ある日、聖王教会のシスターであるセインは拘置所でとある人物と面会をした。
その人物は、戦闘機人集団「ナンバーズ」のNo2、ドゥーエだった。



「魔法少女リリカルなのは」の短編小説です。
リリなのの小説を書いてから10年やん! と思って書きました。

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「おっ、リリなの小説を書いてから10年じゃん!」と思って急遽書いた小説です。


セインとドゥーエ

 今日かぁ…………

 

 本来の仕事効率が少し鈍る。何せこれから起こる事を考えるとどうしても集中出来ないからだ。聖王教会での仕事は沢山あり、それらは普通の人には難しい事ばかりだ。だが、何年もその仕事をしてきたため今ではすっかり慣れている。これらはカリム・グラシアやシスター・シャッハ達の教えのおかげだ。現在では間違い無く仕事を卒と無くこなせるだろう。

 

 しかし、ある“予定”から少し緊張している。

 

 そんな事もあって今日は仕事があまり進まなかった。ここまで進まなかったのは久しぶりかもしれない。

 

 何せこれから自分が向かう所は拘置所。

 

 そこに収監されているある“人物”に会う予定だからだ。

 

 その人物はあまり合った事の無い人物であるのだが、自身にとって無関係でもない、大事な人物だ。

 

「面会を予定しているセインです」

 

「はい、少々お待ちください………… シスター・カリムからの予約が入っている事が確認出来ました。こちらです」

 

 刑務所の警備員が多く監視する中、看守が面会予約の確認が取れたので、看守の案内に従いながら刑務所の通路を進んでいく。無機質な金属製の廊下には多くの監視カメラや見張りの魔導士がアリ一匹どころかノミ一匹通さないと言わんばかりの重警備だ。

 

 それ程の重犯罪者がいるという事。

 

 その人物の内の一人にこれから会うという事。

 

 その檻の中今日会う予定の人物が収監されている。

 

「面会時間は10分です」

 

 看守がそう言うと、いったん外に出た。ここからはセインと面会を望む者との対面と言う事だ。これでセインと相手の二人きり。もし何か起きれば即時対応出来るように扉の向こう側には魔導士が待機している。万が一脱走や面会人に危害を加えようとした時に備えているのだろう。

 

 だが、セインはこれから会う人物は脱走などしない事を知っている。

 

「久しぶりね、セイン」

 

 セインが相対する人物。

 

 金髪のロングヘアの女性。

 

 戦闘機人集団、ナンバーズのNo2。

 

 ドゥーエ。

 

 セインの姉の内の一人である。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ジェイル・スカリエッティ事件(JS事件)。

 

 指名手配犯の科学者ジェイル・スカリエッティが引き起こした、歴史に名残す大事件。彼と彼により生み出された戦闘機人集団“ナンバーズ”を中心に、時空管理局を襲撃・巨大な乗り物「聖王のゆりかご」を起動させてミッドチルダに大規模な混乱を齎した。

 八神はやて率いる機動六課がこの事件を解決、事件を引き起こしたメンバー達は逮捕されて収監、もしくは更生施設に送られて一般社会で働けるよう教育を行われる、この二つの対応がなされた。大部分の人物は更生施設に送られたが、一部の者は今でも収監されている。

 

 収監されたメンバーは首謀者のジェイル・スカリエッティとナンバーズの内の4人。

 

 ナンバーズの内訳は、ウーノ・トーレ・クアットロ・セッテ…………

 

 そして、現在セインと対面している、ドゥーエ。

 

 ナンバーズの次女とも言える戦闘機人。

 

 

 

 

 

「そういえばドゥーエ姉、傷が治ったの?」

 

「えぇ、今ではすっかりとね。跡は少しだけ残ってるけどね」

 

 ドゥーエはお腹の方を少しだけ見せる。そこには、やや褐色に染まっている皮膚が露わとなる。その皮膚はそこまで大きくないが、何かの傷跡であるという事は察するだろう。

 

 かつてドゥーエが時空管理局に変装して潜入していたのだが、レジアス・ゲイスを殺害した直後にゼスト・グランガイツに重傷を受けてしまった。怪我の大きさを考えれば死亡してもおかしくなかった……

 

 …………のだが攻撃が当たる瞬間、急所に当たらないように体を僅かにずらした。

 

 その後死んだフリをした事により何とかやり過ごしたのだ。

 

 機動六課の面々に捕まった後、怪我が酷かったため治療を受けた。ドゥーエからすれば敵から治療を受けるのは不満ではあったが、まだ会った事の無い妹達に会うために治療を受ける事にした。

 

「最近ドクター達には会った?」

 

