でもそうすると未来融合が装備カードになりその場で出てくるというもはや未来の部分の要素がなくなるという悲劇に見舞われるんですが…頑張れ九鬼先生!
初デュエル~♫
「なぜワタクシがあんなドロップアウトボーイに・・!」
クロノス=デ=メディチは吐き捨てるように呟いた。
35歳の、背の高い白人。デュエル・アカデミアに勤務する教師にして実技担当最高責任者。
『暗黒の中世デッキ』と呼ばれるデッキを使用し、その切り札である『
「あのクロノス先生が受験生に負けるなんて…」
会場からデュエルを見学していた生徒の声がクロノスの耳に届く。
受験番号110番、遊城十代(ゆうきじゅうだい)。つい今し方、この伝説を破った男。
筆記試験の成績も低く、実技試験には遅刻してくるような男が、クロノスを破ったのである。
(ワタクシの名誉が音を立てて崩れ堕ちていくのを感じるノーネ…)
クロノスの足元がぐらつく。多くの生徒が集まるこの場所で、能天気な勘違いヤロウに自分が敗北した。
どうしようもない現実がクロノスを
『試験が全て終了しました。お疲れ様です。ではここで、先生方による模範デュエルを行います』
そこでアナウンスが流れた。
クロノスは思い出す。新任教師との模範デュエル。苦渋に歪んでいたクロノスの顔に笑みが浮かぶ。
(これナノーネ…新任教師には悪いケード、ワタクシの名誉回復の為の生贄になってもらウーノ)
『では新任の九鬼優亜先生、デュエル場にどうぞ』
ざわついた会場に静寂が戻ったところで、コツコツと小気味の良い足音が聞こえてくる。
シルエットから、足音の主が女性であることがわかる。
やがてデュエル場に現れたのは、とてつもない美女。
スタイルの良い、銀の髪をした童顔の美人が、デュエルディスクを構えていた。
普段のクロノスなら『美しいノーネ!その御御足でワタクシを踏んでほしイーノ!!』などと大騒ぎしていたかもしれない。
しかし今のクロノスの眼には、哀れな自分の踏み台にしか映らない。
クロノス=デ=メディチは、自らの
(こりゃぁ、十代にやられた腹いせに本気でくるつもりじゃん)
血走った眼をしたクロノスを一瞥し、優亜は他人事のように笑う。
自分を紹介するアナウンスを聞き流し、この先の展開に心を躍らせる。
無理やり働かされる鬱憤は目の前の似非外人で晴らさせてもらうとして、自分は今、未知の世界にいる。
ソリッドヴィジョンを体感できる。そう思うと、自然と心が沸き上がるのを感じた。
(ゲーマーとして、OCGプレイヤーとしてこれほど嬉しいことはないじゃん?)
「おいおい…新任の教師が模範デュエルかよ…しかも女だぜ?」
「…ふ、ふつくしい」
「カワイそー」
生徒たちの舐めきった声さえ、今の彼女には心地よい。
自分は今、生きているのだ。
やがてアナウンスが終わり、彼女はデュエルディスクを構えて相手の様子を伺った。
散々校長の長話に付き合ってきたわけだが、もう我慢の限界だ。血を魅せろ。
それぞれの思惑が交差し、互いに(悪意に満ちた)笑みを浮かべる。
「ではお嬢さん、デュエルを始めるノーネ!!」
「待ちわびたじゃんよぉ…!!」
「「
九鬼 LP:4000
クロノス LP:4000
「先行はそちらに譲るノーネ。レディファーストなノーネ」
「とか言って、様子見したいだけじゃん?私のターン、ドロー!」
ドローしたカードを見て、優亜の顔が少し歪む。所謂、手札事故である。
とはいえ、予想通りでもある。彼女が現在使っているデッキでは日常茶飯事ともいえるのだ。
「メインに入るじゃん、私は手札から魔法カード『打出の小槌』を発動!手札のカードを任意の枚数デッキに戻し、その枚数だけドローするじゃん」
「あれは打出の小槌!」「すげぇ、レアカードじゃねぇか!」
優亜の使用したカードに会場のざわめきが強くなり、クロノスも目を見開く。
(…あん?レアカード?私の世界じゃ100円もしないのにな。売り飛ばしたらいくらになるのかしら?)
