にこ、休日の密会?   作:ソラスカイ

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王様戦隊キングオージャー第三話

ナレーション 「世界中に指名手配され、 捕まる寸前のギラだったが、 ンコソパの王、ヤンマ・ガストに連れ去られる。

 

世界の勢力図をひっくり返す秘宝を狙う、 地帝国バグナラクに対し、ギラとヤンマは共に戦い、勝利する。

 

だが、勝利の余韻に浸る間もなく、 2人はゴッドカマキリに捕まってしまうのだった。

 

…とさ。」

 

 

 

近代的な高層ビルが立ち並び、サイバーパンクなネオンが瞬くンコソパの夜空。その頭上を覆い隠すように、突如として巨大な影が舞い降りた。 輝く黄色の装甲を持った超巨大な昆虫型メカ、「ゴッドカマキリ」である。 ゴッドカマキリは、有無を言わさずギラとヤンマを捕らえると、夜の摩天楼を縫うようにして一気に空へと舞い上がった。

 

 

ゴッドカマキリは夜空を抜け、果てしなく広がる群青の海原へと飛び出した。 やがて夜が明け、陽の光が反射するきらびやかな海面を滑空していく。水平線の彼方に姿を現したのは、広大な島――あるいは一つの大陸だった。島の中央には、天を突くほどに巨大な「花」を模した建造物がそびえ立っている。その大樹のような茎から広がる無数の花びらからは、清らかな水が幾筋もの滝となって海へと流れ落ちていた。 ゴッドカマキリは透き通るようなエメラルドグリーンの浅瀬を抜け、上空から美しい海岸線を越える。さらに森を抜け、水中を器用に潜り抜けると、その先には赤、黄、ピンク、紫と、色とりどりの花々が絨毯のように咲き乱れる、息を呑むほどに美しい広大な花畑が広がっていた。

 

 

第一章:美と医療の国、イシャバーナ

 

場面は変わり、柔らかな日差しが降り注ぐ優雅な庭園。 純白のテーブルには高級な茶器が並べられ、燕尾服に身を包んだ初老の執事が付き従う中、着飾った貴族たちが午後のティータイムを楽しんでいた。背後では、白いピアノの優雅な旋律が響き渡っている。 誰もが「ヒメノ様」と呼び慕うその主のもとへ、黄金のゴッドカマキリがゆっくりと舞い降りた。

 

「いててて……」 空から美しい花畑のど真ん中に無造作に放り出されたヤンマとギラ。 ヤンマは顔をしかめながら立ち上がり、青い特攻服の埃を払う。ギラも突然の事態に目を白黒させながら、周囲の鮮やかな景色を見渡した。 彼らの視線の先、色鮮やかな花々で豪華に装飾された大階段の上から、一人の女性が静かに降りてくる。 黄金色に輝く豪奢なドレス。華奢な足元を飾る洗練されたヒール。彼女が優雅な足取りで階段を下るたび、周囲の花々が彼女を引き立てるかのようにさらに色付いて見えた。 彼女こそが、この国の女王。ヒメノ・ランである。

 

 

第二章:我がままを捧ぐ

 

煌びやかなステンドグラスから朝日が差し込む、イシャバーナ城の玉座の間。 その巨大な空間には、イシャバーナのシュゴッド「ゴッドカマキリ」が、まるで美術品の一部であるかのように堂々と鎮座していた。

 

しかし、玉座の間では緊迫した空気が流れていた。

 

「貴様、タダで済むと思うなよ!」

縛られ天井からロープで宙吊りにされているギラが声を荒らげるが、ヒメノは、どこ吹く風といった余裕の笑みを浮かべていた。

 

「ゴッドクワガタを渡せば、すぐにでも解放してあげる」 彼女の透き通るような声が広間に響き渡る。

「なぜクワゴンを必要とする?」

ギラが鋭い視線を向けて問い返すと、ヒメノは心底不思議そうに、そして当然だと言わんばかりに答えた。 「愛でるために決まってるでしょ?」 そのあまりにも身勝手な理由に、ヤンマが鼻で笑う。

 

