なので同じ名前なだけの別キャラです⋯。
剣と剣が、火花を散らしながら激しく交錯する。
だが、その攻防はあまりにも一方的だった。
「――甘い!」
白騎士フィナ=ヴラド・スヴェルテンの冷徹な声が響く。
士郎がヒノカミ神楽の型に則り、渾身の力で振り下ろした黎明の刃は、彼女のレイピアによってまるで柳に風と受け流すように軽くいなされる。
逆に、その流れるような動きの中から閃光の如き鋭い突きがカウンターとして放たれた。
「ぐっ……!」
士郎は咄嗟に身を捻る。
しかし、完全には避けきれない。
レイピアの切っ先が彼の脇腹を深く抉った。
鮮血が迸る。
これが初めてではない。
戦いが始まってから、もう何度目になるだろうか。
士郎の攻撃は一度として白騎士の純白の鎧を捉えることができていない。
それどころか、彼女の洗練され尽くした剣技によってヒノカミ神楽の太刀筋はことごとく見切られ、捌かれ、そしてその隙を的確に突かれていた。
全身に無数の切り傷と刺し傷。
流れる血が彼の体力を、そして集中力を確実に奪っていく。
「……その程度の剣で私を倒すつもりか、愚かな人間」
白騎士はレイピアの切っ先についた血を優雅な仕草で振り払うと、まるで虫けらを見るかのような侮蔑の視線を士郎に向けた。
「お前たちは何故いつもそうやって無様に抗おうとする? 食材は食材らしく、素直に我らに喰われれば良いものを」
その言葉が、士郎の心の最後の理性の箍を外した。
「――黙れ」
士郎の瞳に怒りの炎が燃え盛る。
それは目の前の白騎士個人に向けられたものではない。
彼女が象徴する全ての「理不尽」に向けられた怒りだった。
「貴様らのせいで……! 貴様らのような化け物がいるせいで、今までどれだけの悲劇が起きたと思っているんだ!」
脳裏に蘇る。
燃え盛る街。
助けを求める人々の声。
そして、死徒にされ絶望の淵に突き落とされた愛する人の涙。
「理不尽に人の命を、未来を、笑顔を奪い、それを反省することも悔やむこともない……!」
士郎は傷だらけの身体に鞭を打ち、再び黎明を構え直す。
その刀身が彼の怒りに呼応するように、黄金色の輝きを増していく。
「俺は、絶対にその横暴を許さない……!」
その声はもはや怒りを通り越し、悲痛なまでの決意に満ちていた。
「悪鬼め……!」
「貴様は必ず、俺がこの手で斬る!」
その咆哮を合図に、士郎は再び白騎士へと突進する。
それはただがむしゃらに突っ込むだけの無謀な突撃。
だが、その瞳に宿る決して折れることのない覚悟の光を見た白騎士は、初めてその眉を僅かにひそめるのだった。