どけ!!俺は(ヒミコの)お兄ちゃんだぞ!!   作:俺はお兄ちゃんだぞ!!

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十三話

「・・・・ここっぽいです」

 

術式から感じる自分の血の気配を辿り進む。

到着した場所は古いアパートだった。

 

同じように錆びた階段を上って気配のある部屋に到着する。

そして部屋に取り付けられたチャイムを押した。

 

しばらくするとインターホンから声が届いた。

 

「はーい、どちら様かしら」

 

「こんにちは。遊びに来ました」

 

耳に届くのは聞き覚えのある男の人の声。

それに対し笑顔で答える。

 

「・・・・」

 

するとインターホン先で感じる一瞬の無言。

やがて大慌てで走り回る音がし始める。

 

これ逃げる流れだ。

 

呪力を身体に回して壁を伝い逃走経路に先回りする。

たぶん扉とは反対の窓から逃げると思うからそっちに行けば。

 

「なんであの子がここに、とにかく急いで逃げなきゃ」

 

「逃げちゃダメです」

 

予想通り窓を開けて逃げようとした彼と鉢合わせる。

私が現れたことで身体を硬直させている、その隙を逃さず相手を押しのけて部屋に侵入する。

 

「いやぁぁぁ!不審者!なんであなたがここに来るのよ!?」

 

「遊びに来ただけです」

 

「気軽に遊びに来てんじゃないわよ!そもそもどうしてこの場所が」

 

女の子みたいな話し方をする彼に首を傾げながらも秘密と答える。

私がこの人を追跡できた理由は術式にある。

 

私は自分の血ならある程度離れたところにあるものでも、その場所を感覚で把握できる。

 

この人には前に攫われた時に血をつけておいた。

服についた血は洗って落とされたみたいだけど、彼が持っていた武器には私の血がついたままだった。

 

「あ、あなたがここに来たってことはあの怖いお兄さんも一緒なの!?」

 

「お兄ちゃんはヒーロー活動で別のとこにいます」

 

「じゃ、じゃあ他のヒーローは、警察は!?」

 

「私一人です」

 

慌てて周りを確認する様子に淡々と答える。

本当のことだから信用してほしい。

 

ていうかその場合は私がこうして現れる前にヒーローが取り囲んでいるはずだ。

 

私がそう言えば彼は大人しくなった。

 

そして警戒したように私を見ながら口を開く。

 

「・・・・それで、遊びに来たってどういう意味よ」

 

「お話がしたいんです」

 

この人達は本当の私を知っている。

知ってなお、私を受け入れて仲間に誘っていた。

 

だから私も知りたい、この人達のことを。

 

「教えてください、あなたのことを」

 

「・・・・無理ね、信頼できない。個人情報を自分から渡すなんて自分を追い込んでいるようなもの」

 

「むぅ、じゃあ私のことを聞いてください」

 

私も本当の自分のことを誰にでも話すわけじゃない。

仲良くなりたい人、そして信頼関係が十分できたと思った時にしか話さない。

 

まずは私の方から踏み込もう。

 

自分の過去、血が好きなこと、血だらけの姿がかぁいくて見たくなること、好きな人になりたくなること。

両親のこと、そしてお兄ちゃんのこと。

彼は警戒していたけど、それでも私の話をちゃんと聞いてくれていた。

 

「・・・・知ってはいたけど、あなたもなかなか難儀なものね。ほんと、どうしてそっちにいるの?」

 

「・・・・」

 

私の話を聞き終えた彼は自分の感想を口にした。

彼の言う通り、そっち側であなた達の仲間になってた未来も十分あり得たと思う。

 

そうならなかった理由はたった一つ。

 

「私にはお兄ちゃんがいたから」

 

辛い時はずっと一緒にいてくれて、私のことを受け入れてくれた初めての人。

お兄ちゃんがいなかったらなんて、想像したくもない。

 

「兄妹愛ってやつ?羨ましいわ、私は一人っ子だったから」

 

そう言った後、彼はグラサン越しに外の景色を見る。

どこか遠くを見るその様子は過去のことを思い出しているのか。

 

その様子に少し空気が重くなる。

明るくするために用意しておいた物を見せる。

 