「じゃあ、そうじゃねぇな。渡せタコメンチ」 ギラも憤然として声を上げた。 「意味がわからん。ただの我がまま娘じゃないか!」 その言葉を聞いた瞬間、ヤンマの態度が急変した。彼はギラに向かって猛烈な勢いで詰め寄り、凄みを利かせる。 「あぁ!? ヒメノちゃんになんて口聞きやがる!」 さっきまでヒメノに蹴り飛ばされていたにも関わらず、全力で彼女を庇うヤンマ。その不可解な変節に、ギラは呆れ顔で目を細めた。 「さっきからなんだ……まさか、惚れてるのか?」図星を突かれたのか、ヤンマは途端に挙動不審になり、裏返った声で笑い飛ばす。 「はははっ! そんなんじゃねぇし!」

 

言い争う二人をよそに、初老の執事・セバスチャンがヒメノの傍らに控え、恭しく進言した。 「ヒメノ様、何かと交換というのはいかがでしょう?」 しかし、ヒメノはすかさず首を振る。 「嫌。この国の全部が私のお気に入りだもの」 そして、扇を優雅に広げながらギラを見下ろし、一枚の手配書をヒラヒラと見せつけた。

 

そこにはギラの顔写真が印刷されている。 「言うこと聞かないなら、ラクレスに突き出すからね。指名手配犯さん」

 

シュゴッダムの王・ラクレスに引き渡される。それはすなわち死を意味する脅しのはずだった。しかし、ギラの反応はヒメノの予想を大きく裏切るものだった。 「そうだ! 今すぐラクレスに突き出せ!」 ギラは突如として両手を広げ、マントを翻して高らかに宣言した。 「我こそは! 何百万の罪を犯した邪悪の王! 放っておけば、あらゆる悪事を働いてやろう!」

 

高笑いとともに繰り広げられる「邪悪の王」の芝居。あまりの奇行に、ヒメノはドン引きしたような表情でメイドたちを振り返った。 「ちょっと……何を言っているのかわからないんだけど」 セバスチャンも困惑気味に頷く。 「この方、むしろ捕まりたがっているようです……」

 

空振りに終わった空気を打ち破るように、ギラが不意に叫んだ。 「おい! レインボージュルリラはあるか!?」 「何それ」

 

聞き慣れない単語に首を傾げるヒメノ。ギラは目を輝かせながら熱弁を振るう。 「食べれば天にも昇る、究極のご馳走! それを寄越せば、クワガタに相談してやってもいい」 その提案に、ヒメノの瞳が微かに興味の色を帯びた。

ヒメノは玉座から降り、「ついてらっしゃい」とギラに言う。次の瞬間、 「どうやって!?」 ギラの声が玉座の間に虚しく響いた。

ヒメノはギラを無視して歩きだし、「だからどうやって!?」 ギラの、の抗議の叫びは、虚しく空間に吸い込まれていった。

 

第2幕:バグナラクの闇

 

光溢れるイシャバーナから一転、地下深くの陰惨な空間。赤黒い炎が揺らめく中、地帝国バグナラクの軍勢が蠢いていた。彼らを統べる王、デズナラク8世が、禍々しい声で号令を下す。

 

「人類を殺せ。己が死すとも殺せ」

 

その傍らで、宰相カメジムが不気味な笑い声を漏らした。

 

「100人死んでも101人殺せば問題なし。フフフ…」

 

 

デズナラク8世は、燃え盛る炎を前に冷酷な決意を口にする。

 

「死を恐れるな。地球の秘宝、三大シュゴッドを手にし、地球を我らが埋め尽くすまで」

 

暗がりから、【フンコロガシ】のBNAを備えたバグナラクのフンジームが歩み出た。

 

「俺が奴らを汚し尽くしてやる。あれを食わせろ」

 

カメジムは面白そうに首を傾げる。

 

「巨大化ですか?容赦ないですねえ」

 

そして、デズナラク8世は次の標的を高らかに宣言した。

 

「進軍は美と医療の国、イシャバーナ!」

 

