【完結】フリーレン達のエロ&下ネタ冒険譚を無許可で書いた結果 作:シャリ
「南の勇者は七崩三人を討ち取って、全知のシュラハトと相打ちになったとされている」
「南の勇者の死体が見つからなかったことから、今でも南の勇者と全知のシュラハトの戦いは続いているといわれる伝説まである」
オーシュとソリテールが、遊びに行った城塞都市ヴァイゼから帰宅してから数日後の夜。
ゆったりした着心地の寝間着姿の二人はベッドで横になり、穏やかな時間を過ごしていた。
ソリテールはオーシュの胸に頭を預け、彼の心臓の音を聞きながら、静かに言葉を紡ぎ始める。
「ねえ、あなた。魔族の進化について前に話したこと、覚えてる?」
オーシュが彼女のサラサラとした髪を撫でながら答える。
「収斂進化とかの話だろ? 人間と魔族は似てるけど別物っていうヤツ」
「ええ、そういった話よ。覚えていてくれて嬉しい」
ソリテールは淡い碧の瞳を細め、語り始めた。
「あなたの世界の進化論を聞いてから、魔族が人間や他と最も異なるのは『進化の仕方』だと最近は考えているの。普通の生物や植物は少しずつ血を繋いで、長い時間をかけて進化していく。対して魔族は、血のつながりが存在しない。なのに、人間の声を出すだけだった魔族の中から上手く話せる個体が出たら、人間と同じように考えて声を使えるように進化した。姿も魔物がベースだったのに、人型の魔族が現れて以降に生まれる魔族は同じように人間に近い姿になっていた。そして、それらの進化が起きた年数は進化内容を考えたら異様に早い」
彼女は甘える猫のように顔をスリスリとオーシュの身体に押しつけて、続ける。
「魔族の進化の仕方は、言わば穏やかな水面に石が投げられると衝撃の波紋が水面全体に広がって行くような形式ね。血を介さずに魔族という存在自体に影響が伝播していくから進化が早い。つまり、人間的な感情に目覚めた私やマハトも、これから生まれる魔族に影響を与えたかもしれない。私のように人間と恋をして愛し合ったり、マハトのように人間に仕える毎日に幸せを感じる魔族が、未来では一般的になるのかも」
どこか感慨深げな彼女の声にオーシュは目を輝かせ、楽しげに言う。
「へえ、じゃあサキュバスみたいな魔族がいずれ生まれるかもしれないのかー。いいねぇ、夢があるな」
ソリテールは上半身を起こし、粘度のあるジト目をぶつける。淡い碧の瞳に、嫉妬の炎が灯る。
「ふぅん、サキュバス? 他の女の話をして楽しそうね」
オーシュは慌てて否定の意思で手を振るが、時すでに遅し。ソリテールはムッとした顔で、彼の頰を軽くムニっとつまむ。
壊さないように柔らかく、でも少しだけ力を込めて。
「他の女とえっちはダメ」
オーシュは頰をつままれたまま、苦笑い。
「いててっ。すまんすまん、わかってるよ。そういう光景も良いなと思っただけだって。あと人間と魔族が一緒にいるのが普通の光景になれば、ソリテールのチャームポイントの角を隠さないでデート出来るから楽しみなくらいさ」
ソリテールは少し頰を膨らませたまま、でも満足げに頰から指を離す。
オーシュも上半身を起こして、笑顔を向ける。
「そもそも、俺にとって世界で一番かわいくてえっちなサキュバスは目の前にいるしな~」
ソリテールはオーシュの言葉に、頰を赤らめながらも微笑んだ。ムッとした表情が消えて、代わりに満足感が顔に広がっていた。
「もう……あなたってば」
ソリテールが、ゆったりした寝間着の裾を両手でそっと掴む。そして、悪戯っぽく目を細めながら、シャツごと上着を捲り上げた。彼女の白く滑らかなお腹が露わになる。お腹に向かう視線を意識し、体を少し反らせた。
「あなた専用のサキュバスに、たっぷり愛を注いで欲しいの」
──夜通し、二人は深く愛し合った。
翌日の昼下がり。
オーシュはソファに座り、膝の上にソリテールの頭を乗せて膝枕をしていた。
リラックスしている彼女の髪を優しく撫でながら、片手で本を読む。
