NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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暴君の末路 ※ダミアン=ルネ=ド=カロリング視点

■ダミアン=ルネ=ド=カロリング視点

 

「ほら、消毒してやる」

「うぐおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!?」

 

 真っ赤に焼けた鉄の棒を切断面に押し付けられ、僕は痛みで絶叫する。

 猿ぐつわをされていたのが、せめてもの救いかもしれない。

 

 そうでなければ僕は、この苦しみに耐えかねて舌を噛み切っていただろうから。

 

「ほら、終わったぞ。……貴様も傷口が化膿して、股間に(うじ)が湧くのは嫌だろう?」

 

 どこか楽しげにそう話す帝国兵。

 普段の僕なら間違いなく怒り狂い即刻処刑してやるところだが、今はそんなことどうでもいいほど痛みが激しくて、ひたすらのたうち回ることしかできなかった。

 

「これから貴様を、帝都の外に追放する。ここからカロリング王国までだと、歩いて一か月ってところか」

「……………………………」

 

 どうやら帝国の連中は、この僕を帝都の外に置き去りにするようだ。

 カロリング王国の王太子に対するこの仕打ち、許すわけにはいかない。

 

(そうだ、許してなるものか……っ)

 

 既に使い物にならない国王に代わり、カロリング王国を統べる僕に、こんな真似をしておいてただで済むと思うな。

 今度は王国軍全軍をもって、帝国を蹂躙(じゅうりん)してやる。

 

「ほらよ、大人しくするんだぞ」

 

 幌馬車の荷台に、無造作に僕を放り込む帝国兵。

 その衝撃でまた痛みがぶり返し、歯を食いしばって耐える。

 

「……ひ、一つ教えて、くれ……」

「? なんだ?」

「第二皇子、の……ランベルト、は……どう……した……?」

 

 僕は脂汗を流しつつも、痛みを(こら)えて帝国兵に尋ねる。

 そもそも僕がこんな目に遭っているのに、どうしてあの男は助けに来ないんだ。

 

 あの男がこの国の皇帝になるためには、カロリング王国の支援は必要不可欠。

 ただでさえ第一皇子のカールに、皇位継承争いにおいて水をあけられているのだ。しかも最大の支援者だったヴァイデンフェラー公爵を裏切ってもいる。

 

 あの男が生き残る道は、もはや僕と手を組み続ける以外選択肢はないというのに。

 

「ああ、そうか。まだ聞かされてないんだな」

 

 帝国兵は嘲笑(ちょうしょう)を浮かべると。

 

「今回の事態を招いた罪で、ランベルト皇子は平民に降格。今は一兵卒として、東の国境警備隊に配属になったぞ」

「っ!?」

 

 西のカロリング王国の反対に位置する、帝国の東の国境。

 そこに魔獣がひしめく大森林があることは、西方諸国で暮らす者であれば誰もが知っている。

 

 つまり。

 

(そうか……あの男は、帝国に捨てられたか)

 

 大森林と対峙する国境警備隊に配属になったということは、すなわち死を意味する。

 

 カロリング王国の調査によれば、国境警備隊に配属された兵士は、一年もすればその数が半分以下になるとのこと。

 三年以上生き抜いた兵士は(まれ)で、大森林に隣接するバルツァー領を所有するゲッツ=バルツァー辺境伯を除けば、あとは国境警備隊長のイェルク=バックハウスと数名のみ。

 

 つまりは、そういうことだ。

 

「ま、精々野犬に襲われないように祈るんだな」

 

 帝都の城門をくぐり、幌馬車から捨てられた僕。

 身に(まと)っているのはぼろ布一枚。金も、食料も、身を守る武器もない。

 

 ここからカロリング王国まで、歩いて帰れって? 無理に決まっている。

 要は野垂れ死ねってことだ。

 

 幌馬車は遠ざかり、やがて見えなくなる。

 一人残された僕は、それを忌々しげに眺めると。

 

「おい、誰かいるか?」

 

 口の端を持ち上げ、誰もいない方向へと呼びかけた。

 

 そもそも皇立学院にお忍びで留学するために、帝国の内情を調べ上げ、ランベルト皇子に食指を伸ばし、ヨゼフィーネを手に入れようと画策したんだ。

 当然、帝国の各地に王国の諜報員を配置しているし、ここ帝都に至っては百人を超える者が潜伏している。

 

 僕を助けるために、諜報員のいずれかが既にこの場に控えていることだろう。

 

 なのに。

 

「誰も姿を見せない……?」

 

