NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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ちくり、と痛む心 ※ヨゼフィーネ=ヴァイデンフェラー視点

■ヨゼフィーネ=ヴァイデンフェラー視点

 

「残念ながら、ランベルト殿下は今日も出席されてないですよ」

 

 これまで一度も言葉を交わしたことも、そもそも認識すらしたことのない男子生徒が、おずおずとそうおっしゃいましたの。

 

「っ! わ、わたくしは別に、殿下に会いに来たわけではありませんわ! たまたま用事があっただけでしてよ!」

 

 声をかけられたのが予想外だったことと、教室に足繁く通っていたことを指摘された悔しさで、ついかっとなってしまったわたくし。

 彼は親切心で教えてくださったというのに、これは公爵令嬢としてあるまじき行為ですわ。

 

 でも、今日もランベルト殿下にお逢いできなかった虚しさもあって、素直になれず謝ることができなかったの。

 

 彼はあんなにも、温かい眼差しを向けてくださっているというのに。

 

 ただ、今度はエマやローザにも同じような……いいえ、むしろ興味がありそうな視線を向けたりして、ちょ、ちょっと節操がないのではと思いましたわ。

 殿方なら素敵な淑女に目移りしてしまうのは仕方がないのかもしれませんけど、それでも、最初にわたくしを見ていたじゃありませんの……って。

 

(……わたくしったら、何を考えているのかしら)

 

 きっといつもランベルト殿下に相手にしていただけないから、そんなくだらないことを思ってしまったのかもしれない。

 あるいは、これまでヴァイデンフェラー家の威光を恐れ、子息令嬢達が敬遠するにもかかわらず、物おじせずに教えてくれた彼を好ましく思ったから、なのかしら……。

 

 いずれにせよ。

 

 わたくしはこの時、彼――ニコラス=フリートラントを知りましたの。

 

     ◇◆◇◆◇

 

「……ヨゼフィーネ様―。お願いですから、ニコさん(・・・・)にあまり近づかないでくださいね?」

 

 教室に戻るなり、ジト目で睨むエマに釘を刺されてしまいましたわ……。

 ですけど、彼女がこのわたくしにこんな視線を向けるのは、初めてかも。

 

 というか、その口振りや名前を知っていることから察するに、以前から彼とお知り合いだったということかしら。

 その割には、彼の反応は初対面といった様子ですし、エマもエマで、ずっとよそよそしかったですし。

 

「わ、分かっておりますわ。先程のことは売り言葉に買い言葉で……」

「本当ですかー……? ニコさんはとっても素敵な人ですから、あのボンク……んっんー。ランベルト殿下から乗り換えても、おかしくないですし」

 

 エマったらかなり不敬なことを口走ろうとしたような気がしますけど、聞かなかったことにしますわ。

 だけど……なるほど、そういうことですの。

 

「安心なさい。わたくしにはランベルト殿下という婚約者がいるわけですし、他の殿方に目移りするほど節操がないわけじゃありませんもの」

「だといいですけどー……」

 

 わたくしがここまではっきりと言って差し上げても、未だに疑いの視線を向けるエマ。

 こんなにも誰かに執着する彼女を、初めて見ましたわ。

 

 つまり、それだけ彼が魅力的な殿方だということ。

 

「いいも悪いもありませんの! それに、エマと彼のことは、全力で応援しますわよ! ……そ、その、あなたはわたくしのお友達、ですし……」

 

 ランベルト殿下にお逢いできない時に、いつも慰めてくれるエマ。

 だったら、今度はわたくしがお返しする番ですわ。

 

「ハアー……本当に、ヨゼフィーネ様はずるいですー……」

「? ずるいってどういうことですの?」

 

 エマの言葉の意味が理解できず、わたくしは首を(かし)げるばかりですわ。

 

     ◇◆◇◆◇

 

 それからエマと彼……ニ、ニコラスは順調に仲良くなって、わたくしやローザも気づけばお友達になっておりましたわ。

 

 べ、別に嫌なんて言っておりませんわっ。

 ただ、殿方のお友達は初めてで、少々戸惑ったりしてしまうことはありますけど。

 

 それに、ニコラスはわたくしにも気安く話しかけてくれるばかりか、時折見せる気遣いは、とても居心地がいいんですの。

 そんな彼を知ってしまった以上、嫌いになるなんてあり得ませんわ。

 

