逆行幽霊化ヴィラン連合と霊視少年のヒーローアカデミア   作:幽霊ヒーロー

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深く考えずに期末試験の相手を決めたら明確な勝ち筋を考える羽目になりました
やっぱこの人おかしいって


平和の象徴と超える少年

 

 時は水無月も終わりに差し掛からんとする頃、英雄を目指す者たちはある事象に恐れ(おのの)いていた……なんてね。冗談だよ。

 でも一部の人たちが不安になってるのは事実だけどね。もうすぐ期末テストがあるから。まあ俺は普通科目は別に問題ないけど、演習試験は何するかわからないからちょっと警戒はしてるかな。試験の難易度なんていくらでも盛れるわけだし。

 なんか聞いたところによると入学試験の時みたいな対ロボ戦らしいけど、そんな簡単でいいのかな。だってあれそんな強くないし。

 

 そんなことを考えながら迎えた試験当日、聞かされた内容は二人組での対人、というか先生相手の戦闘だった。

 

「だが霊命、お前は少し特殊だ」

 

 えーとなになに?俺は、まず個性使用禁止で切島さんと組んだ後にもう一戦ある?

 

「詳細は後だ。とりあえず一戦目を突破してこい」

 

 一戦目はセメントス先生が相手だった。なるほどだから個性禁止か。使えたらコンクリに命令するだけで終わるもんな。

 なおここからはダイジェストでお送りするよ。

 

「なあなんか作戦あるか?」

「うーんそうだね。俺も個性が使えないし”逃げ”かな」

「おう!まあ漢らしくはねぇがそのほうが勝機があんだろ?じゃあ俺が時間を稼ぐぜ!」

 

「おらおらおらっ!」

「はいはいコンクリは全避けしてっと。ガラス面とかを伝っていけばどうにかなるし、切島さんがいい感じに気を引いてくれてるから楽勝だね」

 

「これでゴールっと」

 

 これで以上だね。いやぁやっぱ楽だったね。流石に一人かつ個性禁止じゃまずかっただろうけど。疲労もそんなに溜めてないし次への準備もOKだね。

 

「それで、次の相手は誰なんですか?」

「次の相手はオールマイトです」

「……え?個性はありですよね?」

「個性使用はあり、制限時間はありで逃走は禁止です」

「……は?」

 

 まじで言ってる?いやハンデの重りがあるとはいえオールマイト相手はきつくない?いやお兄さんが言うにはなんかこの時期は弱体化してるらしいけどさあ。だって俺でも知ってる”平和の象徴”だよ?だいぶクソゲーじゃない?

 まだ前のチームと戦っているらしいので待機場所で一人で待たされることになった。よし、今は誰もいないってことは、

 

「今から作戦会議しよっか」

 

 

「で、どうすればいいと思う?」

「どうもこうもないだろ。あれと真正面から戦える奴なんてほぼいないぞ。それこそ先生とかか?」

 

 お兄さんの言ってることが全面的に正しい。正しいんだけど……

 

「ここで赤点取ったら林間合宿に行けなくなる。それはまずいよ」

 

 林間合宿は大事なイベントだ。ヒーローとして、ではなく俺がみんなを救うために。そこに連合のみんなが襲撃をかけることはわかってる。だからこそそこで接触するためにも合宿への参加は必須。なんだけど……

 

「でもあれに勝つ算段があるのか?それも”二倍”なしで」

「うーん……”圧縮”使えばなんとか……」

「だからこそのカフスのルールじゃないかしら」

「あ」

 

 マグ姉の言う通りだ。俺の圧縮での行動不能は実質禁止されてる。カフスをつけるには一回圧縮を解除する必要があるけど、その隙があるとは思えない。

 

「やっぱ無理か?」

 

 やばい。本気で勝ち筋がなくなってきた。一回使える手札を確認するか。崩壊は即死技だからなし。圧縮と磁力は補助としては優秀だけど決め手にはならない。となると高火力がだせる蒼炎が重要かな。

 

「どうする?俺たちはお前に任せるぜ?」

 

 荼毘さんが挑発するように言ってくる。やるしかない、か。

 

「みんな、力を貸してほしい」

 

 

 

 

 

 

「今回の試験、霊命はどうしましょうか」

「彼は近年稀に見るレベルで優秀だからね。こちらもそれ相応のものをぶつけないといけないのさ!」

 