「シュークリーム買ってきました。一緒にどうです?」

 

「あらいいじゃない!私甘いもの大好きなの!紅茶の用意しなきゃ」

 

さっきまでの暗い様子が吹き飛びルンルンとスキップしながらコップに紅茶を注いでくれる。

そうして用意してくれた紅茶に口をつけながらシュークリームを一緒に頬張る。

 

美味しい・・・・・むっ。

 

「睡眠薬でも盛りました?」

 

「あら?バレちゃったかしら、ていうか不用心すぎるわよ。仮にもここは敵地なんだから」

 

「あなたもシュークリーム食べてます」

 

まぁこういった薬は赤血操術で血中の細胞を操作すればどうにでも出来る。

反転術式もあるし、毒の類は私には効かない。

 

「・・・・流石あの怖いお兄ちゃんの妹、これくらい軽く流しちゃうのね」

 

そう言ってため息を吐く彼を見て仲良くなるには時間がかかるなと思った。

まぁ彼からしたら私は敵だ、警戒して当然だしそう簡単に心開いてくれるわけもない。

 

さっきから自分の武器をチラチラ見てるし、私の動きや周りの音も聞き洩らさないようにしてる。

・・・・今日はこれ以上話しても仲良くはなれそうにない。

 

「今日はこれで帰ります」

 

「・・・・そう。もう会わないことを祈るわ」

 

そういう彼に首を傾げる。

もう会わない、それは無理な話。だって

 

「え、明日も来ますよ?だって日曜で学校もお休みなので」

 

「来てんじゃないわよ!!」

 

叫ぶ彼に笑って手を振り部屋を後にする。

一日で仲良くなれるとは思ってない、時間をかけて知っていくつもりだ。

先生が捕まっている以上、仮にこの人達に襲われても私一人で逃げだすことは簡単に出来る。

 

また逃げても追いかけられるように血をこっそりと彼と武器につけておいたから大丈夫。

 

今は名前すら教えてもらえないけど、こうして会っていけばお互いを名前で呼び合える時は来ると思う。

 

ひとまず今日はもう一人か二人に会ってみよう、あの手だらけの人と火傷の人以外で。

会って仲良くなれるかはわからない、けれどこのままじっとしているのは嫌だった。

 

私達全員が納得できる未来があると信じて動くしかない。

そう思い私は次の場所を目指して駆けだした。

 

 

 

『緑谷出久くんへ。お伝えしたいことがあるのでよかったら放課後に校舎裏に来てくれると嬉しいです』

 

僕は今、めちゃくちゃ緊張している。

心臓が早鐘の様になって汗が止まらない。

 

もしかしたら雄英の入試試験の時よりも緊張しているかもしれない。

 

場所は指定された校舎裏、まだ僕以外来ていない。

今朝僕の机の上に置かれていた手紙を汗ばんだ手で握る。

手紙の主はあの渡我被身子先輩。

 

その名前を見て思い出すのは脹相先輩とのやり取り。

彼女が、ぼ、ぼぼぼぼくのことをそのすっという話。

 

いやいや、でもあれは脹相先輩の勘違いだ、だって接点がないんだから。

 

彼女が攫われ、それを脹相先輩と通形先輩が助け出した話は記憶に新しい。

テレビ中継に映し出された彼らが戦う映像を見て戦慄した。

彼らはあのオールマイトにすら迫る実力なんじゃないかとすら思った。

 

最終的にはオールマイトが相手を倒していたけれど、もしあのまま続いていても彼らが勝っていたはずだ。

 

無事に三人が戻ってきて、一時的な休校明けから登校が再開され彼らも何事もなかったみたいに学校に来ていた。

 

被身子先輩が麗日さんと話していたのは見たけど当然僕は話していない。

だからやっぱりあれは勘違いで、このまま彼女と話すこともないと思っていた矢先だった。

 

机に置かれた可愛らしい手紙、そしてその送り主。

震える手で中身を見て、ほわぁ!?と声が出た。

 

どうみても“あれ”を思わせる内容だった。

定番の、その、んんをする感じの。

 

っ、いやいやいやだからこれは勘違いだ!きっと手紙の書き方でそう思ってしまっただけで。

 

