なぜ規律正しい古典部がペナルティとして海岸清掃を命じられたのか。
ぜひ皆さんも考えてみてください
まだ午前中だというのに太陽は俺を焼くように輝き、その光をキラキラと反射しながら白の砂浜が下から照らす。
「やらなくてもいいことならやらない。やらなければならないことなら手短に」このモットーに従うならば、これは果たしてどうだろうか。省エネを掲げる折木奉太郎にとって夏休みは冷房のかかった部屋で昼まで睡眠というのはマストなのだが…。
隣をチラリと見ると一生懸命足場の悪い砂浜を踏みしめながら、長いトングでゴミを拾い続ける千反田の姿が。学外というのに神山高校の夏服に身を包み、ただ学校とは違うのは頭に白色のよく見るスポーツメーカーのキャップをかぶっているということと黒のローファーではなく、ビーチサンダルということくらいだ。
俺は日焼けを嫌ってきてきた薄手の長袖に後悔をしながら仕方なしに腕をまくる。汗のおかげで捲った瞬間は風に触れた涼しさに心地よさを感じたが、すぐに剥き出した肌を日光が焼いていく。
「暑い…」
ぼそっと呟いた声は誰に聞こえることもなく波の音に飲まれていった。
なぜこうなったのか、俺は煌めく波を横目に一昨日の地学準備室を思い出す。
その日は神山高校3年目の一学期を締めくくる終業式が行われた。もう周りは大学入試に向けて天王山と呼ばれる山を登る覚悟を持った生徒が多かったし、案の定生活指導部の先生も受験に向けて勉強や生活習慣のありがたいお話と、最近学校に必要のないものを持ってきている生徒について言及をされていた。実を言うと俺もほどほどに勉強を始めており、塾に入ってはいないものの参考書と睨めっこする日々を送っていた。
他の部活メンバーはどうかというと、千反田は大学進学を希望、伊原は芸術大学に向けて絵の塾に通っているそうで二人は何やともあれ俺が心配すると言うのはおこがましいというものだろう。しかし里志はどうだろう。あいつはこの前の期末試験でも赤点ギリギリの回答用紙を器用に紙飛行機にして「僕の未来はどこに飛ぶのやら」とか言っていた。あいつにとって試験の勉強というのは優先されるものでもなく、いつか大学というのに興味を持った時そのための手段として勉強をするのだろう。まあ里志のことを俺の目線で語るというのはこれもまたおこがましい。
終業式が終われば通知表が手渡されそのまま放課後となる。通知表はいつも通り3が並んで数学と日本史、世界史が4だった。高校生になると通知表というのは小学校の通知表レベルまで下がる。つまるところ、あまり人生を左右するものではない。変わるのは親の機嫌だけだ。
一つあくびをしながら、俺は夏休み前最後の部活動に足を運ぶ。
なんでも伊原曰く「夏休みは受験勉強だけじゃないの、最後の文集を作る時間でもあるの。ふくちゃん!去年も一番最後に出してるんだから今年こそは期限内に出しなさいよ!」だそうで、その話し合いが本日開催される。
文集というのは所属する古典部が毎年神山高校文化祭で出しているもので、「氷菓」というタイトルがつけられているのだが、その話は一言では言えない壮大な物語が裏で起こっていたりする。
我らが部室の地学準備室の前につく。3年目となるといかに自分がこの扉を開けてきたのか、あと何回開けることになるのかそんなことを考える。今回の文集が書き終われば正当に引退だ。毎年何か事件のある文化祭は置いといて、きっと終わってしまえば以後この立地の悪い場所に赴くことはほとんどなくなるだろう。俺は扉に手をかけしみじみと噛み締めながら開ける。
「あんた悲しそうな顔ね、成績下がったの?」
入って早々、教室中央に陣取っていた伊原の毒舌が降りかかってくる。荷物は机のサイドにかけられており、上には文集のページ割りをメモした紙と、去年出した氷菓が出されている。
「成績の上下で気分が変わるような教えは受けてないぞ」