そうしてソリテールは膝枕と温かい手の心地よさに身を委ねながら、ぼんやり昨夜の会話を思い返す。
ふと、気になる事が浮かんできた。
「シュラハトが、私たち二人が出逢って魔族が変わっていく未来を選んだのかしら?」
オーシュは本を閉じて、呟かれた名前について尋ねる。
「どっかで聞いた名前な気はするけど、誰ソーレ?」
「シュラハトは千年後の未来まで見通す”未来視の魔法”を操る魔族よ。ただ、見た未来の内容を細かく誰かに話すことがなかったから、不明瞭な点も多い。望んだ未来を引き寄せる行動をしていたようだけど、私でもよく分からなかったわ」
オーシュは説明を受けて、自分なりにシュラハトを解釈して飲み込んだ。
「ようするに理想の結果を引く乱数調整マンなわけか。おけ、把握したぜ。てか、未来が見えるならシュラハトは無敵だった感じ?」
「無敵ではないわ。シュラハトに対抗できる人間が一人だけいた」
私は未来を見ることができた南の勇者について語り、二人が相打ちになった顛末まで教えた。
しかし、話を聞いた彼は首を傾げる。
「うーん? 二人が相打ちになった場面を直接見たヤツはいないんだよな? そして死体や痕跡も見つからなかったと。それ二人とも生きている展開でしょ。漫画やゲームでたまにあるやつ」
彼の安易な考え方に、流石に嘆息する。
好きな人だからといって、誤った読みまで肯定しない。
「もしも二人が生きていたら、シュラハトは魔王様に見つかっているはず。南の勇者も活躍するか、必死に探していた人間たちが見つけていないと都合が合わない。二人とも、見つからずに隠れ過ごすなんて出来ないわ。生きている限り、放置されないだけの能力と影響力があったもの」
ここまで言ってなお、彼は唸って考え込む。
枕にしている彼の脚をサワサワと触りながら、彼の反応を待ち続ける。
「わかったぜ」
ぽん、と頭の上で軽く手を叩く音がした。
いつものように調子よく、ちょっと得意げに話す。
「ソリテールが魔法でタイムトラベルして、二人を今の時間に連れてきたら全部辻褄が合うだろ。過去の世界では、死体も痕跡も残らない。魔王も人間側も『相打ちで死亡』と思い込む。そういうトリック、アニメで見たことあるんだよなぁ」
彼の前世にあったコンテンツから来た、突飛な発想を思わず否定しようとした。
「魔法で時間移動なんて」
否定しようとしたが、できなかった。
「…………あったわ」
思い出すのは、かつて魔王様がまだ健在だった頃。
未来から来たフリーレンを狙う話を”奇跡のグラオザーム”とした時の会話。
『魔王様の見解によると、80年後の未来から何者かの意識が時空を逆行してこの時代までやってきた』
『それが今のフリーレンという訳ですか。これは全知のシュラハトの計画の内だと思いますか?』
『さあ。彼は最後まで未来を多く語ることはなかったから。でもどちらにせよ、未来を何万何億回と見てきたような存在の崇高な考えなんて私達にはわからない。だから私たちは今まで通り好きなように踊ればいいだけよ。彼の掌の上で。それだけで千年後の魔族の繫栄まで、シュラハトの意思が導いてくれる』
ソリテールは膝枕の状態から跳ね起きた。
背筋に、冷たいものが走る。
魔族として数百年を生きてきた中で、これほどゾクリとした瞬間はなかった。
一つの発想から、思考が加速する。
「シュラハトは他の魔族と感性や考え方が違っていた。何故違ったのか。未来を見たから? どんな未来を見た。人間的な感情に目覚めた私やマハト? その先にある未来? なぜ周りに相打ちになると何度も言っていたのか。相打ちで死んだと思わせるため? どうやって周りにバレずに打ち合わせをしたのか。未来を覗き合うことでやり取りをしていたから? 失せ物を探す魔法や人探しの魔法とか様々な魔法があるのに、多くの者が探した上で死体や死体を食べたと思われる魔物が何故見つからなかったのか。そもそも死んでいなくて、本人がその時間の世界から消えていたから?」