「えぇ。映像越しではあるけど会ったわ。ドクターやウーノ・トーレ達は今でも元気よ。セッテはトーレによく似てるわ。クアットロは…… 何だか反省してないように見えるわね」

 

「あはは…… クア姉は性格が悪い感じだし…………」

 

「私の教育が足りなかったのかしらね…………」

 

 ドゥーエは他の収監されたメンバーであるスカリエッティやウーノ達とも会っている。と言っても映像越しでの対面であるが。どんな会話をしたのか分からない。しかし、ドゥーエの表情を見る限り不満は無いようだ。

 

「セイン。他の妹達は元気かしら?」

 

「うん! チンク姉やオットー・ディード達も元気だよ!」

 

「それは良かったわ。最近は忙しいって聞くから会えてないのよね。今の時期はセイン位しか行けないのかしら?」

 

「いや~…… 聖王教会もここ最近凄く忙しくなってね…… チンク姉達も用事があって行けないんだよ」

 

「そう…… 皆日常を過ごしているのね」

 

 セインからの近況を聞いてドゥーエは少しばかり笑顔を浮かべる。彼女は妹達の事を大事に思っており、よく気にかけている。拘留中の現在でもトーレやクアットロ達だけでなく、チンクやセイン達も気にかけている。正に優しい姉と言うべき人物だ。

 

「ドゥーエ姉、一つ聞きたい事があるんだけどさ……」

 

「あら? 何かしら?」

 

 セインはドゥーエに質問を投げかけようとする。

 今まではセインと何気ない会話や近況報告がほとんどだった。だが、セインの表情を見ると少し緊張しているような表情だ。真面目な話かもしれない。それを感じ取ったドゥーエも少し緊張した表情となる。

 

 一体何を聞いてくるのだろうか。

 

 セインが口を開いた。

 

 

 

 

 

「一人前のお姉ちゃんって、どうやったらなれると思う?」

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん…… ねぇ…………?」

 

 質問の内容に少しキョトンとしてしまうドゥーエ。しかし、セインであればこのような質問を投げかけてもおかしくはない。

 

 セインはナンバーズの中では中間に相当する6番目の戦闘機人だ。セインから見れば妹に該当する人物は6人。その妹達(セッテ・オットー・ノーヴェ・ディエチ・ウェンディ・ディード)から姉扱いされる………… 筈なのだが、セインの子供っぽい性格と明るい性格のせいで姉扱いされる事が少ないのだ。妹達はちゃんと姉扱いしているつもり…… だと思うのだが、セインはそう感じない。そんな事もあって、『姉』という立場に憧れているのだ。

 

「そうねぇ………… 私が思うに、そこまで複雑な事では無いわ」

 

「そうかな……? 私は結構難しい気がするけど…………」

 

 ドゥーエの答えにセインは少し意外そうな顔をしてしまう。彼女自身は結構難しいと思っていたので、その答えにキョトンとした表情を呈してしまう。

 

「確かにこれはイメージしづらいと思うわね。自身が上の立場であるという事を証明するには、能力や戦闘技術が高い事を証明するとかあるけど……」

 

「う…… そこは私にはきつい気がする…………」

 

 戦闘に関する事を言われると少し自信が無くなりそうになってしまう。何せセインの特技は潜入。戦闘はそこまで得意ではない。とはいえそこらの魔導士と比べればそれなりに戦えるが、トーレとチンク・ノーヴェ達の方がよっぽど戦闘を得意としている。そう考えるとセインは戦闘が不得意とも言える。

 

「でも、強さが姉である事を証明するものではないと思うの」

 

「じゃあ、一体…………」

 

 強さが姉である証にならないとなると、一体何なのか。

 

「それは………… 妹達の事を想う心………… だと思うわね」

 

「心?」

 

 ドゥーエから出された「心」という言葉。

 

 本格的に意外と思う事もあってセインは目を丸くしてポカンと口を開けてしまった。

 

「そうよ。分かりやすく言えば『心』よ」

 

「えぇ? 何だか意外だなぁ。もっと難しいものかと思ってたし…………」

 

「意外と単純なものよ。こういうものは」

 

 ドゥーエは少し薄っすらと笑いを浮かべる。その表情は年下の者を優しく見守るお姉さんと言った所だろう。何だか人をからかう小悪魔のようにも見える…… 気がする。一番上の姉であるウーノやトーレはこういう笑い方をしないだろう。チンクならこういった笑顔を浮かべる事が出来る。クアットロは…… 邪悪そうな笑顔なら浮かべられるな。うん。クアットロだし。

 

「セインはオットーとディードに色々教えているのでしょ? 掃除や奉仕のイロハを」

 

「まぁね…… 私が先に教えられたし…………」

 

「きっとノーヴェやオットー達はセインを姉として見ている筈よ。あなたならきちんと、分かりやすく教えているんだから」

 

「うぅん…………? どうしてドゥーエ姉にその事が分かるの?」

 

「少し前にオットーとディードが来たのよ。その時にね、あなたの事を喋っていたの」

 

「えっ!? そうなの!?」

 

 オットーとディードがドゥーエと面会してた。その事を聞いてセインは驚きの表情を見せる。何時の間に会ってたんだ?