 これはある日の職員会議の様子。今この場では霊命の期末テストの相手を決めていた。

 

「枠が空いている切島と組ませて誰かと協力することを学ばせる、というのもありだとは思ったんですが」

「ソレデハ恐ラク簡単二突破サレテシマウダロウ」

「霊命は個性なしの戦闘も上手だしな!イレイザーでもちょっときついだろ」

「まあそうだな。正直俺が戦ってもあいつの成長には繋がらないだろうな」

 

 なかなか決まらないところに、一人の教師が手を上げた。

 

「あの……なら私相手はどうですかね」

 

 この中では一番の新人教師、オールマイトである。

 

「ふむ、確かに君なら戦闘能力は十分だろうね。だがきっとそうなったら彼は逃げの選択肢をとるだろうね。君に逃げる彼を追えるかい?」

「そ、それは……」

 

 霊命の対人戦闘能力のすごさは共有されている。人の目から消えるような歩法に視線誘導。それ以外にも逃走に利用できる技は多いだろう。そうなるとシンプルな個性であるオールマイトではなすすべなく逃がしてしまう可能性があった。

 

「……ならそもそもルールのほうを変えて逃げるのを禁止してしまえばいいんじゃないでしょうか。彼はもう既に逃げることの大切さは知っているでしょうし」

 

 13号がそう提案した。実際彼はヴィランに教えを受けている都合上、逃走に関しては一家言ある。ヒーローが思う方向性とは少々違うが、その大切さについてはわかっているのだ。

 

「なら逃走禁止のルールを特例で付け加えて戦闘を強制、その上で格上との戦い方を見るということで」

「異議はないのさ。ただしオールマイト、手加減はしっかりね?」

「はい。わかっています」

 

 こうして霊命の相手は決まった。

 そして今から実戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

「試験スタート、か」

 

 フィールド設定は都市部。障害物はそれなりにあるけど全部壊されるんだろうなぁ。その方が早いし。

 

「あっちにいますね。二時の方角です」

 

 偵察に出ていたトガちゃんが相手の場所を教えてくれた。となると……

 

「初手は奇襲一択だよね」

「ですね。気づかれなければどうにかなります」

 

 この手のことに関しては彼女が強い。とりあえずバレないように接近する。にしてもスマッシュ連打されたら勝てないのにそれはしてこないんだね。

 

……ほいっと

 

 頭上に圧縮された瓦礫を放り投げ、それを解除したところで下から攻める作戦で行こう。3、2、1……

 

「……っ!」

 

 息を呑んだのはどっちの方だったのか。オールマイトは落ちてくる瓦礫をアッパーで破壊した。まではよかったんだけどさ。

 

「嘘でしょ……!?」

 

 その風圧でこっちが吹き飛ばされる羽目になるとは思わなかったなあ!

 

「そこか、ヒーロー……」

 

 やばっ!流石に真っ向勝負は無理!

 

「えんまk」

「遅い!」

 

 オールマイトが腕を振るった。それだけで圧縮しておいた煙幕は消え去り俺の体は宙に浮く。

 

「”焼却めいれ」

「デトロイトスマァッシュ!」

 

 俺の肉体が風に飛ばされるビニール袋のように軽々と吹き飛ぶ。

 

「いったぁ……」

「大丈夫か、霊命」

 

 それに答えてる暇はなさそうなんだよね、お兄さん。今の一撃でだいぶHP消し飛んだよ。そもそも俺は例えるなら素早さとか攻撃は高いけど体力とか防御とかは低いキャラなんだよね。だから基本は回避メインの戦法を使ってる。殴り合いには向かないんだよ。

 しかも何も考えずに振るわれる拳の方が、俺が命令するより早い。今の攻防で思い知らされた。()()()()。でもさ、俺の中から思いが溢れ出してくるんだ。

 

 ふざけんなよ

 

「荼毘さん、コンプレスさん。全開でいくよ」

「いいぜ」

「まあしょうがないか。無茶でもしないと勝てないしね」

 

 

 

「さあどうする?」

 

 接近してきたオールマイトが挑発するように構えを取ったまま静止する。いいよ、ぶっ飛ばしてあげるよ……!

