので、ボクが依代としてヨグちゃんの代わりに色々な事を見て、体験して、味わって、喰らい尽くして識る、そういった事をしています。

 

その代わりに、力を貸していただいていて、時間や空間の操作、例えば虚数空間に物を収容したり、巻き戻して復元させたり、事象をなかった事にする、といった事が少しばかり出来ます。

 

 

まぁ、なんという偶然。

私の虚飾の力も、事象を書き換えの力ですから、言い換えればなかった事にする事が出来るのですよ、ふふっ、お揃いですね。

 

 

わぁ!本当ですか、それは大変光栄な事です、嬉しいなぁ、素晴らしい力をお持ちなのですね、とのんきに世間話や子供同士が楽しい話をするかの様に、2人で話を続けている。

 

 

…何だこれ。

何を見せられているんだ僕は。

 

 

パンドラさまは雪の様に白くて美しいですね、先ほど振り返った時に最初、雪の精霊さんかと思いました!

 

あらあら。嬉しい事を言ってくれますね、レグルズ、貴方は主人に忠実な可愛らしい愛玩動物の様です。

 

そうですね、私も、貴方の様な弟、という存在が欲しくなりました。

 

 

 

おい待て、さらっと人の弟の事を勝手に名前呼びするな、というか何を言い出しているんだこの女。

 

わ〜!ボクもパンドラさまみたいなお姉さんが居たらきっと嬉しいです!

きゃっきゃ、うふふ、あははっ、2人の間に花が、ぽわぽわとした花の幻覚が見え始めた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、そういたしましょう」

 

 

 

 

……………は?

 

 

 

「コルニアス司教の双子の弟は、実は私の…」

 

 

っ!このクソ女ァ!!

 

空気を刃に変えて真っ二つにして喋られなくする。

 

それも直ぐに"見間違え"にされるとしても、人様の大切な弟をこんな奴に取られるなんて考えたくもない、非人道的で悪質な行いだ!!!!

赦されない、赦されて良いはずがない!

 

 

ちょ、っと兄さん何しているの!?と慌てるレグルズに、あのクソ女、事象の書き換えで好き勝手しようとしやがって、人様の家族を、大切な双子の弟を自分だけの弟にしようと、僕の記憶からも消そうとしたんだ、そうなると強制的にお前は何の疑いも持たずにあいつの弟として一緒に過ごしていた事に書き換えられる、不快だ、不愉快極まりない、恐ろしい行為だ!!!

 

これまでの思い出も何もかも奪われて好き勝手に弄られる下劣な事をあの女はしようとした、だから殺した!でも直ぐ見間違えとか言ってそこいらに現れるはずだ、と伝えて、動向を注視する。

 

 

 

 

 

 

 

 

…もし、『何かの見間違え』ではありませんか?

 

 

 

ほら来た、何でも出来るからって、好き勝手やって赦されると思うなよっ!

と喋る間もなくもう一撃喰らわせようとして、兄さん、ちょっと待って、パンドラさまも、どうか少しだけお待ちいただいて…とレグルズがあわあわしながら間に入って喋り出す。

 

 

不毛な争いは良くありません、ボクたちは平和主義者ですし、パンドラさまがいくらなかった事に出来るとはいえ、ボクはあなたが殺されてしまうのを黙って見てはいられません。

 

 

 

一旦お話を整理いたしましょう。

 

 

パンドラさまは、ボクを弟に欲しい、そういうお話でよろしいでしょうか…?

 

はい、貴方は私の弟にピッタリです、虚飾の権能を行使してでも、ぜひとも家族に迎え入れたいと思ったのは、初めての事。

 

これは…愛、そうですね、貴方からは兄のコルニアス司教に対する深い愛情を感じますから、その素晴らしい愛を、私も感じたいのです。

ですから、ね?

 

 

ええっと…はい、お話は分かりました。

 

 

次に、兄さん。

 

兄さんは「お前が!あの女の!!弟になる、だって!!??ふざけるのも大概にして欲しいな、ぜっっっったいに、絶対に僕は嫌だ!!拒否する!お前は僕の、僕だけの双子の弟だろ!?だからそんな嘘に塗れた虚飾、まっぴらごめんだね!!!!それを言えるだけの権利が僕にはある!」

 

うん…だよねぇ。

 

 

 

 

う〜ん、と首を傾げて、思考を巡らせる。

 

きっと良い案があるはず。

 

 

 

あっ、と思い付き、ぱちんと手をあわせて、これはいかがでしょうか?と提案する。

 

 

ボクには勿体無い言葉ですが、パンドラさまは僕を権能を使ってでも弟にしたい。

えぇ、その通りですよ、レグルズ、さぁ家族になりましょう。

 

けれども権能を行使すると僕の存在は最初からパンドラさまの弟だった事に書き換えられてしまう。

だから兄さんは、ボクが兄さんの記憶から消えて、パンドラさまの弟だった事になるのは嫌だ。

 

残念ですが、これはボクも首を縦に振る事は出来ません…やはり兄さんの事が大切です、ボクも思い出の数々を忘れたくはありませんから。

 

 

 

でしたら『コルニアス司教の双子の弟は、私の弟でもある』何て書き換えはどうでしょうか?

 

 

そうすれば、ボクはパンドラさまの弟でもあり、今まで通り兄さんの双子の弟でもあります。

 

 

 

2人は、少し沈黙してから、それは素敵な提案ですね、コルニアス司教はいかがですか?と尋ね、本当に、本当に、ほんっっとうに不服だけれどパンドラさまは引かないだろうから、それで良い。

 

ここで断って変に権能を行使されても困るしね。

だいたい、お前が僕の大切な双子の弟のままなら"おまけ"がついた所で変わらない、と双方納得してもらえて、良かったぁ、とへにゃりと笑う。

 

無限に殺し合う事なんて起きなくて本当に良かった。

 

 

 

パンドラさまは、レグルズ、しゃがんで目を瞑ってください、と言うので、はぁい、としゃがむと、頬をそっと小さな手で包まれて、額に一瞬柔らかな感触がして、ふふっ、弟が出来るとは思っていませんでした、これも、愛の形。

素晴らしいですね、良い経験をしましたから、福音書の件は一旦置いておきましょう、と言われる。

 

 

…あ、え?今、もしかして、きす、された!?

きゃ、恥ずかしい〜!と顔を赤くすると、姉弟ですから挨拶替わりですよ、と笑われ、それを見た兄さんがすっ飛んで来て不潔だ不潔だ不潔だ不潔だ不潔だ不潔だ不潔だ不潔だ不潔だ不潔だ不潔だ不潔だ不潔だと繰り返し呟きながら額を擦り切れるんじゃないかってくらい服の袖で擦られた。

 

 

では、またお会いしましょうね、と路地へ消えていく姿に、はーいと手を振って、じゃ、お祭りに行こうよ、大好きなボクの兄さん、と声をかけて、お前ってやつは、もう…考えるだけで無駄か、あぁ良いよ、行こう、と手を引かれて歩き出す。

 

 

なんだか不思議なお姉さんが出来た、そんなある日の出来事のお話。

 

 




額へのキスは親愛、祝福、無償の愛やめちゃかわいいね等々という気持ちを表すそうですね。
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