一方、イシャバーナの市街地。 平和な空気が漂う中、のどかな風車が回り、運河沿いの美しい街並みをヒメノが歩いていた。沿道には大勢の民衆が詰めかけ、口々に彼女を讃えている。 「綺麗!」「ありがとう!」「ヒメノ様!」 黄色いドレスを翻し、笑顔で花束を受け取っていくヒメノ。しかし、その足取りが不意にピタリと止まった。 彼女の視線の先には、沿道から落ちた小さな白い花束が、水たまりの泥水の上に転がっていたのだ。 「ヒメノ様!」「私に……この汚れた道を歩けと?」 ヒメノの声が険しくなる。周囲の空気が一瞬にして凍りついた。 すかさず駆け寄ったのはセバスチャンだった。彼は躊躇することなく、その泥水の上に自らの腹這いになり、高級な燕尾服を「絨毯」代わりにして道を作ったのだ。 「すぐに綺麗にいたします!」 泥まみれになりながら尽くす執事。しかし、ヒメノはなおも渋い顔を崩さなかった。

 

場面はさらに変わり、色とりどりの花畑が丘一面に広がる絶景の場所。 ギラ、ヤンマ、そしてヒメノの一行がそこを訪れていた。

 

「綺麗。やっぱりあそこはお花畑にして正解ね」 ヒメノが満足げに微笑むと、泥汚れを落としたセバスチャンが恭しく応える。 「昨日おっしゃられて一晩で用意したので、あれが限界でした」 そのやり取りを聞いていたヤンマが、呆れ果てたように吐き捨てた。 「死に食わんな。無理難題を強いる王に民がついていくものか」 しかし、彼はすぐに皮肉めいた笑みを浮かべて付け加える。「力とカリスマ性がありゃ何したっていいんだよ。ヒメノちゃんにはそれがある」

 

だが、ヒメノの「我がまま」は留まるところを知らなかった。彼女の視線が、美しい花畑の中にポツンと建っている一軒の古びた家に釘付けになる。両手の人差し指と親指で四角いフレームを作り、遠くの家を「ロックオン」するように見つめた。 「あの家、どけて」 「家は退けません」 セバスチャンが困惑して答えると、ヒメノは平然と言い放った。 「じゃあ壊して」

 

その言葉に、ギラが激昂して前に出る。 「民の生活を蹂躙する気か!」 ヤンマもさすがに焦った表情を見せた。 「いやいやいや、さすがに本当にやるわけねぇだろ……女王だぞ」

 

 

そんな二人をよそにセバスチャンが家に住む家族のもとに向い、話し合いすると家族は慌てるように家を離れていく。

「なんとかなっていただきました」 セバスチャンからの報告を受けたヒメノは手元の起爆スイッチを押した。「せーの、ドーン!」

 

ヒメノが無邪気な声を上げた瞬間――凄まじい爆発音が周囲を揺るがし、派手な炎と黒煙を上げて家が爆発した。 「完璧!」 民の家自ら爆破しておきながら、両手を叩いて無邪気に喜ぶヒメノ。 そのあまりに斜め上を行く凶行に、ギラとヤンマは開いた口が塞がらない。 「……やってらんないわ。帰るぞ」 ヤンマがきびすを返すが、ギラは頑として動かなかった。 「嫌だ。レインボージュルリラを食べるまでは」

 

第三章:幻の美味と車椅子の少女

 

王宮の壮麗な食堂。 クリスタルのシャンデリアが輝く下、長大なテーブルにギラとヤンマが着席していた。 セバスチャンが恭しく歩み寄り、豪奢な金縁のスープ皿をギラの前に置く。 「この国一番のシェフに作らせた『レインボージュルリラ』。とくとご賞味あれ」 ヒメノも席に着き、満足げに微笑む。 「いただこう」 だが、その優雅な空気をぶち壊したのはヤンマだった。彼は出された自分のスープ皿を鷲掴みにすると、行儀悪く一気飲みし、空になった皿を乱暴にテーブルに叩きつけた。 「ごちそうさん」

 

「……汚らわしい」 ヒメノが氷のような冷たい視線を送る。

 

対照的に、ギラは銀のスプーンを手に取り、澄んだ赤いスープを一口、ゆっくりと口に運んだ。 目を閉じ、静かに味わうギラ。 「……美味だ」 目を見開いたギラは、しかし静かに首を横に振った。 「だが、これはレインボージュルリラではない」 その言葉に、ヒメノの眉がピクリと動いた。 「セバス?」 「申し訳ありません!」

 

セバスチャンが慌てて頭を下げる。 「ギラ様のお話を元に、忠実に再現させたつもりでしたが……」 ヒメノは冷たくギラを睨みつけた。 「そもそも、実在するんでしょうね?」 「幼い頃に食したきりだが、忘れるはずがない」

