サイバーパンク2077〜変なのを添えて〜   作:ロックオン

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久しぶりの投稿です。

最近別のを書いててふらっと書き上げた物になりますが、楽しんで頂けましたら幸いです。


初めてのパシフィカ…悪くない

 

 

「パシフィカ…あんなトコ態々行くもんじゃねぇよ?」

 

「巫山戯たヒットマン寄越しやがるベイビーはさっさと始末しねぇと舐められんだろ」

 

助手席の旦那と後部座席のレベッカの嬢ちゃんが和気藹々?と話している。

 

俺はいつも通り運転席に収まっている…これから行く所を考えるとちょっと気が重い。

 

「しっかし、今のアンタらに喧嘩売る様な間抜けが居るとはねぇ…」

 

しみじみと語るように呟く嬢ちゃん。

()()()()()()()()()()、だろうけど俺も含めてくれてるのは嬉しいもんだ。

 

「結構居たぜ?腕に自信のある野郎は運試しがてら良く突っかかってきたもんだ」

 

ま、全員返り討ちにしてやったが。そう告げる旦那に少し黙り込む嬢ちゃん。

 

気持ちは分かるぜ?この人喧嘩売ってきた奴は全員ぶっ殺しちまったから…アラサカタワーでの大立ち回りを除けば此処最近で一番多かったんじゃねぇかな?

 

「…あのローグが手を焼く訳だ」

 

ボソッと呟いた言葉に内心で深く同意する。

 

ちょっとばかしやり過ぎじゃ…とは思ったが、甘くするとキリがねぇしなこの街。

 

実力の差を理解できないならどの道すぐに死んじまうだろうし。

 

「あぁ?まるで俺らが暴れまくってるみてぇな言い方だな?」

 

「いや実際そうでしょうよ…」

 

思わずツッコんじまった。

 

俺達…いや、旦那が原因で“皆殺し”だなんて言われてるくらいだもの。

 

手を出さなきゃ何もしない、ちょっと手の早い飲兵衛なあんちゃんなんだけどなぁ…

 

「おいおい…一応俺にだって基準はあるぜ?」

 

依頼以外じゃ喧嘩売ってきた阿呆以外は極力撃たないとか…と指折り数え出す旦那。

 

撃たなくても殴っただけで首が一回転させたりするじゃないすか…と呆れながら同意する。

 

「まぁ細かい所は置いとくとして…そこら辺は最初から徹底してますよね旦那は」

 

心がへし折れた野郎は見逃したりしてますし。

 

「意外だ…殺さないパターンがあったのかよ」

 

嬢ちゃんは驚いた顔をしているが…

 

「デイビットと後を尾行してた時だって生かしてただろ?」

 

虚仮にされたら速攻でスイッチが入るけどそうじゃなきゃ寛容なのさ旦那は。

 

そう言うと納得したような顔になる。

 

「初めてデイビット達を助け出した時なんて率先して行動してたくらいだぜ?」

 

デイビッドと最初に会った時。ハイウェイで巻き込まれた親子を助け始めた時は何してんだこの人?なんて思ったもんだが…今となっちゃあれで良かったんだと思えるから不思議だ。

 

「その話は聞いたことあるぜ!ブートヒルが主導で助けてくれたんだってな?」

 

それをデイビッドから聞いた時は幻でも見たんじゃねぇかってみんなで大笑いしたもんだけど。と続ける嬢ちゃん。

 

「旦那はこう見えて情に厚いんだぞ?義理堅くもあるしな」

 

「こう見えて、は余計だろ」

 

助手席から軽く小突かれた。

 

「俺は気がかりになる様なモンを残して生きたくねぇだけだ」

 

フン、と鼻を鳴らして続ける旦那。

 

「酒が不味くなるだろうが」

 

照れ隠しのようにそう言うとそっぽを向いてしまった。

 

「それを押し通せるだけの強さがあるからこそですがね」

 

「違いない」

 

ミラー越しに目が合った嬢ちゃんと笑い合う。

この間の飲み会から大分持ち直してるみたいで何よりだ。

 

そんな風に思えたのはこの時までだったとは思わなかった。

 

まさか旦那以上に狂犬だとは…デイビットの野郎、どんな手を使って抑え込んでたんだよ…惚れた弱みか?マジで罪作りな野郎だわアイツ…

 

 

 

〜数十分後〜

 

 

「テメーじゃなきゃ誰だって聞いてんだよ!」

 