 

「”焼却……」

「それはさせないぜっ!」

 

 向かってくるよね。それを待ってた。

 

「ふっ!」

 

 マージンを取る隙もなくぎりぎりで回避。でも直線移動だけなら何とか見切れる。

 

「……命令・赫灼熱拳ジェットバーン!」

 

 燃え上がる蒼い炎がその身を焼く。その温度の高さに一拍遅れたオールマイトに追撃を仕掛ける。

 

「”攻撃しろ”、”飛べ”!」

「なんのこれしき!」

 

 攻撃の命令を下した物が軒並み無効化される。だけどその間に上に行けた。

 

「いくよ」

 

 荼毘さんとコンプレスさんを憑依させる。本来ならこれは自殺行為だ。前に試したところ、二人以上を同時に憑依させるとまず俺含めて三人分の思考が混ざり合って考えが上手く定まらない上に、俺自身が持たない。体が悲鳴を上げ、思考は鈍化する。だから封印していた手法だった。でもさ、

 

「”限界は超えるもの(プルスウルトラ)”ってみんな言ってるもんね……!」

 

 ならたまにはそれを真似てみるのも悪くない。この形態の名前は……フレイムマジシャンなんてのでいいかな。

 

『名前なんてどうでもいいだろ』

『そんなことないと思うけどな。カッコつけてなんぼでしょ』

 

「”意識を保て”、”火力を上げろ”!」

 

 命令でデメリットを帳消し、とまではいかないだろうけど軽減する。後で反動がくるかもしれないけど、今はそんなこと関係ない!

 

「さあ、”燃えろ”!」

 

 とりあえず全力で炎を放つ。これなら一発で消されることはないでしょ。

 

「これはっ……!エンデヴァーにも劣らぬ炎だ。でも……」

「”拘束しろ”!」

「少しなら我慢できるものさ!」

 

 動きを止めようとするも成果は虚しく攻撃を喰らう。でもあれをゲットできた……!

 

「赫灼熱拳プロミネンスバーン!」

「くっ!」

 

 今のは効いてる。流石のオールマイトでもこの火力はノーダメとはいかないか。

 

『当然だ。俺の炎だからな』

 

「おい霊命!こっちだ!」

 

 怯んでいる彼を置き去りにして、スピナーさんの誘導に従い地上に降り立つ。

 

「霊命、大丈夫ですか?」

「問題ないよ。今のところは、ね」

 

 でも長くは持たない。だからここからが正念場だ。

 

「お兄さん、合図よろしくね」

「任せろ」

 

 

 

 

 

 

(どこに行った、霊命少年……)

 

 オールマイトはわずかに焦げる自身のコスチュームをさすりながら、霊命を探していた。一応さっき彼が飛んで行った方向に来てはみたものの、その足取りを追うことはできていない。当然だ。彼ほど逃げに精通した生徒はいない。だからこそ逃走させないルールを組んだのだが……

 

(やはりいないな。となるとまた奇襲を仕掛けてくるつもりか?)

 

 それならば問題ない、とオールマイトは考える。彼もまた生徒である以上成長の余地がある、言い換えれば今は完璧ではないのだ。先ほどの攻防の時もわずかな敵意を感じ取れた。油断は禁物だが、あれなら気づけるという経験則から来る確信が彼にはあった。

 

「”殴り飛ばせ”」

 

 彼の声が聞こえると同時に、見えない何かが殴りかかってくるのがわかった。ならば後は地面を殴り辺り一帯を破壊すればいい。

 

「はぁっ!」

 

 それこそが少年の狙いであるとも知らずに、オールマイトは地にクレーターを生成した。その瞬間、右側から思いっきり吹き飛ばされるような勢いを感じた。

 

(これは?)

 

 彼は知る由もないが、その正体はさっき霊命が圧縮したオールマイトのスマッシュの一部、その風圧である。風圧とは押し固められた空気のこと。それを回収しておくことで疑似的にワンフォーオールの攻撃を再現したのである。勿論本物に比べて威力は低いがそれでも霊命の手札の中では上位の攻撃力を持つ。

 そしてそこに畳みかけるように炎の波状攻撃が襲い掛かる。それも全方位から。

 

(流石にこれは離脱しなければまずい!)

 

 オールマイトはたまらず上に飛び出す。

 

「そこ」

 

 そこに合わせて飛び込んできたのは、霊命強司その人。手にはハンドカフスを持っている。

 

(空中でも動くだけなら問題ないな。ならこのまま倒し切る!)

