やはり彼女たちのアイドル活動はまちがっている   作:毛虫二等兵

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どうも、毛虫二等兵です!

遅れて申し訳ありませぬ、5thライブ、テスト、テスト打ち上げなど…やることがいっぱいだったので、時間がかかってしまいました。

そして5thライブお疲れ様でした!会場に行けずにライブビューイングでしたが…次回こそは会場に行きたいです。
私は二日目は六本木にいたのですが、劇場版の告知の時にカメラずれてませんでしたか?一日目に見てたから別にいいけど←
新田恵海さんは一時活動休止だそうですね…早く治ってほしいものです。



『前回の俺ライブ!』

デンッ☆

絵里『穂乃果たちが生徒会を担うことになり、新しくスタートを切ることになったμ's!そこに飛び込んできたのは、再びラブライブが行われるという知らせ、そして穂乃果は彼を探すために、総武高校に行こうとするんだけど…』

「お願いっていうのは…総武高校の制服を貸してほしいんです!一着でいいんです!どうしても行かなくちゃいけないんです!」

(・8・)『お母さんに頼んで、どうにか制服をゲットした穂乃果ちゃん。そして彼を探しに総武高校に行くこと』

「比企谷さん、あなたの力を貸してください」

花陽『比企谷さんを見つけた穂乃果ちゃん。そこで彼を迎えに来たことを伝えると…』

「君は人を信じることを覚えるんだ。あの場所が、きっと君を変えるだろう」

凛『案内してくれた平塚先生のおかげで彼の説得に成功した私達!これから仲良くできるか不安だにゃ~…』



やっぱり難しいよこれ。
ということで『前回の俺ガイル!』の部分はμ's視点でやっていこうと思います。
μ's視点なので、比企谷が完全に心を開いたら参加する…かも!
今回は1万字と長くなってしまったので、読みやすさ優先で分割、二話構成にしました!



こうしてまた一つ 壁が出来る

一日目

 

 

土曜日、日曜日、そして祝日の月曜日。どこかの掲示板では月曜日ちゃんのスレが経ち、レスの中では「いかないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」と阿鼻叫喚な事態が毎度恒例になっている、いわゆる三連休という日に直面していた。

連休初めの土曜日…俺は二両編成の電車に揺られながら、田んぼを眺めていた。

 

俺は「家に帰りたい」と心の底から思いながら。

 

「ことりちゃん!海未ちゃん!山だよ!田んぼだよ!案山子だよ!!」「静かにしてください穂乃果、みっともないですよ」「だってだって!ねえ絵里ちゃん!?」

 

秋葉原の駅から電車を乗り継ぐこと約1時間。俺を含めたμ'sの一行は神奈川県の丹沢湖に向かっていた。電車の窓から見える自然が、都会の閉塞感から解放されたことを教えてくれる。天気は快晴、雲一つない青空だった。

時間にして約10分くらい経った頃だと思う。既に俺は変わり映えのしない景色に飽き始めていた。いい景色ではあったが、心躍らされたのも最初だけだ。

 

 

座席は

 

俺  (  荷物  )| 通 | 凛 花陽 真姫

 

穂乃果 海未 ことり | 路 | 絵里 希 にこ

 

 

もし俺が「ハーレム系」主人公であったのなら、俺の席の隣は争奪戦になっていたことだろう。テンプレートされた小悪魔系ヒロインが頬を染めながら俺の腕を掴み「えへへ~」とはにかみながら胸を当ててくるのだ、幼女でもいい。そして別のヒロインが嫉妬の炎を燃やすお決まりの展開。

しかし残念なことに、俺の隣は荷物がいっぱいで柔らかい感触なんかない、強いて言うなら荷物の柔らかさくらいはあるくらいだ。

 

「もう帰りたい」という素直な欲求が俺の心の中でどんどん膨れ上がっていく。そのうち暗黒面にでも堕ちてしまいそうな気分だ。打開策として、俺は頭の中だけで彼女たちの会話に突っ込みを入れる「エア会話」を実行した。