目の前で行われてる恐喝に軽く頭痛を覚える。

パシフィカに入って直ぐに絡まれて半殺しにした巨体のチンピラにガンガン詰めよるレベッカ。

 

「し、知らねぇ!俺だってアンタらがあの皆殺しだって知ってたら絡まなかったよ!本当だ!」

 

あーあー…跪いちまって可哀想に。

…まぁ俺の愛車にぶっ放してくれた分は反省してもらわねぇと割に合わねえから止めないけど。

 

「おいレベッカ、そんな雑魚に時間掛けるだけ無駄だろ」

 

どう見てもただのチンピラだぞソイツ。と続ける旦那は既に興味を失ってるようで欠伸混じりだ。

 

「あぁん?そんなん分かんねーだろーが!」

 

寧ろチンピラが面白半分で手を出してる方が信憑性あるぜ!と跪いてるチンピラを踏みつけるレベッカ。

 

手にしたショットガンが頭に突きつけられるとぶっ放した直後で高温になってる銃口に焼かれながら懇願し始めるチンピラ。

 

「頼む、見逃してくれ…!」

 

「だったら分かるよな?」

 

レベッカの後ろから問いかけると目だけ俺を見る嬢ちゃん。

そう睨むなよ…別に止めやしねえから。

 

「この辺で金持ってて、体のデカい黒人系の野郎を知ってるか?」

 

…言ってて情報の無さに辟易するな。

 

ぶっちゃけそれだけの特徴だと10人単位で見つかりそうなレベルだ。

 

パシフィカで限定しても相当数該当者がいるぞ多分…

 

「そいつがどうしたって…」

 

うーん…舐められてんなぁ。

 

俺はこの中じゃ一番覇気がないからかちょっと舐めた口を開くチンピラAを一発ぶん殴ろうとクロームで強化された拳を振り上げたと同時に。

 

「おいおいおい状況が分かってねえのかテメー!」

 

誰が質問して良いっつったよ!とショットガンのストック部分でぶん殴った。

 

手が早すぎだろ嬢ちゃん…と額を抑えながら問いかける。

 

「…旦那に喧嘩売った大馬鹿野郎を探してんだよ。お前が知らねぇってんなら片っ端から狩り続けるだけだぜ?」

 

パシフィカに居るデカい黒人を全滅させるつもりかも知れん。と冗談交じりに続けると

 

「お前…すげぇ事考えてんな…」

 

「流石に引くぜ…」

 

旦那と嬢ちゃんからそんな言葉を投げかけられた。

 

アンタ達に言われたくねえよ!

 

「……で、どうなんだ?」

 

ツッコみたいのをスルーしてチンピラに問いかけると。

 

「…教えたら、見逃してくれるのか?」

 

「情報と…お前の態度次第だな」

 

やり取りの最初の方は飽きてリボルバーをお手玉見たいに振り回してた旦那を見やりながら答える。

 

いつの間にかリボルバーをチンピラAに向けているが。

 

…俺達が舐められてると思ったらすぐに分からせるって人だからさっきの態度が琴線に触れかけてるんだろう。

 

「で、どうなんだ?お話してくれるなら見逃してやるが」

 

今は俺が話してるからいきなり撃ったりしないだろう…多分。

 

さっきみたいな舐めた口を開くなら額で煙草を吸えるように加工されるだろうけど。

 

「俺が言ったってことは秘密にして下さい…」

 

俺の言葉の意味を正しく理解したチンピラは数人の名前と普段の溜まり場を喋った。

 

「良し、いい子だ…嬢ちゃん、離してやんな」

 

旦那も落ち着いて下さい。

 

そう伝えると渋々解放するレベッカ。

 

旦那はどうでも良さそうにリボルバーをホルスターへ納めた。

 

「チッ…運が良かったな」

 

「ジョンに感謝するんだな…次はねぇぜ」

 

吐き捨てる様に言う姿は正に狂犬そのものだ。

…何故か二人に増えてる訳だが。

 

コレは骨が折れそうだな…

 

そんな事を考えてる間に這々の体で走り去るチンピラ。

後ろ姿に過去の自分を思い出して少し懐かしんでいると旦那が興味深そうに聞いてくる。

 

「で、次のホーリースウィートは?」

 

「数人の心当たりがあったみたいで…どれから行きますか?」

 

ざっと名前と場所を挙げていくと。

 

「近場から順繰りで良いだろ。間違ってたとしてもソイツらを尋問して候補を増やしてきゃ良い」

 

