「お前の我儘に付き合うのはもう終わりだ」
士郎の静かなしかし揺るぎない宣戦布告。
それと同時。彼は再びその指で印を結んだ。
「領域展開――『天照開闢』!」
再び世界が黄金色の光で塗り替えられていく。悪趣味な城の残骸は消え去り、どこまでも続く光の平原がアルトルージュを包み込んだ。
「……また、この不愉快な世界か」
アルトルージュは忌々しげに呟くと、その全身からどす黒い魔力を奔流のように溢れ出させた。
その魔力は彼女の周囲でまるで黒い炎のような鎧となり、領域が放つ絶対的な「生」と「光」の力を中和していく。
「無駄な抗いを。その程度の力でこの私を殺せるとでも思ったのかしら?」
「潔く死になさい、人間。それがあなたに許された唯一の慈悲よ」
その絶対者としての傲慢な言葉に士郎は静かに答えた。
「……領域がお前に効かないことくらい想定済みだ」
この領域は彼女を殺すためのものではない。彼女の力を削りそして自分の力を最大限に引き出すためのただの「舞台装置」。この太陽の概念で満たされた世界では、アルトルージュの力は確実に削られていく。そして何より、士郎自身がその力の全てを十二分に発揮することができるのだ。
「――行くぞ」
士郎は短く告げるとその姿を掻き消した。
いや、違う。
領域の恩恵を受け爆発的に向上した身体能力による超高速移動。彼は一瞬でアルトルージュの懐へと潜り込む。
そしてその手に握られた「黎明」が灼熱の輝きを放った。
残火の太刀・東――『旭日刃』
触れるもの全てを原子レベルで消滅させる絶対的な攻撃。
それと同時。士郎の全身を太陽の炎そのものが鎧のように覆い尽くす。
残火の太刀・西――『残日獄衣』
一万五千度の炎の鎧。
それはもはや防御ですらない。近づくもの全てを焼き尽くす攻防一体の最終形態。
「――なっ……!?」
アルトルージュはその異常なまでの熱量と速度に初めてその表情に焦りの色を浮かべた。
士郎が放つ旭日刃の一閃を咄嗟に血の魔術で作り出した盾で受け止める。
キィィィィンッ!!
今まであらゆる攻撃を防いできた血の盾が灼熱の刃に触れた瞬間蒸発していく。
「――おおおおおおおおっ!」
士郎は咆哮と共にヒノカミ神楽の剣技を叩き込む。
円舞、碧羅の天、烈日紅鏡、幻日虹――
型に囚われずその本質だけを抜き出し最適化された神速の連撃。
その一撃一撃が旭日刃の絶大な破壊力を宿している。
アルトルージュは防戦一方に追い込まれた。
彼女の驚異的な再生能力と魔術をもってしてもこの太陽の化身と化した士郎の猛攻を捌ききれない。
黒い魔力の鎧が削られその白い肌が灼熱の炎に焼かれていく。
日輪の剣士と月蝕の姫君。
光と闇の最終決戦は互いの全てを削り合う総力戦へと突入した。