【7/20オーバーラップ文庫から発売!】NTRエロゲに転生して婚約者を寝取られた俺を救ったのは、地上最強の取り巻きモブ女子Aでした   作:ぜんはいざ

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聞いたことある間男の名前。

「ふう……ニコが帰宅したとは聞いていたが……」

 

 その日の夕食、皇宮での仕事を終えて帰ってきた兄上が、こめかみを押さえてかぶりを振る。

 どうやらみんなも同席していることが、気に入らなかったようだ。

 

「そ、その、兄上すみません。せっかくなので、友達にも来てもらったんですけど……」

 

 きっと仕事で疲れているだろうし、もう少し気を配ればよかったと、俺は反省するばかり。

 ただでさえ色々と迷惑をかけっぱなしだというのに。

 

「あらあら、そんなに()ねないの。ニコのお休みはまたの機会があるでしょうから、今日のところはみんなで楽しみましょ」

「はあ……」

 

 母上にたしなめられ、仏頂面の兄上が渋々返事をする。

 だけど、()ねてるってどういうこと?

 

「……相変わらずニコさんは、お兄様に溺愛されてますねー(ボソッ)」

「……そ、そうなの?(ボソボソッ)」

 

 何やらエマとヨゼフィーネがひそひそと話をしているが、まあ大した内容じゃないだろう。

 

「それで……皇宮にも色々と話が流れてきているぞ。学院が雇った寄宿舎の管理人が実は帝都で発生した数多くの失踪事件に関与していたことや、シュプリンガー家の子息が同僚である伯爵夫人を手籠めにしようとしたことなど、な」

 

 え? もう兄上の耳に入ってるの?

 ちょっと驚いたものの、よく考えればコップの件は普通に凶悪事件だし、あのクソイケメンの実家は公爵家なわけだし、そんなやんごとない家がやらかしたなら、皇宮で話題になるのも当然か。

 

「他にノイベルト家の子息も、同じく(くだん)の伯爵夫人に手出しをしようと画策していたとか」

「そんなことまで!?」

「……後者については、まだ学生という身分なこともあり、学院側はマンシュタイン伯爵に内々で処理しようとしたが、ヴァイデンフェラー公爵から言及があったことと、先のシュプリンガー子息の件が明るみになったことで、ようやく報告されたがな」

 

 どうやら学院の隠蔽(いんぺい)体質は、相も変わらずのようだ。いい加減懲りろよな。

 

「ちなみに、あのショタ……いや、アルミンの奴がその後どうなったか、ご存知だったりします?」

「子息のアルミンは廃嫡となり、平民に降格の上帝都から追放されたと聞く。ただ……」

「ただ?」

「ノイベルト伯爵は、今回の処分に何故か喜んでいたそうだ。聞いたところでは、『これで平穏に暮らせる』と(つぶや)いていたらしい」

 

 あれだけショタの仮面を被ってクリームヒルト先生を……いや、それどころか世界中のエロゲ紳士達を騙していたような奴だ。実家ではその本性を(あら)わにして、横暴な振る舞いでもしていたのだろう。

 

 これじゃまるで、家族限定でイキっている自宅警備員だな。

 

「これまでのことも含め、皇宮としてもこれ以上看過できないということで、近々学院の改革に乗り出すこととなった。具体的に何をするかは、これからだがな」

 

 そう言うと、兄上はグラスに注がれた水を口に含む。

 

 だけど。

 

(まさか、ここで皇宮が関与してくるとは……)

 

 こう言ってはなんだが、『ルミナスの壊れた日々』の舞台であるルミナス皇立学院は、ろくでもない間男達が跋扈(ばっこ)する治外法権の無法地帯。

 それが許される同人エロゲの世界だったのに、ここにきて改善の兆し。

 

 歓迎されるべきことなのだが、それはそれでNTR系同人エロゲとしてのコンセプトはどうなるんだと、エロゲマエストロの俺としては複雑な心境である。

 

「フン。これでお前も、ようやく学業に専念できるな」

「は、はは……」

 

 鼻を鳴らす兄上の言葉に、俺は微妙な笑みで返した。

 

     ◇◆◇◆◇

 

「さあ、始めるわよ」

 

 昨日に引き続き休みになるのではと淡い期待も空しく、今日は補習が普通に行われることとなった。

 クリームヒルト先生も元気を取り戻したようで、朝からどこかすっきりつやつやした表情を浮かべている。

 

 あれかな? 媚薬のおかげで、欲求不満が解消された的な?

 

「〝エルマ“さんは……今日もお休みみたいね」

 

 教室内を見渡し、クリームヒルト先生が溜息を吐く。

 

 エルマというのは、俺達……というと語弊があるものの、補習の受講対象となった女子生徒。

 ちなみに期末試験の成績に関しては、ぶっちぎりの最下位だったりする。

 

 あ、言っておくが、別にルミナスシリーズの寝取られヒロインとかじゃないぞ。むしろエマやローザと同じモブのNPCだ。

 とはいえ、ゲームにおいては意外にも重要な役割を担っており、登場する『ルミナスの壊れた日々Ⅷ』でクリームヒルト先生との関係も深いわけで。

 

 その時。

 

「ク、クリームヒルト先生……」

 

 青ざめた表情で教室に現れた、一人の教官。

 別に間男とかではないから、安心してくれ。

 

「どうされました?」

「そ、その……補習を受けることになっているエルマさんの父君が、担当である先生にどうしても会わせろと……」

 

 怪訝な表情を浮かべるクリームヒルト先生に、現れた教官は脂ぎった額の汗をハンカチで拭い、申し訳なさそうに告げる。

 

 エロゲ紳士諸兄なら、もう気づいただろう。

 そのエルマという女子生徒の父親こそ、『ルミナスの壊れた日々Ⅶ』に登場する間男の、最後の一人。

 

 ――〝ルートヴィヒ=バルドベルク〟。




お読みいただき、ありがとうございました!

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