 

「ハラショー…これが「ド田舎」なのね…」

 

見慣れない景色なのか、絢瀬絵里は目を丸くして驚いている。そこの金髪ロシア娘、田舎言うな、東京のお前らが発達し過ぎているだけだ。

 

「田舎だにゃ~!ご飯だにゃ~!」

「お、お米があんなにいっぱいっ……!!!」

 

申し訳程度に猫語を使っている星空 凛と、米の田んぼを見て目を輝かせている小泉 花陽。言っておくが、その「にゃ~」って違和感しかないぞ。あとコメなら千葉にもある「コメダ珈琲」だがな。

 

「あんたたち静かにしなさい!私たちは遊びに来ているんじゃないのよ!」

「凛も花陽も静かに、まったくもう…」

 

全体に向かって注意を呼びかけている矢澤 にこ、横髪の毛を居いじりながら、それに便乗する西木野 真姫 。そうだそうだ、にこまきいいぞ~

 

「まあまあにこっち、少しくらいええんやない?ほかのお客さんいないみたいやし」

 

えせ関西弁を使う聖母のような破壊神ビルス、東條希。こいつは爆弾を握っている。それが起爆した時…俺はまた相棒の布団の上で悶えることになるだろう。

 

はしゃぐな、子供か。という突っ込みを入れていると、俺の前に椅子に座っている高坂穂乃果がそわそわしていた。

 

「ん…?」

 

次の瞬間、彼女は窓を開け、ひょっこりと顔を出した。

 

「おい馬鹿!」

「穂乃果!!」

 

その瞬間、俺と園田海未の表情が一気に凍り付いた。

比企谷は咄嗟に上がっている窓ガラスを抑え、海未と息を合わせて穂乃果を一気に電車の中に引き入れる。

俺、海未と隣にいたことり、そして当事者である穂乃果以外のメンバーは別の方を向いているので、この事に気付いていないようだった。

 

「おっとっと…えへへ~」

 

高坂穂乃果は 困った困った~テヘッ みたいなポーズをして、苦笑いをしている。いくらなんでもチャレンジャーすぎるだろ、あのあんぽんたんの由比ヶ浜でもそんなことはしないぞ。由比ヶ浜で思い出したが、そういえばあいつらは今頃どうしてるんだろうか…

 

 

一方そのころ…

 

多くの人が行きかうショッピングモールの中に由比ヶ浜由比と、雪ノ下雪乃はいた。三連休の初めの日ということもあり、フードコートは家族やカップルで満席になっている。

 

「へくちっ!」

 

「由比ヶ浜さん、風邪でも引いたの?」

 

「そんなことないよ~!むしろ超元気!平塚先生に聞いたんだけど、ヒッキーは今日忙しいんだって~」

 

「あの男が珍しいなんて…この間の女の子が関係しているのかしら…」

 

「この間?」

 

「なんでもないわ。ただあの男に予定があったのに驚いていただけよ。それで、今日は何を買うのかしら?」

 

「ね~!びっくりした!そしてよくぞ聞いてくれたねゆきのん!それじゃあいっくよ~!」

 

「…どこに行くのかは答えてくれないのね」

 

雪ノ下は由比ヶ浜に背中をグイグイと押され、二人は洋服屋の中に入っていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ありがとう、比企谷さん♪」

 

「えへへ~ じゃありません!何を考えているのですか!まったくもう…ありがとうございます、比企谷さん。ことりも穂乃果を止めてください」

 

「お…おう…」

 

「止めようとしたんだけど、目を離した瞬間に穂乃果ちゃんがやっちゃうから…」

 

「それでもです。まったくことりは穂乃果に甘いんですから…」

 