 既に二分は経過しただろうか。

 相変わらず周辺に人の姿はなく、僕は首を(かし)げた。

 

「十秒以内に姿を見せろ。さもなくば、一族郎党処刑されると思え」

 

 今度は語気を強めて言い放つ。

 ただでさえ股間の痛みで、気が狂いそうなんだ。まだ冷静でいられる間に、早く僕を助けろよ。

 

 心の中でそんな悪態を吐きながら、しばらく待っていると。

 

「まあまあ。去勢された家畜の分際で、不遜(ふそん)な態度ね」

「っ!?」

 

 背後からの女の嘲笑(あざわら)う声に、僕は勢いよく振り向く。

 

 そこには。

 

「うふふ、はじめまして」

「…………………………」

 

 羽扇で口元を隠す絶世の美女と、髭を生やした厳格な顔の中年の男がいた。

 男の正体は、帝国最大の勢力を誇るヴァイデンフェラー公爵。それはヨゼフィーネを調査した過程で分かっている。

 

 だが。

 

(もう一人の美女は何者だ……?)

 

 見たところ、年は二十代後半といったところか。

 これまでお目にかかったことのないほどの美貌と、いとも容易く男を虜にしてしまいそうなスタイルと色香を(まと)っている。

 

 それこそ、ヨゼフィーネだけに執着し続けていた僕が、心を奪われてしまいそうになるほどに。

 

「ところで……オマエが探している王国の(・・・)犬共(・・)は、先に殺処分してあるわよ。だからここにいるのは、オマエと私達だけ」

「っ!?」

 

 羽扇の隙間から(のぞ)く美女の口の端が、僅かに上がる。

 諜報員による救出は、期待できそうにないということか。

 

「……貴様等は、この僕をどうするつもりだ」

「ねえ、どうするのかしら?」

 

 二人を(にら)みつけると、美女がヴァイデンフェラー公爵に尋ねる。

 その様子に僕は違和感を覚えるが、しばらくの沈黙の後、ヴァイデンフェラー公爵がゆっくりと口を開いた。

 

「……ランベルト皇子を(そそのか)し、最愛の娘ヨゼフィーネを奪おうと画策したことについては、万死に値する。だが」

「…………………………」

「一方で、感謝もしている。皇帝陛下のたっての頼みで仕方なく婚約を受け入れたとはいえ、あのような無能の皇子から、ヨゼフィーネを引き離すことができたのだからな」

 

 どうやらヴァイデンフェラー公爵は、以前からランベルト皇子に思うところがあったようで、こちらに鋭い視線を向けつつも、そう言い放った。

 確かに父親の立場としては、平気で婚約者を他の男に売り飛ばすような男、許しがたいだろうからね。

 

「あらあら、じゃあこの家畜は捨て置くってことかしら?」

「どのようになさるかは、ご随意に」

 

 どこか含みの笑みを浮かべる美女に、ヴァイデンフェラー公爵は(うやうや)しく一礼した。

 つまり、この美女のほうがこの国で皇帝の次に権力を持つヴァイデンフェラー公爵より、立場が上ということ。

 

 先程の違和感は、そういうわけか。

 

「そういうことなら、この家畜は私が引き取るわね」

 

 美女は前に出て、僕の顎を人差し指でなぞり、持ち上げる。

 

「よかったわね。もしあの子(・・・)に危害が及んでいたら、死ぬだけでは済まなかったわよ」

「う……」

 

 絶世の美女が微笑みを(たた)え優しく語りかけているにもかかわらず、僕にはまるで、死へと(いざな)うささやきにしか思えなかった。

 

「そういうことだから、行くわよ」

「え……?」

 

 急に(ほが)らかな笑みに変わり、女はくるり、と(ひるがえ)った。

 

「ど、どこへ……?」

「決まってるじゃない。オマエを野放しにしたら、いつあの子(・・・)に何をしでかすか分からないし、家畜らしくちゃんと管理してあげないと」

 

 その言葉で、僕は悟る。

 再びカロリング王国の地を踏むことは、永遠にないことを。

 

「そんな顔をしないで? 大丈夫、きっと幸せだと思うわ。だって、ずっと生き続けていけるんだもの。……寄生樹の養分(・・)として」

「ムグッ!?」

 

 突然僕の口の中に何かを入れられ、思わず飲み込んでしまう。

 それを見た目の前の女は獣の耳を露わにし、にたあ、と口の端を吊り上げる。

 

 ――それが、僕がこの世界で見た、最後の光景だった。

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