雪鬼のアイギス   作:みきにゃんにゃん

1 / 2
拙い文章で、不定期更新だけどそれでも!!という方はいっぱい応援してくれると頑張ります(ง •̀_•́)ง


西暦2510年の日本

けたたましく響く施設の警報音。床を覆い尽くす程に横たわった人間と、地球の善性によって産み出された対話を用いて人間を善い方向へと矯正する擬似娘(シュードゥ)の冷たく動かなくなった骸。

 

傷を負いながらも逃げ惑う生き残った者達の怒号や悲鳴。

自分の身体中にべったりと付着した返り血。

 

 そして、数多の弾痕を身体に刻まれながらも咆哮する地球の悪性が生み出した巨大な化け物――アンソフ。

 

 

 

毎日見る夢であるので、もはや当然の様に景色はガラリと変わり、そこは明かりの1つも点灯してない真っ暗な取調室。

部屋中に響き渡る怒号に私の悲鳴。真実も、正義もその部屋にはなく、ただの少女となった私に繰り返されるのは無限に思える程の長さの罵詈雑言と拷問の様な暴力の嵐。

 

 

そんな中、少女は光を失った虚ろな瞳で出口の扉を見つめ――――眩しい朝日と騒がしい目覚まし時計が夢の世界に鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ…ぅ……あぁ……また、あの夢か…」

 

 無機質な電子音を奏でる目覚まし時計を八つ当たりする様に止めると、2度寝に誘ってくるベッドから起き上がる。カーテンを開け、姿見を見ながら寝癖がちらほらと見える雪の様な銀髪を適当に櫛で解いたらクローゼットに手を伸ばす。

 

 特注で作った防弾、防刃仕様の学生が着る様な白のワイシャツ。同じく特注の黒のブレザーと赤地に黒と白のチェックが入ったスカートを着用していつもの格好になると今度はクローゼットの下段、物々しい雰囲気を醸し出す金庫に手を掛ける。

指紋認証と暗証番号を入力して鍵を開けると相棒である拳銃『USPタクティカル』を取り出し、分解して点検すると右腰に装備する。

勿論だけど、なるべく拳銃が外から見えづらくなる様にブレザーを調整する事も忘れない。

 

改めて、私の名前は真琴来実(まことくるみ)

 職業をアイギス――正式名称を『特殊犯罪特別対策班』と呼ばれる銃火器を始めとした武装を身に付けて市民を守る職業に就いている普通とは随分かけ離れた経歴を持つ19歳。

 

 そんな私は朝食を作るのを面倒くさがって経費で箱買いしたバランス栄養食を1つ口の中へと放り込む。

栄養食なのでお世辞にも美味しいとは言えないソレを咀嚼しながらアイギスの必須装備であるウエストバッグの形ををした戦術武装鞄の中身を取り出しながらチェック。

 

「弾丸装填済みの予備マガジン5本と予備のサイレンサー…よし。人間、擬似娘用の手錠と拘束用のグラップルーガン…よし。応急処置セットに工具セット...スモークとスタングレードそれぞれ6つに折り畳みナイフ……よし、全部問題なし」

 

 机の上に並べられた道具達を丁寧に鞄に収納すると、今度はアイギスを纏める政府機関――『アテナ』から支給されたタブレットの専用アプリから依頼一覧を閲覧して簡単でそこそこ報酬の支払いも良い依頼を数個受注する。

 

「……はぁ。それじゃ…今日も1日、頑張りますか……」

 

 戦術武装鞄とスカートにベルトを通して落ちないようにしっかりと締めると腰の横の位置に鞄が来るように調節する。そうして出発できるだけの準備を終わらせると靴を履いて住居エリアの2階から、応接はもちろん作戦会議もできる1階へと足を運ぶ。

 

 正直な所、外に出るのは凄く憂鬱で依頼も投げ出してしまいたいくらいだ。……けれど、そんな事をすれば積み上げてきたアイギスとしての全てを失うし、問いただしたい事も償わせるべき罪も、全てがパアになってしまう。

 

「…………そろそろ、行かなきゃ」

 

ここに人が訪れない事をいい事に本来は来客が使う筈のハンガーに掛けてあったスカートと似たような色、似たような柄をしたマフラーを首に巻き付けて口元を覆うと他の人が誰もいない一人ぼっちの第8支部を出る。

 

……とりあえず、今日最初の依頼をこなす為にアテナに行かないと。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 私が所属する第8支部からアテナまでは最寄りの駅から電車と徒歩を合わせて30分で着く程の近場なのはちょっとした自慢。

 