なんだろう、まだ幼い子供がいる家族みたいな光景にしかみえない。あれか、高坂穂乃果が子供で、園田海未がお父さん的な、そして南ことりはお母さん。それじゃあ俺はなんだ?ポチか?カマクラなのか俺は?もう疲れたよ、饅頭になって寝ていたいよ。

 

「ことりちゃん!おやつ食べよう!」

 

「う…うん!マカロンたくさん持ってきたよ!」

 

「やった~!」

 

「穂乃果!あなたダイエットは…」

 

女子トークに交じる気もないので、俺は平和だった今朝のことを思い出していた。

 

 

~回想~

 

 

朝の9時を回った頃。俺は妹の小町にたたき起こされ、一時間後には出かけられるようにとの命令を受けた。あんまりにもしつこいので、やさしい俺は言われるがままに着替えてやった。そのあとは何の命令もなかったので、自分の部屋でポケモンをやっていた。小町が何故か忙しそうに動いていたが、いつものことなので放っておくことにした。

 

家の前に車が止まる音が聞こえると、インターホンが鳴った。大抵うちに来るものといったら妹か母の化粧品が入った宅急便か、N○Kの通信料のお支払、ごく稀にある宗教の勧誘くらいだ。

 

「小町~…ってあれ、いない。どこ言ったんだあいつ…」

 

人のことをたたき起こしておきながら、俺の妹は理由も告げずに大きな荷物をもってどこかに行ってしまったようだ。妹として、というか人としてどうなんだろうかそれは。八幡的にポイント下がっちゃうぞっ☆

つまり今、この家には俺とペットのカマクラしかいない。そしてカマクラは「呼ばれてるぞ、行けよ」といわんばかりに横目で俺を睨みながら、いつもの場所で丸っこい身体を団子みたいに丸くしている。

 

「はぁ~…」

 

仕方がないので、俺は玄関まで行ってドアを開けた。この時の俺を、俺はいますぐ説教してやりたい。小一時間…いや、軽く5時間は説教できる自信がある。そう -なぜ、開ける前に確認しなかったのか― と。

 

「は~い…どちらさm」

「おはようございます!」

 

目の前にいたのは…高坂穂乃果と、μ's一行様だったのだから。

 

 

~回想終~

 

そして今に至る。ドアを開けた瞬間、名探偵比企谷の頭脳が冴えわたり、今朝から感じていた妹の行動に対する謎が解消された。あの大きな荷物…おそらくあれは俺の服だろう。夏休みの時と同じように、あいつは俺の荷物を用意し、何らかの方法で俺に渡した。そしてここに連れてきたのだ。 同じ技は二度通用しない という俺の黄金聖闘士のような特性を理解しての作戦だろう。あいつ許さん。

 

妹に対する文句を考えていると、顔の前にマカロンを持った手がグイッと近づいてきた。

 

「はい、比企谷さんも口開けて~!」

 

「え、ああ…ん?」

 

咄嗟に口を開けてしまい、口の中に直径数センチの半円形をしてる謎の物体が押し込まれる。食感は外はサクッ、中はしっとりとしている。というか結構美味しい。味はいちご味だ。

 

「どう?感想は!?」

 

え…というか今あんまりに自然に過ぎて気付かなかったけど、完全にあれだよね?カップルがよくやってるやつじゃない?あの介護されてる老人みたいなやつじゃないの?嘘…あれってそんなに自然にやってのけれるものなの?なんか超幸せな気分になってきた。俺…消えるのか…?