最終的にはお前の言ったとおりになるかもな?と笑いながら言う旦那と

 

「アンタはマトモだと思ってたけど…やっぱ朱に交わると赤くなるもんだな」

 

何処か納得している様子の嬢ちゃんに肩を落としながら

 

「…もうそれでいいですから、さっさとやっちまいましょうや」

 

パシフィカなんて無法地帯、長居するもんじゃないですよ…と続けると其々ボロ車に乗り込んだ。

 

「まぁそう言うなよジョン。気長にやろうぜ?」

 

俺はそこまで嫌いじゃねえ。と続ける旦那。

 

「旦那は無法者気質ですからね…」

 

絡まれた時に気分次第じゃ即殺するってんならパシフィカは相当水が合うでしょうよ…

 

「そんな事は…あんまねぇだろ」

 

あの時と…アイツも生かして返しただろ?と指を立てながら数え始める旦那。

 

生かした数をカウントしてる時点でおかしいと思わないんだろうかこの人は…

 

「なーなーそろそろ行こうぜ?日が暮れちまうよ!」

 

レベッカの嬢ちゃんがせっつくのに苦笑しながら車を出す。

 

こりゃ相当血生臭い遠征になりそうだ。

そんな事を考えながら久々に見るパシフィカの海を眺めつつ相棒を走らせた。

 

 

 

 

ブートヒル視点

 

 

あの野郎、リーダーとしての才能は確かなモンだったんだな…

 

後部座席に収まってショットガンの手入れを始めたレベッカをミラー越しに見て軽くため息を吐く。

 

「…そろそろ次の目標地点ですぜ」

 

ジョンの言葉でダッシュボードから足を下ろす。

 

「いい加減当たりを引きてぇんだが」

 

リボルバーを引き抜いて弾倉に弾丸が入っているか、動作は問題ないかをチェックする。

 

既に4カ所、黒人系の大男が仕切ってるチームを壊滅させて来たがどうもコレって奴が居ない。

 

途中から襲撃されるようになったが…いつもの様に返り討ちにしてたら3ヶ所目からは静かになった。

 

この辺のフィクサーにゃ話を通してるから別に問題はないんだが…どうにもネットランナーが多い気がする。

 

俺相手の場合はインテリ野郎が増えた所でただの的だが。

 

ジョンやレベッカはそうもいかねぇから率先して撃たないといけないのが面倒くせぇ…

 

「次も空振りだったらどうすんだ?」

 

準備万端、と言った具合のレベッカから質問されるが…

 

「…いっその事ドッグタウンまで足伸ばしてみるか」

 

ボソッと呟いた言葉にマジかよコイツ…と信じられないものを見るような目で見てくるジョンとレベッカ。

 

「いやいやいや!流石にそれは辞めときましょう!?」

 

「その前にあーしは降りるからな!?」

 

無法地帯どころの話じゃねーだろ!と騒ぐ2人。

 

ドッグタウン。

ナイトシティの中に現れた自由都市を掲げる無政府地区。

まるで盲腸の様に存在するそこはハンセン大佐とか言う軍人が手下と共に制圧、不当に占拠している独裁地域だ。

企業ですら手を出せないと言う徹底した管理体勢は正に一つの国と言って差し支えない。

 

「冗談だ。ま、大分暴れ回ったしこれで懲りただろ」

 

俺達に手を出したらこうなるぞ、と見せしめられた。

今日だけで何人撃ったか覚えてねぇわ…

 

「おら、さっさと行くぞ」

 

ちゃっちゃとぶっ殺して帰って酒飲みてーんだ。

 

そう続けながら車を降りると続いて2人も降りてくる。

 

広間に続く階段を少し降りると十数人の集まりが待ち構えていた。

探す手間が省けるのは楽で良いな…

 

「あー…どれがボスだ?」

 

大柄な男どもを見渡して質問を投げかける。

 

「…お前達がナイトシティから来て暴れ回ってる無法者か?」

 

一歩前に出てきた小柄な…と言っても俺よりちょっと背が低い程度ではあるが…男が質問を返してくる。

 

「暴れ回ってる…?見解の相違って奴だな」

 

落とし前をつけに来てんだ。

 

カラカラと笑いながら片手で帽子を押さえながら歩み寄る。

 

「俺達に手を出そうとしたキュートなハニーにな」

 

いつでも抜ける様にリボルバーに手を掛ける。

 

「心当たりがあるなら吐け。お前等は無事に生きてられるぞ?」

 