 

ギラの脳裏に、遠い過去の記憶がフラッシュバックする。 (孤児院のような場所で、ボロボロの服を着た幼いギラが、粗末な木のスプーンで赤黒い泥のようなものを嬉しそうに口に運んでいる。しかし、その顔は満面の笑みだった――)

 

現実に戻ったギラは、力強く宣言した。 「あれを、子供たちに味わわせる……! そのために、俺様はこの世界を支配するのだ!」 あまりにも純粋で、しかし壮大すぎるその野望に、ヤンマは思わず天を仰いだ。 「ガキどもがレインボージュルリラを食える平和な世界を作るために、王様になるってよ……帰るぞ」 呆れ果てて立ち上がるヤンマ。ヒメノは皮肉たっぷりに微笑んだ。 「ご立派な指名手配犯さんね。でも、あなたがクワガタをくれるまで解放はしない」 そして、ヤンマに向かって冷たく言い放つ。 「あなたはもう帰っていいわよ」 「俺もアイツに用があんだよ! 俺に色仕掛けは通用しねぇかんな!」顔を真っ赤にして強がるヤンマに、ヒメノは心底どうでもよさそうに呟いた。 「何も仕掛けてないけど」

 

場面は城下町の美しい公園へと移る。 緑豊かな木漏れ日の中、一人の少年がギラに手を振って走り去っていく。 「また遊ぼうね。バイバイ!」

「バイバイ」と手を振り返して見送るギラ。

そこに配下を引き連れたヒメノがやってくる。

「何してるの? 行くわよ」

 

ヒメノがギラに声をかけたその時、車椅子の少女を連れているみすぼらしい身なりの男が、鬼の形相でヒメノの前に立ち塞がった。 「王女! 絶対に治ると言われてお前の手術を受けたのに、娘は歩けないままだ! この子の夢も未来も、お前が潰したんだ! お前は無能の道楽娘だ!」 激しい怒声。メイドたちが慌てて男を取り押さえようとするが、ヒメノは静かにそれを制した。 「離して」メイドたちを下がらせたヒメノは、車椅子の少女の目線に合わせて身を屈めた。 「あなたは、それでいいの?」 少女は悲しそうな瞳でヒメノを見つめ、小さく首を横に振った。

 

その様子を見たセバスチャンが、無言で男の前に進み出た。 「ヒメノ様より、特別援助金です」 差し出されたのは、分厚い札束だった。

「金で解決できると思うなよ!」と男は激昂するが、金は受けとり、車椅子を乱暴に押し、その場から足早に立ち去っていった。 遠くの木陰から、ギラとヤンマがその一部始終を静かに見つめていた。

 

だが、男の行動には裏があった。 公園の死角、人気のない路地裏に入った途端、男の態度は豹変した。彼は血眼になって地面を這いつくばり、先ほど自分が投げ捨てた札束をかき集め始めたのだ。 「よし……今月も生き延びた。よかった」 札束を懐にねじ込み、醜い笑みを浮かべる男。彼は車椅子の娘に向かって振り返り、恩着せがましく言った。

 

「全部お前の足のおかげだ。情けないパパでごめんな」 少女は俯き、力なく答えた。 「謝らないで……」 すべては、ヒメノから同情を買い、援助金を引き出すための卑劣な芝居だったのだ。

 

第四章:夜桜の下の真実

 

夜の帳が下りたイシャバーナ城。 庭園の一角には、見事な枝振りを持つ巨大な桜の木が植えられ、幻想的なライトアップに照らされて満開の花びらを散らしていた。 「美しいな」 夜風に吹かれながら、ギラが感嘆の声を漏らす。 その桜の木の根元では、セバスチャンが一人で散った花びらを片付ける作業を黙々とこなしていた。 ギラは少し同情したような声をかける。 「あんたも大変だな。何年ここの執事やってんだ?」 セバスチャンは手を止め、穏やかな笑みを浮かべて答えた。

 