これまで、考えたことすらなかった答えにどうしても繋がる。
「シュラハトと南の勇者は共謀していた。目的は人類と魔族が共存し、かつ、自分達が生存できる未来」
でも、一つだけボンヤリとした部分がある。
気づきをくれた、彼の黒い瞳に視線を合わせる。
「あなたの言う通りかもしれない。私は魔法で時間移動した例を見知っている。だから、魔法で時間移動できるとイメージで強く補正できる。あなたが知るアニメやゲームに出てくるタイムトラベルの理屈や論理を漫画で説明してもらえれば、参考にして魔法を組み立てられる自信はあるわ。それでも、時間移動する魔法を新たに創るのは苦労するはず。私がそこまでして、二人を助ける理由がないわ」
私の疑問点に対して、なんだそんなことかと彼が笑う。
「俺とソリテールが恋人になれたのはシュラハトと南の勇者のおかげでもあるかもしれないんだろ? だったらさ、俺はちゃんと礼を言いたいぜ。『すげー可愛いお嫁さんができる未来を選んでくれてサンキュー!』ってな」
彼に抱き寄せられて、彼の膝上に乗る。
不意を突かれて、ドキリとした。
「あとさ……難しい魔法を創って、その魔法で過去の魔族と人類のみんなを騙すの面白くね? ソリテールは研究者としてワクワクしないのか?」
彼の言葉に、ポカンと少し硬直し……クスクスと笑いが漏れる。
ああ、もう。
本当に。この人は。
研究者としての好奇心と、魔族としてのイタズラ心と、この人を独占し続けたいという、熱い愛情が、一気に溢れ出す。
「やっぱり、あなたが一番面白い。あなたに逢えて良かった」
彼の背中に腕を回して抱きしめ返す。
研究者として私を認めてくれて、女性として私に愛をくれる大切な相手を。
「んじゃ、さっそく研究を始める感じ?」
火照った頭を横に振って否定する。
「先に、愛しいあなたが欲しい気分」
抱き合ったまま、唇を重ねた。
最初は優しく、でもすぐに舌を絡めて深く、貪るように。
溢れる愛欲のような唾液が混じり合う音が、静かな部屋に響く。
──結果だけ言うと、ソリテールは労力と時間をかけて時間移動の魔法を完成させた。
その魔法で、無事にシュラハトと南の勇者を現代に連れ帰ることができた。
「ヘイ、全知と南の勇者! 未来のエロ知識を教えて!」
「「断る」」
「息ピッタリね」
オーシュは二人に礼を伝えた後、漫画で得ている金で大きな家を購入してシュラハトと南の勇者に与えた。付け加えて、二人が自らの目で変わっていく世の中を見たいと望んだので魔法による不老化も行った。
二人暮らしには広すぎる豪邸の中で、シュラハトと南の勇者がのんびり会話する。
「未来を介さず、落ち着いて話ができるのは新鮮であり不思議な感覚だ。まだ慣れないな」
「同意するよ。まぁ友と共に、この結果に辿り着けて感慨深くもあるがね」
【余談:魔法都市オイサースト】
管理された庭園で、フリーレンとゼーリエの二人が対面していた。
「私とヒンメルの結婚式に来なかったよね」
「まず先に言うことがそれか」
「大事でしょ」
「実にくだらない。お前にとって大事でも、私にとって大事とは限らないな」
ゼーリエがフリーレンの結婚式に来なかった一番の理由は、命を狙う勢力を考慮したからである。今のところ、そちらに関わらせる気がないゼーリエは事情を明かすことなく話を進める。
「用件を言ってみろ。つまらない文句を言いに来たわけではないだろう」
フリーレンが頷いて、用件を告げる。
「私とヒンメルは寿命が違う。その件は別れを悲しんだり魔法で解決するよりも、次に天国かどこかで会った時を楽しみにしようって二人で決めた。ただ……」
彼女は自身の腹部をさすりながら続ける。
「私たちの証は、ヒンメルが生きている間に残しておきたい。エルフが人間との子供を宿せる魔法って知らない?」
しばらく見ない内に女性らしい考えを持つようになったな、と感じるゼーリエは質問に答える前に言葉を投げかける。
「ずいぶん、なにかと噂の勇者様を気に入ったようだな」
