英雄に憧れるのは間違っているだろうか? 作:カステラ
無事に目論見が成功したアルス。
かなり綺麗にアイズに勝利したように見える彼は、その実──
(あっぶね〜〜!?もう少し遅れてたらふっ飛ばされてたかも!!)
めちゃクソ焦っていた。
そもそも、アイズのほうが身体能力が上でありアルスは受け流しきれていなかったため、かなり危なかったのだ。
アイズも力は自分のほうが上だとわかっていたのだろう。それ前提の立ち回りだったし、だからこそ急に向上した力に対応できず鞘を吹き飛ばされたのだから。
「────────」
「ハッ!?だ、大丈夫?!思いっ切り鞘吹き飛ばしちまったけど!」
彼はようやく呆然として尻もちをついたアイズに気付き声を掛ける。
アイズの顔はかなり驚いているように見え、彼も困惑する。
(そ、そんなに怖かったのか…?いつもダンジョンで戦っているんだからそこまででもないと思うんだが……)
彼がもう一度声を掛けようとしたとき、アイズが口を開く。
「────すごい」
「へ?」
唐突に出された言葉を理解できず、今度はアルスが困惑する。
「すごい、おんけいも持ってないのに、あんなことができるなんて────すごい」
「は、はあ?、ありがとうございます?」
彼からすれば先ほど急に襲いかかってきた相手が、急に自分を褒めだすという、意味のわからない事態に直面しているのだが。それをアイズが知る由はない。
「さっきの、どうやったの?」
「えっ………えっと、それは秘密かな〜なんて」
さすがに魔力を直接操れますなんて、言うわけには行かないので誤魔化す。
しかし、それで諦めるような少女ではないことは彼もわかっている。
故にどう誤魔化すかが悩みどころであった。
その時、
「──────アイズ!!」
凛とした声が聞こえた。
また誰かが来たと彼は驚くが、直後にその声に既視感を感じる。
綺麗な声だった。そしてこの声を彼は聞いたことがある。
それは、前世で────
「リヴェリア…」
そしてそれは、アイズによって答え合わせをされる。
(やっぱり、この声って……)
彼が振り向けば、そこにはエルフがいた。
翡翠色の目と髪をもつ、とても美しいエルフが。
(リヴェリア・リヨス・アールヴ────)
まさかの原作キャラ2人目の登場である。
そしてリヴェリアは、この状況を理解できていないようで、困惑しているようだ。
それはそうである。側からみれば、尻もちをついているアイズと木剣をもって突っ立っている少年の構図である。
この状態でどちらに非があるのかと聞かれれば、誰もが少年と答えるだろう。
なので彼はハッとして言い訳を開始する。
「あの、これはその!この子と模擬戦をしていたというか、急に襲いかかられたので応戦したといいますか!だからその──────ごめんなさい!!」
誤解されているなら謝るしかないと、途中で思考を切り替えた彼は、大きな声で謝罪をする。
これで許してもらえなかったらどうしよう、と
内心怯えながら。
「──────そうか……」
(あっこれ終わった……)
底冷えするような声を発したエルフの王族に、彼は絶望する。
(絶対「なにアイズを傷つけてんじゃおどれぃ!」とか言われる〜!?そんでけじめつけさせられる〜〜!?)
なんて馬鹿なことを考えられるのだから、まだ余裕があるのかもしれない。
何にせよ、彼にできるのは断罪の時を待つことだけである。
「馬鹿者!!!!」
「ふぎゅ!?」
「えっ?」
気づけば、リヴェリアは超スピードでアイズに接近し、拳骨を繰り出していた。
そのあり得ない速度に、アルスは驚愕する。
(えっ、なになになに!?えっ拳骨?嘘でしょ?見えなかったんだけど?!まさかこれが────)
───リヴェリア・パンチ!!??