「ふん、まあ中々いいカードを持ってるようナノーネ。でも私のアンティーク・ギアには遠く及ばないノーネ!」
(アンティークデッキなら私も持ってるんだがなぁ…。ギアタウンとかガジェルドラゴンとか入れてるし。古代の機械使えばよかったじゃん)
この世界における高級デッキが――ストラクチャーデッキで簡単に組めると知ったら、子供のお小遣いで古代の機械巨人が買えると知ったらクロノスはどんな反応するのか。
―――見てみたい。
若干邪悪な笑みを零してしまったが、気を取り直し、先ほどの効果で引いたカードに視線を向ける。
結果はまずまずといったところであろうか。サーチカードさえあれば仕留められる、言わばリーチの状態。
「私は永続魔法『魂吸収』を発動するじゃん。このカードが場に存在する限りカードがゲームから除外される度に1枚につ500ライフポイントを回復する。更にカードを二枚セットして、ターンを終了するじゃんよ」
周りから生徒達の訝しむ声や嘲りの声が聞こえてくる。やれモンスターを召喚していないだの手札交換しといて事故だの。
(コイツら遊戯王が発達した世界の人間の癖に頭悪いな。こんな馬鹿どもを私は教育しなきゃならないのか?)
内心で憤りを蓄える優亜をよそに、クロノスがカードを引く。
「ではワタクシのターンなノーね。見栄を張っておいてその程度とは、少々ガッカリデスーノ」
落胆の表情を見せつつ、内心でクロノスは二枚の伏せカードを警戒する。
(とはいえ…厄介なノーネ…少し様子を見たほうが良さそうデスーノ…)
「あれれぇ?もしかしてクロノス先生も事故っちゃいましたぁ?手が止まってるようですけど、御自慢のガラクタ人形が出せないとか?」
どこかの頭脳が大人の少年探偵のような声色で優亜が言う。正直うウザい。
しかもどこかニタニタした感じのGE☆SU顔である。
元々冷静ではなかったクロノスの頭に完全に血が登る。
「ムッキー! そんなに見たいなら魅せてあげるノーネ!
手札から魔法カード天使の施しを発動!デッキからカードを3枚ドローして二枚捨てるノーネ!!」
「…あ、そうか。こちらでは禁止じゃないのか…。トリシューラ歓喜じゃん」
ブツブツと呟く優亜を怯えていると判断したのか、クロノスのテンションはウナギのぼりに上昇する。
「ワタクシのテンションが有頂天に達したノーネ!かなぐり捨ててヤルーノ!更に手札から魔法カード『磁力の召還円LV2』を発動するノーネ
このカードは自分の手札からLV2以下の機械族モンスターを一体特殊召還するノーネ 出でよ『古代の歯車』!」
フィールドに突如魔方陣が描き出され、そこから歯車が現れる。
『古代の歯車』
星2/地属性/機械族/攻 100/守 800
「そして『古代の歯車』の効果発動! 自分フィールド上に『古代の歯車』が表側表示で存在するとき、手札から同名モンスターを攻撃表示で特殊召還することができルーノ!そしてこの二体の『古代の歯車』を生贄に捧げて――見せてあげるノーネ! 『
『古代の機械巨人』
星8/地属性/機械族/攻3000/守3000
ゴゴゴゴーレムと音を立て、その巨体を晒し現れる『
「イクーノデスヨ!『アルティメットパウンド』!!」
クロノスの掛け声とともに降り下ろされる巨人の拳。凄まじいプレッシャーと共に優亜のライフを大きく削る。
九鬼 LP:1000
クロノス LP:4000
「うぁ…!すげぇ迫力…不覚にもときめいてしまったわ…でもこれって悲しいけど処刑なのよねぇ。3000ダメージを食らったときにリバースカードを発動じゃん!速攻魔法『ヘル・テンペスト』!」
(アニメ版の最初はなんでかダメステ終了まで魔法罠使えない効果がないじゃんよー)
何故かアニメ版の最初の十代とのデュエルのとき「このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。」の効果がない
アニメまできっちり覚えていたからこそ出来た芸当だった。OCGの効果が適用されるならこのデッキはもはや紙束と化してしまう。
「『ヘル・テンペスト』の効果は3000以上の戦闘ダメージを受けたときに発動できるじゃん!お互いのデッキ、墓地のモンスターカードをすべてゲームから除外するじゃんよぉ!」
「デッキと墓地のモンスターをすべて除外!?」
その限定的かつ不可解な効果から、生徒たちの「3000以上の戦闘ダメージを受けたときに発動可能!?」や「デッキと墓地のモンスターをすべて除外だって!?」などとざわめきが聞こえてくる。
「そうか! そうだったのか!優亜先生が発動した永続魔法はこれのためだったのか!」
ざわめきの中で、優亜のコンボを理解した
その横で、今だ理解しきれていない十代が首をひねる。
「2番、優亜先生の狙いが分かるのか?」
「ああ。ヘルテンペストでデッキと墓地のモンスターを除外して魂吸収の効果発動するためだ。そして魂吸収は除外されるカードの1枚ごとに回復する。つまり...」
