Fate/Cross Dimensions   作:水成

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第五十七話:狂月

後に残されたのは、壁まで一直線に続く灼熱の傷跡と、呆然と立ち尽くす衛宮士郎だけだった。

 

「……これが、ヒノカミ神楽の……俺の本当の力……」

 

自らの右手に握られた「黎明」を見つめる。

その刀身は未だ仄かな熱を帯びていた。

自らが放ったあまりにも強大な力に、士郎は我知らず戦慄していた。

これが日の魔術の真髄。

これが五条悟が言っていた「本質」。

 

だが、いつまでも呆けている時間はなかった。

広間の反対側では、未だ志貴と黒騎士の激しい攻防が続いている。

そして、城のどこかでは悟があの白い獣と戦っているはずだ。

 

(……加勢はしない)

 

士郎は決意を固める。

彼らを信じる。

自分には自分のやるべきことがある。

一刻も早く白野を助け出す。

そして、全ての元凶であるアルトルージュをこの手で斬る。

士郎は仲間を信頼し、玉座の間へと続く階段を駆け上がった。

 

その途中、ふと頭上を凄まじい速度で何かが通り過ぎていった。

見上げると、それはアルクェイドだった。

彼女は自分たちより先にアルトルージュの元へ向かっていたはず。

それがなぜ今、ここを逆方向に飛んでいくのか。

 

(……何か、あったのか?)

 

一瞬、嫌な予感が胸をよぎる。

だが、士郎はその疑念を振り払った。

今はただ前へ。

白野の元へ。

 

 

その頃、遠野志貴と黒騎士の戦いは最終局面を迎えていた。

 

「――御廚子!」

 

指輪の力を解放し「五分の王様」となった志貴は、黒騎士を圧倒していた。

超高速で繰り出される不可視の斬撃が、黒騎士の漆黒の鎧を切り刻み、その肉体を削り取っていく。

 

「ぐっ……! この、殺人貴が……!」

 

黒騎士もまた魔剣「真性悪魔ニアダーク」の力を最大限に解放し、呪いの奔流を放つ。

志貴は、その呪いの「死」を殺しながらさらに踏み込む。

互いの全てを懸けた最後の一撃がぶつかり合おうとしていた、その時。

 

ドゴォォォンッ!!

 

突如として天井が崩落した。

そして、その瓦礫の中から一体の人影が流星の如き速度で降下してくる。

 

「――え?」

 

志貴がその影の正体に気づいた時には、もう遅かった。

その影――アルクェイドは満面の笑みを浮かべながら、黒騎士の背後へと着地する。

そして、その白い腕を何の躊躇もなく黒騎士の心臓へと突き立てた。

 

「が……はっ……!?」

 

黒騎士は信じられないという表情で、自らの胸を貫く白い腕を見下ろす。

そして、ゆっくりと背後を振り返った。

 

「……な、ぜ……アルクェイド、きさまが…ここに……?」

 

その問いに、アルクェイドは心底楽しそうに答えた。

その瞳は理性の光を失い、どす黒い狂気と独占欲に満ちていた。

 

「こんなのと遊んでないで……私と遊びなさいよ、志貴」

 

アルクェイドはそう言うと、黒騎士の身体をまるでゴミでも捨てるかのように投げ捨てた。

そして、その狂気に染まった紅い瞳で、ゆっくりと志貴の方へと向き直る。

 

「……アルクェイド?」

 

志貴は目の前の光景が信じられなかった。

彼女の変わり果てた姿に、ただ呆然と立ち尽くす。

最強の援軍は今、最悪の敵となって彼の前に立ちはだかった。

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