 だけどまぁ……支部が1人ぼっちなのと私に掛けられた冤罪のせいで小学生の虐めの様に私を目にした殆どの人間、擬似娘、がヒソヒソとある事無い事を噂する。

 

「……もう慣れたから全然辛く無いけど、やっぱり…煩わしいな...」

 

 周囲の音をかき消す様にブレザーのポケットから一世代前の携帯であるガラケーとイヤホンを取り出すと最新のニュースを閲覧しながらお気に入りの曲を流して揺れる電車内での時間を適当に潰す。

まぁ目的の駅に着いてからは徒歩だし……見た目が女子高生で夏前なのにも関わらずマフラー巻いてる変な人(わたし)に声を掛けてくる人も居なかったのですんなりとアテナに入る事が出来た――のは良いんだけど

 

「本日アテナ内部での中学生見学の案内役依頼を受けた第8支部の真琴来実です」

 

「うわ……あっ、すみません……どうぞ」

 

 アテナ内にいる事務を含めた所属者も皆決まって私の冤罪を知っている。まぁ冤罪と言っても、証拠不十分で不起訴になっただけで報道もされたしそれなりの取り調べも行なわれた。

 けど世間はデパート丸々一つを爆破して中に居た存在全てを皆殺しにした奴が冤罪でした、なんて言われても怖くて警戒する。というかそれが当たり前の反応だから……

 

「仕方ない…のかな……」

 

 渡されたカードキーを受け取るとモーセの海割りの如く私から離れてはヒソヒソ話をし始めたり、睨みつけくるアイギスが作ってくれた道を歩いて中学生が集まっている部屋に行く為エレベーターのボタンを押す。

 

「はぁ……あからさまに避けて………みんな小学生みたいだな…」

 

「よっ、今日も朝からお疲れだな真琴。っていうかお前まだガラケーなのか!?いい加減スマホに替えたらどうだ?」

 

「気持ちだけ受け取って起きます。第7支部の支部長…笹ヶ峰仁哉(ささがみじんや)………さん。

 それよりも、貴方の様な人気アイギスランキング上位者が犯罪者にリーチ掛けてる私に何の用です?」

 

「あ〜…ホラ、真琴って1人ぼっちの支部で避けられてるから調子乗った中学生共に説明遮られ無いか不安でさ。

急遽俺が真琴のサポートって形でアテナ上層部に依頼を押し付けられたんだよ」

 

「……そうですか。一応…ありがとうございます」

 

 ベルの音と共にやっと来たエレベーターに乗ると――って、私が居るからか全然乗ってないけど、狭く無いからこれはこれでいい。

結局、数える程度しか乗らなかったエレベーターは上へと動き出す。が、乗ろうとしている人が居る階に止まって私の姿を見るやいなや乗車拒否。

 

「……はぁ…」

 

「あ〜…えっと、お疲れ真琴」

 

「同情する位なら全員を矯正してもらって良いですか?」

 

「……スマン」

 

 やっと目的の階にエレベーターが止まると私と笹ヶ峰さんはそそくさと降車して中学生が集まる部屋の前に辿り着く。憂鬱……だけど…仕事だから、やるしかない…。

 

 そう割り切った私はカードリーダーにカードキーを滑らせ部屋の中へと足を踏み入れる。

私が入室して、笹ヶ峰さんが入室すると部屋の外まで聞こえていた中学生らしい賑やかな声や空気はシンっと静まり心做しか空気も少し重く感じてしまう。

 

「……本日はアテナ見学に来て頂き、ありがとうございます。

それでは早速ですが、本日アテナ館内の社会科見学、最後のコーナーとしてお越しになった中学生の皆様に現職アイギスへの質問コーナーと拳銃射撃の体験時間を設けています。

 

……質問がある方、挙手をどうぞ」

 

私がそう声を掛けると静まり返っていた空気は途端にザワザワしだし1人の男子生徒が元気な声と共に勢いよく手を伸ばす。

 

「はいはい!!じゃあ女の人に質問しつも〜ん!!」

 

「……どうぞ」

 

「なんで人殺しなんかがここに居るんですかぁ〜?」

 

ゲラゲラと良くも悪くも子供らしい下卑た笑みを浮かべて聞いてくる中学生……だがまぁ、その位でキレる程私も子供じゃない。

 

「……たまたま、偶然、証拠が集まらなかったからですね。

 

……けど忘れない方がいいですよ。私は悪〜い大量殺人鬼とされている者。……油断してると、大切な人…気が付いた時にはみんな居なくなってても、知りませんからね」

 

