「ルカさま、今日もすてきです!」

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#ルカさまは本物

むかしむかし、空の上のインターネットという国に、

「王羽ルカ(おうば・るか)」という名前の王さまがいました。

 

王さまはとても美しく、やさしく、いつも笑っていました。

きらきらひかる王冠をかぶり、星のような目でみんなを見つめるのです。

 

けれど、この王さまは少しふしぎ。

ほんとうの体を持たず、光の粒と音の波でできていました。

 

つまり——配信(はいしん)という魔法で、

みんなのモニターの中にだけ現れる王さまだったのです。

 

 

 

 

ルカ王の王国には、たくさんの民がいました。

彼らはリスナーと呼ばれる人々で、

毎晩、王さまのお話を聞きに集まります。

 

王さまが笑えば、みんなも笑い、

王さまが歌えば、みんなも歌い、

王さまが「おやすみ」と言えば、

画面の前で一斉に「おやすみ〜!」と声をそろえました。

 

「ルカさま、今日もすてきです!」

「ルカさま、世界でいちばんかわいい!」

 

コメントの光が夜空の星みたいに流れます。

すると王さまの王冠が光り、

国じゅうが明るくなるのです。

 

——そう、そこはまさに光と音の王国。

電波でつながった、あたたかな夢の国だったのです。

 

 

 

 

けれど、ある夜のこと。

いつも通り王さまが登場しようとしたとき、

ぴしっ、と小さな音がして、

王国の空にひびが入りました。

 

画面がゆらりとゆがみ、

きらきらの髪がほどけてゆきます。

そして、一瞬だけ——

 

モニターの奥に、人の顔が見えました。

少し疲れた目をした女の人の顔。

王さまの声が止まり、王冠がふっと消えました。

 

みんなはびっくりして、

コメントがしんと止まりました。

 

「……い、今の、なに?」

「誰? 王さまじゃないの?」

「……まさか、王さまの中の人……?」

 

でも、そのときです。

画面がぱっと明るくなり、ルカ王が戻ってきました。

王さまはすぐに微笑み、言いました。

 

「みんな、見なかったことにしてね。

 これは、王様のまほうだから。」

 

そう言って、にっこり笑いました。

 

その笑顔があまりにきれいだったので、

その声があまりにやさしかったので、

誰も何も言えませんでした。

 

そして、一人のリスナーが書きこみました。

 

「もちろんです、ルカさま。王さまは、王さまです。」

 

王国の空は、ふたたび明るくなりました。

 

 

 

 

次の日、インターネットのあちこちで

「王さまのほんとうの姿を見た」といううわさが流れました。

 

けれど、王国の人々はみんな言いました。

 

「いいえ、そんなことありません。

 王さまは、王さまのままです。」

 

誰も王さまの素顔を話題にしませんでした。

 

だって、もしそれが本当でも、

信じる心がなくなったら、王国そのものが消えてしまうのです。

 

そしてみんなはもう一度、夜に集まりました。

王さまの声を聞くために。

 

 

 

 

数日後、ルカ王はまた配信をしました。

白いローブをまとい、金の王冠を輝かせて。

 

「王様はね、たとえ裸でも、冠があれば王様なの。

 みんなが見ていてくれるかぎり、私は王様でいられるのよ。」

 

すると、チャットがまた光りはじめました。

 

「ルカさま、ばんざい!」

「ずっとついていきます!」

「今日も世界でいちばん輝いてる!」

 

王さまはうれしそうに笑い、

画面の向こうの民たちは涙を流しました。

 

 

 

 

誰もがうすうす知っていました。

あの王冠がデータの光でできていることを。

あの笑顔の裏で、人間の息づかいがあることを。

 

けれど、王さまが語るたびに、

みんなはそれを忘れるふりをしました。

 

「王さまは今日も美しい。」

 

それだけを信じることで、

王国は今日も輝きつづけるのです。

 

 

 

 

こうして、王羽ルカの王国は、

今もインターネットの空の上で続いています。

 

誰もが王さまの衣を見ているけれど、

誰も「見えない」とは言いません。

 

みんなで、王さまの服を縫い続けるのです。

 

「見えないけれど、ちゃんとある。」

「感じるから、本物だ。」

 

 

——だって、それがいちばんきれいな服だから。


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