「折木の表情筋が可哀想だわ、仕事がなさそうで」
余計なお世話だ、歯を磨くときに横に開けるくらいには動くぞ。
「まだ伊原だけなのか」
「ちーちゃんは部活動の話し合い?みたいなやつに出てて、ふくちゃんは先に手芸部の方に顔を出すって…。そろそろくると思うわよ」
噂をすればなんとやらで、悲しげな顔をした里志が扉を開く。右手には手芸部の文化祭の出し物をまとめた紙を、左手には神山高校通知表が握られている。まあ里志の悲しげな表情の理由はきっと…。
「ふくちゃん、どうしたのそんな顔して。成績について先生から何か言われたの」
里志はきょとんとした顔を一瞬見せたあと、すぐに左手に持っていた通知表に気づいて、うちわのようにパタパタと仰ぐ。
「残念だけど、摩耶花。僕は成績で一喜一憂をするほど素直じゃないよ」
肩をすくめる里志と対照的に、先ほども同じようなことを言われた伊原は呆れたように「あっそ」という。
「さては手芸部での創作物に携われなかったんだろう」
俺は荷物を隣の机の上に置いて、バックのポケットに入れておいた文庫本を出しながら里志の方を見る。
「んー半分正解かな。創作物自体はやるんだけどね、僕のやりたかった世界中津々浦々の生地を用いた企画が却下されたんだよ」
そんな予算も時間もないだろうに。却下した手芸部員たちの正常な判断に拍手。
「あれ、まだ千反田さんはきてないみたいだね…」
里志はキョロキョロと教室を見回して手短の机にいつも手に持っている巾着をおく。
そして噂をすれば、以下略で後ろの扉がゆっくりと開く。
「皆さんすみません…」
教室に入ってきて開口一番、伊原は3度目の状況に驚きながらも、千反田ならもし成績が下がっていたなら心底傷つく可能性があることに口を開くかどうか迷っていた。そんな俺たちを一瞥するとそそくさと黒板の方に歩みを進め、千反田は申し訳なさそうに一枚の紙を教卓に置く。
いつもの大きな瞳は伏せながら物珍しい千反田の姿の理由は多分その紙を見ればわかるのだろう。俺は読みかけの刑事物の小説に栞を挟んで教室前の教卓へと近づく。
「どうしたのちーちゃん、これって…」
ひと足さきに教卓の紙にたどり着いた伊原は千反田とは真逆に目を丸くする。
里志と俺は互いに顔を見合わせ、伊原の後ろから顔をのぞかせる。
そこには各部奉仕活動と書かれたものと、どこのかは分からないが簡略化された地図とタイムスケジュールのようなものが書かれている。
「千反田さん、今日って確か文化系部活動の集まりだったんだよね」
里志は後ろに手を組んで、悲壮感がひしひしと伝わる千反田の顔をチラリと伺う。
「私たちペナルティを受けたので今週の日曜日に清掃に行かなくてはいけなくなりました、でも変なんです!絶対におかしいんです」
やはりいつになってもお嬢様は過程というのをハードルの如く飛び越えていく。結論ファーストはときに明瞭になり、ときに混沌になるのだ。
「一体どんなことがあって、こんな健全な部活動にペナルティがくだったんだ」
俺の指摘に対して、紅潮した頬を落ち着かせて柔らかな笑顔をうかべる。
「ああ、また私飛ばし過ぎちゃいましたね。先ほど文化系の部活動の部長が集まる会議があったんです」
千反田は俺たちの顔をくるりと見回す。みんな各々頷きながら次の言葉を待つ。
実はこの会議は毎年行われていて、古典部は部長がずっと私だったので3年連続の出席だったんです。あ、かほさんも占い研究会も3年間一緒だったんですけど、今日は体調不良でいらっしゃらなかったんです。
それで本題なのですが、この会議は奉仕活動に行く部活を決めるものなのです。内容は岐阜県が海なし県でということもあり、愛知の学校と協力して浜辺でゴミ拾いを行うというものなのですが。
はい、皆さんのお顔にも表れているようにほとんどの部活動は行きたがりません。