俺を成仏させようとした張本人は目を輝かせながら、マカロンなるものの感想を求めてくる。俺はそれどころではない。今になって事態を認識しちゃったから心臓超早いし、なんかすごい量の汗出てきてるんだけど。

 

「お菓子とかケーキとか、甘い物ってお嫌いですか?」

 

「嫌いというか…なんというか、気分的な問題ですかね、あはは…」

 

これ以上俺の心臓の寿命を減らさないために、質問してきた南 ことりから視線を外し、乾いた笑いを交えて当たり障りのない返事をする。これは俺が女子との会話を乗り切るために身に着けた技の一つだ。大抵の女子なら露骨に嫌な顔をされて気味が悪がられることもなく、お互いに印象に残らないため傷つくこともない。この場での最良の手段だ。

 

「マカロン食べたいにゃ~!」

「はい、ど~ぞ♪」

 

凛の声を皮切りに、隣の席にいた真姫、花陽、にこ、絵里、希がことりの周りに集まってきた。

 

「気分が悪いのですか?」

 

「いや~…そんなことはないんですけど」

 

ただしこれには弱点がある。今回の園田海未のように“会話”をしてしまうと、俺は返す言葉に困ってしまうのだ。例えるなら

「好きなアーティストいる?」と聞かれて「あ~○○とかかな」と知りもしないアーティストの名前を適当に答えた時「ほんとに!じゃあ○○○の曲とかいい歌だよね!ライブとかは言ったことある!?」みたいにがっつかれた時に困るようなものだ。今までの女子ならこれで引き下がったが、彼女はそうではなかった。いくらぼっちの黄金戦士である俺でも、見たことのない技を避けることは至難の技だ。

 

「どうかしたの?」「なにかあったにゃ~?」

 

マカロンを食べ終えた絵里、花陽、凛、の三人がこっちの話に興味を持ち始めたていた。

 

「絵里、実は比企谷さんが気分が悪いらしくて…」

 

「そうなんですか?希、薬持ってるかしら?」

 

「持っとるよ~どこか悪いん?」

 

「どこが悪いんですか?乗り物に弱いとか…」

 

まるで病人を見る看護師なんじゃないかってくらいやさしい目をして心配してくれているが、こっちはそれどころではない。もうやめてくれ、俺の寿命を縮めないでくれ。

 

「いや、そういうんじゃなくてあの…」

 

どうしよう、知らない間の話が大きくなってきてる。

 

「かっ…顔色は悪くなさそうだけど…」

「汗がすごいにゃ~」

 

「あ…いや…だからあの…」

 

 

~30分後~

 

 

持ち前の言い訳スキルを駆使し、HPを削られながらもなんとか乗り切った。だがしかし、その代償はあまりに大きかったようだ。静かになった車内で行われた第二回戦、ポケモンのレッドさんくらい強い睡魔と闘いに敗れ、めのまえがまっしろになった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

目を覚まし、静まり返った車内を見渡すと…そこに彼女たちの姿はなかった、横の荷物も姿を消していた。

 

「まさか…さっきまでの出来事が夢だったのか…?」

 

「ゆきほ~…」

 

夢オチ的なものだとも考えたが、目の前の席で高坂穂乃果が寝ているところを見ると、夢ではないようだ。

 

「携帯携帯……なんだこれっ!?」

 

携帯電話を開くと…複数の見知らぬ番号から20を超える着信が入っていた。驚きのあまり、咄嗟にでそうになった声を抑える。

 

「俺借金なんかしてないぞ…まさか家族が俺を売ろうとしてるんじゃ…」

 

そんなのが事実だったら俺は悲しみのあまり窓から飛び出してしまうだろう。まさかうちの家族に限ってそんなこと…

 

試しに一番上の電話番号に電話を掛けてみることにした。コールが2回目に差し掛かろうとした瞬間、電話がつながった。

 

(かかりました!今どこにいるんですか!?)

 

相手は女性なのは間違いない。声色からして焦っているのはわかった。この声どこかで…

 

「あの~どちらさまでしょうか?」

 

(あ…えっと、園田海未です。穂乃果は一緒にいますか?)

 

高坂穂乃果は、目の前で陽ざしに照らされて気持ちよさそうに寝ている。

 

「…寝てる」

 

(すいません…事情はあとで説明するので、次の駅で降りてくださいませんか?)