軽く圧を掛けながら脅してみると面白い位に怯え、引率の先生と笹ヶ峰さんに睨まれる。

ふふ…やりすぎちゃったけど……ガタガタ小鹿みたいに震えていい気味だ。胸ばっか見てたマセガキめ。

 

それからというもの私を怖がってか普通の質疑応答を繰り返し、遂にはアテナの地下にある射撃スペースにゾロゾロと移動する。

 

「じゃあ最後、皆さんお待ちかねの射撃体験です。

 

 馬鹿がいない様に一応釘を刺しておきますけど……的以外、つまり私や他の人に銃を向ける事があるなら…私は容赦なく殺して止めますから…1人1発……緊張しながら楽しんで下さいね」

 

 用意されたのはMP-446と呼ばれる拳銃一丁。中学生達は緊張した表情で握り、的を撃っては衝撃を受け切れず倒れ込む風景を後ろで見守る。

 

「真琴、お前やり過ぎだ。中坊共が怯えてるじゃねぇか」

 

「ふんっ……調子に乗ってるから、市民を守り時には恐れられるアイギスとしての務めを果たしたまでです」

 

 私の言葉に苦笑した笹ヶ峰さんと共に体験を終え楽しそうな表情を浮かべる中学生達を並ばせると変な事をしない内に早々とアテナの入り口に送り届ける。

 

 これで…やっと1件、面倒くさくて……疲れた…。

 

「真琴、お前次の依頼は入れてんのか?」

 

「……入れてますけど、何ですか?」

 

「いや、俺まだ入れて無いから…手伝わせてくんね?」

 

「…………はぁ。どうせアテナ上層部から監視する様に言われたんですよね。なら堂々と監視された方が都合が良いです。」

 

「違ぇよ、俺は監視する様に言われた訳じゃねぇ。居たいから居るだけだ。だから…それで信じてくれ」

 

「…今はそういう事にしておきます。………では次の浮気調査の依頼に行きましょう」

 

 笹ヶ峰さんは私が釈放されてから間もない頃に幾ら無視しても話し掛けて来た面倒くさ………いや、フレンドリーな人だ。嘘が下手でよく第7支部のメンバーにモテて男気があるって情報は仕入れてるけど、まぁ…こっちを害されない、私の真実を探られない限り手を出す必要は無いかな。

 

 そうして私達は笹ヶ峰さんがアテナから借りてきたバイクで法定速度を守りながら浮気現場になりそうな場所へと移動した。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「…………まさかまさかの、大波乱でしたね…」

 

「だな…。まさか、浮気の証拠を集めて依頼主に送信したら直接ここに殴り込んで来て喧嘩沙汰になりかけるとは…女って怖ぇ〜」

 

「まぁ……依頼主さんの気持ちは分からなくもないです。

大切な人に裏切られるのは…何時だって辛いですから、殴り掛かってまで怒る気持ちも…分かります」

 

 依頼主さんの女性を止めるのは――正直心苦しかった。同じ女だから、というのも少なからずあるが……裏切られる気持ち、私もわかるんですよね…。冤罪の犯罪者リーチの私にとっては裏切りは日常茶飯事……だけど、普通の人は信じれば信じた分だけ裏切られた時のダメージがデカイ。

 

 例えば――ずっと、ずっとずっと一緒に居て、優しくしてくれて、色々な技術を知識を教え込んでくれた先輩が敵になってしまう…とか。

 

 あぁ…思い出すだけでイライラして…何もかもを壊したくなって……がむしゃらに依頼を受けまくっていた頃に戻りそう。

 

「……と。真琴…!!……おいっ!いきなり黙んなよ真琴!!」

 

「…え?あぁ……すみません。ちょっと昔の事を思い出してて………えっ、と…それで…今日中に解決すべき依頼はコレで全て終わったのでその…今日は付き合ってくれてありがとうございました」

 

「それなら良いが…気を付けて帰れよ。お前も一応可愛い女の子、なんだから……あと、お前にしか頼めないんだが――もし帰り道でフラフラの軍服の擬似娘を見つけたら契約してやってくれ!頼んだぞ〜」

 

「……はぁ!?……いきなりなに言ってるか訳分かんないですけど、分かりました。

 あと、さっきのは一応褒め言葉として受け取っておいておきますね」

 

フラフラで、軍服の擬似娘。これだけじゃ……どんな擬似娘か分かんないけど…会えたら契約してあげようかな…。

 

 ポリポリと頬を掻きながらアテナがある方向へと急ぐようにバイクで移動して行った笹ヶ峰さんを見送ると、空に浮かぶ黒い雲が泣かない内に帰るため、そして何より件の擬似娘が()()してしまわないためにも少し足早に最寄りの駅に向かって駆け出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。