(フフ……エマが好きになってしまうのも当然ですわね)

 

 帝都の大通りでニコラスと談笑しながらお肉の串を頬張るエマを眺め、わたくしは頬を緩めます。

 大切な友達が楽しそうで何よりですけど、一方で、わたくしはどうなのかしら……。

 

 相も変わらずランベルト殿下にお逢いすることは叶わず、ただ一人待ちわびるだけ。

 いけないと分かっているのに、最近ではあの御方とニコラスを比べてしまう自分がいる。

 

(……本当に、何を考えているのかしら)

 

 

 わたくしは思わず、かぶりを振る。

 ランベルト殿下は皇位継承争いのためにお忙しい身。学院に来ることができないことなど、最初から分かっているというのに。

 

 すると。

 

「あ……」

 

 ふと見せる、ニコラスの悲しそうな顔。

 エマもそれに気づいたようで、すぐに寄り添い心配そうに見つめます。

 

 そう……彼は彼で婚約者に裏切られていて、今は婚約破棄に向けて証拠を集めている最中。

 だというのに、ニコラスは気丈に振る舞い、わたくし達に心配をかけまいとしていますわ。

 

 それもまた、彼なりの強がりなのでしょうね。

 同じく婚約者に大事にされていないわたくしには、その気持ちが痛いほど分かってしまう。

 

「ハア……情けない、ですわね……」

 

 今は大切な友達であるニコラスの婚約者との婚約破棄のために、全力で助けてあげないといけない時。

 だから今は、わたくしのことは忘れよう。

 

 そう考えたわたくしは、きゅ、と唇を噛むと、すぐに笑顔を作って二人に駆け寄った。

 

     ◇◆◇◆◇

 

「フフ! ランベルト殿下、こちらはいかがですか?」

 

 ニコラスが婚約者のレーア=クライネルトと婚約破棄することができてから、ちょうど一週間。

 わたくしは今、久しぶりに皇立学院にお見えになられたランベルト殿下に、お弁当から取り分けた料理を彼に差し出しているところですわ。

 

 お弁当を誰が作ったか……ですって?

 もちろん、ヴァイデンフェラー家の総料理長が、腕によりをかけて作ったものですわよ。

 

 これならきっと、ランベルト殿下もお喜びいただけるはず。

 

 そう、思ったんですけど……。

 

「……いらん」

「そ、そうですか……」

 

 仏頂面のランベルト殿下の言葉を受け、わたくしはお皿を引っ込める。

 来てくださったことは嬉しいですけど、やはりこの御方はわたくしのことをよく思っておられないようですわ。

 

「し、しばらく学院にお越しになられておられないので、授業に追いつくのも大変ですわよね? わたくし、これまでの授業の内容をノートにまとめておりますので、よろしければ……」

「不要だ。……そもそも俺は、貴様に会いにきたわけではない」

「あ……そ、そうでしたか……」

 

 ええ、分かっておりましたわ。

 この御方が、わたくしのことに興味などないことは。

 

 それでも、せっかく学院にお見えになられたこの機会を、逃すことなどできませんの。

 

 帝国のためにと苦渋の決断をし、ランベルト殿下との婚約を取りまとめてくださったお父様に、ご迷惑をおかけするわけにはいかない。

 それに、こうしてランベルト殿下を学院に来るように、お友達のニコラスが働きかけてくれたんですもの。

 

 ……ええ、もちろんそのことに気づいておりましたわ。

 

 ニコラスの兄君は、ランベルト殿下の側近。

 彼が兄君を通じて、働きかけてくださったことを。

 

 その証拠にニコラスったら、ランベルト殿下が姿をお見せになられた瞬間、いつものように軽口を叩きつつも、優しく背中を押してくださいましたし。

 

 なので彼の優しさに、全力で応えてみせますわ。

 たとえわたくしの心が、ちくり、と痛んだとしても。

 

 でも、ランベルト殿下が本当に求めていたのは、聖女ソフィアで。

 わたくしのことなんて、眼中にないどころか厄介者でしかなくて。

 

 だから。

 

 ――結局、ニコラスの優しさは全て台無しになってしまいましたの。

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