じゃなきゃ皆殺しだ。と言外に伝える。

 

「…黒人系、大男ってだけの情報でか?」

 

それは無差別殺人とどう違う?と言い返して来るが…それを此処で言うのかと少し笑いながら答える。

 

「全員始末していきゃそのスウィートハニーにも伝わんだろ?」

 

自分が何に手を出したか。

 

自分の目と鼻の先に積み上げられた死体の山を見りゃどんな間抜けでも分かるだろうよ。

 

そう告げると男は眉間にしわを寄せながら呟く。

 

「傲慢だな」

 

「それが俺達だ」

 

ま、恨むなとは言わねぇよ?と笑いかける。

 

「存分に恨め。俺もお前等を恨んでるからな」

 

お陰で良い気分が台無しにされてんだ。

 

帽子のツバを少し上げて睨みつける。

 

「態々パシフィカくんだりまで来させられてよ…うんざりしてんのさ」

 

意外といい場所だったのが救いだがな…で、どうなんだ?と問いかけると。

 

「…プラシド。アンタの探してるであろう男の名前だ」

 

それ以上は言わん。と口を噤む男に

 

「ソイツは何処に行きゃ会えんだ?」

 

「普段は肉屋に居る。…もう良いだろう」

 

さっさと消えてくれ。と告げる男に対して。

 

「情報ありがとうよ」

 

お陰でこれ以上無駄弾使わなくて済みそうだ。

 

笑いながら背を向ける。

 

「…あぁ、それと一つ言い忘れてたが」

 

ビルの上、5階辺りでジョンに狙いをつけてた狙撃手の頭を撃ち抜く。

 

射程範囲内ならほぼ確定で当たるわ…毎度ながらすげぇ精度だ。

 

自分の腕ながら感心していると突然の発砲に色めき立つ周囲を睨みつけて黙らせる。

 

「次はねぇぞ」

 

今回は情報に免じて許してやる。

 

そう言うとホルスターに納めたリボルバーを軽く叩いて示した。

 

「数を揃えても無駄だってのはもう分かったな?」

 

死体が増えるだけだぜ?と続けると沈黙がその場を支配した。

 

「旦那、心臓に悪いですよ…」

 

銃弾が真横を掠めたジョンから苦言が飛んでくるが

 

「当たってねぇだろうが。今更そんなんでビビる玉かよ」

 

さっさと行ってプラシドとか言うキューティーを始末すんぞ。

 

そう告げてボロ車へと足を向けるが。

 

「…待て、異邦人」

 

背後から情報提供して来た男から声が掛けられた。

 

「何だ?やっぱりやるのか?」

 

首だけで振り返りながら問いかけると。

 

「…ヴードゥーチャイルドに手を出すと言うのがどういう意味か、分かっていないのか?」

 

 

ヴードゥーチャイルド。

 

ネットランナー集団の中でも非合法なグループ筆頭のならず者集団。

 

数は不明、本拠地も不明。ネットウォッチ共とやり合ってる引き篭もりでブラックウォールの先を目指してるとか何とか。

 

 

「それが?」

 

邪魔するなら全員殺すまでだ。

ネットの海に沈みたいってんなら現実からログアウトさせてやるだけの話。

 

そう思っていると横に居るジョンが

 

「旦那、ヴードゥーは不味いですよ…?」

 

敵に回したら常に周囲を見張られてる様な生活になっちまいます!と小声で叫ぶ器用な真似をして来るが。

 

 

「…しょうがねぇ」

 

 

全員殺すか。

 

死体の山を築き上げる覚悟を決めた。

 

 

「パシフィカからも、ナイトシティからも」

 

 

徹底的に叩き潰してやるよ。

 

犬歯をむき出しに笑ってそう宣言すると

 

「イかれてる…」

 

呆然とした顔で呟く男に

 

「アーシ達はナイトシティでアラサカに喧嘩売って生き残ってんだぜ?マトモな訳ねぇだろうが」

 

手にしたショットガンを構え直しながら嘯くレベッカに

 

「ま、その通りだな」

 

覚悟決めろよ?とジョンに笑いかける。

 

「…分かりました。殺るなら徹底的に、ですね」

 

肩から下げているテック系のアサルトライフルを握りしめるジョンを尻目に目の前の集団へと目を向ける。

 

さて、忙しくなるな…と肩を回すと周囲が一歩退いた。

 

「手始めにお前等からだ」

 

さっきの言葉はやっぱ無しだ…悪いな?と告げると同時に

 