「3年です。こう見えて私、25歳ですから」 「なっ……」 ギラは目を丸くして、セバスチャンの顔をまじまじと見つめた。 「どう見てもヨボヨボの老人じゃねぇか!」 「特殊メイクです」 セバスチャンは平然と答える。 「『執事っぽくしろ』とのヒメノ様の命令で。名前もセバスチャンに改名させられました」 そのあまりに理不尽な扱いに、横で聞いていたヤンマが呆れ果てて頭を抱えた。 「無茶苦茶だな。なんであんな超絶ワガママ女が王様やれてんだか……」「それは……」 セバスチャンが何かを言いかけたその時、城の中からメイドが血相を変えて駆け込んできた。 「町にバグナラクが!」 その報告に、全員の顔色が変わる。 「ヒメノ様は!?」 セバスチャンが鋭く問うと、メイドは息を切らしながら答えた。 「すでに、立ち向かわれました!」

 

ヤンマが特攻服の襟を正し、鋭い視線をセバスチャンに向ける。

 

「連れてけ」 「承知しました」 セバスチャンは深々と一礼すると、どこからともなく取り出した長剣を手に取り、二人の王に向かって静かに告げた。 「お二人はまだ……ヒメノ様のすべてを、ご覧になっていない」

 

夜桜の花びらが風に舞う中、彼らはバグナラクが急襲する戦場へと歩みを進めていった――。

 

第五章:女王の戦い

 

夜空を覆い尽くすほどの暗雲が立ち込め、美と医療の国「イシャバーナ」の美しい景観が、轟音とともに破壊されていく。 街のあちこちから火柱が上がり、黒煙が立ち昇る。建物の瓦礫が崩れ落ちる中、巨大バグナラクのフンジームや無数のバグナラク下級戦闘員サナギムの群れが、暴虐の限りを尽くしていた。 石畳は砕け、美しい花々は炎に巻かれている。「キャアアアアッ!」 逃げ惑う民衆の悲鳴が夜の闇に響き渡る。

 

平和で美しかったイシャバーナの風景は、突如として地獄絵図へと変わった。

 

 

黒煙が空を覆い、美しく整えられていた庭園には容赦なく

人々がパニックに陥り、悲鳴を上げて逃げ惑う中、ただ一人、逃げようともせず毅然と立たずむ姿があった。

 

イシャバーナの女王、ヒメノである。

 

降り注ぐ火の粉の中でも一切の怯えを見せない彼女の凛とした姿に、逃げ惑う民衆たちがすがりつくように声をかける。

 

「ヒメノ様!」

 

自らの愛する国を荒らされたヒメノの瞳には、戦う気迫が満ちていた。彼女は敵を見据えたまま、鋭い声で従者を呼ぶ。

 

「セバス!」

 

その声に応じ、執事のセバスが王の剣『オージャカリバー』を持って駆けつけた。

 

同時に駆けつけてきたヤンマとギラ。

青いコートを羽織ったヤンマは流れるような手つきで剣のスイッチを弾き、力強く叫んだ。

 

「王鎧武装!」

 

それに続くように、赤い装束のギラも剣を構えて闘志を剥き出しにして声を張り上げる。

 

「王鎧武装!」

 

二人の叫びに応えるように、剣から荘厳でリズミカルな待機音声が鳴り響き始めた。

 

眩い光が彼らの体を包み込み、空間に展開されたホログラムの巨大な装甲が瞬く間に装着されていく。ヤンマは青き戦士へ、ギラは赤き戦士へとその姿を変えた。

 

変身を終えた二人は迷うことなく、群がるサナギムたちの中へ飛び込んでいく。激しい剣戟の音と火花が散りばめられ、乱戦が繰り広げられた。

 

その最中、燃え盛る街角から悲痛な男の叫び声が上がった。

 

「娘が!娘がまだ…!」

 

その声が耳に届いた瞬間、前を見据えていたヒメノの表情がハッと変わる。

 

この声は昼間に出会った車椅子の少女の父親の声であった。危機感を抱いたヒメノは素早く周囲を見渡して少女を探す。

 

黒煙と炎が視界を遮る中、ヒメノの鋭い視線が瓦礫の奥を捉える。

そこには、車椅子を失い、崩れ落ちた建物の陰で座り込む、昼間に出会った少女の怯える姿があった。

 

フンジームの無慈悲な破壊光弾による攻撃が、動けずにいる少女へと向けられ発射された。

「危ない!」 誰かが叫ぶ。しかし、誰も助けに入れない。

 

その瞬間、華やかな黄色いドレスを翻し、ヒメノが生身のまま飛び出した。 彼女は少女を庇うように、その小さな体の上に覆い被さった。

 

ドォォォン!!