机に置かれていた手紙はクラスのみんなにも見つかり一気に大騒ぎになった。

男子から怨嗟の声が、女子からは黄色い声が上がって相澤先生が来ても騒ぎが収まらず怒られてしまった。

 

そのせいで朝から今までせっかくの授業に身が入らなくてダメだった。

 

“あれ”とは限らないし、何か別の用事の可能性の方が高い以上行かないわけにはいかない。

 

こうして僕は今、震える手足と飛び出しそうな心臓を抑えつけながら彼女が来るのを待っている。

自分の鼓動を聞きながら待つこと数十秒、彼女が僕の視界に現れた。

 

「あ、もう来てくれていたんですね」

 

「は、ははい!!」

 

僕が返事をすると彼女は嬉しそうに笑う。

震える手で持っていた手紙を前に出しながら口を開く。

 

「こ、ここの手紙で呼んでき来たんですけど、お伝えしたいことって」

 

「えへへ、一回こういう風に校舎裏に呼んでみたかったのです、それで呼んだ理由は」

 

笑いながら彼女は自分のポケットに手を入れて何かを取り出す。

何かのチケット、二つある内の一枚を僕に渡してくれた。

 

見れば有名な遊園地のチケットだった。

渡されたそれを見て思考が固まる、どうしてこれを僕に。

 

「一緒にここに行きたいんです。()()()()()()

 

「・・・・」

 

その言葉に思考だけじゃなく身体も石のようにピタリと固まった。

遊園地に二人で行く?僕と彼女で?

 

その意味と理由を考える、え、それってデー

 

「んん!!?」

 

思考が戻ると同時に身体が頭の先からつま先まで一気に燃え上がる。

な、んでどうして、り、理由がわからない。だって僕と先輩はろくに話したことも。

 

「・・・・ダメ、ですか?」

 

頬を紅潮させながら不安そうな顔をする先輩に言葉が詰まる。

ダメっていうか、いやあの女の子と二人っきりで遊園地なんて状況に僕が耐えられるとは。

 

それにあの人気者の被身子先輩、僕なんかじゃ恐れ多いというか。

一緒に行く姿を想像しただけで頭の中が爆発しそうになる。

 

真っ赤な顔のまま遠慮しようと口を開こうとした瞬間。

 

「・・・・超新星」

 

「あ、あのぶべら!!?」

 

いきなり何かで後頭部を叩かれたような衝撃に襲われる。

その勢いで頭が前のめりになってこけそうになる。

 

けれど僕がこける前にまた何かの衝撃が今度は僕の額に発生して元の位置に戻された。

 

――――そしてそれが連続して僕へと襲い掛かってきた。

 

「ぼ、ぼぼぼぼぼっ!!?」

 

頭の前後で起こる衝撃に僕は振り子のように頭を上下に振ることになる。

な、なにが起こってるんだ!!?

 

「わぁ!一緒に行ってくれるんですか?」

 

僕が衝撃で頭を縦に振っているのを了承と思った被身子先輩が嬉しそうに顔を綻ばせる。

慌てながら反射的に何かを言おうとした僕の耳に、消え入りそうな小さな声が届いた。

 

「・・・・断れば殺す」

 

「ころっ!!?」

 

声がした方を見ても誰もいない、いや今一瞬だけど通形先輩が学校の壁に消えていったような気がした。

 

今の声は間違いなく脹相先輩だった。どうやってか僕だけに聞こえるくらいの声で話しかけて来た。

 

「大丈夫です?」

 

不思議そうに首を傾げる被身子先輩、さっきの声は聞こえてないみたいだ。

もし断ったら・・・・あの人なら本当に“や”りかねない。

 

僕は色々な意味で心臓と身体を震わせながら遊園地に二人で行くことを了承することになった。

 

 

 

 

「緑谷ぁぁこんなに誰かを呪いたいと思ったのは初めてだぁぁぁ!!」

 

放課後の教室に峰田くんの怨嗟の籠った声が響く。

もう授業は終わって帰るはずなのに、みんな帰らず教室に残っている。

 

その理由はたった一つ、今朝デクくんがもらったあの手紙が理由だ。

 