 

この時、俺の頭の中に一つの可能性がよぎった。そう、このパターンを俺は知っているからだ。

 

「…もしかして、置いてかれてます?」

 

(……本当にごめんなさい)

 

「わかりました。そっちに向かいます」

 

耳から携帯電話を離し、通話を切る。ため息を付き、濁った気持ちを吐き出す。

別に傷ついてなんかいない、なんて言ったって俺は比企谷八幡だからな。こういうのは慣れてるんだ。ただちょっとだけショックなだけだ。大丈夫だ。問題ないレベルだ。一人こそ心理、集団に群れない。それが比企谷八幡という人間だ。

 

幸せそうに寝ている高坂穂乃果を起こし、次の駅で降りた。道中では口を尖らせながら文句を言っている穂乃果と一緒にメンバーのいる駅に向かうことにした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

13時を回った頃。俺と穂乃果はバスを乗り継ぎ、ようやく駅で合流することが出来た。そして今は、宿舎に向かうために何年も手入れされていないであろう道路を歩いている最中だった。そして未だに高坂穂乃果は文句を呟いている。

 

「ひどいよ海未ちゃん!海未ちゃんのバーカっ!」

 

「本当にごめんね穂乃果。海未だけが悪いわけではないの。気付かなかった私達も私達なんだし…」

 

穂乃果を宥める絵里と、謝る海未。そう、絢瀬絵里の言う通り、園田海未だけが悪いわけではない。気付けなかったほかの人も悪いのだ。しかしここでそのことを言及しても何の意味もないし、無駄な体力と時間を浪費するだけだ。よって俺は怒りもしないし、文句を言ったりもしない。

 

「謝って許されることではないのはわかっています…ごめんなさい穂乃果、比企谷さんも…」

 

汗を右手で拭い、顔を隠しながら園田海未の質問に答える。坂道では、先に行っている彼女の方が高い位置にいる。つまり拭う振りをすれば彼女たちからは見えることはない。

 

「…あ、気にしないでいいです。それより久しぶりに結構歩いたんで、出来ることなら早く休みたいな~って」

 

俺はあえて距離を離さず、彼女たちの後ろに着いて行っていた。あえて距離を置かず、「気にしてませんよ~」とアピールすることによって、後腐れなくすることが出来る。「めんどくさいやつ」と思われる方が、よっぽどめんどくさいことを知っているからだ。そしてダメ押しのもう一発。完璧だ、完璧すぎる。

 

「そういうわけにはいかないです…せめて何か…」

「ついたにゃ~!」

 

園田海未の声を遮るように、星空凛の元気な声が響き渡った。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

荷物を部屋に置くと、この別荘の持ち主で西木野真姫に案内してもらっていた。最初は少しぎこちない感じがしたが、途中からは普通に話しかけてこれるようになっていた。さすがアイドルだ。肝が据わっている。

 

「ここが一階のトイレよ、二階のトイレは私たちが使うから、上がってこない方がいいわ」

 

「特にない。昼食と夕食は?」

 

「そうね…食材とかはあるみたいだから、みんなで作ろうかと思ってたの」

 

“みんな” ねぇ…いったい誰のことなんだか

なんて姑みたいな小言を言ってやろうかとも考えたが、やめておいた。女のネットワークほど恐ろしいものはない。

 

「飯ごうとかあるか?」

 

「あるにはあるけど…どうかしたの?」

 

「自分の分は自分で作っていいか?だから少しだけ野菜を貰っておきたい」

 

「……わかったわ。場所の案内は」

「案内はいい。時間がないんだろう。早く戻った方がいいんじゃないか」

 