「うん。ヒンメルはカッコイイし、私を大事にしてくれるし、空みたいに透き通った青い瞳が綺麗だし、私が頼んだらいつでもお姫様だっこをしてくれるし、一緒に体を綺麗にする時には──」
長々と彼氏自慢というか惚気話をしだしたフリーレンにゼーリエがウンザリとした表情を露わにする。
「もういい」
言葉で止めようとしたが、フリーレンはまだ口を閉じない。
「──あと私が年上のお姉さんとして甘えさせた時はいつもと違って可愛い反応をするところも好きだね。この前、ベッドの上でヒンメルの」
痺れを切らしたゼーリエが軽く攻撃魔法を打ち込み、フリーレンが咄嗟に防御魔法で防ぐ。
まだ話の途中だったのに……という目を向ける色ボケ化エルフに馬鹿馬鹿しさが湧く。
「フリーレン、お前は変わったな」
「そうだね。以前の私よりも人間と愛に詳しくなれた。そうなれたのはヒンメルが愛をくれたのと……オーシュの漫画のおかげかも」
後半の言葉でゼーリエが苦々しい顔をする。
「あのエルフにふざけたレッテルを貼ったヤツか。フリーレンをバカに変えてくれた礼を兼ねて、どこかで顔を合わせたら折檻してやろう」
「バカじゃないよぅ」
しょんぼり顔エルフに、ゼーリエが一冊の魔導書を押し付けた。
「持っていけ。……結婚祝いだ」
魔導書を受け取ったフリーレンは軽く中身を確認する。
パタンと本を閉じて、晴れやかな女性らしさのある笑顔で礼を告げた。
「感謝するよ。これで選択肢が出来た。ありがとう」
あのフリーレンがすっかり女性になり、自分に心から感謝の言葉を向けてきて、むず痒さが心に生じる。
「…………さっさと帰れ」
「そうするよ。ヒンメルをあまり待たせるのも悪いしね」
礼を告げたフリーレンは、この場を立ち去ろうと踵を返して……。
思い出したとばかりに「あっ」と声を出して振り返る。
「言い忘れてた。ゼーリエも早く結婚した方がいい。愛し合えるって幸せだよ。ヒンメルみたいな良い男の人は見つからないと思うけど」
「お前は千年出禁だ」
──そんなやり取りをしてから少し先の話。
なんだかんだで甘いゼーリエは、出禁にしたフリーレンが産んだ幼子を見せに来た際には会っていた。
フリーレンから幼子を手渡しされて、まだ小さな命を抱き抱えるゼーリエの口元はどことなく緩んでいた。
「ゼーリエ、子供っていいものだよ。人生という長い道に花が咲く。だからゼーリエも良い相手を誰か見つけたらいいのに」
「お前は二千年出禁だ」
以降も成長する子供をたまに見せに来て、会話するようになっていた。
ただし、フリーレンは出禁指定を度々受けていた。
【後書き】
書く予定は本当に無かった、本編後のオマケの更にオマケな後日談です。
感想や作者だけ見れる評価コメントで、
シュラハト(または南の勇者)とヒンフリの子供あたりに触れる読者がそこそこいたので書くことになった話になります。
そういう意味では、読者がいなければ書けなかった話になります。
感謝ですッ!
ソリテール:恋人(嫁)
マハト :臣下
アウラ :お世話係
シュラハト:友 ← New!
しかし、こうなると……当作品の世界線は
二人が未来視乱数調整ガチャでオーシュを引き当てたのが原因…ってコト!?
まぁ、超難易度ゲームをマルチプレイで攻略を頑張っていたら見つけたバグを使ってクリアしたノリかもしれん。
何はともあれ、人類と魔族が共存できる未来に加えて、南の勇者とシュラハトの生存に繋がったのでハッピーエンドです。
予定外のオマケな話の最後まで見てくれてありがとうございました!
作品を楽しんでもらえたなら、作者として何よりです。
魔導書【評価を付ける魔法】
魔導書【感想を伝える魔法】
-追記:12/7
あと読者リクエストがキッカケでR-18の外伝があります。
※あくまでもR18を見たい人向けの内容です。
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