なんてふざけたことを考えてしまう。
それほどまでにすさまじい速度だった。前衛ではない魔道士職だと言うのに、今のアルスでは認識すらできなかった。
(これが、
改めて驚愕する、自分がこの速度に到達するには何年かかるか。
魔導師職ですらこれなのだ、やはり第一級冒険者は恐ろしい。
そう改めて認識した。
─────────────────────
「すまなかった、アイズが迷惑を」
「あっいえいえ!大丈夫ですよ、ケガもなかったし」
一通り説教をしたあと、リヴェリアはアルスに向き直り、謝罪をする。
「しかし、怪我をしなかったのは結果論に過ぎない…アイズには教育が足りていなかったようだ」
「あっ頭を上げてください!!大丈夫ですってほら、この通りピンピンしてますので!!」
リヴェリアの後ろでまた怯え始めたアイズが視界にうつり、居た堪れない気持ちになったのと、いつまでも王族に頭を下げさせるのはあとが怖いので頭を上げてもらおうとする。
「そっそうか、君がそこまで言うのなら…」
(よかった~、このことがバレたら絶対エルフたちにどやされるからな……)
万が一バレたらの話だが。
「……それで、君がインファント・ドラゴンを倒したという少年なのだな」
「はっはい、そうです…」
急に切り替わった話題に答えながらも、やはりこの人も知っているのかと思考する。
(あの戦いを見ていたのは村人と、ニーベルンゲン商会の人たちだけ。つまり、オラリオにニーベルンゲン商会が報告したんだろうな)
強化種もでて、報告しないわけには行かなかったのだろう。
まぁそれ自体は別にいいと、アルスは考えている。
問題は─────
(なんでロキ・ファミリアがここにいるのかってことだ)
よく考えて見ても、ロキ・ファミリアが、第一級冒険者が出張ってくるようなことではないだろう。
なにか来た理由があるはずだと、彼は考えている。
「それで、なんでここにロキ・ファミリアがいるんですか?この村での事件なんて、インファント・ドラゴンの件しか……」
それにしたって第一級冒険者が出張ることではないが。
「………アイズがどうしてもと言うものだから、付き添いでついてきたのだ」
(アイズさんが?)
「なんでも、君に興味があったそうだ」
その言葉を聞いてまたまた困惑する。
俺に興味?なにか彼女の目に留まることをしただろうか?
「インファント・ドラゴンを倒した、君にな」
なるほどと合点がいく。
確かにそれならば興味を持つかもしれない。本来ならばあり得ないことであり、強さを求める彼女にとっては是が非でも知りたいのだろう。
「………わかりました、他言無用にしてくれるなら、話します」
ここでしつこく聞かれても困るため、彼は話すことにした。
主にアイズが逃してくれなさそうだから。
───────────────────
「────なるほど、にわかには信じがたいが、理解はした」
「俺の説明でわかってくれたのなら、よかったです」
なんとかわかってくれたようだ。
リヴェリアさんはかなり訝しんでいたが、理解はしてくれたようである。
一方アイズさんはうまく分からなかったようで、首をかしげていた。
「魔力、噴射、それに魔法??」
「ごっごめん、これしか説明しようがないんだよ」
できるできないは別にして、原理はこれしかないのだ。
魔力を噴射し、速度と威力を底上げする。これだけである。
うまく説明できない自分が恨めしい。
そうしたら、リヴェリアさんが聞いてきた。
「そういえば、聞きたいことがあるのだが、いいだろうか?」
「えっ、はい。いいですよ」
突然、自分に聞きたいことがあるというリヴェリアさん。
聞きたいことってなんだろう。インファント・ドラゴン関連かな。さっき一通り話したけど。
「君は、オラリオに行くつもりはあるか?」
「はい」
そう、これだけは俺の“憧れ”に関わることだから。
「……即答だな」
「はい、これは俺の夢、憧れに関することですから」
「その夢とはなにか、聞かせてもらってもいいか?」
「ある人物と並ぶため」
それだけですと、俺は答えた。
「………そうか、ならば何も聞くまい」
リヴェリアさんは、一泊をおいて言う。
「いい夢だな」
「────はい」
いかがでしたか?読んでいただきありがとうございま。
また次回もよろしくお願いします。