「ちくしょぉぉぉ!!しかも相手はあの渡我先輩かよぉ!くそうらやまなんですけどぉぉぉ!!」

 

「峰田上鳴うるさい!声が聞こえないじゃん!!」

 

叫ぶ二人に芦戸さんが睨みつけながらそう言う。

それで静かになった二人を無視して私達はトランシーバーから伝わる声に集中する。

 

「葉隠さん、機械の調子はどうですか。私達の声は聞こえますか」

 

『うん大丈夫。そっちも私の声聞こえてる?』

 

トランシーバーから葉隠さんの声が届く。

今、彼女は自分の個性である透明を使ってデク君を追跡している最中だ。

 

機械はすぐに八百万さんが作ってくれた、意外とノリノリだった。

 

今朝デク君が固まっているのを不思議に思ったみんなが手紙を盗み見て大騒ぎになった。

どう見ても内容は告白の定番のようなものだったから余計に。

 

しかも送り主はあの被身子先輩。

 

同い年じゃなくて先輩というのもさらにみんなを興奮させている。

けれどみんな半信半疑って感じだった。

 

いたずらかもしれないと言う人もいたけれど、私はこれが本物だとわかっている。

 

なぜなら先輩本人が私に伝えていたから。

デク君のことが好きだって、つまりあの手紙の内容は本物ってことで。

 

「・・・・ぅ」

 

心臓が締め付けられる感じ、鼓動が痛くて苦しい。

デク君、どうするんだろう。もし被身子先輩に告白されたら。

 

それを想像して・・・・嫌な気持ちになった。

 

「みんなお静かに!緑谷さんが現場に到着しましたわ」

 

八百万さんのその言葉に全員が静かになる。

みんなが緊張しながら状況を見守る中、先輩とデク君が合流する。

 

そして伝えられたその内容は遊園地へのお誘いだった。

 

「これってデートってことだよね!?そうだよね!!?」

 

「ちくしょぉぉぉ!男子のいたずらじゃねぇのかよぉぉ!!」

 

「にしても意外っていうか、緑谷と渡我先輩って接点なかったらしいけど」

 

内容を聞いて全員が思い思いに感想を話す。

告白じゃなかったけど、似たようなものだ。被身子先輩は本気でデク君のこと。

 

『・・・・焦らないと取っちゃいますよ』

 

「・・・・え」

 

トランシーバー越しに先輩の声が届く。

みんなは騒いでいて聞いていない、私だけだ。

 

デク君に言っている?いやこれはたぶん。

 

『やばっ先輩に気付かれたかも』

 

そう言って葉隠さんが慌てながら移動する音が聞こえる。

やっぱり見つかってたんだ、じゃあ今のはデク君じゃなくて私に・・・・。

 

みんなも気づいたのか葉隠さんに逃げるように言っている。

そうしていると、いきなり葉隠さんの悲鳴が教室に響いた。

 

『きゃぁぁぁぁぁぁ!!?』

 

「っ!?葉隠さん!どうしたんですの!?」

 

突然の叫び声に緊張が走る。

全員が焦りながら彼女の次の言葉を待っていた。

 

『ぜ、全裸の男の人がいきなり出て来たんだよぉぉぉ!!?』

 

「いや葉隠もいま全裸じゃん」

 

上鳴くんからそんなツッコミが漏れる。

たぶんあの先輩だ、被身子先輩と話すようになってからたまに話してて知ってる。

 

もしかしたら向こうも向こうで私達と同じように盗み聞きしていたのかな。

 

「日付は今週の日曜だって!ねぇねぇみんなで見に行こうよー!!」

 

「いいね面白そうじゃん」

 

芦戸さんの言葉に耳郎ちゃんが了承する。

他のみんなも面白そうだとついていく気のようだ。

 

・・・・私は。

 

 

 

 




今回短めですいません。

先週投稿した話のあとがきで、もし鬼滅の刃の炭治郎が轟家の長男になったらという話をどんな展開になるかと書きました。

読んでみたいという感想があったので一話分だけ書いてみました。

これを書いていたため短めになりました、同時に書くもんじゃねぇや。
ちょっとだけ書くはずが文字数で言えば今回の話の倍あるし。

興味がある人はどうぞ。

https://syosetu.org/novel/395062/






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