案内必要か とでも言いたかったのだろう。でも必要ない。なぜなら俺に構っているより、そっちはダンスの練習をしていた方が有意義な時間が過ごせることだろう。

踵を返し、俺は真姫と別れた。台所に向かっていくつかの食材と、カレー粉を袋に詰めて部屋に戻る。

窓からダンスレッスンをしている音が聞こえ、彼女たちの笑い声が少しだけ聞こえてきた。

目的は教えてもらっていないが、ここに来てしまった以上いつもの生活に近づけるように努力する。それが俺の最善策だ。傷ついているわけじゃない。俺はこの二泊三日、いつも通りに、-自分にとっての最善策-を選ぶことに決めただけだ。

 

「みんな なんていうマジックワードを使う連中を、俺は信用してないからな」

 

ロッキングチェアに座り、俺は仮眠をとることにした。

 

 

 

―園田海未―

 

 

14時を過ぎた頃、にこと凛が川に落ちてしまった(?)らしいので、一旦ダンスレッスンを切り上げ、穂乃果たちが戻ってきた。その時に私たちがスランプに陥っているのが発覚してしまったので、比企谷さんを除く全員が暖炉のあるリビングに集まっていた。

 

「「「「「「スランプ!?」」」」」」

 

「つまり、今までより強いプレッシャーがかかっているということ?」

 

「はい、気にしないようにはしているのですが…」

 

「上手くいかなくて、予選敗退したらどうしようって思うと…それに今朝のこともあったし…」

 

「わっ…私はそんなの関係なく進んでいたけどね」

「その割には譜面真っ白にゃ!!」

「って勝手に見ないで!」

 

 

「「「…」」」

 

 

沈黙する三人に、花陽がすかさずフォローに入る。

 

「たしかに、三人に任せっきりっていうのはよくないかも」

 

「そうね、責任も大きくなるから、負担も掛かるだろうし」

 

「じゃあ、みんなで意見を出し合って、話しながら曲を決めたらいいんじゃない?」

 

絵里が花陽に便乗し、希が別の方法を全員に提案する。

 

「そうね、一人いないけど、一応全員揃ってるんだし、それでいいんじゃない。」

 

にやりと不敵な笑みを浮かべ、にこは話し続ける。

 

「しょうがないわね~!私としては、やっぱり!にこに~にこちゃんに曲を付けて…」

「な~んて9人で話してたら、いつまでたっても決まらないよ?」

「なっ!?」

 

にこの言葉とハイテンションを一刀両断し、希が冷静に突っ込みを入れた。

 

「そうね…そうだ!それなら班を分けましょう!みんな、それでいいかしら?」

 

「うん」

 

「いいアイディアだにゃ~!」

 

絵里の提案に全員納得したかに思えたが…穂乃果はどこか不満そうな顔をしていた。

 

「絵里ちゃんストップ!」

 

「穂乃果、どうかしたの?」

 

「比企谷さんはどこにいるの?」

 

この場にいる全員は、いまだに比企谷さんに対して負い目を感じていた。少しだけ、部屋の空気が重くなる。

 

「…部屋にいると思うわ。比企谷さん、もう昼食は食べちゃったみたいだし。夕食も、自分の分は自分で作るって言ってたわ」

 

「え…?」

「そうなの真姫ちゃん!?」

 

「嘘なんか言ってどうするのよ」

 

台所のシンクは水で濡れていて、横には濡れている食器がいくつか置かれていた。

 

「そっか~…なんか寂しいね」

 

「そう…ですか…」

 

私が質問した時、彼は汗を拭いながら、「気にしていない」と言っていた。私たちの対する配慮なのか、それとも意図的に私たちを避けているのか、考えれば考えるほど、私の中にある不安感に近い何かが大きくなり始めていた。

 

 

 





はい、毛虫二等兵です。
ランキング入りを果たした瞬間…あれはすごいもんですね、感動でした。
というわけで、今回はいかがだったでしょうか?

受け入れるとはいったものの、やっぱり異性という壁がある
という話にしたつもりです。電車の中に置いて行ったのは、次回に軽い説明をいれようかと思います。

今回は遅れてしまって申し訳ないm(__)m


感想・ご指摘など、心からお待ちしてます!それでは~ノシ

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