Fate/Cross Dimensions   作:水成

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第六十八話:繋がる想い

「……俺は……いつも……助けられてばかりだ……」

 

衛宮士郎の意識は深い闇へと沈んでいく。だがその魂が完全に途切れる寸前、彼の身体を温かく、そして懐かしい光が包み込んだ。

 

全て遠き理想郷(アヴァロン)。

 

それは所有者をあらゆる攻撃から守る絶対防御の宝具。しかしその真価はそれだけではない。契約者であるアルトリア・ペンドラゴンとの繋がりさえあれば、持ち主を不死身に限りなく近づける法外なまでの治癒効果を発揮する。

 

今の士郎にセイバーとの繋がりはない。二人の物語はとうの昔に終わりを告げている。

 

だが花の魔術師は最後の悪戯を仕掛けた。星の内海からほんの一瞬だけ、二人の魂の道を再び繋いだのだ。

 

その奇跡によって聖剣の鞘の加護は完全に発動した。士郎の身体を蝕んでいた全ての傷が、骨折が、失われた血液が、まるで時間を巻き戻すかのように瞬く間に再生していく。死の淵にあったはずの身体に再び力が、命が漲っていく。

 

「……これは……」

 

士郎はゆっくりと目を開け、自らの身体に起きた信じられない変化に気づく。白野の腕の中から静かに立ち上がると、その手で自身の胸に触れた。白野に貫かれたはずの深い傷は跡形もなく消え去っていた。

 

一方アルトルージュは目の前で起きた二つの奇跡にただ呆然としていた。

 

先程自らの全力の一撃をいとも容易く防いでみせたあの絶対的な守り。そして今、致命傷だったはずの人間を瞬く間に完全な状態へと蘇らせたあの治癒の光。

 

(……まさか……ありえない……!)

 

彼女の永い記憶のその片隅に一つの忌々しい伝説が蘇る。神代の魔術をもってしても決して届くことのない妖精郷。星の内海に眠るという聖剣の鞘。

 

「……貴様……まさかアヴァロンを……!?」

 

その驚愕の問いに士郎は答えなかった。ただ静かに腰の「黎明」を抜き放つ。その瞳にはもう迷いも絶望もなかった。ただ守るべきもののために全てを懸けるという鋼の覚悟だけが宿っている。

 

「……士郎……」

 

白野が心配そうに彼の名を呼ぶ。士郎は彼女を振り返ると優しく微笑んだ。

 

「大丈夫だ、白野。ここで全てを終わらせる」

 

「お前と、俺たちの子の未来のために」

 

その言葉を最後に彼はアルトルージュへと向き直った。

 

黎明の刀身が彼の完全復活した魔力に呼応するように黄金色の輝きを激しく明滅させる。

 

「――アルトルージュ・ブリュンスタッド」

 

士郎は静かに告げる。その声には怒りも憎しみもなかった。ただ一つの揺るぎない決意だけが込められていた。

 

「お前の我儘に付き合うのはもう終わりだ」

 

最後の戦いが始まる。

 

愛する者たちから託された想いを胸に。

 

衛宮士郎は全ての元凶である黒血の姫君と最後の刃を交える。

 

 

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