 

「オールマイト、これどうぞ」

 

 そう言って空中に何かをばら撒く霊命。その正体は数瞬後に判明した。

 青空の下で暴れ狂う炎の奔流。オールマイトはさっきのものの中にそれが封じられていたのだと理解する。ここら一帯を焼き尽くさんとする勢いの炎にオールマイトはなすすべがない。自身を焼く蒼の中で、地に降りようとも逃げられぬこの暑さの中で、彼はただ敵を倒すことを優先することにした。網膜に焼き付くほどの明るさの中でも相手の影は見えている。そこに拳を叩き込んだ。この間わずか一瞬の出来事である。

 

(⁉おかしい、手ごたえがない)

 

 吹き飛ばされ少しは勢いを落とした炎が晴れても見えるものは何もなかった。

 

「これで終わりですね」

 

 カチャリ、と控えめな音がした腕を見ればそこにはハンドカフスが。落下しながら後ろを振り返るとそこには燃え尽きたという表現が似合うボロボロの少年がいた。

 

「霊命少年!」

 

 オールマイトはただ試験のことも忘れ、彼の下へ駆け寄った。それほどまでに重傷だったからである。

 霊命強司の期末試験二回戦はそんな勝者がぱっと見わからないような結末で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

「かなり無茶をしたね」

 

 起きた時、体育祭の時と同じようにリカバリーガールさんがいた。

 

「こうでもしないと勝てませんから」

「それは否定しないけどね、もう少しやり方ってものがあったんじゃないかい?」

「まあ回復前提で動いてたのは否定しませんけど。でもオールマイトレベルのヴィランがもし出たら俺一人で抑え込めるだけ上々だと思いますよ」

「だとしてもこれはあくまで試験なんだ。死に急ぐような真似は今後するんじゃないよ。わかったね?」

 

 素直に頷いておく。流石にあれはやりすぎたかな。最後の方ほぼ荼毘さんみたいになってたし。

 

「……それを踏まえた上で、今回の非はこちら側にもある。さっきも言ったがオールマイト相手に勝とうと思ったら、それなりに無茶をしないといけないと考えるのも自然なことだね。いくらあんたの力量に合わせるための試験とはいえ、あそこまでの難易度になってしまったことについては謝罪させてもらうよ」

「別にいいですよ。俺も実戦想定のいい訓練になったし」

「それを強要した側が言えることじゃないかもしれないけど、自分を顧みない戦い方はほどほどにね。市民を安心させるのもヒーローの勤めだよ」

「覚えておきます」

 

 

 

 火傷をある程度治して教室に戻る途中、開口一番に荼毘さんに言われた。

 

「おまえの戦いぶり、あいつに見せたかったぜ」

 

 あいつって……まあ荼毘さんの考えそうなことぐらいわかるけど。どんな反応するんだろうね。

 

「強司くん、大丈夫ですか?」

「うん、ちょっと体がだるいけどまあ大丈夫」

 

 正確に言うと少し体を動かしただけでものすごく痛いんだけどね。まあでも問題はないし。

 

「よくやったな」

「ストレートに褒めてくれるなんて珍しいね、お兄さん」

「いいだろ別に。あんなバケモノと相手に勝ったんだから少しぐらい喜べよ」

「でも手加減されてたらしいしなぁ」

 

 リカバリーガールが言うには一応勝機は与えられてたらしいからね。あれで本気じゃないっていう事実が怖いけど。

 まあなんにしろ試験は合格できただろうし、一息ついてもいいかな。




霊命強司

ズタボロになりつつ何とか勝利
作者は荼毘の個性が強い上に使いすぎると狂人感が増す使い勝手がいいものだと気づいてしまった
今回の作戦はひたすら赫灼熱拳からの圧縮を繰り返した上で解放したそれらに焼かれながらオールマイトの隙を伺うとかいうデクもびっくりな方法
代償は一日じゃ治らない火傷のみなのでコスト的にお得!
多分誰かが見たら血の気が引く







なんとか期末試験終わらせられた……
後今感想見たら野生の荼毘に信じられないくらいのgoodついてました
みんなこういうのが好きなのね
次回はオリ展開を入れようか悩んでいるショッピングモールでの死柄木との会話が入ります
もし何事もなく終わってたらそれは作者が無理だと判断したからです
では次回までに感想・高評価よろしくお願いします(乞食)

追記
リカバリーガールとの会話内容を一部付け足しました
よく考えると雄英側もだいぶ無茶振りしてるな……
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