 

「とても頼りになる先輩かつお姉さんですってね。中々愛されてるみたいじゃない」

 

「オットー…… ディード……」

 

 ドゥーエからの告発によりセインは目頭が少し暖かくなる感覚を感じた。あの二人が自分の事を姉として見てくれていた事が嬉しいのだ。オットーとディードは優しい性格なのだが、自分の事をどう見てくれているのか割と謎だった。そんな事もあり、きちんと姉扱いされている事を喜んでいた。

 

「ふふっ、セイン。もっと自信を付けて良いわよ?」

 

「…………っ! うん!」

 

 セインの表情が笑顔となった。悩みが完全に消えたのだろう。

 その表情に迷いは無い。

 

「ふふっ、あなたなら立派な姉を務められるわ。皆を頼めるわね?」

 

「勿論だよ、ドゥーエ姉!」

 

 セインはきっとこれから迷う事は無いだろう。“姉”としての自信を身に付けた彼女であればもう心配する事はない。ドゥーエは幽閉されている身なので妹達にはあまり会えないのだが、チンクやセインのように頼れる者達がいる。だから心配する事は無い。

 

 彼女達なら、妹達を任せられる。

 

 ドゥーエはそう確信していた。

 

「あ、そろそろ面会が終わる時間だ」

 

「なんだかあっという間だったわね。もう少し話していたかったんだけど…………」

 

「そうね。でも、次があるわ。何時になるかは分からないけど、もう二度と無い…… なんてことは無いわ。私達が生きている限りいずれ会える筈よ。例え違う世界にいても、ね。何せ私達は“姉妹”なんだから」

 

「うん! 勿論!」

 

 今回の面会はセインにとって大きな意義のあるものとなった。

 彼女の悩みを解決したため、姉としてこの先の未来を問題無く歩み続けられるだろう。チンク達も今後面会に来るであろう。その時も楽しみだ。

 

「あっ、最後に一つ聞きたいんだけど……?」

 

「?」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「と言う事があったの」

 

「それは返答しづらいですね…………」

 

「何でそんな事を聞くんだ…………」

 

「セインちゃんったら、随分大胆な事を聞きますね~♪」

 

「その事を考えた事無いですね」

 

「クックックッ…… 男の私には少々分かりづらいねぇ…………」

 

 ドゥーエは刑務所の許可の元、収監されている姉妹達のウーノ、トーレ、クアットロ、セッテ、そして生みの親であるジェイル・スカリエッティとテレビを通して会話していた(勿論この会話も監視されている)。

 ドゥーエから話された会話の内容。それは……

 

 

 

 

 

『ドゥーエ姉みたいに胸が大きくなる方法ってある!?』

 

『……………………えっ?』

 

 

 

 

 

 胸を大きくする方法。

 

 

 

 

 

『以前なのはさんやフェイトさん、大人になった陛下、それにミカヤさんやヴィクトーリアさん達も胸が大きいんだよ! 何だかディードやノーヴェ達も大きくなってる気がするし! ドゥーエ姉みたい大きくする方法ってある!?』

 

『えぇと………… それは私にも分からないわね…………』

 

『ドゥーエ姉でも分からない事があるなんて…………』

 

 どうやらセインは胸の大きさの事も気にしているらしい。

 こればかりはドゥーエでも分からない。

 

「やれやれ、セインちゃんはどうでもいい事を考えてるのね~」

 

「いえ、妹の悩みなら出来る限り相談してみるつもりよ。それとクアットロ、そろそろあなたにも 再教育 が必要のようね?」

 

「ひぃ!? ドゥーエ姉様!?」

 

「やれやれ…………」

 

「まったく、愚か者が…………」

 

「くっくっくっ………… クアットロには再調整が必要だねぇ…………」

 

「私にはまだまだ分からない事が多いですね」

 

 かつて大事件を起こした者達は、珍しく賑やかだった。




ハーメルンで最初に投稿した小説が「リリカルなのは」の小説で、今から10年前というのが驚きです。もうそんなに経ったのか………… 本格的に小説を書くようになったのはそれからしばらく経ってからですが、自分にとって懐かしい作品です。

今後「リリカルなのは」の新作が出るみたいですが、セインさん・ミカヤさん・ヴィクトーリアさんを出してくれぇ!(懇願)

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