そこで会場のざわめきを切裂いて、優亜の声が響きわたる。
「私のモンスターとクロノス先生のモンスターの数の合計…つまり23×500ポイントライフを回復するじゃんよーっ!」
「なに!? 23×500ポイント回復するだって―――えーと...500が23だから...いくらだ?」
「23×500は11500だよ、兄貴。そしてその分が回復したら...」
「あぁ。先生のライフは12500になる…!」
九鬼 LP:12500
クロノス LP:4000
生徒たちは膨大なライフを初めて見るのか、ざわめきは収まる事を知らず、クロノスも瞠目して状況を飲み込もうと必死になっている。
静かに状況を見守っているのはカイザーこと丸藤亮と、傍らの天上院明日香の二人のみだ。
「あの新任の先生やるな…クロノス教諭の古代の機械巨人は確かに強力。しかし――」
「その『古代の機械巨人』の攻撃力を逆手にとってライフを大幅に回復するなんて…クロノス先生が優亜先生の手の上で踊らされてるみたいね」
我を失っていたクロノスだが、相手が新任といえど教師であること思い出すことで我に帰る。今自分が相手にしているのは忌々しいドロップアウトでもエリート生徒でもない。
現実をようやく正しく認識した彼は、気を引き締めた。
「まさかワタクシの古代の機械巨人の攻撃力を利用してライフを11500も回復するとは、恐れ入ったノーネ。でもあなたはミスを犯しターノ。あなたのデッキにーハもうモンスターがいないノーネ!逆にワタクシの場には古代の機械巨人がいる――いかに多いライフでもいずれは消え果るノーネ!」
そう宣言し、クロノスはターンを終了する。
誰もがクロノスの言うとおりだと思った。たとえモンスターが残っていようと、クロノスの場には『
例えライフが膨大であろうと、逆転は不可能だと。
「やっぱりあの先生が負けちゃいそうッス…」
「おい聞こえてるぞそこのチビ!まぁ見ておくじゃんよ。ゲームはそんなに単純じゃないってことを見せてやるじゃん?」
「ひっ! 地獄耳っす…でも綺麗なヒトっす…」
翔は平常運転だった。よきかなよきかな。
「私のターン、ドロー!―――キタぁあああああ!!!」
優亜の手にあるキーカード、デュエルディスクはそのカードを受け取り、戦場を彩ってゆく。
「手札からフィールド魔法、『天空の聖域』を発動するじゃん!ラピュ〇の雷を見せてやるじゃんよ!!」
「そんなカードまで持ってるノーネ?しかしいかに戦闘ダメージが0になろうと肝心のモンスターがいなくちゃお話にならないノーネ」
クロノスの嘲笑を受け、優亜の口が笑みの形を飾る。
「そしてリバースカードオープン!『奇跡の光臨』! ゲームから除外されている自分の天使族モンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚するじゃん。私に従いなさい!『裁きの代行者 サターン』!」
『裁きの代行者 サターン』
星6/光属性/天使族/攻2400/守 0
流れるようなコンボを三沢が賞賛し、十代が眼を輝かせる。
「ヘルテンペストでゲームから除外したモンスターを『奇跡の光臨』で特殊召還させる。いかに強力なモンスターでも
デッキから手札に加えなければ何の役にも立たないが.―――やることに無駄がない」
「すっげぇー! 俺もやってみてぇよ、あの先生とデュエルをさぁ!」
「でもサターンの攻撃力は2400…ワタクシの『古代の機械巨人』には敵わないノーネ!」
「サターンには、一つ効果があるじゃん。その効果は『天空の聖域』がないと発動できなけど―――このカードをリリースすることで、超えているライフポイントの数値分のダメージを相手ライフに与える」
「ナナナっ!!?」
「言ったじゃん?ラピュ〇の雷を見せてやるって」
「8500ポイントのダメージだと!?」
「…!?」
「は、は、、はぁあ!?」
「す、すっげぇ・・・!」
亮が叫び、明日香が瞠目し、万丈目
が大口をあけ、十代が身を乗り出す。
パワーボンドを使用したサイバーエンドドラゴンよりも高いダメージである。
(この程度は普通なんだけどな…あ、サターンが『キラッ☆』ってしてる)
「お”…お”おぉ”ぉ…マンマミーアァァァァアアァア!!??」
九鬼 LP:12500
クロノス LP: 0
こうして試験会場に血の雨が降ることで決着が付き、彼女の怒りはすこし収まったようにみえた…。
後に学園関係者は語る。
「彼女はあらゆる意味で疫病よりも厄介な『人間災害』」であると。
ヘル・サターン1キルでした。TFで試してみたんですが成功率の低い低い。しかもアンティーク相手だと何もできずに終わるし…。アニメ効果って強力なの多いですけど、今回ばかりは助かりましたね。アニメ効果にOCGで立ち向かうのがコンセプトのつもりなので主人公がアニメ効果を使うことはないです。
脳内再生ができるくらいの文章が書けるようになりたいな~