 

轟音と共に、怪人の攻撃が至近距離で炸裂した。 攻撃はギリギリのところで直撃を免れたものの、凄まじい衝撃と爆風で泥水が巻き上げられる。 「……っ!」

 

「……っ!」 ヒメノの美しいドレスは泥水にまみれ、彼女自身も泥だらけになっていた。しかし、彼女の腕の中の少女は無事だった。

 

ヒメノはゆっくりと顔を上げ、泥だらけになりながらも少女に語りかけた。 「ケガは?」 ヒメノが優しく問いかけると、少女は自分の無事よりも、ヒメノの痛々しい姿に目を潤ませた。 「お召し物が……!」 その言葉に、ヒメノは泥だらけの顔で、しかしどこまでも凛とした表情で微笑んだ。 「こんなの新しく作ればいい。でもあなたは、そうはいかないでしょ?」

 

「こんなの新しく作ればいい。でもあなたは、そうはいかないでしょ?」

 

そこに、不気味な鳴き声を上げながら、バグナラクの下級戦闘員「サナギム」の群れが武器を手に迫ってきた。ヒメノは鋭い視線を敵に向けると、少女の背中を押した。 「走って逃げて。足は治ってる。私が治療したんだから」 「でも……」 少女は恐怖と不安で顔を歪ませる。以前の手術で足は治っているはずなのに、心が追いつかず、どうしても立ち上がれないのだ。そんな少女の顔を真っ直ぐに見つめ、ヒメノは力強く語りかけた。

 

「わがままになればいいじゃない」

 

少女がハッと息を呑む。 「あなたの望みは誰でもない、あなたにしか叶えられない。夢も未来も、わがままから始まるの」 ヒメノの言葉は、少女の心に掛けられていた重い鎖を解き放つように響いた。 「そして世界を、あなたの思うままにしてやりなさい」

 

ヒメノは少女をその場に残し、静かに立ち上がった。

 

迫り来る怪人たちの群れに向かって、泥に塗れたドレスを引きずりながらも、一切の怯みなく歩みを進める。 「我が名はイシャバーナの女王、ヒメノ・ラン!」 その宣言と共に、彼女の背後に美しい夕焼けと壮麗な城の幻影が浮かび上がる。 「ただ我がままに、我が道をゆく!」 ヒメノは白と銀に輝く王の剣、オージャカリバーを天高く掲げた。 「散ることを知らぬ花……その気高さを知るがよい!」「王鎧武装!」 眩い光がヒメノを包み込み、彼女は鮮やかな黄色の装甲に身を包んだ戦士、カマキリオージャーへと変身を遂げた。

 

「ハァッ!」 カマキリオージャーは大地を蹴り、凄まじいスピードでサナギムの群れへと突撃した。 右手にはオージャカリバーを握りしめ、そして左手には、王の証たる可変武器「キングズウエポン」を鎌(カマ)モードに変形させて構えている。

 

その戦いぶりは、まさに苛烈にして華麗な舞踊のようだった。

 

敵の重い一撃を軽やかに身を翻して躱すと、左手の鋭い鎌を振るって敵の武器を弾き、そのまま体勢を崩させる。そこにすかさず、右手のオージャカリバーによる痛烈な斬撃を叩き込んだ。 カマキリの如き双刃による怒涛の連撃。左の鎌で引き裂き、右の剣で斬り伏せる。複数の敵に囲まれても、彼女の優雅なステップと絶え間ない刃の旋風が止まることはない。

 

さらにカマキリオージャーは、キングズウエポンを駆使してアクロバティックに宙を舞う。空中に跳躍しながら唐竹割りを叩き込み、着地と同時に左手の鎌で周囲の敵を円を描くように薙ぎ払う。黄色い閃光の軌跡が戦場に幾重にも描かれた。

 

最後は双刃に黄金のエネルギーを込め、強烈な斬撃波を放つ。バグナラクの兵士たちは激しい火花を散らして次々と吹き飛び、連鎖的に大爆発を起こした。 燃え盛る炎を背に、カマキリオージャーは静かに武器を下ろし、気高く佇む。