『まて、ブートヒル』

 

年季の入った女の声がした。

…俺のホロコールからか。

 

「…誰だお前」

 

聞き覚えの無い声だ。

なんなら通話状態にしてすらいないんだが…

 

『ヴードゥーチャイルド。少し話がしたい』

 

端的に目的だけ言うのは好感が持てるな…こんな状況じゃなければだが。

 

「ヴードゥーの親玉か。手間が省けるぜ」

 

全員ぶち殺してやるから待ってろ。と通信を切るが…

 

『…聞き入れてもらいたいのだ。我らに敵対の意志は無い』

 

勝手に繋ぎ直して来やがった。

 

「あんな雑なヒットマン送りつけておいて良く囀るハニーだ」

 

プレゼントにしちゃセンスがねぇ。と吐き捨てる。

 

『それについては真摯に謝罪する…すまなかった』

 

少しの間が空いて。

 

『先走った単細胞がやらかした。…望むならソイツの首を差し出す』

 

だから鉾を収めてくれ、と続けた。

 

「そのプラシドとか言うキューティーは当然殺すが」

 

お前等を生かしておく理由が無ぇな。と返答すると

 

『…我らへの貸しを一つ。何が必要だとしても全力で手助けすると誓う』

 

貸し一つ、ねぇ…

 

「生憎手は足りてる。お前等なんざ必要ねぇ…」

 

「ちょ、ちょっと待った!」

 

ジョンが割ってはいってきた。

 

「旦那、ヴードゥーに貸しを作れるんですよ!?」

 

あの凄腕のネットランナー集団に!と続けるジョン。

 

「使い方によっちゃ企業にすら対抗できる鬼札ですよ!」

 

少し落ち着いて考えましょう?と興奮気味に言ってくる。

 

レベッカはどうなんだ?と視線を向けると

 

「…まぁ、一理あるけどよ」

 

不承不承と言った感じで続ける。

 

「舐められっぱなしで終わるのはどうなんだ?」

 

アーシだけなら別に構わねえけどさ…と手にしたショットガンをいじり出す。

 

「アンタらが舐められてんのはその…なんだ、気に食わねぇよ」

 

だからぶち殺す方に一票だ。と俺の目を見て宣言する。

 

…さて、どうしたもんかね?

 

 

ジョンの言う通り、ネットランナーへの貸し…それも見逃してやるというのなら命の貸しを作れるって訳だ。

 

義理堅い連中ならそれも役に立つだろうが…コイツらにそこまでの信頼は無い。

 

多少の望みがある、程度のモンにしか見えねぇんだよな…

 

レベッカの意見には少し驚かされたが概ね理解できる。

 

この商売は舐められたら終わりだ。

だからこそ敵対して来た間抜けは皆殺しにしてきた訳だしな。

 

俺達が舐められるのが気に食わねえとまで言ってのけたんだ。出来るならこいつに応えてやりたい気持ちもある。

 

その場合はヴードゥーチャイルドを完全に敵に回す訳だが…俺はともかくジョンはちと不味いか…?

 

完全にスタンドアローンな俺と違ってジョンやレベッカ見たいな連中はネットと完全に縁を切るのは難しい。

 

そんな状況で1人でも取り逃したら…報復されるのは俺じゃなくてコイツらになる。

 

 

『…どうだろうか?』

 

僅かに緊張の混じった声がスピーカー越しに聞こえてくる。

…ホロコールから外部接続してきやがったなコイツ。

 

「…今後、俺達に手を出したと俺が判断したら根絶やしにするぜ」

 

草の根かき分けても、この街全員巻き込んでも確実に。

 

『分かった。プラシドの首と今後お前たちへの手出しを禁じよう』

 

何か必要になったならこの番号に掛けろ。

 

そう告げるとホロコールは切れた。

 

履歴には登録していない番号がズラリと並んでいる。

 

 

「そういう訳だ…命拾いしたな?」

 

周囲の連中に微笑むと今度こそボロ車へと向かう。

 

「…いいのかよ」

 

イマイチ納得がいってない様子のレベッカが聞いてくるが

 

「良い。…別にどうしても殺してぇって訳でもないしな」

 

最悪はもう一度来て皆殺しにすりゃ良いだけだ。と笑う。

 

ボロ車へ乗り込むと運転席のジョンが声を上げた。

 

「…ナビなんざ入れてねぇってのに器用な事してくれますね」

 

レトロなラジオの液晶に座標が表示されている。

…コレがプラシドとか言うカスの居場所か。

 

「ま、ちゃちゃっと片付けて飯にしようぜ」

 

もう日が暮れちまう。と催促すると苦笑しながら車を出すジョン。

 

「これでパシフィカ遠征は終了ですかね?」

 

少し上機嫌になってるな…ヴードゥーチャイルドに貸しを作れるってのがそんなに嬉しいのかね?

