【7/20オーバーラップ文庫から発売!】NTRエロゲに転生して婚約者を寝取られた俺を救ったのは、地上最強の取り巻きモブ女子Aでした   作:ぜんはいざ

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距離感がバグっているのもお見通し。

「は、母上……っ」

 

 なんと差出人は、母上だった。

 いつもなら、急用の時は執事のヤコブが直接来るというのに、これはどうしたことか。

 

 むしろいつもとは違う連絡手段に、不安になった俺は脇汗が止まらない。

 

「と、とりあえず、開けてみるか……」

 

 封を切り、手紙を読むと。

 

「……これは、さすがに帰ったほうがいいよな」

 

 よくよく考えたら、夏休みだというのにテオの暴走を阻止するため、寄宿舎に残り続けた俺。

 一応その旨は実家に連絡済みではあるが、こうして手紙という連絡手段を用いたということは、どうやら母上は、クッソ()ねてしまった模様。

 

 手紙の内容も、どうでもいい内容にこれでもかと皮肉を散りばめてあるし。

 

 ということで。

 

「悪い。俺、実家に帰らないといけなくなった」

「え、えええええええええええー!?」

「そ、そんなの聞いてませんわよ!?」

 

 そう告げると、エマは驚きの声を上げ、ヨゼフィーネが俺の胸倉をつかむ。

 だけど、俺だってプールに行きたかったんだからな。二人の水着姿、楽しみにしてたし。

 

「そ、そういうことだから、今日は俺を除いてみんなでプールを楽しんでくれ」

「えー☆ センパイがいないとつまらない☆」

「……ニコ×フーあるいはユミ×ニコが見られると思ったのに」

 

 補習が休みになった途端、ここぞとばかりに寄宿舎に押しかけたユミルとローザが、不満を垂れる。

 というかコイツ等、実家のタウンハウスに帰っていたくせに、補習が休みになったことをどこで聞きつけたんだよ。

 

「……んふ♪ わたしー、いいこと思いつきましたー」

「いいこと……?」

 

 人差し指を口元に当て含み笑いをするエマに、ヨゼフィーネが(いぶか)しげに尋ねた。

 

「そうですー。せっかくなのでー、ニコさんのご実家に行っちゃいましょう」

 

     ◇◆◇◆◇

 

「……まあまあ、それでみんなで押しかけたってことなのね」

「あ、あははー……」

 

 頬に手を当て、死んだ魚のような目で出迎えてくれた母上。せっかくの綺麗な琥珀(こはく)色の瞳が台無しである。

 そして俺は、愛想笑いを浮かべるしかない。

 

「それはそれとして……どうしてあなた達は、ニコの腕にしがみついているのかしら」

 

 母上の指摘どおり、右腕をエマが、左腕をヨゼフィーネが、それぞれ独占しているわけで。

 俺としてはこんな姿を母上に見られて恥ずかしい……なんて感情よりも、HカップとIカップの肉圧がすごすぎてそれどころじゃない。

 

「フリートラント夫人、お初にお目にかかりますわ。わたくしはヨゼフィーネ=ヴァイデンフェラー、先日は大変お世話になりました」

 

 一歩前に出て、優雅にカーテシーをするヨゼフィーネ。

 だがちょっと待て。先日お世話にって、どういうこと?

 

「あらあら、いいのよ。あなたのお父君であるヴァイデンフェラー閣下とは、うちも懇意にさせていただいているもの。あれくらいは当然よ」

 

 母上はそう言って、ウインクをする。

 少し笑顔が戻ったところを見ると、ヨゼフィーネに対し悪い印象は持っていない模様。

 

「お、お母様にはー、いつも大変お世話になってますっ!」

 

 負けじとばかりにエマも前に出ると、深々とお辞儀をした。

 

「まあまあ、そんなにかしこまらなくていいのよ? ……ただ、ニコとの距離が前よりも近くなったのは気のせいかしら」

「っ!?」

 

 その一言で、場の空気が変わる。

 ひょっとして母上、ご機嫌斜め?

 

「と、とにかく母上、玄関で立ち話もなんだから、中に入りませんか?」

「あらあら、そうだったわね」

 

 俺の提案でとりあえず和んだ空気になり、母上の表情もいつものように、ふにゃり、と緩んだ。

 このままの状態でいてくれるといいが、あまり期待しないほうがよさそう。

 

 その証拠に。

 

「……二人とも、さすがに屋敷内ではあまりくっつかないでね?」

「はーい……」

「わ、分かりましたわ……」

 

 冷ややかな視線を向けそう指摘すると、エマは渋々といった様子で、ヨゼフィーネは緊張した面持ちで俺から離れた。

 確かに付き合っているわけでもないんだし、当然か。最近、二人との距離感がバグっていたせいで、気づかなかった。気をつけよ。

 

 なお、ここまで一緒にいたフーゴ、ローザ、ユミルは完全に空気である。

 

「それにしても……友達思いなのはいいけど、あなたが補習を受ける必要はなかったんじゃない?」

「残念ながら、そういうわけにはいかないんです……」

 

 母上の皮肉を込めた台詞に、俺は軽く溜息を吐く。

 クリームヒルト先生という獲物を狙うストーカーを、みすみす野放しにできないからなあ……。

 

「まあまあ、学院も寄宿舎の管理人や教官がやらかしたみたいだし、ニコが心配するのも仕方な……」

「ちょっと待ってください」

 

 俺は思わず、母上の言葉を(さえぎ)った。

 

「そのー……どうして母上は、学院のことにそんなに詳しいんですかね?」

 

 そう尋ねると、母上は露骨に目を反らす。

 ルミナス皇立学院に入学する際、家族には干渉しないようにとお願いをした。だから、基本的に学院での出来事を母上が知るはずがないのだ。

 

「……まさかとは思いますけど、学院に間諜(かんちょう)を送り込んだりとか、してないですよね?」

「っ!? ま、まあまあ、そんなわけないじゃない! そんなことより、お友達を待たせても悪いでしょ? あなたのお部屋にでも案内してあげたらどう?」

 

 なんだか誤魔化されているような気もするが、確かに母上の言うとおり、みんなを家族の会話に付き合わせるわけにはいかない。

 

「では母上、失礼します」

「ええ」

 

 そして俺は、みんなを自分の部屋へと案内すると。

 

「ここがー……!」

「ニコラスの、お部屋……!」

 

 エマとヨゼフィーネが、これでもかというほど瞳を輝かせた。




お読みいただき、ありがとうございました!

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