 

その圧倒的で美しい戦いを、少女は安全な瓦礫の陰から息を呑んで見つめていた。 ふと、自分の足元へと視線を落とす。 ヒメノの言葉が、脳裏にこだましていた。 『夢も未来も、わがままから始まるの』

 

少女は、震える足にゆっくりと力を込めた。壁に手をつくこともなく、自分自身の意志で、真っ直ぐに立ち上がる。彼女は一歩、また一歩と、確かに大地を踏みしめて前へ進み出た。 そして、泥だらけの戦場を背にする気高き黄色い戦士に向かって、力いっぱい、自分の「わがまま」を叫んだ。

 

「ヒメノ様みたいになりたいです!」

 

その純粋で真っ直ぐな声に、カマキリオージャーは振り返り、マスクの下でクスリと笑みをこぼした。 「なんてわがまま!……私には敵わないけど」

 

その様子を見ていたクワガタオージャーと、トンボオージャー。 「フン、面白い!」 クワガタオージャーが不敵に笑う。 だがその直後、サナギムたちを失って破壊活動を強めた巨大バグナラクのフンジームが巨大な紫色の破壊光線を無差別に大量に撒き散らし始めた。

 

 

第六章:シュゴッド集結

 

カマキリオージャーは振り返り、クワガタオージャーに頼わがままを言う。 「ゴッドクワガタを頂戴!この国の全部が私のお気に入りなの。誰も死なせない!」

その強固な決意に満ちた言葉に、クワガタオージャーは天に向かって剣を突き上げた。

「貴様のわがまま、付き合ってやろう!」天空から、王たちに呼応するかのように巨大な機械生命体「シュゴッド」たちが飛来する。 真っ赤なゴッドクワガタ、青いゴッドトンボ、黄色いゴッドカマキリ、紫のゴッドパピヨン、そして黒と黄色のゴッドハチ。五体のシュゴッドは空中で眩い光を放ちながら合体を開始し、巨大な王のロボット「キングオージャー」として大地に降り立った。

 

 

第3章:美しき反撃と小さな相棒

 

キングオージャーのコクピット内では、王たちがそれぞれの操縦桿を握っていた。 トンボオージャーがモニターに映る怪人の巨大な球体を見て、顔を顰めて叫ぶ。 「見ろ! でかいフンだぞ!」 「んなことどうでもいいだろマカロニ坊主!」 クワガタオージャーが即座に言い返すが、カマキリオージャーが鋭い声で二人を制した。 「前を見なさい!」

 

キングオージャーとフンジームの激しい巨大戦が幕を開けた。 怪人が巨大な球体を勢いよくぶつけてくるのを、キングオージャーは巨大な剣で受け止める。強烈な衝撃で街の建物が崩れ落ち、コクピットが大きく揺れる中、カマキリオージャーは苛立ちを露わにした。 「もー! やっ! 美しくない!」 泥臭く力任せに戦うだけの状況は、彼女の崇高な美学に反していたのだ。

 

その時、眼下の水路からひっそりと、巨大なカタツムリ型のシュゴッド「ゴッドスネイル」が姿を現した。 「可愛い! おいで!」

 

カマキリオージャーが嬉々として呼びかけると、ゴッドスネイルはキングオージャーの左腕に飛び乗り、巨大なガトリング砲へと変形・合体した。 ガトリング砲が一斉に火を噴く。無数のエネルギー弾が怪人の転がす球体を粉砕し、そのまま怪人の身体を蜂の巣にしていく。 「わああっ! ちょっ、待て!」「やめろタコメンチ!」 コクピット内で他の王たちが激しい振動に悲鳴を上げる中、カマキリオージャーは涼しい顔で容赦なく引き金を弾き続けた。地上では、避難していたセバスチャンやメイドたち、そして自らの足で歩き出した少女が、その圧倒的な戦いぶりを見上げて歓声を上げていた。 怪人は大爆発を起こし、その跡には鎮魂と再生を象徴するかのような、巨大な花のモニュメントが咲き誇った。 「スッキリした。ありがとう、ツムリちゃん!」 カマキリオージャーは息をつき、ゴッドスネイルに感謝を伝えた。

 