一昨年に沢木口さんが天文部として手を上げたきり立候補は見てません。
ええ、なので決め方はというと、部活動の問題行動が多かったところとなっているのです。そうですね身近なもので言いますと、下校の時間を過ぎて活動をしていると言ったものや、学校の備品を破損させたとかですかね。
会議は淡々と冷酷に生徒会2年生の風間さんと藤井さんによって部活動が選ばれていったのですが、最後のところで止まってしまったのです。
私たち古典部は下校時間も、ましてや備品の破損なんてしていないので話半分に上の空だったのですが、急に私の名前が聞こえたのです。呼ばれると思っていなくて2回目の呼びかけでなんとか立ち上がることができたのですが、そのときにはもうこの紙が机の上に渡されていたんです。
私よくわからなくて生徒会の人に聞いてみたんです。「行かないとダメですか」って。そしたら首を傾げながら、よろしく頼むよという言葉と共に他の人に呼ばれていってしまいました。
どうして私たち古典部が行かないといけないのか、もちろんペナルティがあるなら仕方がないことなのですが、そうですね確認するのは簡単なのですが、きっと久々にこれが言いたくて持ってきたんだと思います、私、気になります!
ぐわっと、その特徴的な大きい瞳が俺に向かう。話を聞いたあと俺は生徒会に聞けばいいのではと思っていたが、どうやらこれは千反田が受験勉強を勤しむ中で突然落ちてきた興味の標的になったらしい。俺からしてみたら棚からぼたもちではなく、レンタル期間の過ぎたCDのようなものなのだが。
ふむ、きっと俺は今天秤に吊るされている。一方はこのまま大人しく分かりませんで通すか、もう一方は少し頭を使うか。大人しく分かりませんと言ったところで考えることにはなるし、最悪の場合千反田が変に納得して大切な日曜日に予定が入りかねない。頭を使えばこの先に楽ができる可能性は少なからずあるか。どうやら俺の心の中では既に天秤は振り切ってるらしい、仕方ないな。
「千反田、普通に古典部が少なからず問題を起こしたんじゃないか。下校時間とか気づかなかったこともないわけではないだろ」
「いいや、それはないね」
千反田ではなく、里志が俺の意見に手をあげる。
「もし遅れたとしてもきっと1,2回の話だろう。でもね、手芸部も多分その会議に出ていたんだと思うんだけど、そんな話来てないんだ。そして手芸部の下校時間超過は10回より全然多いんだからね」
その数に驚愕するのは千反田。小さく口を開くと、左手をすぐに添える。確かにそれでは古典部よりも手芸部が先に呼ばれるはずである。それにしても、手芸部以上の部活がゴロゴロいるというのはなんとも文化系に富んだ学校らしい。
「んー!じゃあ余計わかんないわね!どうして古典部が選ばれたのよ」
伊原は紙を軽く叩きながら嘆く。大きな声で唸るのはいいが、もう少し喉を労ってやれ。
「本当に選ばれたのでしょうか」
口の隙間からこぼれ出たように小さくと千反田がつぶやく。本当に、ということは何か手違いで古典部になってしまった、ということだ。それはなぜか。一つ仮説が浮かんではいるのだが、これをいうときっと今週の日曜日はモットーを守れそうにない。しかし言わないと言わないで、このまま疑問を持ったまま奉仕活動を行う。
これは詰み、か。
「ホータロー、何かわかった顔をしているね」
お前はエスパーか。あ、この感じも久々だ。
俺は大きくため息をすると、そのまま千反田の位置と変わって教卓の隣にいく。
「あまり言いたくはなかったんだが、この話をずっと続けることもないしな」
「名探偵役のご登場だね」
ニヤリと口元に笑みを浮かべる里志を肘で制する。ふと窓を見ると、まだまだ夏の陽は長く、外に出なくても暑さがひしひしと伝わってくる。
「折木、本当にわかったの。ヒントもほとんどないし、生徒会の手違いの可能性の方があるのよ」