 

「外部の凄腕ネットランナー集団なんざ生かして置いても損しかねぇと思うけどな」

 

後部座席からレベッカが顔を覗かせながら呟く。

 

「そりゃそうだ」

 

何時敵に回るか分かったもんじゃねぇ。

 

「それでも今回は手打ちにしてやる…ジョンの事もあるからな」

 

ネットに潜り込んでるネズミ共を殺し切るには情報が足りない。

それこそパシフィカの住民を皆殺しにしても安心できないレベルだ。

 

「俺はまぁどうにでもなるがお前等は違う。ネットから縁を切れないなら報復されかねないからな」

 

そう言うと意外そうな顔で俺を見るレベッカ。

 

「私たちのためか?」

 

「それも理由の一つってだけだ」

 

別にお前等のためだけじゃねえよ。と窓の外を眺めながら答えると。

 

「ま、そういうことにしといてやるよ」

 

レベッカはあんがとな、と小さく言って後部座席へ深く腰掛ける。

 

「…さて、そろそろ目的地ですぜ」

 

油断しないで下さいよ?とジョンが注意してくる。

 

「あいよ…んじゃ行ってくるわ」

 

何時でも出せるように待機しとけ。と言い残して車を降りると、ショッピングモールの廃墟だろうか?デカい建造物に人が住み着いて一つの集落みたいに成っている。

 

「さて、と…」

 

肉屋っつってたな?

 

ざっとスキャンするといくつか候補が見つかる。

 

…近場から回るか。

 

 

 

「よう!プラシドってのはアンタかい?」

 

厨房で鶏の首を落としてる大男に声を掛けると。

 

「…来たか。俺もヤキが回った」

 

ゆっくりと振り向くプラシド(仮)。

 

「ようやく見つけたぜ…んじゃま、サクッと死んでくれ」

 

拷問とか趣味じゃねぇし。とホルスターから抜いたリボルバーを突きつけると同時に発砲。

 

放たれた銃弾はプラシドが微かに首を傾げた事で背後の壁に突き刺さった。

 

「おいおい…面倒な真似すんじゃねぇよ」

 

弾が勿体ないだろうが。

 

「待て!俺の話を…」

 

「聞く必要はねぇな」

 

とっととくたばれフィクサー気取り。と3連射。

避けられると面倒だからまずは足、それから左肩に当たった弾丸が風穴をあけた。

 

「ぐァッ!?」

 

「最初の一発で死んどきゃ楽だっただろうに」

 

無駄に避けるからそうなるんだぜ?と頭に銃口を押し付ける。

 

「ま、勉強代になっただろ?」

 

お前はただの教材だが。

 

「クソッ!地獄に落ちろ!この…」

 

引き金を引く。

 

放たれた最期の一発はプラシドの頭蓋を粉砕して即死させた。

 

「そう言うのを負け犬の遠吠えってんだよ」

 

ワンワンうるせぇ事この上ねぇ。

 

『…終わったか?』

 

また勝手にホロコール繋いできやがったなコイツ。

 

旧式だから仕方ねぇとはいえこうも簡単にハックされんのは問題だな…まぁ、他に選択肢はねぇんだが。

 

「次に勝手に繋いだらお前もあのハニーと同じところに送るぞ」

 

今回は見逃してやるだけだって事を忘れるな。

 

釘を差すと静かになるホロコール。

 

「…良し。じゃ俺達はもう帰る」

 

面倒な真似すんじゃねぇぞ?と伝えてホロコールを切った。

 

これでもちょっかい掛けてくる間抜けなら本格的に皆殺しだな。

 

少し軽くなった足取りでジョン達の待つボロ車へと足を向けるのだった。

 

 

 

こうして俺達の初めてのパシフィカ旅行は幕を閉じた。

 

 

この時の貸しを回収するのは大分後、他人の為に使わされるとは思ってもいなかったが…それはまた別の話。

 






久々だと口調が怪しい部分も多いですが、これで一端エッジランナーの時代が終了しました。
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総合評価:8072/評価:8.93/完結:14話/更新日時:2026年03月15日(日) 11:59 小説情報


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