「スッキリした。ありがとう、ツムリちゃん!」 カマキリオージャーは息をつき、ゴッドスネイルに感謝を伝えた。

 

だが、戦いはまだ終わっていなかった。巨大な花のモニュメントの裏側、立ち込める土煙を突き破り、フンジームの再び姿を現したのだ。怪人は背中の羽を大きく広げると、上空へと飛び上がって逃げようとする。

 

「飛んで!」 カマキリオージャーが叫ぶ。 「俺に指示すんな!」 トンボオージャーが悪態をつきながらも操縦桿を引き、キングオージャーは背部の羽を展開して怪人を追って大空へと飛翔した。激しい空中戦への突入である。

 

「執刀する!」 カマキリオージャーの高らかな宣言と共に、キングオージャーは空中で怪人に肉薄する。カマキリオージャーがコクピット内で優雅に、しかし力強く右足を高く振り上げると、それに連動してキングオージャーも巨大な右足を振り上げた。

 

すると、キングオージャーの右脚を構成しているゴッドカマキリが、その両腕の鋭い鎌をシャキッと展開する。

 

カマキリオージャーが踵落としのように右足を勢いよく振り下ろすと、キングオージャーも全く同じ動作で強烈な踵落としを放った。 空中で振り下ろされたゴッドカマキリの鋭利な鎌が、フンジームの脳天に直撃する。その凄まじい破壊力と鎌の鋭さによって、怪人は空中で脳天から真っ二つに両断された。

 

 

第7章:エピローグ

 

戦いの傷跡が残る街に、穏やかな陽の光が降り注いでいた。 ヒメノは街中に用意した簡易更衣室でメイドたちにガードされながら着替えていた。

「仕立て直して」 と泥水まみれの服を手だけだしてセバスチャンにわたし、「かしこまりました」と受けとる。

 

一方、街の片隅では、黒髪の少女の父親が、しっかりと両足で立つ娘の姿を見て驚きの声を上げていた。 「お前……歩けたのか?」 少女は少し申し訳なさそうに、しかし真っ直ぐな瞳で父を見上げた。 「パパ、私、自分の足で歩きたいの」 父親は過去の己の行いを悔いるように優しく微笑み、愛おしそうに娘の頭を撫でた。 「悪かった……お金はパパが稼ぐから」 そして父親は、近くにいた執事のセバスチャンに向かって深々と頭を下げた。 「では、ヒメノ様のドレスをお願いできますか?」仕立て屋として真っ当に働くことを誓った父親に、セバスチャンは真摯に「精一杯働かせていただきます」と答えた。

 

その様子を少し離れた場所から見つめるギラとヤンマに、セバスチャンが穏やかに語りかける。 「ヒメノ様のこと、分かっていただけましたか? イシャバーナは、美しさで人の心を豊かにする」 その言葉を証明するかのように、夜空にはライトアップされた美しい桜の木が輝き、花畑の中には修理された家屋が佇んでいた。

 

「僕ね、新しい綺麗なお家に住めるんだ!」 ヒメノに家を爆破された少年が、嬉しそうにギラに駆け寄る。 「そっか、よかったな!」とギラも柔らかな笑顔を見せた。

 

ギラは、先ほどの戦いでのヒメノの行動を思い出していた。怪人から身を挺して少女を庇い、怪我人を自分の足で歩かせようとした彼女の姿。 『あの女はわがままだが……それに救われる者もいるのだな』

 

 

ギラは、先ほどの戦いでのヒメノの行動を思い出していた。怪人から身を挺して少女を庇い、怪我人を自分の足で歩かせようとした彼女の姿。 『あの女はわがままだが……それに救われる者もいるのだな』

彼女は一見わがままに振る舞っているようで、その実、誰よりも民の心を救い、豊かな未来を与えていたのだ。ギラはヒメノの真意を理解し、深く納得した。

 

ギラはヒメノたちの元へ駆け寄り、声を張り上げた。 「やはり貴様、俺様の仲間になれ!」 だが、ヒメノは冷たくあしらう。 「はぁ? 黙って」 そして、集まった民衆に向かって高らかに宣言した。

 

「怪我人は全員城へ! 私が治療します!」 セバスチャンやメイドたちが、手際よくお輿を用意して行進を始める。イシャバーナに平和な日常が戻った。

 

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