言葉で襲いかかる伊原から逃げるように顔の前に手を持っていき、咳払いをする。
「俺の案はあくまで仮説なんだが、千反田、一つ確認させてくれ、他の部活動がよばれるときなんて呼ばれていたんだ」
千反田は少し上を向いて、記憶を思い返す。
「確か、アカペラ部、お笑い研究会、と言ったように、部活動は部で、研究会は正式名称だったと思います」
その言葉を聞いてやはりそうなると一つ矛盾があることに俺は小さく頷き話を進める。
「そうか、だとしたら一つおかしいところがなかったか、千反田の話に」
俺がそういうと、伊原は頭を抱えて思い出し始める。記憶力のいい千反田なら覚えているかもしれないが気づくことは難しいと思う。本人ですらその状況に対して納得しているのだから。
「わからないわ、そんな変なこと言ってた?まあ変なことは言われてるんだけど、ちーちゃんの話の内容が変だとはあんまり…」
「そうかい、摩耶花。僕には少し違和感を感じたんだけど」
「どこにあったのよ」
「残念だけど、違和感は感じることができても、正体はわからないんだ。幽霊みたいなものさ」
ジロリと睨む伊原に里志は手を弱々しくあげる。
「降参よ、折木。一体どこが変だったの」
俺は唇をしめらせ、一息置いて紙を見る。
「千反田がぼうっとするのは仕方がないんだ。だって延々と部活動の名前が呼ばれていて、自分たちは来ないと思っていたら俺だったら読書をしていただろうし。だが千反田は反応をした。そう名前を呼ばれたからだ」
千反田は顎に左手を添えて、
「ええ、そうです。私の名前が呼ばれて、ふと顔を上げたんです」
「そのどこか変なのよ」
伊原が頬を少し膨らませながら、上目遣いで俺を見る。
「もし他の部活動と同じようにペナルティで選ばれたんならば、こう呼ばれてないとおかしい、———古典部ってな」
伊原は確かにっと小さくつぶやく。
「でもホータロー、もしかしたら古典部、古典部ってはじめに何回か言われて反応がなくて名前でよんだのかもよ」
里志はチラリと隣の千反田を見てから、千反田さんが気づかないわけはないと思うけどね、と付け足す。
「いや、それは考えられないんじゃないか」
「へぇ言いきるね、それ相応の根拠があるんだろ」
少し試すような口ぶりの里志に心の中で舌打ちをする。
正直に言うと強い反論は出来ない。本当に千反田が聞き過ごしていないことを証明するのは難しい。
「なあ、お前は総務委員に入っていると言っていたが、集まりに来るやつの名前を全員覚えている、もしくは名簿のようなものはあるか?」
一瞬驚かれたが、顎に手を当てて数秒首を傾げた後、すぐに力無く首を振った。
「まあ、そんなわけないよね。もちろん僕が個人的に知っているいわば有名人のような方達はわかるけど、部活動の集まりに来る人を全員知るのは無理だし、わざわざ名簿を作るのはナンセンスってやつだ」
千反田がぼそっと、そうですよねと口から吐き、余計に唸る。
「折木さん。今回も名簿のようなものはなかったと思います。でもそれで何が変わるのでしょう?」
さらりと大事なことを言う千反田に若干目を伏せて、ここまできて他の三人にはピンときてないようだ。
特に千反田本人がこの学校の生徒ほとんどの名前を知っていることが邪魔をしているのだろう。
「俺は千反田のことを知ったのは自己紹介の後だ」
「私は折木さんのことは音楽の授業で知っていましたけど…」
一同少々の静寂。
堪えきれずに里志がにやける。
まだピンときてない様子の千反田と、それになんの意味があるのよとでも言いたげな伊原を横目にもう一度息を吸う。
「俺はだな、交流のなさそうな人の名前は知らないんだ」
「当たり前じゃない、そんなの。折木、もっと直接、何が、どうして、その話を今したのよ」
伊原の堪忍袋が破れてしまって、言葉が散乱している。千反田も考えてはいるものの、伊原を静止しようとはしていない。
「まあまあ、摩耶花。僕は奉太郎の言っていることがわかった気がしたんだ」
俺と伊原の前に仲裁に入ると、二人の矛先はそちらに向かった。
「わかったんですか!福部さん!」
教卓に両手を乗っけて前のめりにつっかかる。
その様子に里志は俺の方向に半歩足を引きながら、落ち着かせる。
「僕も同じだけど、一方的に知っている人はいえど、ただの話し合いの参加者を覚えるような人は少ないだろうね」
「福ちゃん、折木の真似なんかしないではっきり言いなさいよ」
里志は俺が口を開かないところを見て、やれやれと首を振る。
「つまり、生徒会の人たちはどうして千反田さんの名前を知っていたんだろうね。いやただの学校なら各部活の部長を覚えているのはなんらおかしく無いかもだけど、ここは神山高校。文化系の部活の巣窟さ」
そう、ここ神山高校は三年間通った俺でも知らない部活動は片手に収まらない。さらにいえば、たいして実績の上げていない古典部の部長を2年生の生徒会が知っているとは考えにくい。
こほんっとわざとらしく咳払いをして、里志のマイクを奪うように口をひらく。
「じゃあなぜ生徒会は千反田の名前を知っていたのか。そして千反田がいかなきゃいけないという問いに対して、不思議な顔をしたのか」
その理由はーーー。
「折木さん、見てください。イソクズガニです」
白いキャップからのぞかせる大きな瞳の前に、軍手で持たれた1匹のカニ。
おおよそ女子高校生がとる行動ではないだろう。
「うまいのか?」
「私は無縁ですが、昔買っていた亀が美味しそうに食べていたかもしれません」
さいですか。
1年生の頃なら真面目に答えられていたかもしれないが、今の彼女は口元を緩めながら冗談だというのを強調している。
「折木さん、意外と来てくださったのですね」
意外とはなんだ、俺は情に厚いんだ。
「まあ、風邪気味のやつを無理やり炎天下に晒すわけにもいかないしな」
千反田えるという名前が生徒会に分かった理由。
それはそう書いてあるのを読んだに過ぎないからだ。
文面を考えるならば、
『えー、すまない我は風邪をひいてしまってその会合に顔を出すことができない。そこで我に何かある場合は千反田えるという人物に伝えて欲しい』
そう千反田は伝言を与えられた鳩であり、そのご主人は十文字かほである。
「十文字に言っておけよ、折木奉太郎は義理深い男であるってのと、学校に関係ないものは持ってくるなって」
「はい。まさか、かほさんが文化祭で使う占い用の水晶を持ってきていたとは思いませんでした」
そりゃあんな高価なものを持ってきたら学校側としても対処しなければならないし、夏風邪が重なるとは不運だったと思う。
1番不運なのは紛れもなく炎天下でゴミを拾っている古典部なのだが。
これを告げたあと俺たちは数秒目を見つめあってから、ため息の後に代わりに行く事を全会一致で決まった。
なんとなくこの結果を読めていたから諦めがついてはいたんだが、いざ当日になると体が重い気がして、病というのは本当に気持ちなのかもしれないと疑った。
「おい、常悟朗。口を動かしている暇があったら手を動かせ」
隣で大柄な高校生が手を組んでいる。その視線の先には大柄な男と同じ高校だろうか、ひょろりとした男が手を広げている。どこか里志に似たようなものを感じる。
「いやいや健吾。僕としては手を動かしたいんだけど、まあこんくらいだったら、僕が思うに犯行現場で片がつく」
どうやら一悶着あったらしく、ひょろがりの後ろで大きな麦わら帽子に顔を隠した中学生くらいの少女が隠れている。その手の下にスーパーの袋が砂浜に置かれている。
その様子に気づいたのか、薄ら笑みを浮かべた千反田がそっと俺の右耳に近づく。
「折木さん、少しだけ聞こえてしまったんですけど、あの3人組がどんな事件に巻き込まれたのか、私気になります」
勘弁してくれ。
これ以上頭を使うと熱中症になりかねない。